前回までのあらすじ
警察署に呼ばれた飛鳥は店屋の主人に本音を打ち明けた。そして頑なに認めようとしない店主に対して、松永は飛鳥が主人が打ったそばにあうつゆを作るように提案した。
飛鳥は仕方なしにそばつゆ作りをすることになったのだが…。
飛鳥「一応、宇田川さんと青葉さんにメールしとくか…」
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松永から主人が打った生そばを受け取り、つゆ作りを試した。
飛鳥(返しは念のため余分に作っとこう…)
と、飛鳥は醤油と砂糖を溶かした湯を買っておいた複数の壺に入れた。1日寝かした分、3日寝かした分と日によって取り出せるようにしておいた。
飛鳥「で、次は出汁だな。あの人のは鰹節を薄く切ってたからなー…」
と、飛鳥は大きな鍋に水をかけて沸騰させ、その中に厚削りした鰹節を投入した。
飛鳥(一番粉(※ソバの実の胚乳の中心部を砕いたもの)を主につかった蕎麦ならいいけど、あの蕎麦は十割蕎麦だから味も香りも結構強い。それに合うつゆを作るには、出汁を徹底的に煮詰めて取り出す必要がある)
と、そんなこんなしているうちに、そばつゆが完成した。
飛鳥「これならいけるかもしれない…」
飛鳥がそう呟いたその時、スマホが鳴った。
飛鳥「もしもし…」
「もしもし飛鳥!? あたしよ! そばツユは完成できたかしら!?」
飛鳥「たった今完成したよ」
「分かったわ! それじゃ今夜おそばを食べましょう!」
飛鳥「それはいいけど、用意してくれって言ったものは用意できた?」
こころ「もっちろんよ!!」
飛鳥「分かった」
こころ「それじゃ、飛鳥のマンションに行くわね!」
飛鳥「…1階にしてね」
と、試食会は飛鳥のマンションの1階にある厨房で行われる事になった。ちなみに住居者であればだれでも使ってもよい。
午後6時。飛鳥が1階のエントランスで待ってると、こころ達が現れた。
こころ「飛鳥! 来たわよ!」
飛鳥「ああ。いらっしゃい…って、いっ!!?」
こころの他にも松永、巴、モカがいたので飛鳥は驚いた。
モカ「お蕎麦食べに来たよ~」
巴「何か手伝えることはないかと思ってな!」
飛鳥「あ、ありがとうございます…」
巴の言葉に飛鳥が苦笑いすると、店の主人も松永の後ろから現れた。
飛鳥「……!」
松永「さあ蕎麦屋。もりを作るんだ!」
こころ「用意したものは全部あるわよ!」
「へ、へい!!」
飛鳥「……」
厨房で主人が蕎麦を茹で、飛鳥がそばつゆを用意した。
飛鳥「つゆは3種類あります」
巴「どう違うんだ?」
飛鳥「返しっていう醤油と…」
と、飛鳥は返しの説明をしていて、主人はそんな飛鳥を見ていた。
そしてもりそばが人数分出来上がった。
こころ「それじゃ頂くわね!」
モカ「いただきま~す」
巴「頂きます」
と、こころ達がそばを食べた。それを飛鳥と主人が見守る。
こころ「とっても美味しいわ!!」
巴「言っちゃあ悪いけど…前に食った時と全然違う!」
モカ「これなら3玉いけるね~」
「……!!」
巴たちの言葉に主人は衝撃を受けた。
飛鳥「あ、どうぞ」
飛鳥がそばつゆが入った器を差し出し、主人も食べてみた。
「……!!」
松永「ほう。確かに中々の出来だな」
松永がそう呟くと、主人はうなだれた。
「完敗だ…」
飛鳥「……」
「オレが作った蕎麦つゆよりも遥かに美味ぇ…」
すると主人は飛鳥を睨んだ。
「どうしてだ!! どうやったらこんなつゆが出来るんだ!!!」
と、飛鳥の両肩をつかんだ。
松永「ようやく教わる気になったみてぇだな」
「!!」
松永「坊主。教えてやれ。そばツユの作り方をな」
飛鳥「あ、はい…」
飛鳥が困惑しながらも、主人にそばツユの作り方を教える事にした。
飛鳥「かえしは最低でも1日は寝かせるんですよ。まあ、3週間くらい土の中に埋めたら味が良く絡むって言われるんですけど、さすがにちょっと無理でした」
「いや、あそこまで絡むなら十分だ…」
飛鳥(本当は超能力を使って無理にでも染み込ませたら美味しかったかもしれないけどねぇ…)
だが、そういう事が出来るのは飛鳥だけである為、出来なかった。
飛鳥「で、だしなんですが、鰹節を厚削りにしたものを90分くらい煮詰めます」
「90分も!!?」
飛鳥「7分目が3分目になるまでが目安ですね。ところで薄削りにしていた理由って何かあるんですか?」
「…テレビとかで鰹節は薄く削ってるのをよく見てたから、てっきり」
松永「本物しか出さねぇってんなら、妥協したらダメだろう」
松永の言葉に主人は目を閉じて項垂れた。
「で、だしをこしたら、寝かせた返しと共に鍋に入れて、煮立たせないように、じっくり煮込んで…まあ、私の場合は土たんぽに入れてますね」
「土たんぽ?」
飛鳥「土で出来た器の事ですね。これに煮立たせたつゆを入れて24時間寝かせます」
巴「24時間も!?」
飛鳥「ええ。それで24時間たったら、45分湯煎して、ふたをしてまた24時間。これで完成です」
モカ「そんなにかかるんだね~」
飛鳥「ええ。ですが、そんなもんですよ」
飛鳥の言葉に主人が項垂れた。
「オレは…」
「?」
「オレはなんてバカだったんだ…!! つまんねぇ意地張ったせいで、高校生に数日間もこんな苦労をかけさせちまって…」
飛鳥「あ、それは私が勝手にした事なので、お気になさらず」
飛鳥が苦笑いした。
飛鳥「あ、えっと…ご主人」
「!」
飛鳥「こんな事もあろうかと、そばツユの作り方を教えてくれるお店を探しておきました。是非行ってみてはどうでしょうか」
こころ「私の家でいつも年越しそばを作って貰ってる所よ!」
飛鳥(東京でもトップクラスの老舗なんだよなー…。こころの頼みならって聞いてくれたんだっけ…)
「…一丈字さん」
主人が飛鳥の名前を呼ぶと、飛鳥が笑みを浮かべた。
モカ「おじさん。教わる事は別に恥ずかしい事じゃないよ~」
「!?」
モカが口を開いた。
モカ「あたしもバイトしてるけど~。教えてもらうのに性別も年齢も関係ないよ~? それよりも一番大切なのは、おそばをお客さんに美味しいって食べて貰う事なんじゃないかな~?」
「……」
モカの言葉に主人は観念したように目を閉じた。
「へへ…。その通りだ。よし! もう一度一からやり直すぞ!!!」
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一丈字飛鳥です。私のそばツユを試飲してもらってから数日後、蕎麦屋の主人・竹林さんはそばツユをもう一度作り直して、松永警部にもりそばを食べて貰いました。
松永「坊主が作った奴に比べりゃまだまだだが、これなら及第点だ。これが営業許可証だ! とっとけ!」
若林「は、ははーっ!!」
結果は大成功。色んな蕎麦屋を渡り歩いて、研究をしたそうです。
で、結果的にどうなったかというと…。
飛鳥「わー。こりゃあ大行列だな」
飛鳥とAfterglowが蕎麦屋の屋台まで来てみると、行列が出来ていた。
巴「ま、これも全部一丈字のお陰だな!」
飛鳥「仰々しいですね…」
ひまり「それにしてもそばつゆまで作れるなんて驚いたなー」
蘭「……」
巴たちの言葉に飛鳥が困惑しつつも、ふと見えた忙しそうにしながらも美味しそうにそばを食べるのを見て嬉しそうにしている若林の顔を見ると、飛鳥も満足そうにした。
飛鳥「これで一件落着みたいですし、行きましょうか」
モカ「そうだね~。久々にラーメン食べたいな~」
飛鳥「そういや最近そばばっかりだったからな…」
巴「あっさりもいいけど、やっぱりこってりだな!」
と、意気揚々とラーメン三郎まで来たが…。
『すみません。水道管が破裂したのでしばらく休業いたします』
という張り紙があり、モカと巴がショックを受けた。
飛鳥「まあ、こういう時もありますわね…」
飛鳥も渋い表情をしながら突っ込むと、蘭、ひまり、つぐみは苦笑いした。
おしまい