構想自体はずっと前からあったんですけど、実際に書けたのは今になってからになりました。
間違いなく、ロボット系の作品とクロスオーバーした機体で最も違和感が無いと思います。
それと、最初は思いっ切りネタをブチ込みます。
何のネタか分かった人は本気で凄い。
「…………はっ!?」
私は勢いよくベッドから起き上がる。
顔だけでなく、体中に汗が出ているが、そんな事なんて気にならない程に動揺していた。
「ゆ…夢…だったのか……?」
窓の外を見ると、其処には全く変わらないいつもの光景が。
太陽の光が差し込まなくなって久しい空に、戦いの音と煙が見える。
「いきなりどうした咲耶? 何か悪い夢でも見ちまったのか?」
「一夏……」
私が寝ていたベッドの傍では、幼馴染であり親友でもある一夏が剣の手入れをしていながら、こっちを見ていた。
「そうだね……夢を見ていたんだ…。そう…まだ、この
「そうか……」
彼も何かを思い出したのか、急に辛そうな顔になる。
「それじゃあ…行こうか。一夏。箒。オルコットさん」
「「あぁ!」」
「えぇ!」
それぞれに武器を持ち、私達は再び戦場へと飛び出す!!
「魔王を倒し、全ての戦いに終止符を打つために!!」
再び平和な世界を取り戻す為に!!!
「……という、遠い昔のお話さ……」
そこは、とある民家。
暖炉の前で一人の老婆が孫たちに本を読み聞かせていた。
「えぇ~っ!? それから勇者たちはどうなったの~っ!?」
「おしえてよ~! おばあちゃ~ん!」
「ははは……お話の続きは…また…明日な……」
「いきなり意味不明な話で読者の皆さんを置いてけぼりにするな――――――――っ!!!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「なにさ~。試合前なんだから、少しはリラックスしようと思って一芝居打ってたのに~」
「言いたいことは分かるけど、いきなり突拍子すぎるんだよ!! 俺まで巻き込みやがって!!」
「ノリノリだったくせに」
「う…うっさい!!」
はい。そんな訳で、話を戻しましょうかね。
今日は私や一夏がオルコットさんと試合をする日。
つまり、月曜日の放課後なんですね。
んでもって、今いる場所は第三アリーナのAピット。
私と一夏、それからなんでか箒も一緒。
更に、流石に教員が誰もいないのは問題だからって事で、千冬さんと山田先生も一緒です。
「っていうか、なんで千冬姉も山田先生も止めなかったんだよっ!?」
「咲耶が面白そうだったから」
「流れ的に逆らえそうになかったですし……」
ダメだ、この教員達。早くなんとかしないと。
「箒もノリノリでやりやがって……」
「芝居なんて初めてだったから、思った以上に面白かった」
「剣道部じゃなくて演劇部にでも入れば?」
ツッコミにもキレが無くなってきた。
こんなんで試合は本当に大丈夫だろうか?
「つーか、なんで向こうのピットにいる筈のオルコットさんがこっちにいるんだよ……」
「咲耶さんにお呼ばれされましたので。では、改めて向こうのピットに行きますわ。お二人とも、いい勝負を致しましょう」
優雅に挨拶をしてから、セシリアはピットから出て行った。
「マジでなんだったんだよ……」
気にしたら負けである。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「因みに、最後に出てきたお婆ちゃんは箒…つまり、世界を救った四人の勇者たちの一人だったという、とても捻りの効いたオチが……」
「その話はもういい!!」
話は戻り、咲耶たちは各々に試合の準備を進めていた。
準備って言っても、やれる事なんてたかが知れているのだが。
「さっきも話したとは思うが、念の為にもう一度だけ確認しておくぞ。織斑の専用機の搬入が少し遅れている為、最初の試合は咲耶とオルコットが行う。その後、インターバルを挟んでから織斑とオルコットが対戦、それからまたインターバルを挟み、最後に咲耶と織斑が試合をする事になる」
「「はい」」
「この順番になった理由は、織斑君の機体が届いても、すぐには試合が出来ないからです。詳しくは機体が届いた時に改めて説明しますけど、色々と細かな設定などしないといけないんです」
教師二人から真面目に説明を聞く咲耶と一夏。
普段の光景から勘違いされがちだが、咲耶はちゃんとメリハリはつけるタイプなので、真面目な時はきちんと真面目モードになれる。
「咲耶の方は大丈夫なんですか?」
「問題は無い。最初から待機形態だったので、もしかしたらと思っていたら案の定だった」
「あの機体には最初から飛世さんのデータが入力されていたみたいで、既に各種設定は完了しているんです。飛世さんさえよければ、いつでも行くことは出来ますよ」
「おぉ~。それじゃあ、とっとと準備を済ませてしまいますかね。余りオルコットさんを待たせても悪いし。とう!!」
いきなり自分の制服を掴んだかと思ったら、それをグッと引き抜くように脱ぎ去った。
余りにも唐突な出来事に、一夏は目を丸くして驚き、千冬と箒は鼻血を出しながら目を凝視し、真耶は両手で目を覆いながらも指の隙間から、ちゃんと覗いていた。
「これが咲耶ちゃんのISスーツだ!!」
制服の下から現れたのは、漆黒のISスーツだった。
変な模様も何も無い。どこまでも真っ黒で、どこまでもシンプルだった。
「い…いつの間に、そんな物を身に付けて……」
「少し前に千冬さんから貰ったの」
「前々から咲耶専用のISスーツの作成を『アイツ』に依頼していたのだが、ギリギリになってようやく完成したらしくてな。即座に届けてきたんだ」
((あの人か……))
勘の良い一夏と箒は、すぐに千冬の言う『アイツ』が誰なのかを察した。
敢えて名前は言わないでおくが。
「このような色にしたのは、黒ならば色々な部分が目立たずに誤魔化せるかららしい。勿論、ちゃんとスーツの方にも特別な加工が成されて、パッと見は絶対に女にしか見えないようになってはいるが、万が一という事も有り得るからな」
千冬からの説明通り、見ただけでは咲耶の本来の性別は全く分らない。
これならば、百人が百人、彼の事を女だと答えるだろう。
実際、咲耶は天然で腰が括れたり、尻が大きかったりしているから、余計に分からなくなっている。
「では、これは返しておこう」
千冬がポケットから取り出してから咲耶に手渡したのは、前に彼から受け取った専用機の待機形態である首飾りの形をしたボールペン。
「展開の仕方は分かるか?」
「予習はしてますから。確か、頭の中で思い浮かべればいいんですよね?」
「その通りだ。だが、お前は機体の展開はこれが初めてだからな。難しそうなら機体の名前を直接呼べば簡単に展開は可能だ」
「音声認識機能付き…マジで凄いんだな……」
珍しく真剣な顔になって、咲耶は待機形態を軽く握りしめて目を瞑る。
すると、ふと頭の中に機体の名前と思わしき単語が入ってきた。
「これは……そっか」
「どうした?」
「ううん…なんでもない。大丈夫。これなら行けそうだよ」
「そ…そっか?」
「任せといて」
一夏に向けて力強く頷くと、彼の顔がポっと赤くなる。
滅多に見れない咲耶の凛々しい顔を見て、思わず胸が打たれたようだ。
「じゃあ……やるよ」
少しだけ歩いて離れた場所に移動すると、徐に待機形態を上に掲げて大きく叫んだ!
「ヴァルシオ―――――――――――――――――――――――ネ!!!!!」
次の瞬間、咲耶の全身がピンク色の光に包まれ、輪郭だけを見ればまるで裸になったかのようになった。
光の粒子が体の周りを包み込んでから僅かに宙に浮いたかと思うと、全身を回転させながら両足、太腿、腰部、胴体部、両腕、両肩…と、下から順に純白の装甲が装着されていく。
最後に、背部に翼のようなパーツが展開されて、頭部には金色のサークレットが装備され、いつの間にか咲耶の髪がいつも以上に長く、美しくなって、しかもピンク色へと変貌していた。
「こ…これがISを展開するって事なのかッ!?」
「私に聞かれても知るか!」
初めての光景に戸惑いを隠せない一夏と箒を余所に、教師たちは別の意味で驚きまくっていた。
「な…なんだこれはッ!? こんな展開の仕方をするISなんて初めて見るぞ!」
「て…展開が完了するみたいです!」
まるでニチアサの様な展開をした咲耶の専用機に驚愕する面々を放置して、当の本人は音も無く鋼鉄の床に降り立った。
「白き鋼の天使ヴァルシオーネ! ここに見参!!」
なんでかビシッ! っとキメポーズをかましてから締め。
ISを展開した咲耶の見た目は、完全に別物と化していた。
首から下は完全に隙間なく白い装甲に覆われ、鋭さと流線型のデザインが混ざっていて、従来のISに比べてもかなり小型。
更には、髪の色や長さまで完全に変貌してしまう始末。
これでは装着というよりは変身と表現した方が正しい。
「さ…咲耶…なんだよな?」
「なんでそこで疑問形? 私は私だよ。世界の至宝たる美少女の咲耶ちゃんだよ」
「あ…その言い方は間違いなく咲耶だわ」
「それで納得されても困るんだけど」
そう思うならば少しは改善すればいいのだが、余程の事が無い限りはそれは無いだろう。
「咲耶…今の自分の姿がどうなっているのか分かるか?」
「分かりますよ? いや~、ハイパーセンサーって便利ですね~。簡単に俯瞰風景が見れちゃうし。マジで束さんって凄いわ。うん」
満足げに頷く咲耶ではあるが、それを見ている教師陣はそれどころではない。
今までに例を見ないISの存在に、これからどうするべきか頭をフル回転させていた。
「我々が調査をした時は、機体名と武装しか判明せずに、他の項目は全てブロックされていたが……」
「まさか…こんな特殊な機体だったなんて……。これって、全身装甲と半身装甲の中間に位置する機体…って事になるんでしょうか……」
「もしくは、第一世代と第二世代の中間に位置する…だな。一応、第三世代機とはなっているが……」
千冬は頭の中で、このISを生み出したのはまず間違いなく束だと信じきっているので、今度会った時はこの心労の借りを必ず返すと心に決めた。
「ヴァルシオーネ…って言ってたよな。その機体……」
「うん。型式番号DCIS-002 ヴァルシオーネが正式名称みたい」
これまた聞いたことのない番号。
これで、ヴァルシオーネの製作者が束である可能性がより一層高まった。
千冬は手の骨をボキボキと鳴らしてウォーミングアップを開始する。
「その髪ってどうなってるんだ?」
「単なるウィッグ型のヘッドギアだよ。ちゃんと機体を戻せば髪も元に戻るから」
「意外と現実的な答えが返ってきた……。割とマジでファンタジー的な事を期待してしまった自分がいる……」
「あらら。高校生にもなって、まだフィクションを信じてますよ彼」
「全く…もう少し大人になったらどうなんだ?」
「いや…鼻血を出しながら言われても説得力ねぇよ…箒」
二人の会話を聞きながら、咲耶は武装の確認をすることに。
自分にしか見えない空間投影型簡易ディスプレイを開いてみる。
「ふむふむ…成る程ね~。機動力重視のバランスタイプって所か。しかも、これ……」
咲耶が注目したのは、武装類を示す項目の一番下と二番目。
そこには明らかに武器というよりは必殺技みたいな名前が表示されている。
「これ…もしかして、マジでワンチャンあるか?」
最初は勝つ気なんてなかった。勝ち目なんてないと思っていた。
けど、このヴァルシオーネと、その武装を見て気持ちが変わった。
(……いっちょ、本気で勝ちを狙いに行ってみるか?)
この時、咲耶の中に欲が生まれた。
勝ちたいという欲が。勝利への欲が。
「ま…まぁいい。また後でちゃんと調べてみればいいだけだ。それよりも咲耶。オルコットはもう準備を終えて待っているようだ」
「あらホント。そんじゃ、こっちも急がないと。カタパルトは……」
「こちらです。少し大きいかもしれませんが、脚部を固定してください」
「は~い」
真耶の誘導に従って歩いていき、カタパルトに両足を固定。
よく見ているロボットアニメを参考にして、少しだけ腰を低くして発進体勢になる。
「発進準備完了! タイミングは飛世さんに任せます!」
機器の前に座ってから真耶が素早く操作をし、ステージへの発射口がゆっくりと開く。
そこには巨大なシールドバリアーに囲まれた天井と、その向こうに広がる青空が見えた。
「すぅ~…はぁ~……よし!」
最後に僅かに残っていた緊張を深呼吸で全て外に出して、ジッと目の前だけを見据える。
もう迷いはない。ここまで来たら、後は突き進むだけだ。
「咲耶」
「ん?」
「勝てよ」
「ふっ……当然!」
自分に向けて拳を突き出してきた一夏に合わせて、咲耶も機械の拳をコツンと合わせる。
「箒。行ってくるね」
「あぁ……お前なら大丈夫だ! 思う存分に暴れてこい!」
大きく頷いてから、咲耶は神経を集中させる。
「飛世咲耶! ヴァルシオーネ……行きます!!」
白き鋼鉄の天使……飛翔。
そんな訳で、咲耶の専用機はヴァルシオーネでした。
勿論、元が元なので全く細工なんてしてません。
まんま小さくなったヴァルシオーネです。
次回は初めての戦闘シーン。
咲耶はずっとシリアスな空気を保てるのか?