前回までのあらすじ
飛鳥が商店街を歩いていると、うなぎ屋「あだきや」で働いていた小塚という男が商店街で暴れ、飛鳥はそのまま取り押さえた。
話を聞くと、店主が二代目に変わったことにより、店の方針が大きく変更する事になり、二代目と対立しクビになり、自暴自棄になっていた。
うなぎ業界から手を引こうとする小塚に対し、面倒を見ていた松永警部が激怒し、成り行きで、あだきや奪還作戦に参加する事となった。
そして飛鳥は良い質の鰻を知ってそうな、弦巻家に相談する事にしたのだが…。
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翌日、飛鳥は小塚、ハロハピのメンバーと共に弦巻家へ。
はぐみ「おじさん!」
小塚「…北沢さんの所のお嬢さんじゃないですか」
はぐみの姿を見て、小塚はしょんぼりとしていた。
小塚「なんてお恥ずかしい…。親父さんになんて顔を合わせれば…」
はぐみ「そんな気にしないで! とーちゃんもおじさんの事心配してたよ!?」
小塚の顔を見てはぐみは必死に小塚を慰めていた。花音、美咲も心配そうにしている。
飛鳥「…行きましょう」
飛鳥達はそのまま中に入っていった。
黒服A「…こちらが、弦巻家が取りそろえた鰻でございます」
黒服B「最高級のものから、庶民的なものまで取り揃えております。お好きな物をご自由にお選びください」
小塚「……!!」
取り揃えられた鰻の種類に小塚は絶句した。
美咲(…まあ、そりゃそうよね)
自分も最初は弦巻家のスケールの違いに驚いていたが、人が驚いているのを見て、自分はもうすっかり毒されたと感じていた。
飛鳥「このように、うなぎや食材の仕入れは弦巻家から提供して頂けます。お気兼ねなく申し上げてください」
こころ「遠慮はいらないわよ!?」
飛鳥「…敬語を使いなさい」
こころの言葉に飛鳥が突っ込むと、美咲が心の中で申し訳なさそうにした。
小塚「こ、こんなに沢山の鰻を…本当によろしいんですか!?」
黒服C「ええ。こころお嬢様の許可が出ております故」
飛鳥「小塚さん」
小塚「!?」
飛鳥「もう一つお話ししたい事が…」
会議室
小塚「あだきやの近くに店を!?」
小塚が驚いた。
飛鳥「はい。場所は本店より遠いですけど、何とか場所を取れました。そこで鰻を売ってください」
小塚「そ、そんな…。それじゃあ「あだきや」と競り合うようなものじゃないか! いくら二代目と喧嘩別れしたからって…」
飛鳥「あだきやと競り合うんじゃないんですよ」
小塚「え!?」
飛鳥が真剣な表情で小塚を見た。
飛鳥「あだきやを守る為に鰻を売るんですよ」
「!!?」
飛鳥「あなたも言っていたでしょう。二代目のやり方でいたら、あだきやが潰れてしまうって。違うんですか?」
小塚「ち、違わない…!! だけど…」
飛鳥「迷ってる暇なんかありませんよ。あなたは商店街で大暴れしてるんだ。このままやらないなんて事になったら、刑務所行きは確実で、その間にあだきやは完全に終わり、何もかもなくなるんですよ!」
飛鳥が説得した。
飛鳥「先日、あだきやを訪ね、自慢とされていた鰻御膳を食べました」
小塚「!!」
飛鳥が俯いた。
飛鳥「…ウナギの味はしたものの、あれは店で出していいレベルじゃあございません。米はふっくらしてませんし、中はべしょべしょです。ウナギの香ばしさはないのに脂っこい。まるで出来の悪い焼き魚ですよ」
小塚「……!!」
飛鳥の言葉に小塚が驚いた。
小塚「そ、そんなにひどかったのか…!!」
飛鳥「ええ…。おまけに値段もそこそこしてて…。お客さんが来なくなるのも時間の問題ですよ」
小塚「なんてことだ…そんなにひどいのか…!!」
と、小塚は頭を抱えていた。
飛鳥「小塚さん。本当に今しかないんですよ。今、ここであなたが動かなかったらあだきやは終わります」
はぐみ「そーだよおじさん!!」
はぐみが飛鳥の隣で叫んだ。
小塚「!」
はぐみ「昔、はぐみ達に食べさせてくれたあの鰻、なくさないでよ!!」
小塚「…お、お嬢さん」
はぐみ「はぐみ、どっちかっていうとお肉が好きなんだけど、おじさんや店長さんが作ってくれた鰻、大好きなの。だから頑張って!!」
小塚「……!!」
はぐみの言葉に小塚は涙を流した。
小塚「なんてことだ…。ちゃんと味を分かってくれた人がいたのに、私はなんてことを…!」
飛鳥「小塚さん。悔やむのは後です。今はやるべき事をやってください」
小塚「…ああ。分かったよ」
小塚が飛鳥とはぐみを見た。
小塚「一丈字さん。皆さん。どうか宜しくお願いします!」
こころ「任せて!」
美咲「コラ!!」
薫「私も出来る限り協力しよう」
花音「が、頑張りますっ!!」
こころ「よーし! 鰻で皆を笑顔にするわよー!!」
「おー!!!」
そんなこんなで飛鳥とハロハピの大作戦が始まった。
数日後の商店街。
「何故だ!! 何故客が来ない!!」
あだきやで二代目が机をたたいていた。
「わ、若旦那…」
二代目「料理は5分以内に来て、効率を考えて炭からガスに変えたのに…何がいけないんだ!!」
と、二代目はとにかく荒れていた。
その時、客が来た。
二代目「い、いらっしゃいませ!」
「あのーすみません。ここは「小塚」というお店ですか?」
二代目「小塚?」
「いえ、うちはあだきやですけど?」
「なーんだ。違うんだ。お邪魔しましたー」
と、客が帰っていった。
二代目「…小塚?」
「もしかしてあの小塚が!?」
二代目「あの裏切り者め!!」
二代目と取り巻きが小塚の店を探し当てたが、行列が出来ていた。
「な、なんだこれは!」
二代目「ヘッ。こんなの今だけだよ。全く、炭なんて古臭いのをまだやってたのか」
と、二代目が悪態をつくと、並んでいた中年の客たちが睨みつけた。
二代目「ひ、ひっ!」
「よ、良く見たら昔の客が!!」
二代目「な、何でだ!!」
二代目がそう言うと、
「ああ。あんたの父親には世話になったから通ってたけど、あんたが店主になってからひどい!」
「鰻をバカにしておる!」
「そういやこの店、高校生が手伝ってるらしいけど、その子たちの方が鰻の事よく分かってるよ」
「牛丼チェーン店じゃあるまいし、もうちょっとプライド持ちなよ」
と、罵詈雑言だった。
二代目「そ、そんな…」
「こ、こんなの何かの間違いだ!!」
と、二代目と取り巻きが騒いだが、客はこれ以上相手にする事はなかった。
つづく