第101話
とある夜。
「ごめ~ん…。また忘れちゃって…」
「本当にいい加減にして」
ひまりがまた学校に大事な参考書を忘れてしまい、Afterglowの5人が夜の校舎に取りに行ったものの、蘭が半ギレだった。これが夜の学校でなければ、まあしょうがないなという感じで済ませたが、彼女はお化けが苦手だったので、こればっかりはひまりに当たった。
つぐみ「ま、まあまあ…」
巴「かといって、ひまりを見捨てるわけにはいかんしなぁ…。でも、出来るだけ気を付けてくれ…」
つぐみがなだめ、巴も言葉をつづけたが、巴も結構お化けが苦手だったりする。
モカ「今度は本当に幽霊出たりするのかなぁ~」
蘭「モカ」
モカ「ごめ~ん」
蘭が本当に切れていた為、モカはこれ以上何も言わない事にした。
十数分後、ひまりは参考書を回収した。
ひまり「あった!!」
蘭「よし! すぐに帰ろう! 今すぐ帰ろう!」
モカ「落ち着こうよ~」
その時だった…。
「…レ」
という声がした。
蘭「な、何!?」
巴「モカ! やっていい冗談と悪い冗談があるぞ!!」
モカ「え~。どう考えてもあたしの声じゃないでしょ~」
5人がキョロキョロ見渡したが、つぐみとひまりが青ざめていた。
つぐみ「これって…」
ひまり「やっぱり…」
「タチサレ…タチサレ…」
という5人の誰でもない低い声がして、モカ以外の4人が青ざめ、5人が同じ方向を向いた。するとそこには…
白目で薄笑いをし、浮いている黒い物体が存在した。
「タチサレ…タチサレ…」
幽霊の姿を見た瞬間、モカ以外の4人が悲鳴を上げて教室を飛び出したが、巴がモカを抱えていた。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
という、Afterglowの悲鳴が学園内に響き渡った。
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翌日…
モカ「という訳で、蘭もひーちゃんも、トモちんもつぐも今日はお休みでーす」
「そ、そう…」
モカは飛鳥、こころを屋外のカフェテリアに呼び出して相談をしていた。モカだけ平然としていた為、飛鳥は困惑していた。
こころ「幽霊なんて面白そうね!」
飛鳥「私から見たら、あなたが一番面白いけどね…」
モカ「いやいや、飛鳥くんも面白いよ~」
こころ「モカも面白いわよ!!」
飛鳥「いや、何ですかこの会話」
と、飛鳥が突っ込んだ。
飛鳥「それで…私たちにお話があるというのは、やっぱりそういう事なんですよね」
モカ「そう。あの幽霊を調べてほしいんだ~」
飛鳥「分かりました…って、まあ普通にお祓いをすれば良さそうだけどね」
飛鳥が苦笑いした。
飛鳥「そういや美竹さん達が目撃する前にも、幽霊って出てきたのかな?」
モカ「それが聞いてみたらあったみたいだよ~。モカちゃん達は何も知らないまま幽霊がいるところに来ちゃったみた~い」
飛鳥「……」
飛鳥はへの字にした。
飛鳥「分かりました。調査をしてみます」
こころ「そうだわ! 実際に学校に行ってみましょう!」
飛鳥「そうですね。ただ…」
「?」
こころとモカは飛鳥を見た。
飛鳥「事前に調べておいた方が良さそうですね。こんな騒動になっている上に、時間帯を考えたら先生たちが何も知らない訳がございませんし」
その時だった。一匹の子猫が迷い込んできた。
「あおんあおん」
こころ「まあ、子猫ちゃんがいるわ!」
モカ「あー。そういやあの子猫。最近ずっとこの学校をウロウロしてるんだよねー。人間が近づくと逃げるけど」
飛鳥「そうですか…」
と、飛鳥が猫を見た瞬間、とてつもない寒気を感じた。
飛鳥「!!!」
モカ「…飛鳥くん?」
飛鳥の脳裏には子猫と母猫が男子生徒達に襲われて、そのうち母猫がとらえられてしまった。子猫はそのまま逃げたのだが…。
飛鳥「……」
飛鳥が冷や汗をかいた。
モカ「どうしたのー? もしかして、何かあったりするー?」
飛鳥「…ええ。本当に調べた方が良さそうですね。夜間滞在許可証を貰ってきます」
こころ「あたしも行くわ!」
飛鳥「それはやめといた方が良い」
こころ「何で!? あたしは幽霊怖くないわよ!?」
飛鳥「確かに耐性ありそうだけど、どうやら今回は本当に幽霊がいそうだな…」
モカ「え、どういう事?」
飛鳥「ここで話すのはアレなので、人のいない場所でもう一度話しましょう」
モカ「じゃあ、許可証3人分貰ってきてね~」
飛鳥「え?」
モカ「え? って、そんなのあたしも行くからに決まってるでしょ~」
飛鳥「……」
そして飛鳥は3人分の許可証を貰いに職員室に行ったわけだが…。
「ああ。実はあの幽霊って理科の松田先生が趣味でやってる発明品から作り出したものなんだよ。最近どれだけ言っても帰らない生徒が多いから」
飛鳥「そのことなんですが…」
黒服A「本物の幽霊がいるという情報をつかみました」
「いやいや、まさか…」
こころ「本当よ!?」
黒服B「こころお嬢様の仰ってることが嘘だと?」
黒服C「弦巻財閥にたてつくおつもりですか?」
と、黒服達が強引に許可証を作成させた。
飛鳥(こういう時は本当に頼りになるなぁ…)
職員室を出ると、
「一丈字くん。弦巻さんも」
飛鳥「あ、氷川先輩」
こころ「紗夜!」
と、紗夜と遭遇した。
紗夜「どうされたんですか? 黒服の方を引きつれて」
飛鳥「いやあ、ちょっと先日のトラブルの件で説明をしてたんですよ…」
と、飛鳥が誤魔化した。
紗夜「そうなの? 弦巻さん」
こころ「そ、そうよ! 先日トラブルがあったのよ!」
飛鳥(へたくそぉ…)
こころが必死に誤魔化そうとしていたが、まだ目が泳いでいた為、飛鳥が困惑した。
紗夜「…そ、そうですか」
飛鳥(絶対バレてる~~~~~!!!)
飛鳥は黒服達とアイコンタクトを送った。
飛鳥「そ、そういう訳ですので失礼しますね!!」
と、飛鳥が強引に連れ去っていった。
こころ「あーん!! なんで嘘をつくのってこんなに難しいの~!!?」
飛鳥「君がものすごい正直者だからだよ…。いい事だけど」
中庭で涙目になるこころに対し、飛鳥はげんなりしていた。ちなみにこころは黒服と一緒に練習をしていたが、あまり発揮できなかったようだ。
(こころお嬢様…)
(おいたわしや…)
そんなこんなで作戦決行の時が来た。
飛鳥「…本当に来たんだね」
モカ「そりゃそうですよ~」
と、校舎前に飛鳥、こころ、モカの3人が現れた。
飛鳥「松田先生にも確認して、夜間滞在許可証が出されてる日はあの幽霊は出さないみたいなので、残りは本物の幽霊を調査する必要がございます」
モカ「あれ、昼間でも出せたからびっくりしたよ~」
放課後に飛鳥たちは松田のところを訪ねて、幽霊を見せてもらったのだ。ちなみに松田はとても気だるげで、無精ひげの生えた30代前半のおっさんである。結婚には全く興味なしだが、実は良い所のボンボンで、兄が家業を継いでいる。
飛鳥「さて、行きましょうか」
こころ「ええ!」
モカ「うん」
と、3人が行こうとすると、
「待ちなさい!」
「!!」
3人が横を見ると、そこには紗夜の姿があった。
飛鳥「氷川先輩!」
モカ「こんなところで何をしてるんですか~?」
紗夜「それはこちらの台詞です。弦巻さんがなにか怪しいと思ったら…」
飛鳥(黒服の人たちは止めてくれなかったのか…。まあ、止めようとしたらこころが嫌われるもんな)
と、飛鳥が考えた。
飛鳥「ちょっと忘れ物を取りに来ただけですよ」
紗夜「…忘れ物を取りに行くのに、許可証が必要ですか?」
飛鳥「私個人の忘れ物ではございませんよ」
モカ「まあ、何か本物の幽霊がいるっぽいので、調べてくれって頼まれたらしいんですよ~。飛鳥くんが」
紗夜「はぁ?」
飛鳥「で、他の方に話すと無茶されるだろうし、信じないので内密にするおつもりだったのですが…」
こころ「あたしとモカが付き添うわ! だから心配いらないわよ!?」
こころの言葉に紗夜は少し理解に苦しんだが…。
紗夜「こんな事もあろうかと、私も申請書を出しました」
飛鳥・こころ・モカ「!!?」
紗夜「もしあなた方の言ってる事が本当なら、風紀委員として見過ごすわけにはいきません!」
するとこころの背後から黒服Aが現れて、こころの目を隠し、黒服BとCで紗夜を気絶させた。そして黒服Aが手を離すと紗夜は気を失っていた。
こころ「紗夜!!?」
黒服A「氷川様は幽霊に取りつかれてしまったようです」
飛鳥「!!?」
黒服B「一丈字様。氷川様の事は我々に任せて先に進んでください」
黒服C「必ずや幽霊の調査をお願いします」
飛鳥「え、あ、はい。行こう…」
こころ「紗夜にこんなひどい事をするなんて許せないわ!!」
モカ(ひどい事したの黒服さんだけどね~)
と、3人が学校の中に入った。
飛鳥「……」
飛鳥が目を閉じて、感知した。
モカ「本当に超能力使えるんだね~」
飛鳥「…うん。で、ちょっと集中したいから」
こころ「分かったわ!」
すると飛鳥が幽霊の居場所を突き止めた。
飛鳥「いた! ここから一番向こう側の森林エリアにいる!」
モカ「ええー。あそこって確か人が来ないんじゃ…」
飛鳥「…そうだよ。だからここからはオレ一人で行く」
飛鳥が前から歩き出すと、モカとこころも歩き出した。
モカ「そんな言われ方したら行くしかないじゃな~い」
こころ「そうよ! ここまで来たら皆で行きましょう!」
バンドリ学園・奥地森林エリア
飛鳥「さあ、来たぜ…」
こころ「ええ…」
モカ「覚悟は出来てるよ…。蘭達の仇!!」
飛鳥「いや、違うから」
と、3人が森の中に進んでいくと、そこには子猫がいた。
飛鳥「あの猫…」
こころ「子猫ちゃんがいるわ!」
モカ「でもまだ何かを探してるみたい…」
その時、飛鳥は意を決して子猫に近づいた。
こころ「飛鳥!!」
飛鳥「こころ。モカ。そこから絶対に動くなよ」
モカ「!?」
そして子猫を捕まえようとすると、ピリッとした悪寒が飛鳥に襲い掛かった。
飛鳥「…やっぱりそうか」
飛鳥が正面を向くと、そこには黒い影のようなものがあった。
モカ「…今、猫のような幽霊が見えた」
こころ「え? 分からないわ! あ、そうだ! 黒服の人たちにスコープを作らせたんだわ! これで見てみましょう!」
と、こころがスコープを幽霊の方に向けると、幽霊がくっきりと見えた。そこには猫の幽霊が見えた。
飛鳥『…聞いてくれ。オレ達はこの子にひどい事をしに来たんじゃない』
「……」
飛鳥が猫の幽霊に語りかけた。
飛鳥『見ててくれ』
すると飛鳥が子猫を捕まえると、子猫は震えていて、優しくなでた。すると子猫はとても気持ちよさそうにして、涙を流していた。
こころ・モカ「……!」
飛鳥『可哀そうに…。お前がいなくなってから、この子はずっとお前の温もりを求めていたんだろう。本当はもっと一緒にいたかっただろうな。この子もお前も』
「……」
母猫は俯いた。
飛鳥『だけどお前はもう行くべき場所へ行かなきゃいけない。それがこの子の為でもあるんだ』
その時だった。母猫の魂が白く輝いた。
「!?」
そして子猫が飛鳥から離れて母猫に近づいた。そして母猫と子猫が体をくっつけようとした瞬間、母猫の魂は消えた。
こころ「えっ…!?」
飛鳥「きっと、成仏したんだよ思うよ。この子の為に」
モカ「……!」
飛鳥「弦巻さん」
こころ「…な、なに?」
飛鳥の言葉にこころが反応したが、こころはモカと共に涙を流していた。
飛鳥「…この子の里親を探してくれないか。大切にしてくれる里親を」
******************
翌日
こころ「あの子は黒服さんが引き取って、その人の家にお母さんのお墓も作らせてもらったわ!」
飛鳥「ありがとう」
と、学園の中庭でまた飛鳥、こころ、モカが話をしていた。
飛鳥「…で、さっきから後ろで悪寒を感じるのは」
モカ「正直幽霊よりも怖い〜」
こころも困り顔だった。
「あなた達」
という声がして、3人が振り返るとそこには紗夜が鬼の形相で睨みつけていた。
飛鳥「氷川先輩」
紗夜「何ですか」
飛鳥「ごめんなさい」
紗夜「許しません!」
こころ・モカ「ごめんなさーい!!!」
3人は紗夜に追いかけ回されていたという。
飛鳥「…あ、第3シリーズ、始まります」
おしまい