その日の夕方、飛鳥は河川敷の斜面の草むらであおむけになっていた。本当は超能力を使って燐子とあこを助けたが、そのことは一切何も言わず、ただ見てるだけしかなかったと嘘をついていた。
この事で男子生徒達からはなじられ、Roseliaからは信じられなさそうな目で見られた。
飛鳥(まあ、遊びに来た訳じゃないからな…。いつか別れが来る)
飛鳥はそう言い聞かせていた。実際に自分の役目は果たしたので、特に気にすることはなかった。もし仮にこれでRoseliaとあの男子生徒達が肉体関係を持ったとしても、飛鳥としてはもう守る義務はなくなる為、どうって事はなかった。
だが、友希那達とはそれなりに仲良くさせて貰った為、それなりに情もあった。だが、今回の事でRoseliaが自分を拒絶すれば、付き合い方を変える必要があった。
許してくれるまで謝り倒せば簡単に済む話だった。だが、下手をすればすべての事を説明をしないといけない為、それは避けたかった。まあ、ばれても飛鳥自身は問題ないのだが、友希那達がそんな漫画みたいなことを信じてくれるかどうかも危ういし、超能力者がいるという事はトラブルが増える。
飛鳥(湊先輩あたりには事情を聴かれそうだな。もう潮時か…)
飛鳥はもう正体がバレる事を覚悟していた。つまらない意地を張る事よりも、友希那達バンドガールズを守る事だ。居場所を失ってももう飛鳥は恐れてはいなかった。今に始まったことではないからである。
飛鳥「さて、そろそろ帰るか…」
飛鳥が起き上がったその時、何やら喧騒が聞こえてきた。
飛鳥「何だ!?」
飛鳥が即座に現場に向かうとそこには、飛鳥が移動させた2グループが喧嘩を始めていた。
「てめぇらのせいでRoseliaと一緒に帰る機会がなくなっちまったじゃねーか!!」
「どうしてくれるんだよ!!」
と、DQN達は男子生徒達を痛めつけていた。
飛鳥「……」
痛めつけられている男子生徒達の姿を見て、飛鳥は完全に自分の過失だと感じた。いくら燐子にしつこく迫っていたとはいえ、こんな事になる事は想定していなかった。
飛鳥は超能力を使って、DQN達を大人しくさせて、どこかに移動させた。男子生徒達は何があったか全くわからない状態だった。ただ、DQN達が奇声を上げて去っていったようにしか思えなかった。
飛鳥は名乗り出ようとしたが、名乗り出ても自分が助けてくれたなんて信じてくれはしないだろう。
だが、飛鳥の脳裏に信じられなさそうな顔をしていたRoseliaを見つめていた。
飛鳥は行くか迷った。仕事を取るか、人としての筋を通すか。
だが、飛鳥はすぐに体が動いて男子生徒に声をかけた。
飛鳥「大丈夫ですか?」
と。
「大丈夫じゃねーよこのクソ野郎!!!」
「何でオレ達がこんな目に遭わなきゃいけねーんだ!!」
「本当だったら燐子ちゃんと一緒に帰ってたはずだったのに!!」
「全部お前のせいだ!!」
男子生徒達は一斉に飛鳥を責め立てた。
「お前ばっかり良い思いしやがって…」
「許さねぇ!!」
「ギタギタにしてやる!!」
と、飛鳥に襲い掛かろうとした。だが飛鳥は一歩も動かず、何もしなかった。
そして、男子生徒達にボコボコにされた(ただし、荷物をどこかにぶちまけたりしないように、ある程度超能力で調節はしたが…)
「はー!! すっきりした!!」
「二度と燐子ちゃん達に近づくなよ!!」
「あのDQN達め!! 頭悪い癖に調子に乗りやがって…」
「全くだ…」
制服が泥だらけになって、かばんは川に投げ出されてしまった。
飛鳥「あー、痛った…。鼻血も出てるし…。でもいいや」
飛鳥があっけらかんとした。飛鳥としては、超能力でDQN達にひどい目に遭わせてしまった為、そのケジメを取っていた。
飛鳥「教科書も後で元に戻しとくか…」
と、川の水で濡れてしまった教科書を見つめて、カバンの中に入れた。
飛鳥「さて、家に帰るか」
そう言って飛鳥はその場を後にした。はれ上がった顔はそのままにして…。
だが、そのままにした事が、この話における飛鳥の最大のミスだった…。
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飛鳥がマンションに帰ってくると、そこには友希那達の姿があった。Roseliaだけでなく、他のグループのメンバーもいた。
飛鳥(やべ、これは…)
飛鳥が気づくと、香澄が飛鳥の方を見た。
香澄「あっ! 飛鳥くんが帰ってきた…って、うわああああ――――――――――っ!!!?」
「え? うわあああ――――――――――――――っ!!!!?」
香澄の悲鳴で皆も飛鳥の方向を見たが、悲鳴を上げていた。
飛鳥(そうか。もうある程度腫れあがってるもんな…。無理もないか…。何か頬っぺたとか熱いし…)
と、飛鳥は何も言わずにいたが、香澄達が本当に慌てて飛鳥の所に駆け付けた。
飛鳥「連絡取れずにすみませんでし」
つぐみ「ちょ、ちょっとどうしたのその怪我!?」
飛鳥「えっと。ファンの方々に殴られました」
友希那「あこと燐子の件?」
飛鳥「それも入っていますが、もういろんな理由がありますね」
飛鳥が友希那を見つめた。
彩「きゅっ、きゅっ、救急車ぁあああああああああああああああ!!!!」
彩が絶叫した。
飛鳥「丸山先輩。そんな大げさにして頂かなくても…」
薫「一丈字くん。鏡をよく見るんだ!」
千聖「あなた、顔が凄い事になってるわよ!!」
いつもは冷静な千聖と薫が本当に慌てていた為、飛鳥が困惑した。
ひまり「鏡見て鏡!!」
と、ひまりから手渡された手鏡で顔を見ると、飛鳥は内心ぎょっとした。確かに皆がいていた通り、顔の右半分の腫れも酷いし、左目の上には目立つほどの青あざがあった。
飛鳥(人いなくて良かったー…)
これを通行人に見られたら、今みたいに絶対に聞かれていただろうと飛鳥は思った。そして飛鳥は忘れていた。皮膚がとても弱いので、少しでもガチで殴られるとこんな状態になってしまうという事を…。実際に師匠である和哉からはダメージを受けてはいけないと言われていたのだった。
飛鳥「あ、あー…。ちょっと腫れてますね」
日菜「ちょっとってレベルじゃないよ!!?」
飛鳥の言葉に日菜が慌てた。その時、燐子が泣き崩れた。
飛鳥「白金先輩…」
燐子「ごめんなさい…ごめんなさい…私のせいで…」
飛鳥「え、何でですか?」
飛鳥は困惑した。
燐子「だって私とあこちゃんを助けようとして…」
飛鳥「えーと…」
友希那「目撃者がいるのよ。あなた、見てただけって言ってたけど、男子達を睨みつけてたって」
飛鳥(オレ、そんな目つき悪かったかな…)
友希那「やっぱり燐子たちを助けようとしてたんじゃない」
飛鳥「……」
飛鳥が視線を逸らした。
モカ「そうですよ~。飛鳥くんが燐子先輩達を見捨てるわけないじゃないですか~」
と、飛鳥がモカを見ていたが、モカは若干悲しそうな眼をしていた。
燐子「私…私…うわぁああああああああああああああああああああ!!」
あこ「り、りんりん泣かないで!!」
燐子がまた泣き崩れるとあこが慰めるが、あこも泣きそうだった。それを見た飛鳥は…。
飛鳥(何か…大ごとになっちゃった…)
どう収拾つけようか悩み、燐子たちに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになったとさ。
おしまい