全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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第115話「飛鳥、逮捕される(後編)」

 

 

 警察署

 

「ああ!!? どーせてめーがやったんだろ!!」

 

 と、机を叩きつけて刑事が飛鳥に問い詰めていた。

 

飛鳥「ここの警察署の方は随分横柄な態度を取るんですね」

「舐めてんのかクソガキ!!」

飛鳥「そのクソガキにここまで言われて、プライドはないんですかね?」

 と、飛鳥は臆することなく微笑んでいた。

 

飛鳥「それはそうと聞きたいことがあるんですよ」

「あ?」

飛鳥「この様子だと知ってるみたいですね…。上原さんを襲ったあの男の事」

「てめーには関係な…」

飛鳥「この町の国会議員の息子で、この警察署の署長から賄賂を受け取っていると」

「……!」

 飛鳥の言葉に刑事は青ざめた。

 

飛鳥「そんな事だろうと思いましたよ」

「ふ、ふん! どっちみちお前はここから出られないんだ! 証明しようにも証明できないな! ずっとここにいろ!」

 と、刑事が悪態をついたその時、別の警察官が現れた。

 

飛鳥「?」

「面会だ」

 

 飛鳥が警察に連れられて面会する場に訪れると、そこには飛鳥を襲った男が現れた。

 

飛鳥「おや」

「てめぇか。オレを襲ったのは?」

飛鳥「いやいや、あなたが上原さんを襲ったんでしょう」

 飛鳥が冷静に言い返した。

 

飛鳥「あ、それとも何ですか? オレの親父は国会議員だから罪を擦り付けたとかマウント取りに来た感じですか? どうぞ」

「て、てめぇ…随分透かしちゃってるみたいだけど、そうだよ! オレの親父は国会議員だから、オレはお咎めなしだ!」

飛鳥「成程。警察官の前でもこんな事言うあたり、相当腐ってるみたいですね」

 飛鳥がそう言うと、男が青筋を立てた。

 

「そ、そうやっていい気になってるのも今のうちだぞ。お前がここを出られる頃には、犯罪者の仲間入りだ! 普通の生活を送れないと思えよ!」

飛鳥「元から普通じゃないんで大丈夫ですよ。それよりもいい年した大人がこんな理由で、親御さんの権力に縋るのは如何かと思いますけどね」

「口を慎め!!」

飛鳥「慎むのはあんたの方ですよおまわりさん。さっきも言いましたけど、プライドないんですか?」

「侮辱罪で訴えるぞ!!」

飛鳥「はいはい。ご自由にどうぞ」

 飛鳥が軽くあしらった。

 

飛鳥「で、言いたいのはそれだけですか?」

「ぐっ…!!」

飛鳥「あ、そうそう。それから一つ聞きたい事があるんですけど、あの上原さんっていましたよね?」

「な、なんだよ…」

飛鳥「彼女、弦巻財団のお嬢様と仲がいいんですけど、知ってました?」

 弦巻財団という言葉に、男や警察官たちが青ざめた。

 

飛鳥「あなた程の人なら、弦巻財団がどういう所かご存じですよね?」

「で、でたらめを言うな!」

飛鳥「まあ、信じなくても結構です。私もそのお嬢様の事を知ってますけど…彼女、行動力半端じゃないですからね。今頃話が行ってるんじゃないですかね。彼女のお父様である、弦巻財団の総帥に」

 飛鳥の言葉に更に青ざめる。

 

「ほ、本当にでたらめな事を言うなぁ!!」

「さ、詐欺罪だぞ!! 威力業務妨害罪だぞ!!」

飛鳥「まあ、話が行ってない事をこっちも願ってますよ。私としてもすごく嫌な予感がしてるんで…」

 飛鳥が男を見つめた。

 

飛鳥「本当に偉い事してくれましたね…」

「ああ!? 何訳分かんねー事言ってんだよ!! 泣き寝入りしてろや!!」

 

 その時、署長らしき中年男性が現れた。滅茶苦茶慌てている。

 

「署長!!」

「聞いてくれよ! こいつ凄く生意気だから死刑に…」

「こいつを捕まえろ!!」

 と、署長の後ろから警察官2人が現れて、男を捕らえた。

 

「な、何しやがる!! オレはあの国会議員の息子だぞ!!」

「馬鹿もん!! それがなんだ!! 弦巻財団と林グループを敵に回しおって! 処刑されるのは貴様だ!!」

飛鳥「いや、あんたもだけどな」

 飛鳥が困惑すると、周りにいた警察官が更に青ざめた。

 

「は、林グループ…!!?」

飛鳥「ええ…あそこのご一家には昔から仲良くさせていただいておるんですよ。何か言われました?」

 すると署長が土下座しだした。

 

署長「まさか林グループの御曹司やお嬢様のご友人だったとは…!! 申し訳ございません!!」

飛鳥「いや、それ完全に身分で態度変えてますよね? で、何か言われたかって聞いてるんですが」

署長「…先ほど、林グループの若奥様から電話がありまして」

飛鳥「あー…リーダーか…」

 

 林さくら。林グループの若奥様で、飛鳥の中学時代の同級生である林日向、材椿の母親である。

 今は専業主婦だが、昔はアメリカの偉い所で働いており、そこのプロジェクトリーダーをしていた。飛鳥はアメリカにいた事があったが、その時にお世話になっている。

 ただ、学生時代は福岡のヤンキーで、今の旦那に一目惚れして玉の輿になりました(ただ、その時は旦那が大金持ちとは知らなかったそうです)。

 

飛鳥「やっぱり怒ってたでしょう」

署長「ええ…。どういう事って、低い声で…」

飛鳥「…あの人、元ヤンだからなぁ」

 

 その時だった。

 

「しょ、署長!!」

「!!?」

 

 警察官が慌ててやって来た。

 

署長「ど、どうした!?」

「…林グループ若奥様、林さくらさんがお越しになってます…」

署長・飛鳥「はぁ!!?」

 こればかりは飛鳥も反応した。

 

「こ、こちらです…」

 と、青い髪のショートヘアの女性が現れた。40代ではあるが、外見的には30代である。

 

飛鳥「リーダー!!」

署長「ひ、ひぎィ!!!」

 飛鳥が驚き、署長は青ざめて奇声を上げた。

 

さくら「はーい飛鳥。元気にしてる」

飛鳥「あなたが来るまでは割と普通でしたよ」

さくら「ちょ、どういう意味よ」

飛鳥「いや、周りを見てください。あなたが現れた事で回りは葬式のテンションになってますよ」

さくら「折角助けに来たのに、何て言い草なのかしら」

飛鳥「いや、それは勿論感謝しておりますよ。ありがとうございます。ただ、アポイントメント取りました?」

さくら「そんなの取る訳ないじゃない。悪事の証拠を隠されたら困るもの」

飛鳥「ですよね」

 

 さくらの言葉に飛鳥は困惑したが、さくらは構わず男を見つめた。

 

さくら「あなたね? 〇〇議員の息子で、この子を嵌めたのは」

「な、なんだぁ!? オレは無実だし、林グループがなんだ!!」

さくら「そうだ。いいものを見せてあげる」

「!?」

 

 さくらが自分のスマホを男に見せた。そこには一人の中年男性が、中年男性に土下座している写真である。

 

「土下座してる男の人…あなたのお父さんよね?」

「!!?」

「で、土下座している先にいる人、弦巻財団の総帥なの。どういう事かわかるわね? あなた…もうすぐ、〇〇議員の息子じゃなくなるのよ?」

 

 さくらの言葉に男は青ざめた。

 

さくら「〇〇議員の息子じゃなくなるなら、もう警察も変に気を遣わなくていいわよね?」

署長「は、はい!! ひっとらえろ!!」

「はっ!!」

「ふ、ふざけんなぁあああああああ!!! パパぁあああああああ!!! パパぁあああああああああああああああああ!!!」

 と、わめきながら男は数名の警察官に連れていかれた。

 

飛鳥「……」

 そしてさくらは残った警察官を睨みつけた。

 

さくら「何ボサっとしてんの。早くこの子を解放して頂戴!」

「し、しかし…」

さくら「これ以上林グループに逆らうっていうの?」

「ひ、ひぎィイイイイイイイイイイイ!!」

「畏まりましたぁああああああああ!!」

 

 こうして、飛鳥は無実を証明することができた…。

 

飛鳥(完全に地位や権力にモノを言わせてたけどね…)

さくら「あら、相手も権力を立てに好き放題やってたんだからいいじゃない。目には目を、権力には権力よ」

飛鳥「……」

さくら「それよりも後でうちの子やお母さんに電話してあげて頂戴。心配してたわよ?」

飛鳥「あ、はい…。ありがとうございました…」

 

 そして…。

 

ひまり「一丈字く~~~~ん!!! ごめんねぇ~~~~~~!!!」

 と、復帰するやいなや、ひまりに泣きながら平謝りされた。

飛鳥「いえいえ、やっぱり警察に口止めされてたんですね」

ひまり「うん…」

 と、ひまりが言うと、蘭と巴が激昂していた。

 

蘭「それにしても許せない。その警察と国会議員の息子…」

巴「そうだな! ひまりと一丈字にこんな目に遭わせたんだ!」

つぐみ「ま、まあ…。結果的に一丈字くんも帰ってきたんだし…」

飛鳥「ありがとうございます。まあ…」

 

 飛鳥が一息つくと、周りの男子生徒達が飛鳥を睨みつけていた。そう、無実を証明できたとはいえ、本当にひまりに痴漢してないかどうか、疑惑の目が向けられていた。

 

飛鳥「まあ、もう慣れましたけど」

モカ「可哀そうな飛鳥くん~よしよし~」

飛鳥「…どうも」

 モカが飛鳥の頭をなでると、飛鳥が複雑そうにした。

 

モカ「ひーちゃんも助けて貰ったんだから、肩もみとかしたら~?」

ひまり「そ、そうね! お疲れ様…じゃなかった、ありがと~」

 と、ひまりが飛鳥の肩を揉みだすと、飛鳥が更に困惑して、男子生徒達の嫉妬の炎が更に燃え上がった。

 

蘭「…ところでさ。一丈字を嵌めようとした警察や国会議員の息子ってどうなるの? やっぱり逮捕されるの?」

飛鳥「……」

 蘭の言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「…林グループが引き取るとの事です」

「え?」

 蘭達が反応すると、飛鳥が眉間にしわを寄せて、こめかみを手で押さえた。

 

飛鳥「……」

 

 

おしまい

 

 


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