第459話
ある日の事。弦巻家の黒服たちが話があるという事で、飛鳥は家で待っていた。今回は不法侵入じゃないだけまだマシなのだが…。
「突然の御訪問申し訳ございません。本日は一丈字様を実験台…ではなく、日ごろの感謝の気持ちとして弦巻財団の新製品をお届けに参りました」
飛鳥「ありがとうございます。旦那様に今度の慰安旅行ニュージーランドから近所の格安ホテルに変えて貰うように進言しときますね」
「やめて!!?」
「ニュージーランドに行くって言っちゃったよ!!」
「あと此間のボーナスの下りも割と真剣に考えてて死ぬかと思った!!」
飛鳥の発言に黒服たちが慌て始めた。
飛鳥「勘弁してくださいよ。ただでさえこのご時世お金持ちがやらかすと、庶民からの反感も凄いんですよ?」
思った他堂々と言う飛鳥に黒服たちは肝が据わっていると思った。
「…話は戻しますが、お嬢様が日々笑顔でいられるのはあなたのお陰でもあるのです」
飛鳥「……」
「そんなあなたの為に我が弦巻財団は予算数億をつぎ込んだ新製品を開発したのです」
飛鳥「もうそのお金を保育士さんや介護士さん達のお給料にしてほしいくらいですね」
「安心してください。我が弦巻財団が経営している保育園、介護施設については環境を整えており、今は応募が殺到している位です」
そう、今弦巻財団が関わっている保育園や介護施設においては、今保育園や介護施設が抱えている「人員が足りない」「給料が労働と見合っていない」「環境が整っていない」という問題を全てクリアしており、その仕事をしている社員は他の社員よりも給料が高くなるというシステムを導入した。その結果、働いている社員の給料は高くなり、利用者も安心して子供や親を預ける事が出来るというwin-winの関係となったのだ。
勿論一番大事な労働者の教育も徹底している。
これも飛鳥がこころに冗談のつもりで言ったのが全ての始まりだったのだが、飛鳥自身はまさか自分の発言でこんな事になっているとは思いもしなかった。
「さて、話が逸れましたが私達が贈呈するのはこのアロマミストです」
飛鳥「……」
アロマミストが渡されて飛鳥は無表情になった。
飛鳥「またなんか仕込んでるでしょう」
「いえいえ、今回は安眠効果のあるアロマです」
飛鳥「…そうですか」
飛鳥は此間した事を忘れてはいなかった。先日もアロマを炊いてこころが母性たっぷりになって襲われそうになった事を。
まあ、いざとなれば超能力があるし、これでまたやらかしたら慰安旅行をニュージーランドから近所の格安ホテルに変えて貰おうと思っていた。
***
そんなこんなでアロマオイルを貰った飛鳥だったが、結局使う事がなさそうでどうするか迷っていたある日、
「大丈夫ですか!? 松原先輩!」
「飛鳥くん…」
「チッ!!」
花音が自宅付近でストーカーに遭い、それを感知した飛鳥がすぐに駆け付けてストーカーから花音を守った。フードを被った男は舌打ちをしてそのまま逃亡した。
花音「あっ…」
飛鳥「後追いは不要です。それよりもうちに来てください」
飛鳥が花音を自宅のマンションに連れて行くと、飛鳥は関係者に連絡することにした。
飛鳥「…まず、親御さんに連絡しないと」
花音「あ、今うちの家族いないの…」
飛鳥「メール位は出来るでしょう」
花音「あ、そ、そうだね…」
すると花音は親にストーカー被害に遭った事を連絡すると、すぐに親から連絡が来た。
花音「あ、も、もしもし…」
花音は親と電話をした。親はかなり心配している様子だったが、今から帰ろうにも明日までかかるとの事だった。飛鳥はとてつもなく嫌な予感がした。
そして飛鳥の家にいる事を告げると、父親の方は少し困惑していたが、母親が飛鳥と話をさせて欲しいと言ってきたので、飛鳥に代わる事にした。
飛鳥「お電話代わりました。一丈字です…」
そして飛鳥は花音の両親と電話をする事になった。父親からは今まで花音の事を助けてくれた事に関しては感謝しているが、寝室は極力別々にしてほしいなどと釘を刺され、母親からは妊娠させたら責任を取って貰うと言われた。
飛鳥「その件に関しましてはご心配は不要ですし、緊急事態なので娘さんの事をもっと心配してください。凶器を持ってたかもしれないんですよ」
「ご、ごめんなさい…」
この後、ハロハピと学園の関係者に一通り連絡すると、
こころ「それは心配だわ! 今からそっちに行くわね!」
飛鳥「こころ」
こころ「何かしら?」
飛鳥「良かった。その事なんだけど自分の家にいてくれる?」
こころ「あら、どうしてかしら?」
飛鳥「弦巻財団がいるから大丈夫だと思うんだけど、犯人がうろついてて危ないし、何かあったらオレが怒られるから」
飛鳥がそう説明すると、
花音「こころちゃん。飛鳥くんちょっと他の皆にも連絡してて今忙しいの」
こころ「そうなのね。分かったわ」
飛鳥「とにかく今回は大まじめだし、犯人が捕まったとしても、犯人が一人とは限らないからね。一応警察にも連絡してパトロールを強化してもらうようには頼むけど、もしダメなら弦巻財団に頼む」
こころ「あら、うちの人たちを使えばいいじゃない」
飛鳥「…なんかあった時がややこしいからさ」
と、飛鳥は色々警察のめんどくささに頭を悩ませていたが、一旦こころには納得してもらった。
そしてそのまま花音は泊まる事となったのだが…。
『紛らわしい事をしないでください』
『きょう未明、迷子の少女を救出した男性に対して吐き捨てたこの警察官に対し、○○警察署は謝罪文を表明することにしました』
飛鳥と花音はニュース番組を見ながら食事をしていたが、SNSで誰かが取った警察官の暴言についてニュースされていた。迷子になっていた子供を男性が助けたのだが、子供の両親が誘拐と勘違いして通報し、警察に通報した。周りの人によって誤解は解けたが、両親はそそくさと逃げ出し、警察官も男性に対して注意していた。
花音「ひ、酷いね…」
飛鳥「もうすっごい迷惑です」
花音が警察官の対応のひどさに対してコメントすると、飛鳥がすっごい嫌そうな顔をしながらそう言った。
飛鳥「親も親で最近行儀悪い人多いからなぁ…」
花音「……」
子供を盾にSNS上で吠えまくる親に対して飛鳥はげんなりしていた。どこもかしこも不平不満を漏らす日本人に対し、飛鳥はこの国は果たして大丈夫なのかと思い始めた。
飛鳥「まあ、それだけこの国が平和だって事ですね」
と、自分に言い聞かせるようにつぶやくと、花音は飛鳥も似たような事があったんだなぁ…と困惑していた。
飛鳥「あ、それはそうと料理どうですか?」
花音「うん! 凄く美味しい!」
夕食は飛鳥が作っていたのだが、メニューは下記の通りだった。
・ 魚の煮つけ(中華風)
・ ライス
・ 玉子スープ
・ エビチリ
・ 特製点心
飛鳥「それは良かったです」
花音「でも、ごめんね。料理作って貰っちゃって…」
飛鳥「いえいえ。それよりもこういう時こそ食事を取らないといけませんのでね」
飛鳥の言葉に花音が反応した。
飛鳥「あ、一応デザートも作ったので良ければ」
花音「デ、デザートも!? ふぇええ…」
と、そのまま食事にありついたが、花音は飛鳥の技術力の高さに驚いていた。
そんなこんなでデザートであるカップケーキを食べながらゆっくりしていると、飛鳥のスマホがなった。
飛鳥「…千聖さんだ」
花音「え?」
飛鳥が電話に出た。
飛鳥「もしも…」
『もしもし飛鳥くん!!? 花音がストーカーに遭ったって本当なの!?』
飛鳥「ええ。私の家の近くで起きてまして、今保護している最中です」
千聖「花音も一緒なのね!? ちょっとテレビ通話にして頂戴!!」
飛鳥「あ、ちょっと待ってくださいね…」
そう言って飛鳥が機材を操作すると、テレビに千聖の顔が映ったが、他のパスパレメンバーもいた。
飛鳥「お疲れ様です…って、パスパレ全員いらっしゃったんですか!?」
麻弥「丁度仕事終わりだったんス…」
イヴ「カノンさん! 大丈夫ですか!?」
花音「う、うん…大丈夫だよ…」
イヴが心配そうにしていたので、花音が苦笑いしながら答えた。そして飛鳥は現在の状況をパスパレメンバーに説明した。
飛鳥「…警察や弦巻財団の人に犯人捜索をお願いしておりまして、松原先輩のご家族が今遠くに外出しておりまして、戻られるのに明日かかるそうです。その為、一晩泊める事となりました」
千聖「それは良く分かったわ。非常事態だものね」
飛鳥「ええ…」
千聖の言葉に飛鳥が相槌を打つと、
日菜「ところで晩御飯ってどうしたの?」
飛鳥「私が丁度残ってた食材で作りました」
日菜「飛鳥くんが作ったの!?」
飛鳥「え、ええ…。そうですが…」
思った以上に驚かれたので、困惑する飛鳥だった。
彩「それで味はどうだったの!? 花音ちゃん!」
花音「とっても美味しかったよ。カップケーキも作ってくれたし…」
花音の言葉にパスパレは飛鳥の方を見た。
彩「さ、最近の男の子って本当に料理が出来るんだね…」
千聖「今は男は仕事、女は家庭って時代じゃないもの。とはいえ、これはちょっとマズいわね…」
流石に女として何か負けたくないと思っていた彩と千聖だった。
日菜「えー。いいなー。今からそっち行っていい?」
麻弥「日菜さん!!」
飛鳥「非常事態なもんで…」
飛鳥が遠回しに断りを入れると、
日菜「じゃあ今度料理作ってよ。材料費出すから」
飛鳥「えっ」
千聖「それはいいアイデアね」
と、パスパレメンバーが乗り気になっていると、
「その事だけど、当面はずっとロケだから家行ってる暇ないよ?」
パスパレ「えっ…」
外からマネージャーの声が聞こえてきて、5人が絶句した。
「あ、ごめんなさいね一丈字さん。そういう事なので気にしないでください」
そう言ってマネージャーは通話を切ると、電話を切られるのを見て飛鳥と花音は恐らく千聖が文句を言ってそうだと想像して困惑していた。
そしていよいよ就寝時間がやってきた。
飛鳥「そろそろ寝ましょうか」
花音「う、うん…」
飛鳥「部屋は別々にしましょうか」
花音「一緒じゃないの?」
花音の言葉に飛鳥は一瞬言葉を詰まらせた。
飛鳥「男性側から一緒に寝ましょうって言ったらセクハラになるもんで」
花音「大丈夫だよ。私そんな事しないよ?」
飛鳥「まあ、最悪皆から縁を切られますけど、今まで私がやってた事を全部やって貰うので泣いて貰います」
花音「うん。本当に大丈夫だよ…」
もしかしたら一番ヤバいのは飛鳥かもしれないという事態に花音は青ざめていた。
**
そんなこんなで一緒の部屋で寝る事となった飛鳥と花音。
飛鳥「川の字になって寝ましょうか。2人ですけど」
花音「ありがとう…」
こうして2人で就寝する事となったが、花音が飛鳥の布団に自分の布団をくっつけようとしていた。
飛鳥「…松原先輩」
花音「あ、え、えっと…////」
飛鳥「少なくともですね。万が一の事が起きて私に冷たい態度を取った奴らは泣きを見て貰いたいですね」
花音「…そ、そう」
飛鳥「松原先輩。私は先輩が思ってるような強い人間ではございません」
花音「も、もう寝よう? 私が傍にいるから大丈夫だよ…」
そう言って飛鳥と花音が一緒に寝る事となったのだが、飛鳥は超能力ですぐに花音を眠らせた。
飛鳥「おやすみなさい。松原先輩」
そう言って飛鳥がリビングに戻ると、黒服たちがいた。
飛鳥「不法侵入ですよ」
「いえ、今回は大まじめな話があるのです一丈字様。お座りください」
飛鳥「…分かりました」
そして飛鳥は黒服たちの話を聞いたのだが、犯人が捕まったというのだ。
「ずっとマンションをウロウロしてましてね。簡単に捕まえられました」
飛鳥「…動機は?」
「ええ。やはり花音様たちを狙っていたようです。もしかしたら他の方々が来られるかもしれないと思い、ターゲットを変えたとの事でした」
黒服たちの言葉を聞いて飛鳥は困惑していたが、それでも事件解決に尽力してくれた黒服たちにお礼を言った。
飛鳥「ありがとうございます」
「いえいえ。お礼なら…」
「……」
「あのアロマオイルを使ってください」
飛鳥「それよりもニュージーランド行きを築地行きに変えて貰うように進言しときますね」
「ごめんなさい」
「築地も良い所ですけど、ニュージーランド行きたいです」
こうして犯人は捕まり、翌朝花音の家族が迎えに来て無事に引き取られた。だが、花音としてはすぐに眠ってしまったので、飛鳥が超能力を使ったと判断して軽く睨みつけたが、飛鳥は視線をそらした。
飛鳥「今日もいい仕事をしたぜ…」
飛鳥はあの後一人で寝ずの番をしていて、寝不足気味だった。
飛鳥「寝よう…」
おしまい