それはある日の事だった。
「Hello。ネス! よく来たわね!」
「……」
飛鳥は今日、とある高級マンションの最上階に来ていたのだが、ここにはガールズバンド「RAISE A SUILEN」のスタジオが存在している。そして目の前にはRAISE A SUILENのプロデューサー兼リーダーである珠手ちゆことチュチュがいた。
「申し訳ございませんネス様。チュチュ様がどうしても本日ネス様にお会いしたいとの事で…」
と、チュチュの子分的存在でRASのキーボード担当であるパレオが申し訳なさそうにしていた。
飛鳥「まあ、アポを取ってくれただけまだいいんだけどね…。これが強引に埒なんて事になったらパスパレに報告…」
パレオ「だ か ら で す」
飛鳥の言葉にパレオがものすごい剣幕かつ滝のような汗を流して言い放った。パレオはパスパレの大ファンであり、此間生で遭遇したら死にかけた。
パレオ「パスパレちゃんに嫌われた時の事を考えただけでパレオは…」
飛鳥「……」
チュチュ「戻ってきなさい!」
深く絶望するパレオを見て飛鳥はどこかで見た事があるなあと思っていたが、チュチュは自分抜きで話をしていたのが気に食わないのか吠えた。
チュチュ「さて、本題に戻るけどネス! 今日は私たちのスキルアップを手伝ってもらうわ!」
飛鳥「私で良いんですか?」
チュチュ「愚の骨頂よ。あなたの実力は前から知っているわ」
チュチュの言葉に飛鳥は困惑していた。
チュチュ「音楽の知識や技術もそうだけど、あなたには女の魅力を上げる能力が備わっている。ガールズバンドとして舞台に上がる以上、その姿が大衆の目にさらされるのは逃れられない。だから女としての魅力を磨く必要があるのよ」
飛鳥「まあ、それは一理ありますね」
チュチュ「だから…身体接触が必要となるわ!」
飛鳥「それは理解できないですね」
チュチュの理論に理解できる部分と理解できない部分があり、飛鳥は腕を組んで困っていた。
飛鳥「年頃の娘がべたべた異性にくっつくものではありませんよ」
チュチュ「年寄りみたいなことを言うのね」
飛鳥「それを言うのであれば、あんまりくっついてると悪質なファンが自分も行けるだろうと思って付き纏いますよ? プロデューサーをやっているあなたならそういうファンの事も知っている筈ですが…」
チュチュ「…確かにそうね」
パレオ「現にパスパレちゃんに近づく輩が数えきれないほど…」
パレオの言葉を聞いて飛鳥は学園内にいた悪質な変態共を思い出した。もし彼らの話をしたらパレオはどうなるのか気になる所だが、リスクは負いたくないので話さないことにした。
チュチュ「って! そんな話はどうでもいいのよ! そもそもあなた、こんなに可愛い女の子達と触れ合えるってのに、喜ばない訳!?」
飛鳥「その分変態達も絡んでくるし、訳の分からない言いがかりつけてくるし、運が悪いと誰も助けてくれないし、申し訳ないんですけど正直マイナスなんですよ…。まるでランボーになった気分です」
飛鳥の言葉に空気が止まると、すっかり空気が重くなってしまった。
パレオ「なんてかわいそうなネス様…」
飛鳥「何も知らない人間が適当な事を言うと、人の人生を狂わせることがある。だから勉強って必要なんですよね…」
チュチュ「戻って来なさい!!」
飛鳥はもう相当疲れているのだと思い、チュチュは困惑していた。そんな中、他のメンバーがやってきた。
「こんにちは飛鳥」
飛鳥「あ、こんにちは和奏さん…」
「ど、どうしたんだ飛鳥」
「元気がないようですが…」
飛鳥「まあ、色々ありましてね…」
チュチュ「パレオ。今回の企画の趣旨を説明しなさい!」
パレオ「はい、チュチュ様!」
良く分からない状況にレイヤ、マスキング、ロックは首を傾げたが、企画を説明するとともに飛鳥に関する事情を説明した。
チュチュ「ちなみにネス。報酬は払うつもりよ?」
飛鳥「あ、そうですか…」
チュチュ「…元気出しなさいよ」
レイヤ「花ちゃんから聞いてたけど…相当大変だったんだね…」
ロック「私も一度被害に遭いましたけど、そこまで酷かったなんて…」
本当に元気のない飛鳥を見てチュチュたちは困惑していた。
チュチュ「まあ、私たちの体に触れる際、あなたの好きなシチュエーションで触れさせてあげるわ」
飛鳥「あなたを椅子にする事も可能ですか?」
チュチュ「やめて?」
飛鳥の言葉にチュチュが思わずツッコミを入れた。
飛鳥「そもそもそんなはしたない事を言うもんじゃありませんよ」
マスキング「まあ、それはそうとお前…本当に女に興味ないのか?」
飛鳥「ない訳じゃないですよ。結婚するなら女性が良いですし」
飛鳥の言葉に皆が驚いた。それなりに意識はしてるんだなと。
飛鳥「ただもう今はそれ所じゃないんです。今はもうランボーになった気分で…」
チュチュ「ランボーから離れなさいよ!!」
飛鳥「空港で迫害した奴ら全員戦場にぶちこんで…」
「怖い怖い怖い怖い!!!」
飛鳥の言葉にRASがツッコミを入れた。皆映画の内容を知っているのか慌てていた。
マスキング「そ、相当疲れてるみてぇだな…」
レイヤ「そ、そうだね…」
チュチュ「こ、こうなったら強硬手段よ! 皆…」
チュチュが何かしようとした次の瞬間、飛鳥のスマホがなった。
飛鳥「もしもし…」
日菜『あ、もしもし飛鳥くん!?』
電話の相手は日菜でパレオがとてつもなく緊張していた。
飛鳥「どうかしました?」
日菜『あのさー。今日ロケやってるんだけど、彩ちゃん以外の下着が誰かに盗まれちゃって…』
飛鳥「警察に相談しましょう」
パレオ「パ、パスパレちゃんの下着を盗んだですってェエエエエエエエエエエエ!!!?」
日菜の言葉に飛鳥が呆れると、パレオが発狂していた。
日菜『あれ? この声パレオちゃん?』
飛鳥「今RASのスタジオにいまして…」
日菜「あ、そっかー。取り込み中だったんだね。ごめ…」
パレオ「いえ、パスパレちゃんの尊い下着が盗まれたのであれば、早速捜査する必要があります! ネス様行きましょう!」
飛鳥「え…」
チュチュ「ちょ、ちょっとぉ!?」
パレオ「大丈夫ですよチュチュ様。ネス様は…パレオが癒しておきますので」
チュチュ「いや、そういう事じゃないのよ! RAS全体がレベル上がらなくて意味がなくて、あんただけレベルが上がっても仕方ないのよ!!!」
しかし、パレオは飛鳥を連れていってしまった…。
ちなみに彩以外の下着は強風により洗濯ばさみから外れて飛んで行ってしまった事が判明し、
「なんだか良く分からないけど女の子の下着が飛んできた!」
「いやっほう!!」
「この下着絶対可愛い女の子がつけてそう!」
「良い匂いもするし!!」
近くにいた別の学校の男子生徒達が拾って興奮していたという。
飛鳥「…そもそもなんで干してたんですか?」
日菜「いやー。今日は川でロケをしてたんだけど、皆びしょぬれになっちゃってー」
麻弥「ていうか飛鳥さん! ここまで来てくれたんですか!?」
飛鳥「ええ、まあ…」
そう言って飛鳥は隣で尊死しているパレオを見つめた。
おしまい