全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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 前回までのあらすじ

 弦巻家に敵なし。


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第70話「炭火の魔力・3」

 

 二代目と取り巻きが悔しがっている中、飛鳥、ハロハピの5人はうなぎ屋でアルバイトをしていた。ちなみに花音はファーストフード店のアルバイトがあるが、本日はシフトではない為、参加している。ちなみに黒服達も従業員としている。

 

「小塚様。下準備が整いました」

小塚「あ、ありがとうございます…」

 と、小塚は全く落ち着かない様子だった。

 

飛鳥「いらっしゃいませー」

 飛鳥も制服に着替えて、掛け声をした。

 

 ちなみに役割

ホール:はぐみ、薫、黒服、花音、美咲

キッチン:小塚、飛鳥、こころ、

 

こころ「こんなものでどうかしら!」

 こころが調理した鰻を見せたが、小塚は驚きが隠せなかった。

小塚「す、すごいね…君…」

飛鳥「あははははは…」

 飛鳥が苦笑いしていたが…。

小塚「いや、君も凄い」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 

 飛鳥とこころも鰻を調理していたが、二人ともそこそこ出来ていた。

 

小塚(串うち3年、裂き8年、串一生と呼ばれてるのに…。この子達、凄い才能だな…)

 

薫「お客様…ご注文を」

「おやあ、別嬪さんだねぇ!」

「ならねーちゃん。わしと…」

「バカ言ってんじゃないよあんた!!」

 

 と、接客業もそれぞれのキャラクターが受け入れられてバカ受け。

 

「おーい。兄ちゃん」

飛鳥「あ、はーい!」

 飛鳥が店員に呼ばれてきた。

 

「鰻を選ばせてくれるんだろ? この店」

飛鳥「ええ。折角ですからお客様に選んでいただこうと」

「何だ。アオはねぇのか?」

飛鳥「お目が高い! 実は売切れちゃったんですよ」

 

 アオとは、青ウナギの事であり、質も普通の鰻より良い。1万円以上もするらしい。

 

「なんでぇー。アオ食えたっつーから急いできたのによ…」

 おっさんはしょんぼりしていた。

「まあまあ、考える事は皆同じさ。坊主、この中でどれが一番活きが良いんだい」

飛鳥「こちらとかお勧めですよ!」

「成程、そりゃあでかい! それはワシが貰おう!」

「あっ! ずるいぞ!!」

 

 と、揉めていたが、飛鳥や他の客は楽しそうに笑っていた。

 

 そして…

 

香澄「わあ凄い!! いきなり大盛況だよ!!」

有咲「すげぇ…」

 遅れてPoppin’partyがやってきた。

 

たえ「でもすっごい並んでる…」

沙綾「これじゃ、お店に行くのは難しそうだね…」

 

 店の大盛況を見てりみと沙綾が苦笑いした。

 

香澄「でも折角だから、並ぼうよ!」

有咲「えー。めんどくせーよ…。こんだけ並んでたら心配いらねーだろ」

香澄「有咲ぁ~」

有咲「くっつくな!!/////」

 

 香澄が有咲に抱き着いて、有咲が吼えると、沙綾がある事に気ついた。

 

沙綾「あれ!? 確かあの男の人は…」

たえ「どうしたの?」

 

 すると二代目と取り巻きが他の客を無視して、店内に入った。

 

「!!?」

小塚「わ、若旦那…」

 二代目の顔を見るなり、小塚が困惑していた。

 

二代目「おい、どういう事だ小塚! 誰に断ってこんな店出してんだ。ああ!?」

「そうだ! お前には初代店主の恩を忘れたのか!? 客を奪いおって!!」

 と、いちゃもんを付けたが、客が騒いだ。

 

「ふざけるなー!!!」

「恩知らずはお前らだ!!!」

「あだきやをダメにしやがって!!!」

「金に目がくらんで店のこだわりを捨てた恥知らずは出ていけ!!!」

 

 と、客が激怒した。

 

はぐみ「み、皆落ち着いて!!」

薫「これは…穏やかじゃないね…」

美咲「言ってる場合じゃないですよ!!」

花音「ふぇえええ…」

 

 飛鳥とこころはどっしり構えていた。

 

「誰に断ってこの店を出してるって?」

二代目・取り巻き「!!?」

 

 二代目と取り巻きの後ろで声がしたので、二代目と取り巻きが後ろを見ると、松永警部が現れた。

 

「オレに断ったんだ。文句あるか」

二代目「な、な、何なんだあんた!!」

飛鳥「これはこれは松永警部。お勤めお疲れ様です」

松永「おお!! 神楽ん所の坊主! 元気にやってるか!」

飛鳥「え、ええ…」

 

 松永の言葉に飛鳥は思わず口元を引きらせた。やらせてんのあんただろ…と言わんばかりに。

 

こころ「確かお母さんの所の…」

飛鳥「うん、そうだよ…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

二代目「け、警部!!?」

松永「この店はオレが営業許可証を出してんだ。文句あっか」

二代目「そ、そうじゃないんですよ! ただ、同じうなぎ屋があるなんて聞いてなくて…」

 と、二代目と取り巻きはしどろもどろだった。

 

「てめぇがあまりにも酷い鰻を出すもんだから、小塚さんが店出してくれたんだよ!!」

「そうだ!!」

「天国の親父が悲しんでるぞ!!」

「何が合理化だ!! あんなクソマズイ鰻出しやがって!! あんなもん鰻じゃねぇ!!」

 

 客が二代目に対して文句を言うので、小塚が困った顔をすると、

 

飛鳥「はい、皆さんそこまで!!」

「!!」

 と、飛鳥が両手を叩いた。

 

こころ「それならこの人たちに、小塚のうな丼を食べて貰おうじゃない!!」

飛鳥「小塚さん。彼らにうな丼を」

小塚「は、はい…」

二代目「だ、誰が小塚の作った鰻なんか!!」

松永「食わねぇと公務執行妨害で現行犯逮捕だ!」

二代目「ひぃぃ!! そ、そんなぁ~!!」

「はははは!!」

「いいぞもっとやれー!!」

 

 と、松永にマークされてしまい、逃げ場を失った二代目と取り巻きはやむを得ず小塚のうな丼を食べる事になった。

 

 そして30分後…。

 

飛鳥「どうぞお召し上がりください」

二代目「フン」

 飛鳥がうな丼を二人前提供したが、二代目は悪態をついたままだった。周りの客が見守る中、二代目と取り巻きはうな丼を食べた。すると衝撃が走る。

 

二代目「お、親父が作っていたうな丼と同じだ!!」

取り巻き「ホントだ!!」

二代目「オレが作るのと全然違う…。やっぱり炭だからなのか!?」

飛鳥「炭もそうですけどアナタ…。つくった鰻を作り置きしてるでしょ。温蔵庫に」

二代目「!!」

飛鳥「温度は保てても、鮮度が落ちますよ。これじゃスーパーで買った方がマシですよ」

「そうだそうだ!!」

 

 飛鳥の言葉に客たちが吠えた。

 

飛鳥「それに米もふっくらしてるでしょう。貴方達の鰻御膳とやらはまったくふっくらしてなくて、本当にベチャベチャしてました」

「そうだそうだ!!」

 

 また客が吠えた。

 

 

飛鳥「あなたの仰っていた通り、確かにお客さんが多ければ多いほど、合理的にやった方がスムーズに事が運びますし、負担も少ない。だけど、合理的にしてはいけない所まで合理的にしてしまった。これがお客様に減った原因です」

二代目・取り巻き「!!」

松永「そういうこった」

 松永も口を開いた。

 

松永「鰻を分かっている客はな、たとえ時間がかかると分かっても本物を選ぶのよ!」

二代目「!!!」

 松永の言葉に二代目は衝撃を受けた。

 

こころ「ここのお客さんはみーんな楽しそうに待ってたわ?」

二代目「……!」

こころ「美味しい鰻が食べられるって分かってるから、皆待てるのよ! だからわざわざ時間を短くする必要なんてないわ!」

 こころの言葉に二代目は崩れ落ちた。

 

取り巻き「に、二代目!!」

二代目「…私はなんて愚かだったんだ。利益を上げる事と、合理化を追い求めていたばかりに、一番大事な事を忘れていた…」

 と、二代目が悔やんでいた。

 

飛鳥「…理由はどうであれ、あなたはあなたで「あたぎや」を大きくしたかったんでしょう。それは小塚さんも理解しております」

二代目「!」

飛鳥「だけど、肝心なところで手を抜いてしまえば、考えた事も、やって来た事も全部台無しになるんです。もう一度小塚さんと話し合ってみたら如何でしょうか」

 すると小塚が二代目の元に現れた。

 

小塚「若旦那…」

二代目「小塚…」

小塚「先代の恩もあり、差し出がましいですが、もう一度私に、あたぎやの鰻づくりについて指揮をさせて頂けませんか!」

 小塚が二代目を見つめてそう言った。

 

取り巻き「な、何を言ってるんだ! お前は…」

二代目「小塚…」

取り巻き「!」

 二代目が小塚を見つめた。

 

二代目「戻ってきてくれるのか。お前には今まで酷いことをしてきた。それなのに…」

 小塚が笑みを浮かべた。

 

小塚「いいんですよ。一丈字さんも言っていた通り、若旦那は若旦那であたぎやの事を考えていた」

二代目「小塚…!!」

小塚「ですが今の鰻づくりではお客様は戻ってきてくれません。お願いです、鰻づくりをもう一度任せてください」

二代目「是非頼む! 教えてくれ!!」

 と、小塚と二代目が握手すると、客から大歓声が上がった。

 

「いいぞー!!」

「良く言った!!」

「これで親父さんも安心だ!!」

「頑張れよー!!!」

 

 さっきまで怒っていた客たちも笑顔で二代目と小塚を応援した。

 

 

飛鳥「…ふぅ」

こころ「これで一件落着ね!」

飛鳥「と、言いたい所だけどまだ商売の途中だ。これが終わるまでが仕事だぜ」

こころ「任せて!!」

松永「おや、お前さん喋り方が変わったなぁ」

飛鳥「あっ」

 

 松永の言葉に飛鳥が反応すると、店内から笑い声が生まれた。

 

飛鳥「いやー。大変失礼しましたっ」

 

飛鳥も誤魔化すように笑った。

 

「そっちの方が男らしくていいわよ」

「お兄さん。結構凛々しいわねー」

飛鳥「あ、どうも…」

「なんでぃ。わしだって若い時は…」

「あんたは変わんないわよ」

 

 その頃のポピパ

 

香澄「な、なんか楽しそう…行っていい?」

有咲「いいけどお前だけ並びなおしな」

香澄「有咲も一緒に来て!

有咲「やだよ!!」

 

 後日、バンドリ学園。

 

はぐみ「で、おじさんはあだきやに戻ってきて、再び主任に戻って、鰻づくりも元に戻すって!」

飛鳥「そりゃあ良かったです」

こころ「そうね!」

 と、飛鳥ははぐみ、こころ、美咲と話をしていた。

 

美咲「それはそうと、一丈字くんがあそこまで仕事出来るなんて吃驚したなー」

飛鳥「まあ、昔そういうアルバイトしてたので…」

 飛鳥がそう苦笑いした。

 

はぐみ「そういや思ったけど、こころんにはため口だよね?」

飛鳥「そ、そうですか?」

こころ「そんな事ないわよ! ねえ!?」

飛鳥(へたくそ!!)

 こころがあからさまにごまかしているので、はぐみと美咲が怪しんでいた。

 

こころ「あは、あははははは!!」

飛鳥「……」

 

おしまい

 


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