第562話
その頃、フレンチコースはというと…。
「つまんな~い!!!」
休憩時間に日菜がそう叫んだ…。というのも、午前はずっと座学で担当講師がフレンチコースに関するテーブルマナーやどうでもいいような蘊蓄などを喋り続けるという内容で、才能マンの日菜は勿論物足りなさを感じていたし、他の受講者もレベルの高さについていけず、居眠りしたり別の事を考えたりしていた。
挙句の果てにはスマホをいじったり、私語をしたりする生徒も出てき始めて、講師が切れるかと思ったが、日菜たちに言い寄っているヤラカシ軍団が思った他真面目に講習を受けていて、その講師もヤラカシが真面目だと褒めると他の生徒達もばつが悪そうに講習を受けていた。本当は真逆なのに…。
千聖「まさかあいつらが真面目に講習を聞いてるなんて…」
麻弥「これでは立場が完全に逆ですね…」
いつも見下している女子生徒達もばつが悪そうにしていたが、ヤラカシ軍団はいつも通りだった。
(くくく…。あいつらいい気味だ!!)
(正直オレ達もくそだりいけど、あいつらも同じだからな…)
(ここで真面目に授業を受けていれば、こっちが有利に進められるってもんだ…)
(一丈字がいなければこんなもんなんだよ)
と、ヤラカシ軍団が嘲笑っていた。
花音「そういえば飛鳥くん達はどうしてるのかな…」
薫「この炎天下だ。何もなければ良いのだが…」
その時だった。
「おい! 他のチームが何やってるか見れるらしいぞ!」
「マジか!?」
という声がしたので、彩達も行ってみることにした。カレーチームはまあ、本当に普通だったが…。飛鳥達が農作業している所も映像で映し出されていた。
「あいつら畑仕事やってんのか!?」
「こんな炎天下なのに…」
「カワイソー」
「…ていうか、一丈字本当に手先器用だよな」
飛鳥が真面目な顔でてきぱきと収穫しているのを見て、生徒達は驚いていた。
千聖「完全にフル装備じゃない!」
リサ「肌弱かったんじゃないの…?」
そして、おでん組が皆で弁当を食べている映像も映し出されていたが、燐子と友希那が飛鳥の両隣を固めて楽しそうにしていた。
日菜「え~っ!! とっても楽しそ~!!!」
紗夜「そ、それもそうだけど距離が近すぎよ!!///」
すると…。
「し、白金やっぱりでけぇ…」
飛鳥が超能力で下着が見えないようにコーティングしたとはいえ、やはり体の線が丸見えだったのだ…。
「湊は湊で…良い」
「巨乳と貧乳のバランスがまた…」
「ていうか、この2人に挟まれてるって事はやっぱりいい匂いするんだろうなぁ…」
「汗臭くてもそれはそれで…」
と、変態発言をするヤラカシ軍団。だが、授業は彼らの方が真面目に聞いていたので、何も言えずにいた。
千聖(こ、こんな奴らに私たちは…!!)
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そして午後はというと、一番暑い時間帯という事で…。
和国「調理は夕方! 温泉があるからそこに浸かろう!」
「おおおお!!?」
まさかの温泉があったので、皆が驚いていた。
飛鳥「着替えを持って来いというのはこういう事だったのか…」
友希那「けど助かったわ。もう汗でべとべとなの。早く洗い流したいわ。飛鳥、背中を洗ってくれるかしら」
飛鳥「私の性別はご存じでしょう」
友希那「冗談よ」
クールビューティーと呼ばれる友希那が冗談を言ったので、他の生徒は驚いていた。
和国「まあ、残念だが浴場は男女別々だ! 間違っても覗く事は無いように!」
「はーい…」
まあ、そんなこんなで温泉に入ってさっぱりした。
「ちなみに乾燥洗濯機もあるから、服も乾かすといいわ」
「まさかの好待遇!!」
「畑を収穫してくれたお礼よ」
とまあ、至れり尽くせりだったが、夕方からはきちんと野外炊飯に移った。
飛鳥(まあ、今回は皆で作るから、あまり出しゃばった事をするのはやめるか…)
飛鳥がそう考えるが、
「一丈字くん。おでんを作るにあたって気を付けないといけない事ってある?」
飛鳥「鍋に投入する具材の順番を間違えない事ですかね…」
和国「その通りだ! 一丈字! 皆に教えてやるのだ!」
飛鳥「えっ…」
友希那「変に遠慮しなくていいわよ」
燐子「私も出来る事があったら、お手伝いします!」
飛鳥「そ、そうですか…」
そんなこんなで、飛鳥が中心になっておでんづくりが行われた。
飛鳥「玉子は固めにしないといけないので、時間に気を付けてください」
友希那「分かったわ」
飛鳥「大根とこんにゃくは表面に切り込みを入れます」
「何か意味があるの?」
飛鳥「火が通りやすくなって、味をしみこませることが出来ます」
飛鳥「で、順番ですけど大根やこんにゃくといった煮えにくいものだけ入れていきます」
友希那「他の具材は後から入れるのかしら?」
飛鳥「はい。はんぺんは食べる直前ですね。縮んでしまう事があるので…」
そう言っててきぱきと鍋の中に大根やこんにゃくを入れていく。
飛鳥「で、弱火でじっくり煮込んでいきます」
友希那「何故弱火なの?」
飛鳥「大根といった野菜は弱火の温度くらいで味がしみこみやすくなるんですよ。「『拡散』という物理現象が関係してるんですね」
友希那「拡散?」
飛鳥「理科の授業になりますが、2つの物質のうち、濃度が高い物質が濃度の低い物質に濃度を合わせようとする現象です。今回だとおでんのつゆと大根ですね。おでんのつゆの方が高いので、つゆが大根の濃度に合わせようとしているんです」
飛鳥の説明に友希那が困惑していると、燐子は理解していた。
飛鳥「ですが、大根には『細胞膜』が張られてて、ただつゆにつけても味はしみこまないんですよ。そこで火を通すんです」
燐子「…火を通せば細胞膜がなくなるんだね」
飛鳥「なくなるというより、機能が低下してつゆの成分が大根の中に入っていくという感じですね。分かりましたか?」
友希那「な、何となくわかったけど…。あなた、良く知ってるわね…」
飛鳥「私も何故弱火なんだろうと思って調べたんですよ。まあ、練り物類は逆に練り物自体の方が濃度が高いので、煮込み過ぎない方が良いとされています」
と、飛鳥が解説しながらおでんを煮込んでいった。
飛鳥「ここからは時間がかかりますけど先生。どうすれば宜しいですかね」
和国「そうだな。もうそこまで分かっているなら、あとはワシがやろう!」
飛鳥「え?」
和国「お前達は待っとれ!」
そんなこんなで飛鳥達は食事が出来るのを待つことにした。
つづく