そんなわけで、またシリアスな戦いから一変、ギャグ展開に戻ります。
咲耶VSセシリアの試合が誰も予想していなかった咲耶の勝利で幕を閉じ、勝利した本人は信じられないような表情のまま呆然としてピットへと戻ってきた。
「か…勝っちゃった……なんかマジで現実感が無いんですけど……」
ゆっくりと降り立ち、そのままヴァルシオーネを解除してからISスーツ姿に戻る。
その瞬間、今まで我慢していたものが爆発したかのように、千冬と箒が大声で咲耶に抱き着きながら、その勝利を全力で祝福した。
「よくやったぞ咲耶――――――――――――――っ!! 本当に見事な試合だったぞ!!」
「私はお前が必ず勝つと信じていたぞ!! それでこそ私の大好きな咲耶だ!!」
「本当に勝ったんだよね…私…本当に……やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ここでようやく咲耶自身も自分の勝利を受け入れられたようで、二人と同じように大声で喜びを表現した。
「やったな咲耶! それにしても、最後辺りに出した必殺技みたいのは何なんだよ?」
「あー…『サイコブラスター』と『クロスマッシャー』のこと?」
「そうそれ!」
ヴァルシオーネの華奢なボディからは想像も出来ないような一撃に、一夏は本気で驚いていた。
なんせ、自分との試合でも放たれる可能性があるのだから。
「恐らく、『サイコブラスター』と呼ばれた武装は『マップ兵器』に属する物だと思います」
「「マップ兵器?」」
全く聞いたことのない単語に一夏と箒が小首を傾げる。
「正式名称は『Mass Amplitude Preemptive-strike Weapon』と言って、日本語に訳すると『大量広域先制攻撃兵器』と呼びます」
「な…なんか凄そうだな……」
「実際に凄いですよ? 相手の反撃を全く許さずに一方的に自分から広範囲攻撃が可能な非常に特殊な武装なんですから」
「い…一方的に自分からッ!?」
「はい。一種の『戦略兵器』ですね。といっても、マップ兵器はその特性上『威力が小さい』『敵味方の判別が出来ない』という欠点も併せ持っているんです。少なくとも、素人が気軽に扱っていい類の武装じゃないですね」
「けど、咲耶は普通に使ってたよな…?」
一夏の尤もな疑問に、今度は咲耶自身が答える事に。
「それはサイコブラスターが特別なだけ。あれってさ、実は敵味方の判別機能が備わってたんだよね。だから、IS初心者の私でも気楽に使えたって訳」
「は…判別機能付きのマップ兵器っ!? マップ兵器自体、搭載しているISが非常に少ないのに、判別機能がある代物なんてレア中のレアですよっ!?」
「あー…やっぱそうなんだ。私も最初に武装欄を見た時、『これ…使い勝手良すぎじゃね?』って本気で思ったぐらいだし」
普通ならば誰も彼もが驚きまくる事だが、箒と千冬だけは分かっていた。
ヴァルシオーネの製作者は間違いなく束で、愛する咲耶の為に判別機能付きのマップ兵器を搭載したのだろうと。
「んじゃ、あの赤と青の二重螺旋のビームみたいのは……」
「クロスマッシャーはビームじゃなくてレーザーの類だよ…多分」
「多分なのかよ」
「私もよく分からないんだもん。けど、クロスマッシャーってあの派手な見た目に反してエネルギーを全く消費しないんだよね」
「なに? それはどういう事だ?」
明らかに大量のエネルギーを使いそうな武装だったのに、エネルギー消費が無いとはこれいかに。
流石に千冬も気になったのか、抱き着いたままの状態で咲耶に問うてきた。
「あれ…弾数消費型の武器なんですよ」
「弾数消費…あれでか」
「はい。因みに、最大装弾数は6発です。でも、改良次第じゃ9発まで増やせるって説明書きに書いてありました」
「あ…あんな凄い攻撃を9発も撃てるのかよ……」
対面する相手からしたら恐怖でしかない。
幾らSEを消費していたとはいえ、ブルー・ティアーズを一撃で沈めた攻撃を9回も撃てるのだから。
「その話はもういいだろう。それよりも……」
いきなり咲耶をお姫様抱っこにした千冬は、そのまま意気揚々とその場でくるくると回りだす。
「今日は咲耶の祝勝会だ――――!! 箒、お前も来い!!」
「喜んでお供させて頂きます!!」
「よっしゃ――――! 今日は飲むぞ―――――!!」
「ちょっと待て――――――――!! なんでもう終わりみたいな雰囲気を出してるんだよ! まだ俺とオルコットさん、俺と咲耶の試合が残ってるだろうが!!」
完全に忘れ去られようとしていた自分の初陣を思い出させる為に、必死で騒いでいる面々に訴えるが、返って来たのは『うへぇ~』的な感じの表情だった。
「全く…いい加減に空気を読む事を覚えんか、このバカ弟は」
「一夏…そういうのは良くないと思うぞ?」
「ブーブー!」
「俺が悪いのかッ!? これは俺が悪いのかッ!?」
何にも悪くない。至って正常な意見である。
が、この三人にそれは通用しないだろう。
「はぁ…仕方のない奴だ。咲耶」
「ほーい」
ひょいっと千冬の腕の中から降りた咲耶は、間髪入れずに一夏に向かって叫ぶ!
「最初はグー! ジャンケンポン!!」
「え…えぇっ!?」
なんでいきなりじゃんけんなのか。
全く意味不明だが、咲耶の勢いに押されて思わずじゃんけんに応じてしまう。
咲耶→チョキ
一夏→パー
「というわけで……勝者、咲耶!!」
「これで咲耶の二連勝だ――――!!」
「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
理不尽にも程がある。
あろうことか、じゃんけんで決着を付けられてしまった。
「まだ納得がいかないのか? ならば、なんでかここに偶然あったニンテンドースイッチのマリオカート8デラックスで……」
「ISの試合じゃないのかよっ!? つーか、どうしてピット内にスイッチがあるんだっ!?」
「私の私物だ」
「千冬姉のっ!? いつの間に買ってたんだよッ!?」
「咲耶と一緒にいつか遊ぼうと思って」
「そこは俺じゃないのッ!?」
「一夏はルイージ一択ね」
「俺に決定権は無いのかよッ!?」
「「「ないよ」」」
「揃って言うな!!」
もう言いたい放題言われまくりの一夏。
だが、まだ彼のターンはやってこない。
「マリオカートで不服ならば、このスマブラSPで…」
「どこまでもゲームで決着させる気なのかっ!?」
「私はセフィロス使う~!」
「ならば、こちらはクラウドだ! 箒はどうする?」
「では、私はテリーで行かせて貰いましょう! 赤いし」
「理由それかよっ!?」
「因みに、今度も一夏はルイージね」
「またッ!? なんで俺にルイージを押し付けたがるッ!?」
「だって一夏……」
「弟じゃん?」
「弟なんて世の中に腐るほどいるわ―――――!! その理論だと、世界中の弟は全員ルイージを使わないといけなくなるだろうが!!」
「何を言ってる。そんなのは一夏だけに決まってるだろうが」
「ピンポイント攻撃かよッ!? 山田先生もなんとか言ってやってくださいよっ!」
「えっと…それじゃあ、私はスティーブでお願いします…」
「先生―――――――――――――――――――っ!?」
最後の希望も打ち砕かれた。
もう誰も、この怒涛のボケにツッコミを入れられる人間はいないのか?
「そんなに叫んでいていいのか? こうしている間にもインターバルは刻一刻と過ぎて行ってるんだぞ? もうすぐお前の機体もやって来るだろう。ちゃんと準備運動ぐらいはしておけよ」
「急に真面目な話をするのやめい!!」
「教師が真面目な話をして何が悪い」
「さっきまでスイッチで遊ぶ気満々だった奴が言うセリフかっ!」
「全く…騒がしい奴め。仕方あるまい…ディアボロ先生」
「呼んだか?」
「誰――――――――――――――――――――――――っ!!!???」
いきなりピット内に現れたのは、ピンク色の髪をした半裸に近い格好の男。
ファンキーな格好に反して、その身から溢れる迫力は本物だった。
「この人はディアボロ先生。IS学園の臨時講師だ」
「ディアボロだ。よろしく」
「こんな人いたっけっ!?」
「ぶっちゃけ、今回限りのクロスオーバーキャラだ」
「一番言っちゃいけないメタ発言やめろよっ! めっちゃ悲しくなるわ!」
「教えている科目は国語だ」
「まさかの国語っ! 体育系じゃないのかよッ!?」
「俺のアイドルは清少納言と紫式部だ」
「何でその二人?」
「FGOで惚れた」
「言っちゃったよ、この人っ!」
「特技は『時間を消し飛ばす事』らしい」
「なにそれ怖っ!?」
「という訳で、ディアボロ先生。お願いします」
「任せておけ…ではいくぞ! キングクリムゾン!! 我以外の時は消し飛ぶ!!」
これにより、一気に次の試合開始直前まで時間が消し飛ぶ事になった。
本当は数秒しか消し飛ばせないとか、そんなツッコミは暗黒空間にばら撒くので却下だ。
そして、消し飛ばしている間に一夏の専用機である『白式』が到着し、なんやかんやあって設定が完了して一次移行に至った。
「なんか一番大事な部分を端折られた気がするんですけどッ!?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
全ての設定が完了した自分の専用機を前にし、一夏は座り込んでから泣いていた。
「なんか…素直に喜べない……」
「難儀な奴め」
難しいお年頃なのだろう。
「結局、一夏は一度も私達に勝てなかったしね」
「同じ弟なんだから、もっと上手く使ってやれ」
「俺には赤い帽子を被った髭面の配管工の兄貴はいねぇっ!!」
いたらいたで面白そうではあるが。
「ったく…そういや、ディアボロ先生は何処に行った?」
「あの人なら、さっきピットから出ていこうとした時に、なんでかここにいたゴキブリにびっくりして、その拍子に足元がふらついて床に転がっていた空き缶を踏んづけて足を取られて、そのまま豪快に顔面から床に激突して、そこに自動ドアが動いて体を挟んだ挙句、トドメにぐらついて落ちてきた非常灯が頭に激突して死んでたよ?」
「よりにもよって、そんなピタコラスイッチみたいな死に方っ!? っていうか、なんでこんな鉄ばかりの場所にゴキブリがいるんだよッ!?」
「「「「さぁ?」」」」
そればかりは本当に誰にも分らない。
IS学園の永遠の謎である。
「というか、人が死んでるのにどうして、そんなに冷静なんだよッ!?」
「いや…IS学園じゃ日常茶飯事だし……」
「この間なんて、タンスの角に小指をぶつけてショック死してましたしね~」
「貧弱すぎだろッ!? 凄いのか凄くないのか、よく分かんねぇ人だなっ!?」
「凄い人だとは思いますよ? 以前はイタリアでギャング組織のボスをしてたそうですから」
「冗談抜きの大悪党じゃねぇか! なんでそんな人間を教師に採用なんてしたんだよッ!?」
「ノリじゃないか? ウチの理事長はそんな人だし」
「ノリとなっ!?」
今頃、理事長室で用務員を兼任している理事長がくしゃみをしている事だろう。
「心配しなくても大丈夫だ。これから先、出てくる可能性は少ないだろうからな」
「いや、心配してやれよ!? 二重の意味で!」
「気にするな!」
「…どこかで聞いたことがあるようなセリフだな」
それもまた『気にするな!』
「そんなことなぞどうでもいい。まずは目の前の試合に集中しろ」
「そう言うなら、俺にツッコミなんてさせずに集中させてくれよ……」
トボトボと歩きながら、一夏は全く浮かない顔のまま白式に体を預けた。
「織斑先生。オルコットさんの方も準備完了のようです」
「分かった。という事だ。行けるな?」
「行けないと言っても行かせるんだろ?」
「当然だ」
「だと思った……」
試合前からもうボロボロな一夏。
ある意味、コンディションは最悪だった。
「「「精々、頑張れよ。ルイージ」」」
「俺は永遠の二番手じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
魂の叫びを挙げながら、一夏は初めての試合に向かって飛んで行った。
空の向こうでは、皆の大好きなディアボロ先生がニッコリと笑っていた。
「割と冗談抜きで洒落にならないから、その表現は止めてやれ!!」
一夏、ツッコみまくりの回でした。
ついでにディアボロ先生もご登場。
プロットの段階では、皆大好きなカーズ先生も登場予定でした。