全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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第6話「お礼を言われるまでもない」

 

 

 林間学校。なんやかんやでつぐみを救出した飛鳥(詳しくは前作を参照)。

 

 今回は林間学校が終わってからの話である…。

 

――

 

 バンドリ学園。飛鳥は何気ない日常を教室の自席で体感していた。

 

飛鳥(色々あったけど、楽しかったなぁ…林間学校)

 飛鳥が笑みを浮かべていると、

 

「飛鳥く~ん」

 

 と、Afterglowのメンバーである青葉モカが現れた。

 

飛鳥「あ、こんにちは」

モカ「ちょっといいかな~?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥はモカに連れられて廊下に移動すると、そこには蘭、ひまり、巴、つぐみがいた。

 

飛鳥「おや、皆さんお揃いで」

モカ「連れて来たよ~」

 

 と、モカが話しかけた。

 

飛鳥「何か御用ですか?」

巴「まあ、なんていうのか…改めて礼を言わせて貰おう。つぐみを助けてくれてありがとう」

飛鳥「あ、いえいえ…」

 

 巴の礼儀正しさに飛鳥は苦笑いした。

 

モカ「それでね~。つぐのご両親がどうしても飛鳥くんにお礼したいって言ってるんだけど、時間空いてるかな~?」

飛鳥「羽沢さんのご両親がですか?」

蘭「一丈字がいなかったらどうなってたか、分からなかったからね…。それでどうしてもだってさ」

モカ「今日空いてる~?」

飛鳥「何事も無かったら…」

 飛鳥が視線を逸らした。

 

モカ「どういう意味?」

飛鳥「いや、こういう時って大抵何かトラブルがあったりするので…」

モカ「分かるよ~。可愛い女の子5人から誘われてるから、何も起こらない筈がないよね~」

飛鳥「…結構自己評価高いんですね」

蘭「モカだけだから」

 

 モカの発言に飛鳥が困惑すると、蘭がフォローいれた。

 

モカ「それじゃ放課後、モカ達が迎えに行くからね~」

飛鳥「あ、はい」

 

 そして放課後、本当に迎えに来た。

 

モカ「やっほー飛鳥くーん。お待たせ~」

巴「行こうか」

飛鳥「あ、はい」

 

 そう言って飛鳥も自席から立ち上がって荷物を持って蘭たちと移動した。それを見たクラスメイト達は驚いていた。

 

「一丈字くんとAfterglow…仲良くなってる…」

「そりゃそうだよな。羽沢さん助けたもんな…」

「よく考えたら凄いよな。一丈字って…」

「まるで神様みたい…」

 

 と、生徒達は驚いていた。

 

 こうして飛鳥達は羽沢珈琲店に来たが、客は殆どいなかった。

 

飛鳥「あれ?」

モカ「あー。今日は臨時休業にして貰ったんだー」

飛鳥「え」

つぐみ「ほかにお客さんがいると、お話も出来ないから…」

飛鳥「そんな事していいんですか…?」

モカ「だいじょーぶだよー。結構儲かってるんでしょ?」

つぐみ「モ、モカちゃん…」

 

 モカの発言につぐみがちょっと困った。

 

 そして6人が中に入ると、つぐみの両親がいた。

 

つぐみ「ただいまー。連れて来たよー」

「おかえりつぐみ。それと、いらっしゃい一丈字くん」

飛鳥「あ、こんにちは…」

 

 飛鳥が苦笑いしてつぐみの両親に挨拶すると、蘭が驚いていた。

 

蘭「と、父さん!!」

「!!?」

 

 と、和服の強面の中年男性もいたが、蘭の父親だった。蘭の父親は椅子に座っていた。

 

蘭「ど、どうしてここに!!」

蘭父「羽沢さんから話を聞いてな。私も同席させて貰ったんだよ」

 すると蘭父が席から立ち上がり、飛鳥の前に立った。

 

蘭父「君が一丈字飛鳥くんかね?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 蘭の父の威圧に少し押されながらも飛鳥は挨拶をした。

 

蘭父「…美竹蘭の父です。娘がいつもお世話になってます」

飛鳥「あ、いえ。こちらこそ娘さんとはいつも仲良くさせて頂いております…」

 

 蘭の父が頭を下げてあいさつすると、飛鳥も頭をさげた。蘭はちょっと恥ずかしそうにしていた。

 

モカ「まるで結婚の挨拶みたいだね」

蘭「うるさい!////」

蘭父「蘭。静かにしないか」

 

 そして話は本題に進み、飛鳥とつぐみがつぐみの両親と向かい合うように座った。

 

つぐみ父「話は娘から聞いています。助けてくれてありがとう」

飛鳥「あ、いえ。偶然だったので…」

 飛鳥が困惑していた。

 

つぐみ母「それでもあなたがあの時、声をかけてくださらなかったら、娘が遭難していた事に気が付きませんでしたわ」

飛鳥「いえいえ…」

 

 これでもかという程お礼を言われて、飛鳥は辟易していた。これが他の男子生徒であれば「そんな事ないっすよ~」と表向きは言っていても「これでつぐみちゃんの両親の好感度獏上がりだぜ!」と思うだろう。だが、この男は普通に人助けをしただけなのに、何故ここまでお礼を言われるのだろうと真逆の発想をしていた。

 

つぐみ父「お礼と言っちゃあ何だが、今日ここで食事をしていきませんか? その食事代を是非私達の方で…」

飛鳥「あ、いやそんな事したらうちの親が飛んでくるので…」

つぐみ母「そういえば、あなたのご両親にもお礼を言いたいわ」

飛鳥「そこまでしなくても大丈夫ですよ…。一言だけで終わるので」

 飛鳥が困った顔をした。

 

モカ「そういや思ったんだけど、飛鳥くんって地元の学校どこ? 途中から転校したって聞いてたけど」

飛鳥「ああ。中学は広島にいたんですよ」

「!!」

飛鳥「で、高校進学の時にこっちで一人暮らしです」

「一人暮らし!!?」

飛鳥「親の仕事の都合で…としか言えないんですね。父も母も現在の職場から必要とされているらしいので」

つぐみ父「そうだったのか…」

飛鳥「あ、生活費は貰ってますし、自分でも内職して稼いでます」

モカ「何してるの?」

飛鳥「あ、おもちゃにシールを貼ったり、プログラム作ったり、ネットゲームで賞金稼いだり、箱にものを詰めてます」

「何か途中凄くない!!?」

 

 飛鳥の言葉に蘭たちが突っ込んだ。

 

飛鳥「まあ、生活は何とか成り立ってます」

つぐみ父「そ、そうなんだ…」

つぐみ母「……」

 

 つぐみの両親が引いているのを見て、飛鳥は心の中でガッツポーズした。というのも、あまり気にかけられても申し訳なかったからだ。

 

蘭父「普通のアルバイトはしないのかね?」

飛鳥「ああ、そうですね…。やっぱりコンビニとかの接客業の方が対人関係やコミュニケーション能力も上がると思うんですけど、自分のペースでやりたいし、技術を身に着けたいんです」

蘭父「そうか…」

 

 飛鳥の言葉に蘭の父は目を閉じた。

 

蘭父「君は自立しているんだな。そして自分の考えも持っている」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 蘭の父の言葉に蘭がムッとするが、モカがなだめた。

 

 

 そして…。

 

飛鳥「ご馳走様でした」

つぐみ父「またいつでもおいで」

つぐみ母「待ってるわ」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 と、つぐみ達と別れ、蘭も父親と一緒に帰っていったが、

 

モカ「そういえば飛鳥くんの家ってどこ?」

飛鳥「ああ。私ホテル暮らしなんですよ」

ひまり・モカ・巴「えっ」

 

 

 この発言で嵐が起きたのは言うまでもない。

 

 

おしまい

 


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