ある日の事だった。
「なあ、聞いたか?」
「最近この学校…幽霊が出るらしいぞ」
「何か3年生がそんな話してたな…」
「おー怖い怖い…」
クラスの男子生徒達が学校に関するうわさ話をしていて、飛鳥が近くで聞いていた。
「そういや今日、メンテナンスのために早めに施錠されるんだろ?うちの学校オートセキュリティだから」
「取り残されたら一晩中幽霊に付きまとわれるかもな」
「おーこわ」
「あ、でもガードマンがいるって」
「そっか」
飛鳥は特に何もリアクションをする事なく、そのまま本を読んでいた。
その夜、飛鳥は暢気に部屋でくつろいでいた。
飛鳥「ふぅ…。今日も何もない一日だったな…」
飛鳥がそう呟いていると、緊急用の電話が鳴った。
飛鳥「な、何だ!?」
飛鳥は少し慌てて電話に出た。電話の相手はこころである。
飛鳥「もしもし」
「あ、もしもし飛鳥!?」
電話の相手はこころだった。
飛鳥「こころ。どうしたんだ?」
こころ「蘭たち見てないかしら?」
飛鳥「え?」
こころ「蘭たちがまだ学校から帰ってきてないのよ」
飛鳥「え!?」
飛鳥が驚いた。というのも、時間はもう午後10時を回っていた。バイトや塾などに通っていたら9時以降も出歩いている事は特に問題はないが、蘭達は同じバイトをしてるわけでも、塾に通ってるわけでもない。仮にそうだったとしても女5人だけで夜道を歩くのは危険すぎた。
こころ「さっきあこから電話があったのよ。Afterglow全員帰ってきてないって…」
飛鳥「5人全員が行きそうな場所とか調べた? 学校とか…」
こころ「学校…そうだわ! 今日確か早く施錠するって黒服の人たちが教えてくれたわ!」
飛鳥「もしかしたら学校に閉じ込められてる可能性が…」
こころから電話がかかってきたという事は、黒服達でも見つけられなかったという事を意味していた。施錠がかかっているという事は黒服の人たちでも調べる事は難しい。飛鳥はそう判断した。
飛鳥「何か忘れ物をしてすぐに帰ろうとしたけど、閉じ込められた奴か」
こころ「警察の通報とかそういう手続きはあたしや黒服達の人がしておくわ! 飛鳥は学校に向かって頂戴!」
飛鳥「分かった!」
飛鳥が存在感を消し、瞬間移動で学校に向かった。ちなみに行った事がある場所はいつでも行けるようになる。そして瞬間移動をしたとき、人に気づかれないように存在感を消した。
正門を過ぎた所に瞬間移動した飛鳥。正門は既に閉まっている。
飛鳥(誰か来てる痕跡もなさそうだな…)
飛鳥が目を閉じて感知すると、蘭達を捕らえた。停電になり5人で固まっている。
飛鳥(いた!)
飛鳥は超能力でカギのロックを解除すると、中に入った。
飛鳥(驚かせるといけないから、近くまで行ったら名前を呼ぼう)
その頃…
「うぅぅぅぅ…!!」
Afterglowの5人は固まっていた。モカ以外の4人はすっかり怯えていた。
ひまり「ごめんねぇ…!! 私がノート忘れたばっかりに…!!」
巴「そ、それはもういいんだよ…でも…」
蘭「怖い…!!」
実はAfterglowは夕方までつぐみの家で課題をしていたが、ひまりがノートを忘れた事が判明し、5人で忘れ物を取りに行った。すぐに取りに帰る予定だったので、親には特に何も言わず、そのまま飛び出し学校へ。
参考書は無事に見つかったものの、その瞬間に施錠されてしまい、蘭たちは外から出られなくなってしまったのだ。おまけに最近幽霊がいると噂になっている為、すっかり怯え切っていた。
つぐみ「どうしよう…鍵が完全にかかって出られない…」
モカ「ここまでセキュリティが凄いとは…こりゃ噂になる訳だ~」
蘭「…バンド禁止される」
巴「私もあこに何て言われるか…」
ひまり「うぇええええええええええん!!! 私のせいだぁ~!!」
ひまりが泣き崩れた。
つぐみ「ひ、ひまりちゃんのせいじゃないよ!!」
巴「ちょ、やめろよ! そういうの…」
蘭「そ、そうだよ…!!」
つぐみ、巴、蘭も涙ぐんだ。
モカ「そんなことよりも、本当にまずいよ」
「!」
モカが険しい顔をしていた。
モカ「…『あいつ』がここを突き止めてきたら」
「もう突き止めたよ」
「!!?」
その時、蘭の首筋にスタンガンが当てられそうになったが、モカが瞬時に蘭を押し倒して、間一髪でかわした。5人は避難したものの、完全におびえ切っていた。目の前には狂気に満ちた表情したガードマンの姿があったのだから。
モカ「……!!」
モカも今ので完全に青ざめてしまい、目に涙が浮かんだ。
ガードマン「もう逃がさないよ。見られたからには、君達には死んで貰う」
蘭「な、な、何で…」
ひまり「いやぁああああああああああああああああああああああ!!!!」
ガードマン「泣きわめこうが誰も来ないよ。そもそも下校時間過ぎた挙句、勝手に学校に入ってきた君たちが悪いんじゃないか。そういう事をするなら…やってもいいよね」
巴「な、何をだ…」
ガードマンが笑みを浮かべた。
ガードマン「生徒を一人ずつ…なぶり殺しさぁ!!!」
ガードマンが鉄パイプで殴ろうとしたが、動きが止まった。
ガードマン「な、なんだ!? 体が…」
「!!」
その時だった。
「はああああああああああああああああああ!!!!」
飛鳥が廊下を走ってきた。真剣な権幕で叫び、そして飛んだ。
「!!」
ガードマン「!!」
飛鳥「どりゃぁああああああああああああああ!!!」
飛鳥がガードマンの顔にめがけて飛び蹴りをすると、
ガードマン「ぐわぁああああああああああああああ!!!!」
と、ガードマンも悲鳴を上げて壁に叩きつけられそのまま気絶した。飛鳥は綺麗に着地をすると、一気に電気がつくと、飛鳥は存在感を消した。
「!!」
飛鳥(学校の給電システムが…)
飛鳥が灯を見ながらそう呟くと、ガードマンを取り押さえ、Afterglowを見つめた。
「皆さま!!」
弦巻家の黒服の人たちが現れて、蘭たちを保護した。
「ご無事ですか!!?」
ひまり「う…うぇええええええええええええええええん!! ごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
ひまりは号泣した。
つぐみ「は、はい! 無事です!!」
ひまり「こわかったぁああああああああああああああああああ」
号泣したひまりに代わってつぐみがそういうが、つぐみも涙をポロポロ流した。蘭と巴は歯を食いしばって涙をこらえようとしていたが、涙があふれていた。モカもちょっと涙目だった。
飛鳥「……」
飛鳥は何も言わず、ガードマンを黒服の男に引き渡すと、その場を後にした。
その後、ガードマンは無事に逮捕されたが、完全施錠を行う前に、本来作業をする筈だった作業員たちをスタンガンで気絶させていたことが分かり、おまけに1組で香澄たちの私物を漁っていた事も発覚。器物損壊、傷害、窃盗の疑いで実刑判決を食らった。
蘭たちはというと、校舎に勝手に入った事、連絡をしなかった事について、保護者達からこっぴどく怒られた。
ちなみに施錠されている間、電波が圏外になっていたのだが、連絡できなかった理由にはならなかった。
こうして、幽霊騒動は、ガードマンが「幽霊」だったという事で幕を閉じた。
後日、中庭に飛鳥とこころ、そして千聖がいた。
千聖「大活躍ね。飛鳥くん」
飛鳥「えーと…」
千聖にはとても楽しそうに笑っていて、飛鳥は困惑気味だった。
こころ「それにしても飛鳥」
飛鳥「なに?」
こころ「本当に蘭たちには何も言わなくていいのかしら?」
飛鳥「いいよ。本当の事を喋ったら美竹さん達が気を遣うし、人助けをして褒めて貰うってのは行儀悪いよ」
こころの問いに飛鳥は諭すように返事した。
飛鳥「美竹さん達が無事ならもうそれで終わりさ」
こころ「……」
飛鳥の言葉に千聖とこころは少し腑に落ちなさそうに飛鳥を見つめていた。
千聖「あなたって本当に謙虚よね」
飛鳥「仮に尋ねますが、もし私がグイグイ恩を売るような輩だったらどうします? 美竹さん達の事を助けたって自分から他の生徒達に言うような…」
千聖「品がないし、軽蔑するわ。そんな人に助けて貰った自分が情けないとも思いますわ」
飛鳥「そう思われるなら猶更ですよ」
飛鳥がそう言った次の瞬間、メールが届いた。
飛鳥「誰からだろ…」
飛鳥がスマホを確認すると、モカからだった。
モカ『昨日は助けてくれてありがと。落ち着いたらお礼させてね。勿論蘭達には内緒にするから~』
こころと千聖もメールを見ていて、飛鳥は困ったように2人を見渡していた。
千聖「バレてるじゃない…」
飛鳥「どういう訳か見破られるんですよね。彼女には…」
飛鳥は困惑しつつも、モカに「ありがとう」と返信した。
おしまい