時は令和。日本ではガールズバンド戦国時代を迎えていた。数多のガールズバンドがしのぎを削り、勝った者は栄光を手に入れ、負けたものは挫折を味わい、去っていく。
まさに弱肉強食の世代。
「勝ったらファンの男どもの餌ね」
「いいわよ。同じ条件でやってあげるわ!!」
「勝ったわよ! さあ、男たち! そいつらを好きになさい!!」
「い、いやぁ~~~~~~~!!!! せめてにんにく臭いの何とかしてぇ~~~!!!」
…なんて事は流石に無いが。
ここ、東京のどこかにあるバンドリ学園でも同じだった。この学園に至ってはガールズバンドが沢山いたからだった!
仲良し5人組が集まったフレッシュ系ガールズバンド「Poppin‘Party」
幼馴染5人が集まった王道ガールズバンド「Afterglow」
芸能人5人で構成されたアイドルバンド「Pastel*Palettes」
プロも一目置く本格派ガールズバンド「Roselia」
弦巻こころ率いる異色系ガールズバンド「ハロー、ハッピーワールド!」
そして、最上級生で構成された4人組のガールズバンド「Glitter*Green」
バンドの腕もさながら、その顔立ちに学園の男子生徒たちはメロメロ状態だった。
「××××してぇええええええええええ!!」
「遺伝子残させて!!」
「オレはあの子と結婚して子供を産むんだ…」
「子供は何人くらいほしいかな…?」
メロメロになりすぎてキモかった。
まあ、今回もそんな物語であるが、今回の設定はもしも『スクールガールズバンドの頂点が飛鳥と同じ中学の人間だったら』というお話でお送りいたします。
**********************
ある日のバンドリ学園。2年2組の教室でRoseliaのリーダーである湊友希那は珍しく頭を悩ませていた。
リサ「どうしたの友希那、珍しく本を見て頭を悩ませちゃってさ」
友希那「紗夜…」
幼馴染であるリサが話しかけると、日菜、麻弥、薫もやってきて、男子生徒たちも集まってきた。
日菜「いや、集まりすぎだよ!」
「いいじゃないかこれくらい!!」
「そうだよ!」
「仲間外れなんて良くないと思うなぁ」
正直ガールズバンドがいるクラスはいつもこんな感じなので、飛鳥に絡む必要はあまりないような気もするが、友希那達バンドガール以外の女子たちはゴミを見る目で男子生徒たちを見ていた。
薫「それで、どうしたんだい?」
友希那「スクールガールズバンドの人気投票がこの雑誌で行われてたのよ」
リサ「あー…。そういやこの雑誌の人気投票が、今のガールズバンドの順位を現してるからね。それで、うちは何位?」
友希那「4位よ…」
そこそこの順位だった。
「へえ、4位か…」
「良い感じじゃん」
とまあ、友希那をほめて点数を稼ごうとする男子生徒達だったが、勿論友希那は1位を目指しているので、そんな言葉をかけられてもうれしい筈もなかった。
友希那「Roseliaは頂点…1位を目指してるのよ。良くないわ」
「うっ…」
日菜「もう。友希那ちゃんに気に入られようとしてるのが見え見えだよ」
とまあ、女子に言われるとわりときつい言葉を躊躇もなくかけられていた。
友希那「でもそれはまだいいわ。上には上がいる事くらい、私にも分かるわ。けど…」
麻弥「けど?」
友希那「1位のバンドがまた同じなのよ」
麻弥「1位ってまさか…」
友希那「そう。この「maple」というバンドよ」
友希那がそう言って麻弥に雑誌を見せると、そこには5人組のガールズバンド「maple」が映し出されていたが、5人ともブスである。
麻弥「そういやプロの事務所からも続々と声をかけられてるって噂っすよ!」
薫「私も聞いたことある。彼女たちの音楽はとてもまっすぐで、こちらも勇気づけられるような儚い音楽だよ…」
麻弥や薫も絶賛していた。
友希那「儚いかは分からないけど、私もそう思うわ。他のバンドとは明らかに違うの。彼女たちの葛藤する気持ちと、その気持ちを打ち消そうとする勇敢さ。聞いていて元気が湧いてくるの…」
友希那がここまで絶賛するとリサや男子生徒たちが驚いた。
「け、けど。友希那ちゃん達だって負けてないよ!」
「そうだよ!」
友希那「ありがとう。だけど、そんな気休めはいらないわ」
「!」
Mapleの名前を出すと友希那は更に意気込んでいた。
友希那「頂点を目指すなら、mapleも越えなければならないのよ」
友希那がそう言うと、クラスメイト達が友希那達を見た。
リサ「…そういえばこのmapleって広島出身だよね」
友希那「それがどうかしたの?」
リサ「飛鳥くんも知ってるかな。広島にいたって言ってたし」
友希那「知ってると思うわ。これだけ有名なガールズバンドだもの」
リサ「だよねー」
と、友希那達の会話はそこで終わった。
***************
その頃、飛鳥は自分の教室でいつも通り過ごしていた。そう、本当に何事もなく過ごしていた。
そして昼休憩、飛鳥がカフェテリアの近くに通ると、mapleがテレビに映っていて、友希那達2年2組も食事をしながらテレビを見ていた。
「スクールガールズバンド1位、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
アナウンサーの言葉にmapleメンバーは答えた。
「また更新しましたね!」
ボーカル「いやー。本当に夢にも思いませんでしたよ」
そう言ってボーカルがそう言った。女版のび太と言われているほどひょろひょろの眼鏡だった。他のメンバーもデブだったり、ガリガリだったり、正直ビジュアル的にはお世辞にも美人とは言えないが、その外見とは裏腹にプロ顔負けのパフォーマンスを見せ、ギャップを見せた事で受け要られたのだ。
「ズバリ! 頂点にいられる秘訣って何ですか!?」
ボーカル「自分たちの音楽をする事はもちろん大事ですけど、自分やメンバーを信じる事、そして感謝の気持ちを忘れない事ですね」
ボーカルの言葉に飛鳥もうれしそうにした。
「そういえばmapleがここまで来れた事を話すのに、どうしても欠かせない人たちがいると聞いたのですが…」
ボーカル「あー…」
アナウンサーの質問の内容に飛鳥は嫌な予感がした。
ボーカル「そうですね。私達を奮い立たせてくれた子たちがいるんです。その子たちのお陰で私たちは今もバンドが出来ていますね」
ボーカルが苦笑いすると、飛鳥は変な事をしゃべらないか不安だった。というのも、その奮い立たせた人物というのが彼自身だったからである。
それは中学の時に同級生たちと学校を歩いていて、演奏の練習をして馬鹿にされているmapleのメンバーを見かけ、止めたのだ。
話を聞いて『ブスにバンドは無理だ』だの『見てるだけで吐き気がする』だの言われ続けていたのだ。そこで飛鳥は同級生たちと考えて、実際に音楽に詳しい人たちに彼女たちの演奏を聴いてもらう事を決意した。
その結果、予想以上に食いつきがよく、彼女たちはそこから1年間指導を受けたのちに、高等部1年生から本格的にトップガールズバンドとして君臨したのだった。
だが、今は自分も能力者としての仕事があり、自分の事を語られると本当に困るのだ。飛鳥は彼女たちが自分の事をしゃべらないことを祈っていた…。
「その子たちについて詳しく教えてくれませんか?」
ボーカル「私たちが中学3年生だった時の1個下の後輩たちです。私たちが最初に出会ったときは3人いて、後から1人手伝ってくれたんですよ」
ボーカルの言葉に飛鳥は滝のような汗を流していた。そしてボーカルは自分たちが馬鹿にされてきたことや、飛鳥達が人助けといって自分たちの為にいろんな人に声をかけてくれたことなどを話した。
それを聞いた友希那達は驚いて目を大きく開いていて、mapleのボーカルの話を真剣に聞いていた。
ボーカル「という訳なんです。ですので、皆さんも自信を持つことも大事ですけど、バンド演奏をしてる子たちが周りにいたら協力してあげてください!」
「よろしくお願いします!」
そう言ってmapleがお願いして、インタビューが終わり、飛鳥も自分の事をばらされずに安心し、その場を後にした。
友希那「…そんなに素敵な仲間に恵まれていたのね」
リサ「そうだねぇ…」
Mapleとその後輩たちの絆の強さに感動した友希那達は、自分たちも負けてられないと奮起するのだった。
だが…。
麻弥「それにしてもその後輩達って誰なんでしょうねぇ」
日菜「すごく気になるねー…」
麻弥たちがそんな会話をしていると、広島出身、後輩という単語からある人物の姿が思い浮かんだ。
(まさか…ね)
おしまい