第172話
麻弥「今度、外国のバンドを題材にした劇をやる事になったんですよ」
友希那「それは興味深いわね」
と、2年2組の教室で麻弥と友希那が劇の話をしていた。
薫「主役は勿論この私、今回もまた儚い劇にしてみせるよ…」
リサ「薫が出れば女子達のハートをつかめる事間違いなしだねー」
日菜「そうだねー」
そんな話を男子達もしっかり聞いていた。
バンドリ学園の演劇部は結構続いており、最近になっては薫が中心となって大盛況をにぎわしている。定期的に学内で公演も行われているのだが…。
チケットに関する問題が発生していた。チケットは大抵早い者勝ちであるのだが、一番良い席(一応有料で、その費用は演劇部の部費に充てられる)は、大抵ガチ勢が陣取ってしまうのだ。おまけに何かしらピリピリしている為、他の生徒達はあまり気持ちよく見れていない状態なのだ。
これだけならまだしも、抽選に漏れた、良い席が取れなかったからといって、当たった生徒に対して暴力や脅迫でチケットを横取りしようとする輩も出ていた。
チケットではなく、いっその事全部電子チケットにする案もあったが、紙のチケットを集めている人もやはりいるわけで、それは失くさないでほしいという声も出ていた(現在、演劇が終わった後に、来場客にチケットを配るという話も出ている。
とにもかくにも、演劇部もまた大人気だったのだ。
で、この男はというと…。
飛鳥「出禁喰らってます」
そう、演劇部の中には男子達もいるのだが、飛鳥のアンチがいて、嫌がらせで演劇部の定期公演も出入り禁止を食らっていたのだ。ただ、この事を薫も麻弥も知らないのだが、演劇部の雰囲気を悪くしてもまた面倒な事になる為、飛鳥はもう何も触れずにいた。
飛鳥(何かあれば連絡が来るしな)
そう言って飛鳥は演劇部から遠ざかっていた。とにかく正当な理由なしで自分を嫌うファン達に対して気を悪くしていた。
飛鳥(何か言われるのも嫌だし、何も触れないでおこう…)
そう言って飛鳥は静かに本位目を通した。
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そんなある日の事。飛鳥が演劇部と全く縁のない学校生活を送っていた時の事だった。
「そんなに怖がらなくてもいいじゃん」
「オレ達とお茶しようよ」
と、他校の不良生徒達が薫たち演劇部に迫っていた。薫たちは演劇部の買い出しに丁度出かけていた。
薫「生憎だが、私達も忙しくてね…」
薫が気丈に振舞ったが、不良の一人が薫の手を握った。
「まあまあそう言わずに」
「演劇なんかよりも楽しいよー?」
そう言って薫を連れて行こうとした。
「ちょ、ちょっと男子…助けに行きなさいよ…」
「あ、あひ…」
女子は男子に助けに行くように催促したが、男子は足が震えて動けなかった。
「あ?」
「何お前ら。やんのか?」
「おい、見せしめに男子はボコボコにしよーぜwwww」
「そうだな。マッパにひんむけば動けないだろ」
と、男子に近づこうとすると、
薫「こ、子犬くん達に手を出そうとするなんて感心しないな。私が目的なんだろう?」
薫が助け舟を出した。
薫「さあ! 君達は逃げるんだ!!」
「か、薫先輩…」
「そう言われて、はいそうですかって言いたくないなー」
「ついでに他の女子も連れて行くかwwwwww」
「男子は邪魔だからおうちに帰ってね? じゃないと…殺すよマジで?」
「あのー」
「ああ!!?」
誰かが不良生徒達に声をかけたので、不良生徒達が殺意に満ちた目で睨みをを聞かせた。
そこには40代のおっさんがいた。
「あ? 何だテメェ」
「やんのかおっさん」
するとおっさんは懐から警察手帳を取り出した。
「こういう者ですが」
「知るかボケェ!!!」
と、不良生徒が警察官を殴り飛ばした。
「おい!! 仲間を呼ばれる前にやっちまうぞ!!」
「おお!!」
「動けない程痛めつけちまえば人質に使えるからな!!」
「ちょ、やめ…」
「お前らも逃げるなよ! 逃げたらお前らも同じ目に遭わせてやるからな!! ヒャーハハハハハハ!!!」
あまりにもとち狂った不良生徒達に薫たちは恐怖でおののいた。
だが、飛鳥が遠くから金縛りで不良生徒達の動きを止めた。
(な、何だ!? 体が…)
(くそう!! 動けねぇ…)
その時だった。
「コラァー!! 何をしとるかぁー!!」
と、警察官が複数人やって来て、不良生徒達が取り押さえられた。
「離せよコラァ!!」
「偉そうにしてるけど、上級国民様に媚び売っててめぇらだけいい思いしてるの知ってんだぞ!!!」
「アレかぁ!!? 下等生物は上級国民様に逆らうなって事だろ!! いつかお前らの職場に車を突っ込んでやるからな!!」
「うるさい!!」
「さっさと行け!!!」
と、連れていかれたが、不良生徒達があまりにも怖い表情で物騒な発言をしていた為、薫たちや見ていた通行人達は恐怖で震えあがっていた。
飛鳥「……」
飛鳥は陰で見守り、犯人たちがパトカーに乗せられるのを確認するとその場を後にして、電話を取った。
飛鳥「はい…はい…間違いありません。商店街のはずれにあるBARが奴らのアジトです。そこに行方不明になっていた女子生徒もいる筈です」
飛鳥は師匠である和哉に連絡を入れ、不良生徒の仲間達を排除するように依頼した。
飛鳥(こりゃあ演劇を見に行ってる暇ないな…)
十数分後
千聖「ふぅ…」
千聖が商店街のはずれを歩いていた。
千聖「薫たち、今度の演劇は大丈夫かしら。また暴走しなければいいけど…」
その時、BARの前にパトカーが何台も止まっているのが確認できた。
千聖「ん?」
千聖が驚くと、女性警官がやってきた。
千聖「あなた、白鷺千聖さんですよね?」
千聖「え、ええ…そうですけど…」
「申し訳ないんですけど、別の道を通って頂けますか? 護衛しますので…」
千聖「それは構いませんけど、何があったんですか?」
「女子生徒の拉致監禁があったんですよ」
千聖「ええっ!!?」
「それで先ほど、バンドリ学園の生徒さんが襲われたらしく、その犯人の仲間だそうです」
千聖「バ、バンドリ学園の生徒ってどんな特徴の子ですか!? 例えば髪が紫色で何かおかしな喋り方をする…」
「あ、そんな感じでした」
千聖「……」
そして薫たちはというと…。
薫「ふぅ…大丈夫だったかい? 子犬くん子猫ちゃん達」
「薫先ぱぁい…」
薫の言葉に女子生徒達は泣きそうになっていた。男子生徒達は何も言えなかった。
「あ、えっと瀬田…ありが」
「ありがとうじゃないわよ!!」
「こういうのは男子が率先してやるものでしょうが!!」
薫「やめたまえ君達。いがみあう事よりも皆無事だった事を喜ぶべきだし、相手が凶器を持っていたかもしれないだろう?」
「……」
薫「それに今は女性も男性の後ろをただ歩く時代じゃない。助けられる人が助ければいいのさ」
と、薫がウインクすると女子生徒達がときめいて、男子生徒達は小さくなっていた。
「薫!!」
千聖が薫の所に駆け付けた。
薫「やあ、誰かと思えば千聖じゃないか。相変わらず眩しい表情をしているね」
千聖「……」
千聖は薫を見たが、手や足が震えていたのに気付いた。
千聖「…全くもう。お巡りさんから聞いたけど結構無茶したのね」
薫「子犬くんや子猫ちゃん達を守れるなら、お安い御用さ」
千聖「本当に強くなったわね」
薫「な、何の事かな?」
薫がちょっと慌てた。
千聖「何でもないわ。かおちゃ」
薫「これ以上はいけないよ千聖」
薫が少し慌てて千聖に迫った。それを見た男子生徒や女子生徒達はときめいていた。幼馴染コンビのやり取りであり、薫のファンであるりみやひまりが見たら卒倒するだろう。
薫「しかし、おまわりさんが来てくれて助かったよ」
千聖「そうね。それはそうと薫」
薫「何だい?」
千聖「あなた達に絡んできた奴らだけど、仲間がいてその仲間は他校の女子生徒を拉致監禁してたらしいわよ」
「!!?」
千聖の言葉に薫たちが驚いた。
薫「それは儚くないね…。で、大丈夫なのかい?」
千聖「がさ入れが入って犯人も丁度捕まったわ」
薫「そうかい。それは良かった…だけど千聖。随分腑に落ちない顔をしているね」
千聖「…別に。それよりも今日は早く帰った方が良いわ。じゃ」
そう言って千聖が帰った。
その夜
千聖「……」
千聖は今日のがさ入れの事を想いだした。
千聖(薫の事といい、あのがさ入れの事といい、何もかもうまくできすぎてる…)
千聖の脳裏には飛鳥が思い浮かんだ。
千聖(一丈字飛鳥…。彼は一体何者なの…?)
おしまい