ある日の事だった。
「あーん!! もう最悪~!!!!」
と、Pastel*Palletesのボーカル担当の丸山彩が叫んだ。彩だけではなく、メンバー全員がいる。彼女達は事務所でバンドの練習をしていたのだが、突然雨に降られてしまったのだ。
麻弥「うう…とても冷たいっす…」
イヴ「風邪引いちゃいますね…」
麻弥とイヴが震えていると、
日菜「へっくち!!」
日菜がくしゃみした。
千聖「大丈夫日菜ちゃん」
日菜「へーきへーき」
日菜が返事をすると、千聖が嫌そうな顔をした。
千聖「それにしてもだいぶ濡れてしまったわ…」
日菜「そうだねー。服もスケスケ。ブラも丸見えだよー」
千聖「そういう事言わなくていいから/////」
どこまでもマイペースな日菜に千聖が困惑した。その時だった。
「おい、見ろよ。あれ、パスパレじゃね?」
「ホントだ」
「何か濡れてるぞ!」
と、同じ学校の男子生徒5人がやってきた。
彩「!!」
千聖「あいつらは…」
千聖の予想通り、男子生徒達が近づいた。
「そんな所でどうしたの?」
「濡れてるじゃん。風邪ひくよ?」
と、優しく声をかけてくるが、顔が完全に下心丸出しだった。能天気な日菜や、純粋無垢なイヴでも分かった。
これは完全にヤバい奴だと。
イヴ「うう…」
男子生徒の気味悪さにイヴがしり込みすると、
「そんなに怖がらなくてもいいじゃん」
「オレ達はただ心配してるんだよ?」
と、必要以上にイヴと距離を縮めようとする男子生徒達。それを千聖が遮る。
千聖「ありがとう。けど、心配は無用よ?」
(うほっ、結構丸見え…)
(うひょー。こりゃついてる)
男子生徒達は千聖の濡れた姿を見て、興奮していた。
「とにかくオレ達と行こうよ」
「駅までさ」
千聖「お生憎様。迎えに来させてるので」
「どうせ一丈字だろ?」
「大丈夫だって。オレ達が送るから」
「無理やりこさせたら悪いよ」
と、男子生徒達も引かないどころか、千聖の手を無理やりつかんだ。
千聖「!!」
麻弥「千聖さん!!」
「ゴッホン!!」
「!!?」
という咳払いが聞こえたので、皆が同じ方向を見ると、
「あー。女の子が襲われてるって通報があったんだが?」
「君たち、ちょっと署まで来てくれるかな」
「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!!!」
「待て!!」
と、男子生徒達が退散すると警察官が追いかけて行った。
彩「な、なんだったんだろう…」
麻弥「よく分かりませんが…助かりました」
彩と麻弥が安心していると、日菜がある事に気づいた。
日菜「あ!! 飛鳥くんだ!! しかもスマホ弄ってるよ!!」
「!!?」
日菜「おーい!! 飛鳥くーん!!!」
と、日菜が飛鳥に向かって叫んだが、飛鳥は気づいてないのか、そのまま去っていった。
日菜「電話かけよ」
日菜が電話をかけた。
数分後
飛鳥「いや、私通報してませんよ?」
日菜「うっそだー」
飛鳥「それでしたら履歴見ます?」
千聖「履歴って消せるから証拠にならないわよ?」
飛鳥「それでは証拠になるものは何でしょうか」
千聖「私に聞かないで」
飛鳥「私本当に何もしてないんですよ。で、何もしてなくてお礼などをされて、後で違った時に色々言われるの嫌です」
千聖「…正直でよろしい」
飛鳥の言葉に千聖が困惑しながら突っ込んだ。
日菜「えー。本当に飛鳥くんじゃないのー?」
飛鳥「ええ。残念ですが。それよりも早く風呂に入った方が良いですよ」
千聖「それが出来たら苦労しないわよ」
飛鳥「いや、後ろの温泉ハウスなので、風呂入れますよ?」
「!!?」
飛鳥の言葉に5人が反応すると、確かに温泉ハウスと書いてあり、服や下着も売っている旨が書いてあった。
飛鳥「そういう訳ですので、これにて失礼いたします」
飛鳥が去ろうとすると、日菜が飛鳥をつかんだ。
飛鳥「何でしょうか」
日菜「あたし達がお風呂あがるまで待ってて」
飛鳥「ごめんなさい。私ちょっと用事がございまして…」
千聖「用事って何?」
千聖がジト目で見つめる。
飛鳥「郵便局まで荷物取りにいかないといけないんですよ」
麻弥「た、確かに用事っすね…」
飛鳥「そういう訳ですので」
日菜「それじゃ、荷物を取ってきたらまた戻ってきて! 待ってるから!」
飛鳥「よろしいんですか?」
日菜「うん!」
飛鳥「あ、はい」
そう言って飛鳥は去っていった。
30分後、飛鳥が温泉ハウスの中に入ると、風呂を浴びたパスパレ5人がロビーで待っていた。
飛鳥「お待たせしました」
日菜「荷物何だったの?」
飛鳥「中華鍋です」
空気が止まった。
「中華鍋…?」
麻弥「あ、そういや前にお料理されるって言ってましたね!」
飛鳥「そうなんですよ。で、ちょっと新しいの買ったんですけど、いろいろあって郵送と言う事にしてもらってたんですよ」
と、飛鳥が苦笑いした。
日菜「今度飛鳥くんの手料理食べてみたーい!」
麻弥「いや、日菜さん。流石に迷惑っすよ…」
飛鳥「まあ、そのうちご招待します」
日菜「約束だからね!?」
それなりにパスパレと話をした。
一時間後。空は晴れあがっていた。
飛鳥「あ、晴れましたね」
日菜「ホントだ!」
6人が表に出た。
イヴ「うわー…!!」
日菜「虹出てるかな!?」
千聖「流石に出てないわね…」
彩「でも綺麗な空…」
と、感動していた。すると、先ほどの2人の警察官がやってきた。
日菜「あ、さっきのおまわりさんだ」
「!」
日菜「あのー! すみませーん!」
「ん?」
ひなの声に反応した警官2人が日菜たちを見た。
「あ、さっきの…」
日菜「さっきの男の子たちどうなりました?」
「ああ。あまりにも舐めた口を利いてたから、警察署にしょっぴいたよ」
「今頃親御さんに怒られてるだろうな」
飛鳥・麻弥(そこまでするか)
飛鳥と麻弥が心の中で突っ込んだ。
千聖「すみません」
「何ですか?」
千聖「先ほどは助けていただいてありがとうございました」
千聖が頭を下げると、彩、イヴ、麻弥も頭を下げた。
千聖「どなたかが通報されたのですか?」
日菜「この子が通報したんですか?」
「いやいや、今日はこの子じゃないよ」
「そうそう。パトロール中に…」
千聖「今日『は』?」
警官の言葉に千聖が引っ掛かり、飛鳥を見ると、飛鳥は横を向いた。
千聖「顔向けなさい。何かあったんでしょ」
麻弥「え、彼…通報したことがあるんですか?」
「通報というよりかは…」
「3日前。女子高生を付け回してたストーカーをつかまえてくれた事があってね」
日菜「3日前に付け回してたって…女の人の特徴は?」
「そうだな…。君とそっくりだったな」
日菜「やっぱり! おねーちゃん、前に知らない男の人につけられたって言ってたけど、3日前から見なくなったって言ってた!!」
日菜たちも飛鳥を見たが、飛鳥も千聖たちを見た。
飛鳥「はい、それは私がやりましたが、何か間違ったことしましたか?」
彩「いや、なに一つ間違ってないよ」
千聖「その態度は大間違いよ」
千聖が腕を組んだ。
飛鳥「あ、日菜先輩。もちろんお分かりですよね」
日菜「おねーちゃんに喋らないでって事でしょ?」
飛鳥「違います。紗夜先輩が気を遣うので、喋らないでください」
日菜「だいじょーぶだよー。じゃあ電話するねー」
と、日菜は紗夜に電話をかけた。
どうなったかというと…。
紗夜「本当にありがとうございました…!!」
飛鳥「あ、いえいえ…」
紗夜にすごく感謝された。
おしまい