翌日、1時間目の授業が行われようとしたが、緑山と陰キャが来ていなかった。
飛鳥(まさか…)
緑山はまだいいとして、此間まで普通に登校してた陰キャまでいないとなり、飛鳥はとてつもなく嫌な予感がした。
数十分後、陰キャと緑山が一緒に登校してきて、飛鳥はやっぱりと思ったが、これで上手くいけば一応オーライで済まそうとした。
だが…。
「緑山に続いて陰キャも遅刻か!」
陰キャ「すいません」
そう言って陰キャは謝ると、緑山が困惑した。
「どうして遅刻したんだ?」
緑山「別に文句ないでしょ?」
陰キャ「緑山さんは仕事で忙しいお母さんに代わって妹さんを幼稚園に連れて行ってたんですよ」
飛鳥(!!)
陰キャの言葉に飛鳥は青ざめ、緑山も震えていた。
「妹さんを…?」
陰キャ「僕はそれに付き合って遅れました!」
そう言って陰キャは堂々と報告し、クラスメイト達は緑山への態度を改めた。今まで遅刻ばっかりしていたが、本当は妹さんのためだったんだと。陰キャは「これでもう君の誤解は解けた」と言わんばかりの満足そうな表情で、緑山を見つめた。
先生「緑山…」
緑山「……」
先生は緑山に言葉を発した。
先生「それならそうだって連絡しなさい!!!」
緑山をほめるという事はせず、ちゃんとやるべき事はやるように注意した。
先生「何も連絡がないから、先生たちもお前が何かあったと思うじゃないか!」
緑山「……っ!」
すると生徒たちも
「あ、あの。緑山さん…」
緑山「!」
緑山が生徒を見つめた。
「本当にごめん! 緑山さんの事を誤解してた!」
「ごめんなさい!」
そう言って皆が謝った。
陰キャ「そういう事だ緑山。もうこれでお前を誤解する奴は…」
「…て」
「え?」
すると緑山が叫んだ。
緑山「いい加減にして!!!!」
緑山が怒鳴ると、他のクラスも驚いて顔を出した。
緑山「誤解を解いてくれって一回でも頼んだ!!? こんな事されたら皆アタシに気を遣って、対等じゃなくなるでしょうが!! だから人の気持ちが分からないって言ったんだよ!!」
緑山が涙ながらにそう叫ぶと、陰キャも自分のやった事の重さをようやく理解した。結局自分のエゴでしかなかったのだと。飛鳥は静かに目を閉じる。
緑山「アタシ帰る」
「!」
緑山「もう学校に行かないから」
そう言って緑山がその場を去ろうとすると、陰キャが緑山の手をつかもうとしたが、飛鳥が超能力で陰キャの動きを止めた。
陰キャ「っ!」
そして飛鳥はテレパシーで待機していた弦巻家の黒服たちに緑山の監視を依頼した。
陰キャ「ど、どうして体が…」
先生「緑山さんは先生に任せて、皆は教室で待ってなさい!」
陰キャ「先生! 僕も行きます!」
先生「待ってなさい!!」
そう言って先生が追いかけていくと、生徒だけになり、陰キャは悔しそうに足を動かそうとしたが動かず、クラスメイト達は呆然と立ち尽くしていた。
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そしてその授業が終わり、陰キャは早速緑山を探し回ったが、飛鳥は黒服たちから緑山の居場所を聞いていた。母親にバレないように家と母の職場、妹の幼稚園から離れたにいると。
飛鳥『分かりました。そのまま監視を続けてください』
飛鳥はテレパシーで黒服たちに指示を出したが、これからどうしようか迷っていた。こういう時は必ず不良達が暴れるのが定番だったからだ。まあ、不良達が暴れても黒服たちがしばいてくれるので問題ないが、一番問題なのは陰キャだった。
飛鳥(ああ…。なんか孫さんっぽいけど、孫さんは一応空気読めるからな…)
飛鳥が兄貴分である古堂孫を思い出した。彼もハチャメチャではあるが、関わったらいけない時は関わったらいけないという気遣いが出来るのだ。
ちなみに次の授業が開始するとき、陰キャは先生たちに教室に連れ戻されていた。ここまでくれば、一人の為にここまで一生懸命になれる良い奴なのだが、飛鳥と一緒にいたAは彼に対して不信感を抱いていた。
そして飛鳥はクラスの雰囲気が悪くなる前に何とか手を打たなければならないと考えていた。
飛鳥(…とにかくAさんは落ち着かせよう)
暫くして、黒服たちから緑山が他校の生徒に絡まれていた事が報告され、結果的に黒服たちが撃退した。緑山は逃げたが、母親に連絡して片を付けるとの事だった。
飛鳥(まあ、弦巻財団がやったって言ったらね…)
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そして緑山が戻ってくることなく、放課後を迎えた。飛鳥は何とも言えない気持ちで下校していると、緑山とその母親と遭遇した。
飛鳥「!」
緑山「お、お前…」
飛鳥はこの役を陰キャに渡そうかと思ったが、
緑山母「もしかしてこの子があなたの言ってたストーカー!?」
緑山「ちげーよ!」
飛鳥(ストーカーって…)
飛鳥は陰キャに少し同情した。
緑山「と、とにかく一緒に来てくれ!」
飛鳥「あ、はい。分かりました…」
緑山の言葉に飛鳥は仕方なく付き合う事にしたが、ややこしい事にならないように超能力で他のクラスメイトと出会わないように裏工作を仕掛けた。
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喫茶店
緑山母「本当にうちの娘がありがとうございました…」
飛鳥「いえ、私は別に…」
緑山母の言葉に飛鳥は本当に困惑した。
緑山「…本当は知ってたんだろ。妹の送り迎えの事」
飛鳥「いや、本当に知らないんですよ。ハッタリで…」
緑山「謙遜するな。だとしてもアタシに気を遣って、余計なことを言わなかっただろ」
飛鳥(まあ、本当に知らないからな…)
と、飛鳥は困惑するしかなかった。もし仮に知っていたら多分陰キャがしつこく聞きまわっていただろう。正義の味方面して。
飛鳥「…それはそうと、学校には来られますか?」
緑山母「行かせます」
飛鳥「そ、そうですか…」
緑山母の力強い発言に飛鳥は困惑するしかなかった。
緑山母「私の仕事が忙しかったばかりに、子供の事をちゃんと見ていませんでした。その結果、この子にはつらい思いを…」
緑山「……」
後に緑山のバックには弦巻財団がいるという事が広まり、喧嘩を売らなくなるのは別の話だ。
緑山「…それでさ、母さんの職場が変わる事になったんだ」
飛鳥「え?」
緑山「そこは今よりも給料良くて、無理して働く必要もなくなる。だから、送り迎えもアタシがしなくて良くなったんだ」
飛鳥「そうですか」
緑山母「一丈字さんもそうですけど、クラスの皆さんも…」
そう言って緑山母はハンカチで涙をぬぐうと、緑山も泣きそうになった。そして飛鳥はこれ以上は何も言う事はしなかった。
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後日、緑山は教室にやってきて、クラスメイトに謝罪した。
緑山「本当にごめんなさい」
「緑山さん…」
するとクラスメイト達が笑みを浮かべた。
「ううん。いいんだ」
「学校に来てくれてありがとう」
「本当にごめんね」
そう言って皆が笑いあうと、緑山もうれしそうな顔をした。
飛鳥(やっと終わった…)
飛鳥はひと段落したと安心していた。
陰キャ「緑山」
陰キャもその場にいたが、緑山は凍り付いていた。陰キャも安心してほほ笑んでいたが、彼女は完全にトラウマになっていた。
緑山「あ、えっと…あんたも迷惑かけたね…ごめん…」
陰キャ「いいんだ」
陰キャがふっと笑った。
陰キャ「オレも皆と同じで、緑山が学校に来てくれて嬉しい」
陰キャの言葉に緑山は震えあがっていた。
飛鳥(心配してたのは分かるけど、悪気もなく通学路で待ち伏せされたり、家の事とか堂々とバラされたりしたら色々怖いわな…)
飛鳥は緑山に対して心の底から同情した。
緑山「そ、そう…」
陰キャ「どうして目をそらすんだ?」
こういう時、ヒロインが主人公にべたぼれして慌てふためくが、真逆だった。すると男子生徒の一人が
「もしかして、陰キャに惚れたんじゃね?」
と、ツッコミを入れた。ここで緑山が顔を真っ赤にして否定すればラブコメの出来上がりだが、真っ青だったし涙目だった。
緑山「勘弁して!!!!」
理由はもう言うまでもない。
緑山「お母さんも困ってたし、妹の幼稚園もこいつの事怖がってるのよ! 私の妹をだしにして、他の園児の子たちを狙ってるんじゃないかって!!」
陰キャ「えっ!?」
すると皆が陰キャを見つめた。
陰キャ「い、いやオレは…」
A「あのさ」
Aが呆れたように陰キャに言い放った。
A「確かに緑山さんの事を心配してたのは分かるけど、やりすぎだよ」
陰キャ「や、やりすぎって…」
A「おうちの事とか言えるわけないし、なんかもうここまでくると人助けしてる自分に酔いしれてるように見えない」
陰キャ「オ、オレは酔いしれてなんか!」
A「そんなつもりはなくても、私や緑山さんはそう見えるの! 大体…」
そう言ってAは烈火のごとく陰キャに説教した。陰キャも納得してなさそうだったが、Aが烈火のごとく怒っているため、話を聞くことにした。
飛鳥(市ケ谷さん…奥沢さん…私はもう冗談抜きでダメかもしれない…)
飛鳥がそう考えていると、有咲と美咲がやってきて、飛鳥に檄を入れた。
有咲「傷は浅いぞ一丈字!!」
美咲「分かるわよ!! 人の話を聞かない奴の相手するのめっちゃつらいよね!!」
と、有咲と美咲が乱入したことで3組の教室はカオスになりましたとさ。
飛鳥「もしくは2年1組…」
千聖「一丈字くん!! 燐子ちゃんと花音が泣きながら怯えてるからやめて頂戴!!」
飛鳥「じゃあ白鷺先輩だけ」
千聖「分かったわ。じゃあ私と彩ちゃん」
彩「千聖ちゃああああああああああああああああん!!!」
おしまい