『もしも千聖からデートに誘われたら』
ある日のことだった。飛鳥が教室の自席でぼーっとしていると…。
「一丈字くん」
Pastel*Palettesのベース担当である白鷺千聖がやって来た。千聖の登場にクラスメイト達は勿論、廊下にいた男子生徒達は驚いていた。
飛鳥「あれ? 白鷺先輩…」
飛鳥も千聖の姿を見て驚き、席から立ち上がった。
飛鳥「どうされました?」
千聖「今日の放課後暇?」
飛鳥「ええ。特に予定はございませんが…どうされたんですか?」
千聖「ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど」
千聖の言葉に皆が驚いた。飛鳥は首を傾げた。
飛鳥「私ですか?」
千聖「あなた以外に誰がいるのよ」
飛鳥「Pastel*Palettesの皆さん」
千聖「そうね…。だけど、ちょっと男性の意見も聞きたいのよ」
飛鳥「それでしたら私以外にも適任者が沢山いる筈では…」
「そうだよ!! 僕達がいるじゃないか!!」
飛鳥の言葉に千聖のファン軍団が現れた。
飛鳥「何かご不満でも?」
千聖「あなたにお願いしたいの」
飛鳥「…そんなにですか?」
千聖に超能力者だという事を知られてから、二人の間でテレパシーが送られていた。
千聖『買い物もそうだし、用心棒もお願いしたいの』
飛鳥『そ、そういう事ですか…』
千聖の言葉に飛鳥が反応すると、ファンの男子たちが騒いだが、聞きつけた先生達に取り押さえられていた。
結果としてはそのまま千聖とショッピングをすることになった。
飛鳥「お待たせしました」
千聖「…ええ」
そんなこんなで千聖の用事に付き合う事になった飛鳥。タクシーで移動していた。
飛鳥「タクシーなんて豪勢ですね」
千聖「仕方ないわよ。この時間帯、電車やバスなんかに乗ったら混乱するわよ」
飛鳥「ですよね」
千聖は飛鳥を見た。
飛鳥「…なんでしょうか」
千聖「いいえ。こうやってあなたとゆっくりお話しできる日が来るなんて思ってもいなかったわ」
飛鳥「私も同じことを考えていましたよ」
千聖の言葉に飛鳥は困惑するように返事した。
千聖(本当に不思議な子。麻弥ちゃんとまた違う意味で輝くものがあるわ)
千聖が飛鳥をじっと見つめていた。千聖の周りには自分と同じ男の子役や、俳優もいたが、飛鳥のような人間はいなかった。
ちなみに麻弥は元々プロのスタジオミュージシャンとして働いていたが、千聖に素顔を見られた事で、素質を見出されてメンバー入りを果たしたのだ。結構人を見る目があるのだ。
そして目的地に到着して、飛鳥と千聖はタクシーから降りて、そこからちょっと歩き、買い物を済ませた。飛鳥は周りにヤラカシがいないか細心の注意を払いながら、共に行動をした。
ちなみに問題ないのかというと、千聖が所属している事務所の社長にはすでに飛鳥達の事を知っている為、黙認状態となっている。
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千聖「さて、ちょっとカフェでお茶でもしましょうか」
飛鳥「…問題ないんですか?」
千聖「用心棒だと言えば問題ないわよ。それに、あなた地元では結構有名人だし」
飛鳥「流石ですね」
肝が据わりすぎている千聖に飛鳥が困惑しつつも、カフェの方に向かって歩いていたが。だが、既にカップルがいっぱいいた。
飛鳥「…見事にカップルが多いですね」
千里「ええ、そうね」
飛鳥と千聖が一緒に並ぶことになったが、飛鳥はいたって平然としていて、千聖がちょっと複雑そうにしていた。
千聖「ねえ、一丈字くん」
飛鳥「何ですか?」
飛鳥が千聖を見た。
千聖「…あまり自分で言いたくはないのだけど、私、女優よ?」
飛鳥「ええ、存じておりますが」
千聖「もう少し緊張とかしないのかしら?」
飛鳥「そりゃあ緊張してますよ」
千聖「全くそのようには見えないんだけど…」
飛鳥「いやあ、緊張しすぎてもう周りにいる人たちが、急に襲い掛かって来るんじゃないかって」
飛鳥が周りを見渡すと、千聖はあっけにとられて、クスッと笑った。
飛鳥「何か面白い事言いました?」
千聖「いや、あなたって本当に面白いわね」
飛鳥「何故か言われるんですよねー。なんででしょう」
千聖の言葉に飛鳥が不思議そうにしていた。
暫くして、店内に入る事が出来た飛鳥と千聖。
飛鳥「やっと入る事が出来ましたね」
千聖「ええ。そうね」
飛鳥と千聖はそのまま普通にお茶をして過ごすことになったが、
「当店のおすすめはカップル限定のタワーケーキですが、いかがでしょうか」
店員がカップル限定メニューを進めてきた。一応男性と認識されて安心する飛鳥だったが、相手が売れっ子女優だったため、素直に喜べなかった。というか寧ろこの店員は千聖の事を知っているのかどうか不安になっていた。
千聖「どうする? 飛鳥くん」
飛鳥「頼んじゃいます?」
千聖「あなたに任せるわ?」
飛鳥「じゃあ頼みません」
飛鳥がキッパリと断り、ふつうにドリンクを頼んだ。
千聖「…頼んでもよかったのよ?」
飛鳥「バレたら、完全に逃げられなくなりますよ」
千聖「ふふ、そうね」
飛鳥の言葉に千聖はくすっと笑うと、飛鳥は困惑していた。
千聖「どうしたのかしら?」
飛鳥「なんでもございません」
千聖「もしかして、照れた?」
飛鳥「そうではなくて…最初に出会ったころに比べて、良い意味で変わったなと思いまして」
千聖「どういう意味かしら?」
千聖の表情が曇ると、飛鳥は考えた。
飛鳥「最初の頃はやはり女優さんという事もあるのか、表面上は穏やかにしてても、どこか距離を取られてる感じがしたんですよね」
千聖「それはあなたもじゃない」
飛鳥「まあ、そうなんですけどね。ですが、今となっては距離を置いてる感じがしないんですよね。今回の買い物だって誘ってくださりましたし…」
千聖「…まあ、同世代の男子とこうやってお茶をするのは、アイドルとしてはご法度ね」
飛鳥「それだったら…」
飛鳥の言葉に対し、千聖はじっと飛鳥を見つめた。
千聖「だけど、恩に背いで活動するなんて事はもっと出来ないわ。あなたにも、和哉さんにも…」
飛鳥「……」
京都での事件を思い出す千聖。和哉から飛鳥の今までの行動を教えてもらい、陰からずっと自分たちを守っていた事を知った事もそうだが、自分よりもさらにひどい環境にいた事にショックを受けていた。
そしてそんな状態でも、彩たちと同じように前を向いて先に進もうとしている姿に心を打たれたのだ。
千聖「…今までは自分の事ばかり考えていたから、そんな事全く考えなかったわ。きっと、パスパレにいたせいかしら」
飛鳥「白鷺先輩…」
千聖「千聖」
飛鳥「!」
飛鳥が反応した。
千聖「プライベートの時は名前で呼んで頂戴。モカちゃんやこころちゃんもそうでしょ?」
飛鳥「……」
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飛鳥「…ごちそうさまでした」
千聖「いいわよ。私が年上なんだし、ショッピングに付き合ってくれたお礼よ」
カフェから出た飛鳥と千聖はそれぞれの家に帰ることになった。
飛鳥「家まで送りましょうか?」
千聖「それじゃ、お願いしようかしら」
ぐいぐい来る千聖に飛鳥が困惑した。
飛鳥「ぐいぐい来ますね」
千聖「ふふ。あなたの困ってる顔が見たいからかしら?」
飛鳥「ほかの方が聞いたらうらやましがるでしょうね…」
千聖「…ごめんなさい。やっぱり聞かなかったことにして。頭痛くなってきたわ」
飛鳥「そうしてください」
とまあ、なんだかんだ言いつつも千聖と仲良くなった飛鳥なのでした。
おしまい