ぷりーずへるぷみー   作:とんこつラーメン

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まさか、たった一話で早くも高評価を貰うとは思いませんでした。

でも、自分的にはまだまだ消化不良。

思っていた通りの文章を書けたとは思っていません。

精進あるのみですね。






幼馴染っていいよね

「…と言う訳で、私がこのクラスの担任である織斑千冬だ」

 

 何が『というわけなのか』なのか。

 

 本来ならば、ここで千冬の熱狂的なファンである生徒達が『キャ~!』とか『抱いて~!』とか『貴女に会いにここまで来ました~!』とか言って騒いでいたであろうが、その前に色々な事があったせいで、そんな事は全く無かった。

 

 目の前で一夏に向けて出席簿アタック×2に加え、咲耶に抱き着いてからの耳元で愛を囁くといった行動を見て、一気に心の中にあった熱が冷めてしまったのだろう。

 だが、それはそれで良かったのかもしれない。

 もしも全員が騒いで、その大声で咲耶が苦しそうにしていたら、千冬は一学期初日から早くも『阿修羅すらも凌駕する存在』になっていた可能性があるから。

 

「さっきまでのことは気にするな。あれはバカをやった生徒への指導と、私の単なる日課に過ぎん」

 

 確実に脳震盪を起こすレベルの一撃を『指導』と言って、幾ら気心が知れているとはいえ、女の子(本当は男の娘)の体に出会い頭で抱き着くのが日課と言ったり。

 この瞬間、生徒達の思考は一気に『燃え』から『萌え』へとシフトした。

 

(まさか…入学早々に美しき百合の花を見ることが出来るなんて!)

(しかも、カップリングは千冬様×謎の美少女!)

(このネタだけで、薄い本は軽く5~6冊は描ける!)

(二人がセックスしてる光景を撮影させてくれないかな……)

 

 約一名、確実に御用になる事を考えてはいるが、流石に実行には移さないだろう……と信じよう。

 

「まずは担任らしく入学おめでとうと言っておこう。だが、ここで気を抜いては意味が無い。寧ろ、一番大変なのはここからなのだからな。お前達も知っている通り、IS学園は他の学校と比べても、授業のレベルが非常に高い。それだけではなく、ここではISの関する座学や実技の授業も行われる為、勉学のみならず自身の体を鍛え、腕を磨くことも決して怠ってはいけない。もしも、何か一つでも怠けたりしたら、その先に待つのは落第して留年という結果だけだ。よく肝に銘じておくように」

 

 ようやく担任らしい言葉を言ってくれた千冬。

 少し心配になりかけていた生徒達を安心させてくれた。

 

 キーンコーンカーンコーン……。

 

 ここでチャイムが鳴り、SHRの時間の終わりを告げる。

 

「まだどこぞのアホのせいで、まだ全員分の自己紹介が済んでいないが、それは各々で空いた時間にでもやっておけ。それから、IS学園は他の高校と同じ教科数に加え、さっきも言ったISの授業も含まれるので、一年間の総合的な授業数はかなり多い。無駄に出来る時間は少しも無いので、入学初日である今日から、早くも授業を開始していく予定だ。では、これでSHRを終了する。全員、起立!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 一時間目が終了し、学園生活初めての休み時間がやって来た。

 他の生徒達は早くも仲良しグループを形成し、幾つかの集団が生まれていた。

 それ以外には、他のクラスや学年から学園唯一の男子を見に廊下に集まっている。

 

 そんな風に注目されている当の本人はと言うと……。

 

「オレ……オマエ…マルカジリ……」

 

 早くも脳がオーバーヒートを起こして、机に突っ伏しながらダウンしていた。

 

「だ~いじょ~ぶか~?」

「だいじょばない……」

 

 後ろから定規で一夏の背中をツンツンと突く咲耶。

 彼は全く平気そうで、ケロっとした表情をしている。

 

「やめい。アラレちゃんが道端に落ちているウンコを突くみたいに、俺の事を定規で突くのは止めい」

「お前が起き上がったら止めてやるよ。ウンコ一夏」

「人を勝手にウンコ呼ばわりすんな。ったく……」

 

 まるで残業から帰って来てソファーで寝転がっている中年の独身男性の様な動きでゆっくりと半身を起す。

 この歳で既に謎の貫録が出ていた。

 

「つーか、どうして咲耶は大丈夫なんだよ。立場的には俺と同じの筈だろ?」

「いや……学園が始まるまでの間、オレってずっとホテルに軟禁されてたじゃん?」

「らしいな。お前の身柄を守る為だろ?」

「うん。で、何もすることが無くてめっちゃ暇だったから、その時にもう渡されてた教科書やら参考書やらをずっと読み耽ってたから、いつの間にか自然と覚えてた。要は、お前と違ってちゃんと予習をしてたって事だ」

「マジかよ……俺…今までの人生で予習だなんて一度もしたことが無いぞ……」

「そんなんだから、中学時代の平均点が50点ジャストになるんだよ。あの弾だって、ちゃんと予習と復習をしてたってのに……」

「なん…だと……!?」

 

 衝撃の真実。

 今言った『弾』とは、一夏や咲耶の中学時代の親友である『五反田弾』のことであり、少しチャラ男みたいな見た目をしているが、中身は意外と硬派で真面目な性格だったりする。

 

「なんだったら、後でオレが教えてやろうか? このままじゃ、これから先マジで『ヤバいですね!』になるぞ」

「どうしてそこでペコリーヌになるのかは謎だが…お願いしようかな。頼むわ」

「あいよ。頼まれました。なんか、中学の時を思い出すよな」

「そうだな。あの時もよく、お前に勉強を教えて貰ってたっけ……」

 

 全く違う環境に強制的にぶち込まれた反動か、二人は中学時代の事を思い出す。

 あの頃はよかった。明日の事なんて全く考えず、色んな事に夢中になっていた。

 

「はぁ……出来るのなら、昔に戻りたいよ……」

「同感。過去に戻ってやり直しが出来たら、ちゃんと希望の学校に行けるのかな……」

「オレも……こんな恰好なんてしてなかっただろうな……」

「いや。仮にここに来なくても、俺が絶対にさせるし。んで、一緒にデートに行く」

「急に真顔になって変態発言すな。シリアスな空気が窓の向こうに飛んで行っちゃっただろうが」

「あっ!? 本当だッ!? 待ってくれ~! 俺達のシリアス~!」

 

 一夏が必死に手を伸ばすが、シリアスを表現するトーンはそのまま大空の彼方へと消えていってしまった。

 最後には『キラーン』という音まで残して。

 

「さっきから何をやってるんだ、お前達は……」

「「あ」」

 

 ここでようやく、正真正銘の女の子の介入。

 二人の前にいるのは、さっきまで少しだけ話題に上がっていた黒髪ポニーテールの少女。

 彼女の名は『篠ノ之箒』といって、二人共通の幼馴染だった。

 

「少し話がある。そうだな……廊下でいいか」

「だってよ、一夏」

「いや、お前も一緒に来てくれ。咲耶。というか、寧ろ咲耶こそが私にとって本命なのだが」

「そなの? んじゃ、一夏って邪魔?」

「そんな事は無いが…別にいいだろう。ついでだ、一夏も一緒に来い」

「本人の目の前でそんな話すんなよ…っていうか、俺はついでなのかよ」

「「それがなにか?」」

「俺の幼馴染達が全く持って容赦ない……」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 廊下に出て話をしようと思ったが、案の定というか、周りの女子達が思い切り聞き耳を立てているので、三人は階段の踊り場まで移動した。

 

「まずは、久し振りだな箒」

「んだんだ。小4の時以来になるのか」

「そうなるな。私も色々と話したいが、その前にどうしても聞きたいことがある」

「「なんだ?」」

「……どうして咲耶はそんな恰好(女装)をしているんだ?」

「だよな……やっぱ、それを聞いちゃうよな……」

 

 大きく溜息を吐きつつ、周りで聞いている連中に向かって視線を飛ばして追い払ってから、小さな声で話し出す。

 

「端的に言えば、一夏の巻き添えを受けた」

「巻き添え? どういう事だ? 一夏が試験会場でISを動かしたことは私も報道で知ったが、まさか咲耶も同じ場所にいたのか?」

「まぁね。オレと一夏は同じ高校を受験してたんだけど、あろうことか、このバカチンが道に迷ってIS学園の試験会場に行ってたのよ」

「何をやってるんだ…お前は……」

「これに関しては何も反論できない……」

 

 今でも猛烈に反省しているのか、一夏は申し訳なさそうに顔を下げる。

 そんな彼を氷の目で見下す箒。

 この時点で、三人の中のヒエラルキーは確定してしまっていたのかもしれない。

 

「いつまで経ってもやって来ないから、流石に心配になったオレは急いで一夏の事を探しに行ったんだけど……」

「探しに行った先で、一夏がISを動かしている現場に出くわした……」

「そのとーり。んで、慌てて一夏に向かって駆け寄ろうとしたら、足元にあったケーブルに気が付かないで、それに足が絡まってコケそうになったオレは思わずたたらを踏んで置いてあったISの装甲に手を着いてしまって……」

「その時に何故か咲耶も同じようにISを動かしてしまった…と」

「そうなんだよ。こいつが道に迷いさえしなければ…オレがこんな目に遭わずに済んだのに……ぶつぶつ……」

「本当にごめん……」

 

 二人揃って精神的ダメージはかなり大きいようで、一夏は意気消沈し、咲耶は今にも泣きそうな顔になっている。

 久し振りに会った幼馴染達が落ち込んでいる姿を見せられ、箒もまたどうすればいいのか困惑してしまう。

 

「そ…それと、咲耶のその格好とどう繋がるんだ?」

「簡単だよ。一夏には千冬さんっていう超大きい後ろ盾が存在しているけど、オレにはそれが無い。オレの正体が明るみになれば、次の瞬間には政府の連中やマッドな研究者たちが一斉に押し寄せて、あの手この手でオレを捕まえてから人体実験の道具にされちまう。それを避ける為に、オレの事は一切公表することなく、あくまでも『IS学園を受験した普通の女の子』にすることにしたんだ」

「その為に…そんな恰好に……」

「本当は物凄く辛いけど、けど、これは結果的に大切な両親を守る事にも直結するからな。迷う理由は殆ど無かった」

「お前らしいよ」

「そうかな……」

 

 疲れたように微笑を浮かべる咲耶。

 その姿はかなり大人びて見えて、近くにいた一夏と箒のハートを直撃した。

 

(咲耶……やっぱり綺麗だ……)

(この顔で男だと言い張られてもな……誰も信じないだろう。昔からそうだったし)

 

 何気に発覚した咲耶の過去。

 どうやら、男の娘は幼い頃から男の娘だったようだ。

 

「因みに、今の事を教えてくれたのが千冬さんなんだよ」

「なにそれ。普通に初耳なんだが」

「だろうな。だって聞かれなかったし」

「お前は何処のキュゥべえだ」

「じゃあ、オレと契約をして魔法少女になれ」

「無茶言うな。っていうか、咲耶がなれよ魔法少女に。絶対に似合うから」

「断る。何が悲しくて、あの宇宙一の詐欺師の手伝いをせにゃならんのだ」

 

 魔法少女になった咲耶。

 箒はその姿を想像して、少しだけ鼻から『愛』が噴き出そうになった。

 

「そ…そういえば、咲耶は随分と髪が長くなったな。あれからずっと伸ばしてたのか? 前は首元ぐらいまでの長さだった筈だが」

「まさか。ちゃんと美容室には通ってたよ。少し前までは今よりもずっと短かった」

「だよな。なんでいきなり、そこまで伸びてるんだ?」

 

 一夏と箒に尋ねられ、急に遠い眼になって窓から見える青空を見上げる。

 

「……いきなりオレの家に突撃してきた束さんから、あの人の開発した『超強力育毛剤 ~私…ハゲを卒業します~』を頭からぶっかけられた。理由は『女装するなら、髪を伸ばした方が絶対に可愛さが増すから!』だそうだ。意味分らん」

(グッジョブ束さん!!)

(ロングな咲耶なんて可愛いに決まっている! 全く…ごく稀にいい事をするから憎めないんだよな…姉さんは)

 

 しれっと出てきた束と言う人物は、箒の実の姉であると同時に、ISをこの世に産み出した開発者である若き天才科学者『篠ノ之束』の事だ。

 昔からマイペースで破天荒なのだが、妹を含む身内を大切に想う心は持っていて、特に咲耶の事は超が付くほどに溺愛している。

 千冬の親友でもあるのだが、同時に咲耶を巡る最強のライバルでもあった。

 束、千冬、咲耶の三人が揃った時、必ずと言っていい程に『咲耶争奪戦』が始まるほどに。

 

「相変わらず、神出鬼没な人なんだな……」

「マジでな。因みに、この胸に入れてるパッドも束さん特製だ」

「そうだったのか……。胸が膨れている咲耶を見た時、マジで女の子にしか見えなかったからな」

「それはそれでショックだよ」

 

 例え、非常に精巧なパッドを入れていても、少しは男の要素が残っていてほしかった。

 けど、実際には完全に男の要素は消滅し、誰もが認めるレベルの美少女が完成していた。

 

「これさ、色んなサイズを用意されたんだけど、一番無難なDカップぐらいにしたんだよ」

「なんでだよ。咲耶ならどのサイズも絶対に似合うのに」

「一夏の言う通りだ」

「いや……試しに大きめのサイズをつけてみたんだけど……普通に肩が凝った。女の子って大変なんだなって身を持って実感したよ」

「うんうん」

 

 満足げに頷きながら咲耶の肩に手を置く箒。

 そんな彼女も、およそ高校生とは思えないレベルのスタイルを誇っているので、身近に自分の気持ちを共感してくれる相手がいるのは純粋に嬉しいのだろう。

 

「もうそろそろ教室に戻らないか? 二時間目に遅れる」

「そうだな。続きは昼休みにでも話そうぜ。まだまだ話し足りないし」

「賛成。んじゃ、早く行こうぜ」

 

 三人は仲良く並んで教室まで戻っていく。

 その後ろ姿は、なんとも絵になる光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は萌え要素が殆ど無かった上に、全く持って書き足りない!

でも、書きすぎると止まらなくなるので、書けなかった分は次回に回します。
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