ある日の事だった。
「いやー。ラーメン三郎が混んでて食べれそうになかったね~」
飛鳥、モカ、巴の3人が歩いていた。
モカ「モカちゃんお腹ペコペコ~」
巴「しかし、この辺にラーメン屋はないしなぁ…」
飛鳥「……」
飛鳥は私用で出かけていたが、その途中でラーメン三郎に行こうとしていた巴、モカの2人と遭遇し、モカによって強引に連れていかれた。飛鳥自身は危惧していたがモカの「3人だから問題ない」という言葉を信じ、同行する事にした。
だが、ラーメン三郎は予想外の大盛況で、並ぶには一時間以上かかる事から、今回は断念することに。
しばらく歩いていると…。
「ふざけんなよコラァ!!」
「!?」
という怒鳴り声がした。
飛鳥「何だ?」
巴「あっちの方からだ!」
と、3人が移動すると、そこには屋台があり、白い制服をきた若い男が、スーツを着た男2人に怒声を浴びせていた。
「そんなにラーメンが食いたきゃラーメン屋に行きやがれ!! うちは蕎麦屋だ!!」
「ひ、ひぃいいいい!!!」
「そ、蕎麦なんて若い奴は食うかよ!!」
と、男二人は捨て台詞を吐いて去っていった。
飛鳥「穏やかじゃないですね…」
巴「しかし、あんな所に蕎麦の屋台なんて珍しいな…」
飛鳥「いや、屋台自体が珍しいですけどね…」
周りを見渡すと、蕎麦屋の他に屋台はなく、ポツンと立っていた。
モカ「お腹空いたし~。あそこにしな~い?」
飛鳥・巴「え」
モカ「ああいうのってきっと、腕に自信があるんだよ~。多分」
飛鳥「多分って…」
巴「まあ、確かに面白そうだな! 行ってみようぜ!」
飛鳥「えー…。まあいいや…」
飛鳥は困惑しながらもモカと巴に合わせる事にし、蕎麦屋に近づいた。
「あ?」
飛鳥「あ、蕎麦作ってもらえますか?」
「うちは蕎麦屋だよ。ラーメン食いたかったら他所に…」
モカ「お蕎麦食べたいって言ってるんですけど~」
「…え?」
主人は驚いたように飛鳥達を見た。
飛鳥「あ、もしかしてもう店じまいですか?」
「とんでもねぇ!! どうぞどうぞ!!」
と、主人は急に機嫌が良くなって3人が案内した。
「何にいたしやしょう!」
飛鳥「えーと…ざる…じゃなかった、もりそば大盛りで。2玉」
巴「じゃあアタシもそれで!」
モカ「あたしも~」
「かしこまりやした! もりそば3丁大盛り!!」
主人はウキウキでもりそばを作り出した。
「いやー。こんな時期にもりそばなんてお客さん、通だね!」
飛鳥「え? あ、そうですか…?」
テンションの高い主人に、飛鳥が困惑したが、主人の持っているそばを見て驚いた。
飛鳥「…生そば?」
「おっ! よく分かったね! 駅の立ち食いソバはゆでた面を温めなおしてるけど、うちは本格的に作ってるんだ!!」
巴「それじゃあこの蕎麦は手打ち…」
「そうなんだよ! しかも小麦粉のつなぎなんて使わず、そば粉しか使ってないんだ! しかも国産だ!」
モカ「かなり自信があるようだね~」
「そりゃあ勿論よ!!」
しばらくして、盛り蕎麦が3人分完成された。
「へい! 盛り蕎麦3丁あがり!!」
と、差し出された。
巴「確かにいい香りがするな!」
モカ「楽しみ~」
飛鳥「…それでは、頂きます」
モカ「いただきまーす!」
巴「いただきます」
そう言って3人はそばを実食した。
巴「美味い!」
モカ「おいし~」
巴とモカは素直に褒めていた。
「へへへへ!! そうだろう!! 何しろそばも水も本物だからな!! 真ん中のお嬢さんはどうだい!?」
飛鳥「あ、私男です」
「えっ!?」
主人が驚くと、モカがぷぷっと笑った。
飛鳥「とても美味しいですよ」
飛鳥が苦笑いしていうが、主人の表情は険しかった。
飛鳥「…あの、何か」
「…いや、お客さん。嘘をついてるな」
飛鳥「!?」
「食べたときの反応を見させてもらったんだが、どうも美味そうに感じなかった。何かあるのか!?」
飛鳥「……」
飛鳥が困惑した。
巴「おい、一丈字…」
モカ「どうしたの? 虫が入ってた?」
飛鳥「いや、そういう訳じゃないんですけど…」
飛鳥が主人の方を見た。
飛鳥「美味しい事は美味しいんです。ただ…」
その時だった。
「あのー、すいません」
「!!?」
警察官が2人現れ、警察官を見た主人は青ざめた。
「あなたですね。最近無許可で営業をしているという蕎麦屋は」
「通報があったんですよ」
「ら、来週通る事になってるんすよ!!」
巴「って! 通ってないなら営業したらダメじゃないか!」
モカ「道理でこんな所に屋台がある訳だ~」
「と、通るって分かったら1日でも早く営業したくなっちまったんだよ!」
「見苦しい言い訳だな」
「守らなかったら営業できなくなることくらい分かるだろう!」
「ちょっと署まで来てもらおうか!」
「そ、そんな…勘弁してくださいよぉ」
警官に迫られて困惑する主人。それを困った様子で飛鳥達は見ていた。すると警官の一人が飛鳥達を見た。
「君たちは客かね?」
飛鳥「あ、はい。初めて来たんですが…」
「そうか…。それは災難だったね」
「だが、この店は営業許可が出ていないんだ。ここに来るのはもうやめなさい。さあ、一緒に来てもらうぞ!!」
「そ、そんなぁ! 待ってくれ~!!!」
と、主人は連行されていった。
モカ「お蕎麦だけでも食べて帰ろ~」
巴「そうだな。残すの勿体ないしな。で、一丈字。一体何だったんだよ…」
飛鳥「…そばツユが麺に負けてるんですよ」
巴「負けてる?」
モカ「あ~。言われてみればちょっと薄いかも~。麺は美味しいのに~」
飛鳥「…まあ、営業許可が出てないんじゃ、仕方ないですね」
巴「だな」
こうして3人は蕎麦を完食すると、屋台を後にした。
後日…
飛鳥(本当にもったいなかったなぁ。あの蕎麦屋…)
と、飛鳥が考えていると、着信が鳴り、飛鳥がスマホを確認すると、以前うなぎ屋の件で仲良くなった松永警部から来ていた。
飛鳥「松永警部?」
飛鳥が電話に出た。
飛鳥「もしもし…」
「おう! 神楽の坊主か!! オレだ!! 今学校か!?」
飛鳥「あ、はい」
「終わったら即刻オレがいる警察署に来てくれ! パトカーをそっちに寄越す!!」
飛鳥「!!?」
つづく