第233話「千聖が仲間になった!」
白鷺千聖に正体がバレてからというもの、飛鳥の日常生活は普通に戻りつつあった…。
「彩ちゃん! 変なストーカーが襲ってこないように僕が守ってあげるゥ!!」
彩「い、いやああああああ!!!」
彩が早速ストーカーに執着されていて、飛鳥が超能力でストーカーを腹痛にした。
ストーカー「あばばばばばばばばばばば!!!」
「てめぇこの野郎!!」
「彩ちゃんに手を出しやがって!! 尊厳を壊してやる!!」
と、ここぞとばかりに彩のファン達がストーカーを一方的に暴行した。完全に彩に良い所を見せようとしているが、彩としては恐怖で動けなくなっていた。
「彩ちゃん大丈夫? けがは…」
「てめぇ何出しゃばってんだよ!!」
「オレが彩ちゃんを…」
「ざけんな!!」
男子生徒達は醜い手柄の取り合いをしていて、飛鳥が合図を送って弦巻家の黒服達に彩を保護させた。
千聖「…いつもこういう事してたのね」
飛鳥「ええ…。表に出たら出たで嫉妬とかも凄いんです」
千聖が後ろから話しかけると、飛鳥が疲れ切った様子で千聖の方を見て話した。モカも一緒にいる。
こころ「飛鳥、千聖、モカ!」
こころがやってきた。
こころ「行きましょ!」
そう言われて、飛鳥達は弦巻家の車に乗ってどこかに移動した。飛鳥としては、この面子でバレないかと不安になったが、黒服達が何とか裏工作をしてくれていた事を知り、安心した。
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車の中…
千聖「…改めて聞くけど、本当に濃い人生を送ってたのね。あなた」
飛鳥「ええ」
飛鳥の過去を聞いて千聖が困惑していると、飛鳥が苦笑いした。
千聖「それを聞いて今までの行動に全部納得いったわ…。モカちゃんはよく分かったわね…」
モカ「いや~。つぐを助けた時から、飛鳥くん普通の子と顔つきが違うって思ってましたから~」
飛鳥「え?」
モカの言葉に飛鳥が困惑していた。
モカ「だって、つぐを助けた時の顔、伝説のヒーローみたいな顔をしてたから~」
飛鳥「伝説のヒーローって…」
千聖「そうね。此間の撮影で彩ちゃんを助けた時もまさにそうだったわね」
こころ「日向や椿からも聞いたけど、本当にヒーローみたいなのよ!」
と、女子3人が自分の事を褒めるので、飛鳥はかなり困惑していた。
モカ「何飛鳥くん。照れてる?」
飛鳥「いや、こんなに褒められることってあまりないから、困ってるんだよ…。昔は何やってもぼろくそ言われてたし」
小学生時代の苦い思い出が蘇っていたからである。
千聖「…あなた、意外に繊細なのね」
飛鳥「意外じゃありませんよ。結構繊細ですよ」
モカ「いやいや、これが戦闘モードになったりすると…」
千聖「ギャップ萌えって奴かしら?」
飛鳥「違うと思います」
と、そのまま4人が談笑していた。
千聖「ところで、これからどうするつもりなのかしら?」
飛鳥「まだ広島に戻れという連絡は受けていないので、ここにいるつもりですよ」
モカ「飛鳥くんがいなくなったら、静かになると思うよ~」
飛鳥「うん。自分でもそう思うよ。中学もそうだったもん」
モカの言葉に飛鳥が苦笑いしていた。中学時代も今と同じようにトラブルが起きまくり、その度に沢山の関係者に迷惑をかけた為、飛鳥はばつが悪そうにしていた。
モカ「にぎやかだから、いてくれたら嬉しいな~」
飛鳥「…ありがとう」
モカの言葉に飛鳥は皮肉気味にお礼を言った。
千聖「それはそうと、今正体を明かせばヒーローになれるかもしれないわよ?」
飛鳥「それはないですよ」
千聖の発言に飛鳥はきっぱりと断った。
こころ「どうして?」
飛鳥「考えてみろよ。一瞬のうちに9人も殺した殺人犯をぶっ倒した奴がこの学校にいるって分かったら皆パニックになるよ。今度は自分たちが同じ目に遭うんじゃないかってね」
千聖「……」
飛鳥「しかも、今までの事であなた方と仲良くなったと知れば、やっかみが増えます。世の中そんなに甘くないよ」
そういうと、飛鳥は一息ついた。
モカ「まー…。ハイリスクハイリターンだよね。そういうのって」
飛鳥「リスクがあるなら、ノーリスクノーリターンの方がいいよ。死んだら取り返しがつかないんだから」
千聖「……」
飛鳥の言葉に千聖を見つめた。
飛鳥「白鷺先輩、これが私の現状です。能力者同士の争いに、あなた方を巻き込んでしまった事、誠に申し訳ございません」
千聖「……」
飛鳥が頭を下げると千聖は険しい表情をした。
千聖「顔を上げなさい」
飛鳥「……」
千聖の言葉に飛鳥は顔を上げると、千聖が怒っているのを確認した。
千聖「あなたのやった事は全てが許される訳じゃない。だけど、あなたがいたから私たちは救われたの。頭なんか下げないで」
飛鳥「……」
千聖の言葉に飛鳥は静かに目を閉じると、こころが困った顔をしたがモカが大丈夫だとこころを諭した。
千聖「…和哉さんからこう言われたのよ。あなたを守って欲しいと」
飛鳥「!」
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撮影終了後、千聖は宿泊先のホテルで一人佇み、飛鳥の事を調べようとした矢先、和哉がいた。
千聖「!!」
和哉「また会ったな」
和哉が睨みと聞かせると、千聖が腰を抜かした。
和哉「安心しろ。お前を殺しに来た訳じゃない。取引をしに来たんだ」
千聖「取引…?」
和哉「一丈字飛鳥の件についてだ」
和哉の言葉に千聖が驚いた。
千聖「一丈字くんの事を知ってるの!?」
和哉「知っているとも」
千聖「教えて! 彼は一体何者なの!?」
和哉「それを教えてほしければ、オレの要求にこたえて貰おうか」
千聖「!」
和哉の言葉に千聖は嫌な予感がした。
千聖「…もしかして、私を好きにさせろと言いたいんじゃないでしょうね?」
和哉「ほざけ。ガキに興味はない」
和哉の言葉に千聖はカチンときたが、
和哉「高校生がませた事を言うもんじゃねェよ」
千聖「…で、で? 要求は?」
和哉「お前のコネクションを提供してもらおうか」
千聖「コネクション?」
和哉「天才子役と呼ばれていれば、コネクションもそれなりにあると思ってな。どうだ?」
千聖「…ない事はないわ。いいでしょう」
千聖の言葉に和哉は笑みを浮かべた。
和哉「交渉は成立だ」
千聖「さあ、約束通り教えて頂戴。あの子は一体何者なの?」
和哉「一言でいえば、あいつは超能力者とでも言っておこうか」
和哉の発言に千聖が神妙な表情をした。
和哉「…驚かないんだな」
千聖「ええ。もう覚悟はできてます」
和哉「流石、周りの大人たちにいいようにされてどん底に突き落とされただけ、タフになっているな」
千聖「私の事はいいですから、彼の事を教えてください」
和哉「そうだな…」
そう言って和哉は飛鳥の事について千聖に教えると、千聖はショックを受けた。
和哉「そういう訳だ。オレもあいつも普通の人間として生きていく事はほぼ不可能に近い。だからこのような仕事をしているのだ。あいつには、学生の立場を利用して学校に潜入してもらい、悪の能力者の討伐をやって貰っている」
千聖「……」
和哉「そういう訳だ。今後あいつと付き合うかどうかはお前の自由、正体をバラすのもお前の自由だ」
千聖「えっ?」
和哉「正体をバラされようが問題はない。そうしようものなら、こちらが手を出さずとも、お前は消される」
和哉の気迫に千聖は息をのんだ。
和哉「オレ達の世界も芸能界とほぼ同じだ。ガキだろうが女だろうが、弱い奴は消され、力を持った者だけが生き残る」
恐れおののいた千聖をよそに、和哉は一息ついた。
和哉「理解してもらえたかな?」
千聖「え、ええ…。しかし、何故それを私に…?」
和哉「お前の事は観察させて貰った」
千聖「えっ!?」
和哉「何度も飛鳥の正体を見破っていたからな。その度にあいつが記憶を消したりしたそうだが…。そして、今回の騒動でお前が信頼できると判断できた。お前、あいつの為に何かしてやりたいと考えているだろう」
千聖「……」
和哉の言葉に千聖は俯いた。今まで自分達を陰から救い出してくれた事に恩を感じていたと同時に、このまま何も出来ずにただ守られている事に耐えられなかったからだった。
和哉「これがただの好奇心や私欲だったら、記憶を根こそぎ消させて貰ったが、その必要はもうない」
千聖「……!」
和哉が千聖を見つめた。
和哉「話は終わりだ。お前のこれからの行動に期待させて貰おう」
そう言って和哉は消えていった。
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飛鳥「…そんな事が」
千聖「よい師匠に巡り合えたわね」
飛鳥「!」
飛鳥が千聖を見つめた。
千聖「本当にありがとう。あなた達のお陰で本当に助かったわ」
飛鳥「白鷺先輩…」
千聖が頭を下げると、飛鳥が驚いた。
こころ「これで飛鳥も千聖も本当の意味でお友達になれたのね!」
飛鳥「それはちょっと意味が違うと思うよ…」
千聖「あら、不満かしら?」
飛鳥「不満ではないですけど、白鷺先輩は嫌じゃないんですか?」
千聖「まさか。なんならこれからは千聖さんって呼んでもいいのよ?」
飛鳥「おお、かなりフレンドリーになってますね…」
モカ「多分男子にそう呼ばせるのも初めてなんじゃないですか~?」
千聖「ふふ。そうね」
モカの言葉に千聖はくすっと笑った。
千聖「そういう訳だから、これからは飛鳥くんって呼ばせて貰うわね」
飛鳥「……」
女優とこうやって仲良くなろうとは夢にも思わなかった飛鳥だった。
飛鳥「ところでこの車どこに向かってるの?」
こころ「イタリアンレストランよ! 丁度イタリアンが食べたいと思ってたの!」
飛鳥「あ、そう…」
おしまい