千聖が何やら憔悴状態だったので、飛鳥は一旦皆をリビングに集めて話をする事にした。
飛鳥「お茶です」
千聖「ありがとう…」
そう言って千聖はお茶を飲むと落ち着いた様子を見せた。
飛鳥「落ち着きましたか?」
千聖「…ええ。少しだけ」
千聖が飛鳥を見つめると、何やら目に涙を浮かべていた。
飛鳥「相当疲れてますね…」
千聖「全くよ…」
すると千聖は涙を流し始めた。それを見て香澄達も慌てる。
彩「ち、千聖ちゃん。確かに悪いと思ってるけど、泣かなくても…」
千聖「貴女の事もあるけど、学校の雰囲気の事もあるのよ…」
彩「えぇぇ…」
自分の事を否定しなかった事に彩はなんでやと思ったが、学校の雰囲気と聞いて彩も困惑していた。彩だけじゃなくて有咲も気まずそうに視線をそらしていた。
飛鳥「…あれからどうですか?」
千聖「RoseliaとAfterglowが一週間以上出入り禁止になってから、すっかりギスギスしてるわよ。紗夜ちゃんがすっごい機嫌悪いの」
彩「それもそうだし、友希那ちゃんと蘭ちゃんは本当に皆から怒られてるって感じ…」
千聖と彩の言葉を聞いて、飛鳥は嫌という程想像できたのか、げんなりしていた。
有咲「…アタシも此間2組の様子見たけど、蘭ちゃんマジで肩身が狭そうにしてた」
飛鳥「そ、そうですか…」
ちなみにAfterglowとRoseliaは通話も禁止で大事な要件がある時は他のメンバーから伝えるようにルールが制定された。勿論蘭と友希那の父親2人も立ち会っている。
千聖「…まだいいわよ。友希那ちゃんは所々開き直ってる所があって、その度にリサちゃんに怒られてるわ」
千聖の言葉に飛鳥は目を閉じて眉間にしわを寄せた。本当にどうしてこんな事になってしまったんだと。そしてAfterglowとRoseliaはマジで大丈夫なのかと思い始めた。
飛鳥「…そうですか」
飛鳥は返事に困った。もう自分は学園を辞めた身であるので、あまり首を突っ込めないのだ。突っ込めた所であの変態共が頭のおかしい事を言いだすので、どうしようか考えていた。
千聖「で、ここからが重要よ」
飛鳥「あ、はい」
千聖「そんな状態でもあのバカ男子共が余計な事を言ってね…」
飛鳥「…どうなったんですか?」
千聖が目を閉じて悲しそうにしていた。
千聖「紗夜ちゃんが泣いちゃったのよ…」
千聖の言葉を聞いて飛鳥、有咲が青ざめた。香澄とはぐみは普通に驚いていたが、飛鳥と有咲は事の重大さを理解していたのだ。
千聖「…後はお察しの通りよ。日菜ちゃんがブチギレたのよ。『誰? おねーちゃん泣かしたの』って。それはもう低い声で…」
飛鳥と有咲は日菜が怒っている所を想像して血の気が引いていた。あの才能マンならぬ才能ガールを怒らせたらもうただじゃ済まないだろうと思っていたからだ。
千聖「その後はもう…ごめんなさい。自分で言っといてアレだけど、もうこれ以上は…」
彩「日菜ちゃんがあんなに怖いなんて思わなかった…怖い…怖いよぉ…」
彩もその場に立ち会っていたのか、涙目で震えていた。それを見て飛鳥と有咲は絶句した。
飛鳥「…お話は分かりました」
千聖「ごめんなさい。こんな話をして…」
飛鳥「それは構いませんが、当面はきちんとバンドに集中しましょうか」
千聖「そうしたいのだけど…」
千聖が飛鳥を見つめた。
千聖「そんな事言って貴方、広島に帰ったりしないわよね?」
千聖の言葉に皆が驚いた。
飛鳥「…上からの命令がない限り、こちらも動けないので」
千聖「それなら良いのだけど、今回の事が原因で帰るのだけはやめて頂戴」
飛鳥「はい」
すると飛鳥が頭をかいた。
飛鳥「…にしても、もう私の答えは決まっているのに」
千聖「そうだとしても、皆あなたの事が心配だし、何よりも…命を懸けて私達を守ってくれたじゃない」
千聖の言葉に飛鳥は視線をそらした。
千聖「仕事だったからっていうのもあるかもしれないけど、私たちの事をいつも考えてくれてた。林間学校でつぐみちゃんを助けた時も、変な噂が立たないように助けた後は名乗り出ずに大人しくしてたし、リサちゃん達がストーカーに襲われそうになった時も、色んな人に協力を求めて助けてくれたし、本当に私たちを守ろうとしていたのが伝わったの。そしてあの友希那ちゃんのお父さんも件もそう。自分を犠牲にしてまで悪い能力者…私達パスパレの元マネージャーをやっていたあいつと戦ってくれた。何かせずにいられないのよ」
千聖の言葉に飛鳥は俯いた。
香澄「そうだよ! 友希那さんのお父さんの件なんか、死んじゃったと思ったんだから!」
はぐみ「はぐみ達の見てない所でずっと守ってくれてたんだって…」
有咲「……」
香澄達の言葉を聞いて飛鳥は一息ついた。
飛鳥「…千聖さん」
「!」
飛鳥が千聖の事を名前で呼んだので皆が驚いた。
飛鳥「何度も言っていますが、私もやる事があって答えも変わらず、貴方達の想いには答えられません」
千聖「…分かってるわ」
飛鳥「本当ならもう家にも来ないでほしいんです。あなた方が元々持っていた夢をかなえて欲しいから…」
千聖「助けた意味もなくなるから。そうでしょう?」
千聖の言葉に飛鳥が目を開いた。
千聖「あなたの意志が堅い事は皆分かってるわ。そうじゃなきゃ今までやってこれなかったし、そういう所を好きになったもの。けどね」
飛鳥「……」
千聖「今はあなたの事を好きでいさせて。お願い」
千聖の言葉を聞いて飛鳥は静かに目を閉じて承諾した。
千聖「ごめんなさい。色々話が長くなったわね」
飛鳥「いえいえ…。ですが、紗夜先輩が心配ですね」
千聖「…紗夜ちゃんだけ?」
飛鳥「…そんなに深刻なんですか?」
自分の事を心配してくれない事に拗ねる千聖だったが、飛鳥は彼女の強さを信頼していたのだ。だが、千聖の様子を見て飛鳥はもうダメそうだと考えていた。
有咲「正直言うな。戻ってきてください」
はぐみ「そうだよ! 飛鳥くんがいたら学校楽しいもん!」
千聖「今となっては日菜ちゃんのフォローもしないといけないし、もう限界なの!! お仕事出来ない!!」
千聖もフォローに疲れ始めたのか、幼児退行し始めた。これを見て飛鳥は学園がかなり深刻な状態になっているんだと思ったと同時に、学園や生徒の将来が心配になった。かといって自分がいなくても何も問題がないのなら、広島に帰った方が良さそうとも思っていた。
飛鳥(ドラえもんものび太くんが最初から自分の力で何とかしようとしてたら話成り立たんもんなぁ…)
飛鳥は一息ついた。
飛鳥「戸山さん」
香澄「!」
飛鳥「それから北沢さん、丸山先輩」
はぐみ「なあに?」
彩「どうしたの?」
飛鳥「…もう何も言わずに勉強しましょう。まずそこからです」
そう言って飛鳥は香澄達に勉強をさせるのだった。紗夜たちの負担を避けるためにも…。
飛鳥「第9シリーズもありがとうございました。気のすむまで続きますので、見たい人だけ見てください」
千聖「そういえばあこちゃんも今猛勉強させられてるみたいよ。泣きながら」
有咲「そういや今度赤点取ったら殺されるみたいな事言ってた」
飛鳥「……」
おしまい