一丈字飛鳥です。私のクラスには緑山というスケ番がいます。
先生「また遅刻か!?」
緑山「は? 遅れたところで皆に迷惑かけてないだろ?」ギロ
緑山の女子生徒はそう言って睨みつけると、先生を萎縮させた。遅刻じゃなくてそうやって睨みつける所は困ってるよ。
そんなこんなで休憩時間に緑山が一人でたたずんでいたが、
「緑山」
クラスメイトの男子生徒が話しかけた。自分の事を陰キャと呼んでいるが、顔立ちはそれなりに良い。
緑山「…何」
陰キャ「よく遅刻するけど、何かあったの?」
緑山「お前に教える事はねぇよ」
そう言って緑山はそう言ったが、
陰キャ「そうは言っても気になるじゃないか。何かあってもいけないし…」
緑山「…あのさ」
陰キャの言葉に緑山が困惑した。
緑山「あんた、もしかして自分の事かっこいいと思ってる?」
(女子に言われるとキツイ奴―!!!!)
緑山の言葉に飛鳥だけでなく他の男子生徒もそう思っていたが、陰キャは首を傾げた。
陰キャ「そんな事はないさ。普通に心配してるだけだぞ?」
緑山「もし仮に何かあったとしても、少なくとも男子には話さないし、あんた…なんか人の気持ちとか分からなさそうなんだよね」
陰キャ「そんな事ない! なんでそんな事言うんだ!?」
陰キャは不細工ではないが、特別イケメンという訳ではない。
飛鳥(…手を差し伸べてやらなきゃいけない時と、見守らなきゃいけない時の区別がついてないんだな)
飛鳥としては緑山に同情していた。確かに何も知らないくせに偉そうな事を言われるのは腹が立つのだ。
飛鳥(かといって、何も言わないであんな事言われるのもなぁ…)
飛鳥が緑山をじっと見つめていると、緑山が飛鳥の方を見た。
緑山「それはそうと、あんたも何見てんだよ」
緑山の言葉に飛鳥は横を向いた。
緑山「お前だよお前! そこの陰キャメガネ!!」
緑山の言葉に飛鳥はまた別の方向を向いた。
緑山「ああんもぉおおお!!!」
飛鳥の態度に緑山が頭をかきむしった。
陰キャ「彼は一丈字くんって言うんだ」
緑山「そうかよ! おい! 一丈字!」
飛鳥「あ、はい。何でしょう」
緑山「お前、さっきからアタシの事見てたよな?」
飛鳥「見てませんけど」
緑山「いや、絶対見てた!」
飛鳥「お金が欲しいなら、ちゃんと真面目に働いて稼ぎなさい」
緑山「お前…アタシを舐めてんのか!?」
緑山が飛鳥に突っかかるが、陰キャが止めた。
緑山「!」
陰キャ「やめろ。ここは教室だ」
陰キャがかっこつけて緑山を見つめるが、緑山だけじゃなくて他の生徒も身震いした。
(く、くさすぎ~~~~!!!!)
(絶対かっこつけてるよ!)
(陰キャくん…こんな人だったんだ…)
(偉そう)
周りの人間の陰キャに対する評価が下がったことで、飛鳥は陰キャに対してものすごく申し訳ない気持ちになった。
陰キャ「それから一丈字くんも、どうして緑山を見てたんだ?」
飛鳥「そこは私がそんな事するはずないって言ってほしかったですね」
陰キャの言葉に飛鳥が冷徹にツッコミを入れた。
緑山「いや、絶対見てたろう!」
飛鳥「そんなに見てたというんですね」
緑山「あ、ああ!!」
飛鳥「分かりました。黙ってあげようかと思ってましたけど、そんな事仰るんでしたら、私が説明しますね。あなたがどうしてそんなに突っ張っているかを」
緑山「や、やめろ!!」
そう言って緑山が飛鳥を引っ張り出した。
「緑山さん!」
陰キャ「オレも行く!」
そう言って陰キャも行こうとしたが、女子たちが止めた。
陰キャ「な、なにすんだよ! 離せよ!」
「私が行くから陰キャくんはそこで待ってて!」
一人の女子生徒が飛鳥と緑山の後を追いかけていった。
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人気のない場所
緑山「あんた…どこまで知ってるの?」
飛鳥「あなたは私たちに話すことなど何もないのでしょう? それなら、私もあなたに話すことなど何もありませんよ」
緑山と飛鳥が向き合い、飛鳥がしらばっくれた。
緑山「てめえ…! とにかく喋ったら殺すからな!」
飛鳥「分かりました」
そう言って緑山が去っていくと、飛鳥は彼女の背中を見つめた。そして入れ替わるように女子生徒がやってきた。
「一丈字くん!」
飛鳥「Aさん」
Aがやってきて理由を聞こうとすると、
緑山「おい!!」
緑山が戻ってきて、Aはおびえたが飛鳥は動じなかった。
緑山「喋ったらどうなるか分かるよな…!?」
A「ヤ、緑山さん…」
すると飛鳥が笑みを浮かべた。
飛鳥「ごめんなさい。あれは嘘です」
緑山「は?」
A「え?」
飛鳥「何かあったかかどうかだけ調べる為に、ハッタリをかましたんですよ」
緑山「ぐ…!」
飛鳥の言葉に緑山が歯ぎしりした。
飛鳥「ですがもう何があったかまではもう聞きませんよ。私もプライベートの事に関してしつこく聞かれるの嫌な性分なんです」
緑山「……!」
飛鳥の言葉に緑山が目を大きく開いた。
飛鳥「ですが、本当に困ったときは誰かに必ず相談してください。それだけです。行きましょうAさん。これ以上は聞かないで上げてください」
A「う、うん…」
そう言って飛鳥はAを連れてその場を去ると、緑山は一人取り残された。
そして教室に戻り、飛鳥ははったりをかましていたことを告白した。
飛鳥「まあ、今は見守ってあげた方が良いかと思います」
「そ、そう…」
陰キャ「いや、やっぱり心配だ!」
飛鳥「心配なのは分かりますが見守る事も…」
陰キャ「それでもし彼女に何かあったらどうするんだ!」
そう言って陰キャが力説すると、女子たちは「本当に分かってねーなコイツ」という顔をした。それを見て飛鳥は静かに目を閉じて天を仰いだ。「本当に話聞かねーなコイツ」と。
正義感があって人を心配するのは素晴らしい事なのだが、いまいち空気が読めてないし、デリカシーもないのだ。
つづく