それはある日のことだった。
「……!?」
飛鳥は困惑していた。というのも目の前には沙綾の妹である紗南がいたからだ。そして紗南の横で沙綾は申し訳なさそうにしていた。
沙綾「ゴメン…。妹がどうしてもあなたに会いたくなったみたいで…」
飛鳥「……」
色々あって沙綾の弟妹達に懐かれた飛鳥。しかし、飛鳥が中々やまぶきベーカリーに来ないせいか、紗南が寂しがり、遂に学校に訪れた。
そしてその日の放課後、飛鳥は仕方なしに山吹家にお邪魔する事になった。純は友達とサッカーをしに外に出かけていた為不在。
紗南「えへへへ…」
と、紗南は飛鳥にべったりくっついていて、飛鳥は苦笑いしていた。
沙綾「本当にごめんね。一丈字くん…」
飛鳥「いえいえ…」
沙綾「紗南。今日だけだからね? お兄ちゃんだって忙しいんだから」
紗南「はーい…」
沙綾の言葉に紗南がしょんぼりすると、飛鳥はまた苦笑いした。ここで優しい言葉をかけると、紗南の為にならないと考えた為、あえて何も言わず、明日から様子を見にやまぶきベーカリーの前を通る事にした。まあ、小さい子というのは気まぐれである為、すぐに自分から興味が変わるだろうが、それまでは付き合う事にした。
暫くして、夕方になった。
飛鳥「そろそろ帰らなきゃ…」
沙綾「あ、そうだね」
紗南「……」
その時だった。
「ふざけんじゃねぇ!!」
「?」
男の怒声が聞こえた。紗南は怯えて沙綾に抱き着いていた。
沙綾「レジの方からだわ!」
飛鳥「あ、山吹さんはここにいてください。私が様子を見てきます」
沙綾「でも…」
飛鳥「いいから」
そう言って飛鳥がその場を離れた。
飛鳥「……」
「てめぇのパンを買ってみたら虫が入ってやがった!! どう落とし前つけてくれんだ。ああ!!?」
と、チンピラ3人組が沙綾の母親にいちゃもんをつけていた。
沙綾母「そんだけ大きな虫なら気づいてます!」
「ざけんじゃねぇ! シラを切ろうってか!!」
と、リーダー格の男が叫ぶと、椅子を蹴り飛ばした。
「だったら客が来ねぇようにしてやるよ」
飛鳥「……」
飛鳥は超能力でチンピラたちを腹痛にさせて、動けないようにチンピラの足に対して金縛りを仕掛けた。
「い、いででででで…」
「は、腹が…!!」
「やっぱりパンに何か入れ込んだな!!」
そして飛鳥は警察に通報した。
飛鳥「早急に来てください。場所はやまぶきベーカリーです」
そう言って飛鳥が電話を切ると、
「く、くそが!!」
と、主犯格のチンピラが刃物を取り出すと、沙綾母は怯えた。
「こうなったら力づくでも痛い目に遭わせてや…」
飛鳥が念力を放つと、今度は激しい頭痛がした。
「ぐああああ――――――――っ!!!」
「ア、 アニキ!!」
飛鳥はもうやむを得ないと判断した為、姿を現した。
飛鳥「どうかされました?」
沙綾母「あ! い、一丈字くん!! 来ちゃダメ!!」
「な、なんだてめぇ…!!」
飛鳥「お客様ですか?」
沙綾母「違うのよ! こいつらいちゃもんをつけに来て…」
「ふざけるな!!」
「こいつが作ったパンに虫が入ってたから文句を言いに来たんだよ!!」
飛鳥「虫?」
「こいつだ!! こんなもん食わせてただで済むと思ってんのか!!」
チンピラたちの言葉に飛鳥が頭をかいたが、飛鳥はすぐに自作自演の芝居だと気づいていた。沙綾母の言っていた通り、それだけ大きい虫がパンに混入しているならすぐに気づくと。
飛鳥「まあ、何でもいいですけど、最近この辺を警察官がパトロールしてるんで、早く逃げた方が良いですよ」
沙綾母「!?」
「ヘッ、どうせハッタリだろ!」
「そうはいくかよ!」
チンピラたちが吠えたその時、警察官が二人やって来た。
「動くな!!」
「って、またお前らか!!」
警察官の登場により、チンピラたちはあえなく御用となった。ちなみに捕まった瞬間に超能力を解いた。
「離せー!!」
「くそう!! 何がどうなってるんだ!!」
「オレらを逮捕したら上の奴らが黙ってないからな!!」
警官「あー。上の奴等なら下着泥棒してたから捕まえたよ」
と、飛鳥の活躍によって事なきを得た。
飛鳥「だから言ったのに」
飛鳥が一息ついた、
その後…。
沙綾母「本当になんてお礼を言ったら良いか…!」
飛鳥「あ、気にしなくて結構ですよ」
沙綾母が何度も頭を下げるので、飛鳥は苦笑いしていた。
沙綾「いや、本当にありがとう! 警察も呼んでくれてたなんて…」
飛鳥「はははは…」
警察官からの口コミで結局バレた。
飛鳥(コンプライアンス大丈夫か!?)
飛鳥は心の中で突っ込んだ。
沙綾母「紗南の事もそうですけど、ここまでしてくれるなんて…」
飛鳥「いえいえ」
飛鳥が反応すると、紗南がじーっと飛鳥を見つめていた。
飛鳥「あ、もう大丈夫だよ。こわいおじさん達もういないから」
紗南「うん…」
飛鳥が一息ついた。
沙綾母「是非お礼を…」
飛鳥「いやいや、本当にお気遣い要りませんよ。お礼を受け取ってしまったら、うちの親が飛んでくるので」
沙綾母が気を利かしてお礼をしようとしたが、飛鳥が慌てて止めた。
沙綾母「あ、そうだ。沙綾、紗南をお風呂に入れてあげて」
沙綾「あ、はーい。紗南、行くよ」
紗南「やだ」
「え?」
皆が驚いた。
沙綾「どうして?」
紗南「おにいちゃんといっしょにいる」
この言葉に飛鳥は察した。
沙綾「紗南。お兄ちゃんはお母さんと大事な話をしてるの。邪魔しないで」
紗南「やだ」
と、紗南がいつになく駄々をこねていた。
沙綾「…紗南。いい加減にしないと、お姉ちゃん怒るよ?」
沙綾の言葉に紗南が怯えると、
飛鳥「山吹さん」
飛鳥が沙綾の名前を呼んだ。
沙綾「一丈字くん…」
飛鳥「いったん落ち着いて。次に紗南ちゃん」
紗南「!」
紗南が反応した。
飛鳥「紗南ちゃんはどうしたいのかな?」
すると紗南はとんでもない事を言いだした。
紗南「おにいちゃんとおねえちゃんといっしょにおふろはいりたい」
空気が止まった。
飛鳥「…えっと、沙綾お姉ちゃんと純お兄ちゃんの事かな?」
紗南「ううん。沙綾おねえちゃんと飛鳥おにいちゃん」
飛鳥「わあ」
飛鳥が困惑した。
沙綾「あのね紗南ちゃん。どうして飛鳥お兄ちゃんと私とお風呂に入りたいのかな?」
さっきまで不機嫌だった沙綾も流石にこれは苦笑いした。
紗南「ふたりともだいすきだから…」
沙綾母「ちなみに純お兄ちゃんは?」
紗南「ふつう」
飛鳥(純おにいちゃーん!!!!!)
先日、紗南が楽しみにとっておいたプリンを食べてしまい、ずっと拗ねている。
沙綾「あ、あのね紗南。お兄ちゃんにそんな無茶な事を言ったらダメよ」
紗南「どうして?」
沙綾「ど、どうしてって…」
ちょっといいわけに困り始めた沙綾。それに気づいた飛鳥は
飛鳥「入っていいかお姉さんに相談してみるね。ちょっと来てくれます?」
と、飛鳥は沙綾を連れ出した。
飛鳥「あ、お母さんは叱らないであげてください。少しだけお時間をください」
沙綾母「わ、分かったわ…」
飛鳥と沙綾が二人きりになった。
沙綾「ごめんこんな事になって…」
飛鳥「いえ、ちょっと私に考えがあります。話を合わせて貰っても良いですか」
沙綾「う、うん…」
飛鳥「あと、あくまで芝居なので気を悪くしないでくださいね」
沙綾「え?」
飛鳥「行きましょう」
飛鳥と沙綾が戻ってきた。
飛鳥「あー…紗南ちゃん」
紗南「?」
飛鳥「ちょっとお姉さんに相談してみたんだけど、お姉さん…おじさんと一緒に風呂に入るのが恥ずかしいんだって」
沙綾(いや、おじさんって)
沙綾は自分が恥ずかしがってる事よりも、飛鳥が自分の事をおじさんと呼んでいる事に驚いた。
紗南「どうして?」
飛鳥「紗南ちゃんは、同じくらいの男の子に裸を見られても恥ずかしくないの?」
飛鳥の言葉に紗南は頬を染めてモジモジした。
紗南「はずかしい…」
飛鳥「それと同じなんだよ。もしもお姉ちゃんが同じくらいの男の子と一緒に風呂に入る為に、裸になってって言われたらどうする?」
紗南「いや…」
紗南が首を横に振った。
飛鳥「お姉ちゃんの為に、我慢してあげて」
紗南「……」
紗南が考えたが、
紗南「…わかった」
飛鳥「ありがとう。お姉ちゃんの事を考えれて偉いね」
と、飛鳥が褒めると紗南が照れた。
飛鳥(さあ、今です山吹さん)
沙綾(お、おう…)
飛鳥が沙綾にアイコンタクトを送ると、飛鳥はちょこっとだけ超能力で紗南に暗示をかけ、結果的に未遂に終わった。
そして…
飛鳥「いやー。ありがとうございました。こんなにクーポン券頂いて…」
飛鳥が帰ろうとしていた。
沙綾母「いいのよ。またおいでね」
飛鳥「はい!」
紗南「……」
紗南がじーっと飛鳥を見つめていると、飛鳥がしゃがんで紗南に目線を合わせた。
飛鳥「また来るよ」
紗南「…うん!」
と、飛鳥と紗南が指切りをして、沙綾と沙綾母が苦笑いした。
こうして、事件は解決したかに思われたが…。
沙綾「はぁ…疲れた…」
と、沙綾が部屋に戻ろうとしたが、洗濯物が干しっぱなしだという事に気づいた。
沙綾(あ、いけない。洗濯物干し忘れてた!!)
沙綾が慌てて洗濯物を干そうとしたが、その中に自分の下着があった。
そしてある事に気づいた。
もしかしたら飛鳥に見られた可能性があるかもしれないと…。
沙綾「……」
沙綾はすっかり青ざめた。
翌日
沙綾「一丈字くん」
飛鳥「あ、昨日はどうも…」
沙綾「ちょっと来て」
飛鳥「あ、はい」
沙綾が飛鳥を教室から連れ出した。
沙綾「昨日…台所から一番近い和室に入ったりしてない?」
飛鳥「いいえ? ずっと紗南ちゃんの部屋にいましたけど…」
沙綾「そ、そう。良かったわ…。実は洗濯物干してて、見られたらどうしようって思ったの」
飛鳥「あ、そういう事ですか…」
飛鳥が苦笑いした。
だが…。
紗南「紗南もおっきくなって、おねえちゃんみたいなしたぎをつけたいな」
飛鳥「そ、そう…」
紗南「あのね。おねえちゃんはオレンジいろのブラジャーとパンツをはいてるの。あと…」
沙綾が目を離したすきに、紗南が沙綾の下着について喋ってしまったのだった…。
飛鳥(当分いかない方が良いよなコレ…)
と、沙綾にバレない事を心から祈る飛鳥なのであった。
おしまい