全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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前回までのあらすじ

 飛鳥が商店街を歩いていると、うなぎ屋「あだきや」で働いていた小塚という男が商店街で暴れ、飛鳥はそのまま取り押さえた。

 話を聞くと、店主が二代目に変わったことにより、店の方針が大きく変更する事になり、二代目と対立しクビになり、自暴自棄になっていた。

 うなぎ業界から手を引こうとする小塚に対し、面倒を見ていた松永警部が激怒し、成り行きで、あだきや奪還作戦に参加する事となった。

 そして飛鳥は良い質の鰻を知ってそうな、弦巻家に相談する事にしたのだが…。



第69話「炭火の魔力・2」

 

 ***********

 

 翌日、飛鳥は小塚、ハロハピのメンバーと共に弦巻家へ。

 

はぐみ「おじさん!」

小塚「…北沢さんの所のお嬢さんじゃないですか」

 

 はぐみの姿を見て、小塚はしょんぼりとしていた。

 

小塚「なんてお恥ずかしい…。親父さんになんて顔を合わせれば…」

はぐみ「そんな気にしないで! とーちゃんもおじさんの事心配してたよ!?」

 

 小塚の顔を見てはぐみは必死に小塚を慰めていた。花音、美咲も心配そうにしている。

 

飛鳥「…行きましょう」

 

 飛鳥達はそのまま中に入っていった。

 

黒服A「…こちらが、弦巻家が取りそろえた鰻でございます」

黒服B「最高級のものから、庶民的なものまで取り揃えております。お好きな物をご自由にお選びください」

小塚「……!!」

 

 取り揃えられた鰻の種類に小塚は絶句した。

 

美咲(…まあ、そりゃそうよね)

 

 自分も最初は弦巻家のスケールの違いに驚いていたが、人が驚いているのを見て、自分はもうすっかり毒されたと感じていた。

 

飛鳥「このように、うなぎや食材の仕入れは弦巻家から提供して頂けます。お気兼ねなく申し上げてください」

こころ「遠慮はいらないわよ!?」

飛鳥「…敬語を使いなさい」

 

 こころの言葉に飛鳥が突っ込むと、美咲が心の中で申し訳なさそうにした。

 

小塚「こ、こんなに沢山の鰻を…本当によろしいんですか!?」

黒服C「ええ。こころお嬢様の許可が出ております故」

飛鳥「小塚さん」

小塚「!?」

飛鳥「もう一つお話ししたい事が…」

 

 会議室

 

小塚「あだきやの近くに店を!?」

 小塚が驚いた。

 

飛鳥「はい。場所は本店より遠いですけど、何とか場所を取れました。そこで鰻を売ってください」

小塚「そ、そんな…。それじゃあ「あだきや」と競り合うようなものじゃないか! いくら二代目と喧嘩別れしたからって…」

飛鳥「あだきやと競り合うんじゃないんですよ」

小塚「え!?」

 飛鳥が真剣な表情で小塚を見た。

 

飛鳥「あだきやを守る為に鰻を売るんですよ」

 

「!!?」

 

飛鳥「あなたも言っていたでしょう。二代目のやり方でいたら、あだきやが潰れてしまうって。違うんですか?」

小塚「ち、違わない…!! だけど…」

飛鳥「迷ってる暇なんかありませんよ。あなたは商店街で大暴れしてるんだ。このままやらないなんて事になったら、刑務所行きは確実で、その間にあだきやは完全に終わり、何もかもなくなるんですよ!」

 飛鳥が説得した。

 

飛鳥「先日、あだきやを訪ね、自慢とされていた鰻御膳を食べました」

小塚「!!」

 飛鳥が俯いた。

 

飛鳥「…ウナギの味はしたものの、あれは店で出していいレベルじゃあございません。米はふっくらしてませんし、中はべしょべしょです。ウナギの香ばしさはないのに脂っこい。まるで出来の悪い焼き魚ですよ」

小塚「……!!」

 

 飛鳥の言葉に小塚が驚いた。

 

小塚「そ、そんなにひどかったのか…!!」

飛鳥「ええ…。おまけに値段もそこそこしてて…。お客さんが来なくなるのも時間の問題ですよ」

小塚「なんてことだ…そんなにひどいのか…!!」

 と、小塚は頭を抱えていた。

 

飛鳥「小塚さん。本当に今しかないんですよ。今、ここであなたが動かなかったらあだきやは終わります」

はぐみ「そーだよおじさん!!」

 はぐみが飛鳥の隣で叫んだ。

 

小塚「!」

はぐみ「昔、はぐみ達に食べさせてくれたあの鰻、なくさないでよ!!」

小塚「…お、お嬢さん」

はぐみ「はぐみ、どっちかっていうとお肉が好きなんだけど、おじさんや店長さんが作ってくれた鰻、大好きなの。だから頑張って!!」

小塚「……!!」

 はぐみの言葉に小塚は涙を流した。

 

小塚「なんてことだ…。ちゃんと味を分かってくれた人がいたのに、私はなんてことを…!」

飛鳥「小塚さん。悔やむのは後です。今はやるべき事をやってください」

小塚「…ああ。分かったよ」

 小塚が飛鳥とはぐみを見た。

 

小塚「一丈字さん。皆さん。どうか宜しくお願いします!」

こころ「任せて!」

美咲「コラ!!」

薫「私も出来る限り協力しよう」

花音「が、頑張りますっ!!」

 

こころ「よーし! 鰻で皆を笑顔にするわよー!!」

「おー!!!」

 

 そんなこんなで飛鳥とハロハピの大作戦が始まった。

 

 

 数日後の商店街。

 

「何故だ!! 何故客が来ない!!」

 

 あだきやで二代目が机をたたいていた。

 

「わ、若旦那…」

二代目「料理は5分以内に来て、効率を考えて炭からガスに変えたのに…何がいけないんだ!!」

 と、二代目はとにかく荒れていた。

 

 その時、客が来た。

 

二代目「い、いらっしゃいませ!」

「あのーすみません。ここは「小塚」というお店ですか?」

二代目「小塚?」

「いえ、うちはあだきやですけど?」

「なーんだ。違うんだ。お邪魔しましたー」

 と、客が帰っていった。

 

二代目「…小塚?」

「もしかしてあの小塚が!?」

二代目「あの裏切り者め!!」

 

 二代目と取り巻きが小塚の店を探し当てたが、行列が出来ていた。

 

「な、なんだこれは!」

二代目「ヘッ。こんなの今だけだよ。全く、炭なんて古臭いのをまだやってたのか」

 と、二代目が悪態をつくと、並んでいた中年の客たちが睨みつけた。

 

二代目「ひ、ひっ!」

「よ、良く見たら昔の客が!!」

二代目「な、何でだ!!」

 

 二代目がそう言うと、

 

「ああ。あんたの父親には世話になったから通ってたけど、あんたが店主になってからひどい!」

「鰻をバカにしておる!」

「そういやこの店、高校生が手伝ってるらしいけど、その子たちの方が鰻の事よく分かってるよ」

「牛丼チェーン店じゃあるまいし、もうちょっとプライド持ちなよ」

 

 と、罵詈雑言だった。

 

二代目「そ、そんな…」

「こ、こんなの何かの間違いだ!!」

 と、二代目と取り巻きが騒いだが、客はこれ以上相手にする事はなかった。

 

 

 

つづく

 


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