全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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第56話「一丈字飛鳥 VS 悪徳オリ主Ⅱ・2」

 

 時間は少しさかのぼる…。

 

「…え?」

 

 食堂で飛鳥はイヴ以外の4人に呼び出されていて、千聖から告げられた言葉に声を漏らした。それも信じられなさそうに。

 

千聖「私達今度ドラマに出るんだけど、相手役をしてほしいの」

飛鳥「何故私なんですか?」

日菜「飛鳥くんじゃないとるんってしないの」

飛鳥「やりたい人がやるべきだと思いますけどねぇ。ファンサービスとして」

麻弥「確かにそれはそうなんですけど…」

 

 飛鳥の言葉に麻弥が苦笑いした。

 

千聖「誰でもいいという訳ではないの。そんなに時間がある訳でもないし、確実に相手をこなしてくれる人じゃなきゃ」

飛鳥(需要と供給が合わないなぁ)

 飛鳥が困惑していた。

彩「あのね。最初はクラスの皆にお願いしたんだけど、喧嘩になっちゃって…」

千聖「しかも下心丸出しだったのよ。どさくさに紛れて体を触られたらたまったもんじゃないわ」

飛鳥「あはははは…」

 

 彩のフォローに対し、千聖が凄く嫌な顔をすると、飛鳥は苦笑いした。まあ、言われてみれば普通にそうなるよな…と考えていた。ちなみにパスパレのメンバーは男子のクラスメイトをそんなに嫌っているわけではない。ただ、やはりどうしても芸能人として見られることも多く、下心で近づいてくる輩も多いのだ。

 

千聖「女子とかもそうよ。おこぼれを貰おうとしてるし。それで前に彩ちゃんが酷い目にあったんだから」

飛鳥「……」

 

 千聖の様子から見て、飛鳥は何が起きたか大体察した。彩も苦笑いはしているが、どこか辛そうである。

 

飛鳥「私も結構芸能人として見てる方なんですけどねぇ…」

千聖「そうなのよね。だけどあなたなら『何故か』任せられそうなのよ」

 千聖が飛鳥をじっと見つめると、飛鳥は真顔になった。

 

日菜「ねえ、飛鳥くんいいでしょ?」

 と、日菜が上目遣いでお願いしたが、飛鳥は変わらなかった。ここで大抵の男たちはやられるが…。

 

千聖「そういう所よ」

飛鳥「私の事をかなり評価してくださってるようですね…」

日菜「ねえ、飛鳥くんいいでしょ!?」

 と、日菜が身を乗り出した。

麻弥(ひ、日菜さん落ち着いて!! いつもみたいに強引に決めたりしたら、一丈字さん嫌になって引き受けなくなるっすよ!)

彩(お願い日菜ちゃん! こらえて!!)

 日菜が身を乗り出したのを見て、麻弥と彩が焦ったように日菜を見つめていた。そして飛鳥は悟った。

 

飛鳥「…本当に私で宜しいんですか?」

千聖「だったら最初から話しかけないわよ」

飛鳥「ですよね。それじゃ時間にもよるんですけど…」

日菜「ありがとー! イヴちゃんにも連絡してくるねー!!」

 と、日菜が強引に決めて、イヴに連絡しに行った。

 

飛鳥「……」

千聖「許してあげて。あれでも結構我慢してた方なのよ…」

 

 そして今に至る。

 

(くそお!! どうしてこうなるんだよ!! ここはオレが相手をする所だろう!!?)

 

 と、次郎は自分ではなく飛鳥を選んだことに対して、納得がいってなかった。

 

 

 ちなみに彼が思い描いていたシナリオは下記の通りです。

 

***********

 

千聖「次郎くん」

次郎「あ?」

千聖「あの…ドラマの相手役やって欲しいんだけど//////」

次郎「何でオレが」

 

 こんな事言ってるけど、本当はめっちゃやりたいと思っている。だが、あくまで上から目線である。理由としては「女優にお願いされているオレSUGEEEEEEEEEEEEE」という感じであり、他の一般生徒に対して優越感に浸りたいからである。

 

千聖「あなたじゃなきゃダメなの/////」

日菜「ねえ、おねが~い! 次郎くん!」

彩「私も次郎くんに相手して欲しいな~」

麻弥「ジブンもっす!」

イヴ「ジロウさん」

 

次郎「しょうがねぇ~な~。本当はめんどくさいけどやるか~。本当はやりたくないんだけどな~」

 

*******************

 

 というシナリオを思い描いていた。そんなにめんどくさけりゃ誰も声をかけないだろと思うかもしれないが、最近のラノベの主人公は、本当にやりたくないのに周りの人間が強引にやらせようとする。そこまで頼りにされる事に対して、憧れを持っているのだ。

 

 ちなみに一丈字さん。座長としてこの状況は如何ですか?

 

飛鳥「可愛い女の子から頼りにされて、それでいて自分が上の立場である事が大事なんでしょうね。ただ、現実はそんなに甘くないですよ」

 

 飛鳥は知っていた。男子の力なんか借りなくても、千聖たちは自分達の力で何とか出来るという事を。更に仰々しく言えば、本来このバンドリの世界でイレギュラーの自分に合わせてくれているという事を。

 

飛鳥「本来だったら全く相手にされませんからね。必要な時以外は身の程を弁えて行動しております」

 

 ちなみに飛鳥はどんなに結果を出しても優越感に浸る事はない。何故なら、結果を出す度に周りの人間から疎まれ、小学生の時は度々同級生と喧嘩をする日々を過ごしていた。孤立も経験している。いわば人に嫌われやすい体質で、優越感どころじゃなかったのだ。

 

飛鳥「もう今となっちゃあ自分の道を…って、私の話はもういいでしょう。続き行きましょ続き」

 

 そんなこんなで練習当日。

 

飛鳥「……」

 放課後、飛鳥が千聖から言われた場所に行こうと、廊下を出た。すると…。

 

「おい、待てよ!」

飛鳥「?」

 次郎がたちはだかった。次郎の後ろでイヴが困った顔をしている。

 

飛鳥「どうされました?」

次郎「お前、パスパレの練習に行くんだろ」

飛鳥「ええ、そうですが…」

次郎「させねぇ」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が首を傾げた。これは嫌な予感がすると…。

 

次郎「オレと決闘しろ」

飛鳥「決闘?」

次郎「それで勝った方がパスパレの練習に付き合うんだ」

飛鳥「白鷺先輩に言ってください。私の権限じゃどうにもなりませんよ」

次郎「いいから勝負…」

飛鳥「まさか、白鷺先輩達には言えないから、私に諦めさせるように説得させるつもりだったんですか?」

 飛鳥の言葉に次郎が反応した。

 

飛鳥「そりゃあ白鷺先輩達に下手な事を言ったら、ただじゃ済みませんけど…こればっかりは私もどうにもならないんですよ。ですので、先輩達と話をしてください」

次郎「逃げるのか!?」

飛鳥「逃げますよ。逃げなくてもどうにもならないんですから」

次郎「男なら正々堂々と戦え!」

飛鳥「それでしたら正々堂々と、白鷺先輩達に進言してください」

 と、押し問答が続き、イヴが次郎の後ろに現れてオロオロしていた。

 

「どうしたの?」

 

 千聖、彩、麻弥、日菜が現れた。

 

イヴ「チ、チサトさ…」

 イヴが千聖たちの所に行こうとしたが、次郎に腕を掴まれた。

 

イヴ「!!」

「!!」

彩「イヴちゃん!」

次郎「いいから勝負しろよ!! もしくはオレに渡すか!!」

 と、次郎が叫んだが、飛鳥はいたって冷静だった。

 

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「な、何?」

飛鳥「ファンクラブの人たちにこの事をお伝えください」

千聖「なんて?」

飛鳥「1年1組の檻主さんが若宮さんに痴漢行為をしたと」

「!!?」

次郎「お、おい!! 卑怯だぞ!!」

飛鳥「何とでも」

「!?」

 飛鳥が凛とした顔で次郎を見つめた。

 

飛鳥「若宮さんが無事でいる事の方がずっと大事だから」

 

 

飛鳥「それよりも早く逃げた方が良いよ」

「!?」

飛鳥「丁度後ろで撮影してた人がいたよ。若宮さんの手を引っ張った所を撮られたんじゃないかな。言っとくけど、警察沙汰に出来るからね」

次郎「な、何してくれてんだよ!!」

飛鳥「オレに言うなよ。それよりもどうする? 若宮さんを置いてさっさと逃げるか、謝るか、それとも…警察に捕まるか」

次郎「そんな事してみろ!! イヴもただじゃ済まさないぞ!!」

「おい」

次郎「ああ!!?」

 耳郎が後ろを見ると、強面の先輩達がいて、次郎が青ざめた。

 

「お前…誰に断ってイヴちゃんにそんな事してんの?」

「ちょっと裏来いや」

 

 と、先輩達が睨みつけると、次郎は口をモニョモニョと動かした。所詮こんなもんである。

すると飛鳥が近づいて、イヴを回収した。

 

「あっ!!」

「てめぇ!!」

 

飛鳥「ああ、安心してください」

 吠える先輩達を安心させると、飛鳥は彩を見つめた。

 

飛鳥「丸山先輩」

彩「!?」

 飛鳥がイヴを彩の前に連れ出した。

 

飛鳥「若宮さん。無事に保護しました。ケアをお願いいたします」

彩「う、うん…」

イヴ「……」

 イヴは涙目になると、彩は衝撃を受けた。

彩「イ、イヴちゃん!! 怖かったね! 頑張ったね!!」

 と、彩がイヴを抱きしめると、イヴは嗚咽した。そしてそんな姿を見て先輩達は次郎に激怒した。

 

「てめぇこの野郎!!」

「イヴちゃんを泣かせやがって!! 覚悟は出来てるんだろうなぁ!!」

次郎「ひ、ひぃいいいいい―――――――――――――――――っ!!!」

 次郎が逃げ出すと、強面の先輩達は追いかけていった。それを見て飛鳥が頭をかいた。

 

千聖「流石ね。一丈字くん」

飛鳥「あ、いえ…」

 飛鳥が千聖を見つめた。

 

飛鳥「若宮さん。お怪我はございませんか?」

イヴ「はい…」

 イヴが飛鳥を見つめた。

 

日菜「それにしてもカッコよかったよ!」

飛鳥「いや、ハッタリかけただけなんですけど…」

麻弥「だけど、結果的にイヴさんを救いだせたじゃないですか」

飛鳥(本当は超能力を使ってどうにかしたかったけど、白鷺先輩がいるからな…)

 

千聖(おかしいわね。何かしてるようには見えなかったし、思い違いかしら…)

 千聖は飛鳥が今回超能力を使うんじゃないかと踏んでいたが、一切使わなかった為、思い違いだと感じていた。

 

飛鳥「それはそうと練習は…」

千聖「…残念だけど、今回は延期ね」

イヴ「そ、そんな!!」

千聖「いいのよ。この落とし前はさっきの男子につけて貰うから」

「!!?」

千聖「私達が直々につけて欲しいって言えば本望でしょう」

日菜「あ、それだったらこのままカラオケ行かない!?」

麻弥「ちょ、日菜さん! また襲われたらどうするんですか!」

日菜「だいじょーぶだよ。飛鳥くんがいるし」

飛鳥「えっ」

 飛鳥が困惑したが、イヴがぎゅっと飛鳥の服を引っ張った。

 

飛鳥「…若宮さん?」

イヴ「…もう少し、一緒にいたいです」

 皆が驚いた。

 

千聖「あらあら。どうするの? このまま女の子を置いて帰る気?」

飛鳥「何でもいいですけど、白鷺先輩すっごい楽しそうですね」

日菜「そうだねー」

彩「ちょっと千聖ちゃん…」

千聖「だ、大丈夫よ。ちゃんとイヴちゃんの事は心配してるから…」

日菜「よーし、それじゃカラオケにいこー!」

麻弥「いや、カラオケは若い男の人が沢山いますし…」

日菜「じゃあ麻弥ちゃんち」

麻弥「カラオケ行きましょう///////」

 麻弥が頬を染めて言い放った。

 

日菜「どうして?」

麻弥「いや、その…男の子に部屋見られるの恥ずかしいっすから…//////」

 

 と、今回も飛鳥の大勝利で終わった。

 

 ちなみに、校舎を出てすぐの森林エリアに行くと、次郎が恥ずかしい目に遭っていた。

 

飛鳥「」

彩「きゃーっ!!!//////」

千聖「見ちゃダメよ。さっさと行きましょう//」

麻弥「そ、そこまでするっすか…////」

イヴ「?」 千聖に目を塞がれていた。

日菜「お父さん以外で見たなー。おち」

麻弥「日菜さんっ!!!//////」

 

 

おしまい

 


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