ぷりーずへるぷみー   作:とんこつラーメン

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最近は心身ともに疲れる事ばかり。

どこかで思い切りストレスを発散できないかなぁ~…。







ギャグは止まらない

 とてもじゃないが一言では語り尽くせないような騒動があった三時間目が過ぎ、時間は一気に昼休みまで進んでいく。

 

 咲耶、一夏、箒の三人は、休み時間の話の続きをする為に揃って屋上まで来ていた。

 普通ならば学校の屋上なんて場所は決して入る事が許されない禁断の地になっているが、このIS学園だけは数少ない例外のようで、屋上にはベンチやテーブルや花壇といったものが設置してあって、そう考えても生徒達が訪れる事を前提としているような物が設置してある。

 咲耶たちも、その好意に甘える形で、三人でテーブルを囲む形で購買部で買った惣菜パンやジュースを持ってきている。

 

「ここなら遠慮なく色んな事が話せるな」

「そうだな」

「ンな事よりも、咲耶のせいでとんでもない事になっちまったじゃねぇか! どうするんだよっ!? 俺、ISなんて上手に操縦できないぞ!?」

「何言ってんだ。最後の方は自分からノリノリで参加してたじゃんか」

「全くだ。男ならば、自分の言葉には責任を持て」

「うぐぐ……!」

 

 二人から畳みかけられて言い返したいけど、場の空気に当てられて自分の口から試合に出ることを了承したのもまた事実。

 どれだけ後悔しても、一度でも出した言葉はもう二度と引っ込められないのだ。

 

「そもそも、咲耶が余計な事を言いださなきゃ、あんな事にはならなかったんだろうがよ……」

「え~? 咲耶ぁ~…何を言ってるのかわからにゃ~い♡ てへぺろ♡」

「その顔マジで止めれ!! どう反応していいのか困るから!」

 

 本当は一夏だって可愛いとは思っているが、そのせいで望まない試合をさせられる羽目になったのだ。

 怒っていいのか喜べばいいのか、思春期真っ盛りの一夏にはまだまだ分からなかった。

 

「咲耶……お前はいつも、そうやって私の心をかき乱していくんだな……この魔性の小悪魔め……!」

「箒も箒で、また鼻血を出してるのかよ……」

 

 暫く見ない間に、自分の幼馴染がとんでもないキャラ崩壊をしていた件。

 ある意味、もう一夏が知っている箒はどこにもいないのかもしれない。

 

「だけど、あれはあれでオレにとっては凄く必要な事ではあったんだよ」

「必要な事って……あのやり取りが?」

「違う。お前やオルコットさんとISの試合をすることがだよ」

「ど…どういうことだ?」

 

 いまいち要領を得ない咲耶に、一夏は眉間に皺を寄せる。

 それを見て、咲耶ははぁ~…と大きく深い溜息を吐いてから首を振った。

 

「全く…一夏はあれか? 三歩歩いたらすぐに忘れちゃうニワトリさんか?」

「俺は立派な人間じゃい。何が言いたいんだよ?」

「休み時間に話したこと、もう忘れたのか? オレがこんな恰好をしている理由と、一夏に有ってオレに無いもの。それが非常に重要なんだよ」

「え~っと……」

 

 休み時間に話したこと。

 頑張って思い出そうとするが、三時間目のやり取りのせいで詳細に思い出せない。

 

「後ろ盾の話か」

「その通り。お前も少しは箒の記憶力を見習えよな~。じゃないと、フラッシュ暗算で世界王座になんてなれないぞ?」

「最初からなる気なんてねぇよ。でもそっか……そうだったよな。なんか徐々にだけど思い出してきたよ」

 

 自分の身と家族を守る為に、咲耶は女装をして性別を偽る道を選んだ。

 そうしなければ、どんな目に遭うか分かったもんじゃないから。

 

「あ~…ごめん。まずは最初に謝っておくわ」

「いきなりどうした?」

「これから、オレは柄にもなく真剣でシリアスな話をする。そうなると完全にギャグ要因が無くなってしまうから、その代わりに一夏」

「な…なんだよ?」

「オレが話している間、ずっと『アントニオ猪木』のモノマネをしててくれ」

「よりにもよってアントニオ猪木っ!? んなの出来ないぞっ!?」

「やれる範囲でいいから。はいスタート」

 

 咲耶がパンッと手を叩くと、一夏は仕方なく顎をしゃくれさせ始める。

 文字では分り難いかもしれないが、意外と様にはなっていた。

 

「まず、オレはこのままだと、IS学園を卒業した後もずっと女装をして生きていかないといけなくなるだろう」

「なんだとコノヤロー」

「それは…どういうことだ?」

 

 自分に出来る範囲での猪木のモノマネをする一夏の横で、箒が真剣な顔で尋ね返す。

 

「よ~く考えてみてくれ。学園に在籍している間はずっと女だと思っていたのに、卒業した途端に本当は男だったと判明したら…どうなると思う?」

「まず間違いなく、今までずっと燻っていた連中が一気にやってくるだろうな。お前の身柄を抑えに」

「マジかコノヤロー」

「その通りだ。どれだけ学園内で正体を隠していても、卒業してから元に戻っちゃ意味が無い。多分、もうオレは戸籍の方でも『女』に変えられてるんじゃないかな」

「そんな……」

 

 戸籍まで変えられては、もうどうしようもない。

 このままでは咲耶は一生、自分を偽って生きていかなくてはいけなくなる。

 

「といっても、念の為にすぐに男に戻せるようにはしてあると思うけど。流石に、何があってもってわけにはいかないしな」

「凄いなコノヤロー」

「そ…そうだよな。だが、それと試合とどう関係するんだ?」

「単純だよ。試合に勝って、こっちの事情を知っている連中に見せつけるんだ。『飛世咲耶は優秀な人間で、人体実験なんかで亡くすには惜しい人材ですよ』って。上手く国内外にそうアピール出来れば、少なくとも最悪の事態だけは回避できるし、もしかしたら在学中、もしくは卒業後にどこかの国や企業がオレの事をスカウトしてくれて、大きな後ろ盾になってくれるかもしれない」

「そうか! そうなればもう咲耶が性別を偽る理由も無くなる!」

(そして、私と咲耶がちゃんと結婚できる!!)

 

 箒、何気に本心が漏れそうになる。

 

「その為には、どんな小さいチャンスも見逃さないようにしなくちゃいけない。幸いなことに、IS学園には外から来賓の客が来るようなイベントが盛り沢山だ。それでいい成績を残せれば……」

「未来に希望が持てる!」

「やったじゃねぇかコノヤロー」

「まぁ…そう簡単には事は運ばないだろうけどな。だからこそ、色んな事を一生懸命に頑張らないと」

 

 珍しく真剣な顔での決意表明。

 二人は知っていた。

 この飛世咲耶という人間は、普段はおちゃらけていても、やる時はやる男なのだと。

 

「もしや、三時間目のあのやり取りも、全て計算し尽くした上でのことだったのか?」

「少しはね。けど、半分以上は賭けだった。千冬さんが『ダメ』って言えばそれまでだし、上手くオルコットさんが乗ってくれる保証も無かった。一応、彼女の性格を考えた上での発言だったんだけど。ぶっちゃけ、彼女がちゃんと自薦をしてくれて助かった」

「凄いなコノヤロー」

 

 最初は憤っていた一夏ではあったが、こうしてちゃんとした理由を聞かされれば何も文句なんて言えなくなる。

 逆に、自分に出来る事なら喜んで協力してやろうという気にすらなってきた。

 

「だからと言って、手を抜いた試合なんてしたって意味が無い。一夏、当日は本気で掛かってこいよ。本気同士の試合で勝たないと意味なんてないんだからな」

「分かってるぜコノヤロー」

「つっても、オレが勝つ必要があるのは一夏だけだけどな」

「どういう事だ? 全勝出来る方が良いんじゃないのか?」

「そりゃそうだ。その方が一番良いに決まってる。けど、そうは問屋が卸さないだろ。冷静に考えてみてくれ。お互いに素人同士である一夏には勝てる可能性があるとしても、オルコットさんは必死の努力の末に代表候補生になった猛者なんだぞ?」

「あ……」

 

 完全に失念していた。

 セシリアは国に実力を認められた人間なのだという事を。

 一朝一夕で勝てるような相手では決してない。

 

「オルコットさんとの試合の場合、オレに求められるのは『結果』じゃなくて『過程』の方だと思ってる」

「同じ『負け』でも、手も足も出ずに完敗するのと、代表候補生をあと一歩と言うところまで追いつめた末の敗北とでは全く意味が変わってくる…か」

「どういうことだコノヤロー」

「簡単だ。呆気なく負けては『やっぱりこいつは弱い』と思われるが、代表候補生と接戦したとなれば話は別になってくる。相手は『奴は代表候補生と互角以上に渡り合える逸材だ』と判断し、高く評価することだろう。しかも、負けたという結果も『相手は代表候補生なのだから仕方がない。それよりも、そんな相手に果敢に挑んだこと自体が素晴らしい』と思われるかもしれない。そうなれば、これからの事にも期待して貰える上に、卒業後の進路もある程度固まってくる」

 

 一息に言ったことで喉が渇いたので、咲耶は自分が勝って来たペットボトルの烏龍茶を飲んだ。

 

「まぁ、今まで話したのはあくまでも『理想論』だけどな。万が一、卒業まで頑張っても、どうにも増らなかった場合に備えて『最後の手段』も考えてるし」

「「最後の手段?」」

「千冬さんか束さんと結婚して夫婦になる事」

「「…………は?」」

 

 いきなりの爆弾発言に、一夏と箒は揃って口を開けたまま固まってしまった。

 因みに、まだ一夏の顎はしゃくれたままだ。

 

「ちょ…ちょっと待ってくれ! 一体何がどうしてそうなるんだっ!?」

「そうだよ! なんで咲耶と千冬姉が結婚する話になるんだよッ!?」

「そりゃ、『初めての相手』はどうしても意識しちゃうだろ」

「「は…初めて?」」

「お前らよりも一足早くに『大人の階段』を昇ったって事、言い方を変えれば『卒業』したんだよ」

「「そ…卒業…」」

 

 そこまで聞かされれば、嫌でも想像はつく。

 一瞬で二人の顔が真っ赤になった。

 

「ほら。前にオレが一夏の家に泊まった事が有ったろ?」

「う…うん。あの時は千冬姉もいて、かなり盛り上がったのは覚えてる…」

「で、あの時は千冬さん、めっちゃ酒を飲んでベロンベロンになっててさ。疲れたお前は先に自分の部屋に戻って寝たじゃんか」

「そう…だったっけ…」

「その直後だった。いきなり千冬さんに押し倒されて、着ている服を無理矢理に全部脱がされて、そのまま酔った勢いで逆レイプされた」

「「遂にストレートに言ったっ!?」」

 

 このまま、ぼかしたままで終わると思いきや、堂々ととんでも発言を言い放った。

 未だにそんな事とは無縁な高校生には、かなり刺激が強かった。

 

「千冬姉……弟の幼馴染に何してんだよ……。前々から咲耶に対して強い好意を持ってたのは知ってたけど……」

「まさか…その後に姉さんとも…?」

「うん。どこで見ていたかは知らないけど、一回戦が終わってから、何処からともなく束さんもやって来て、そのままの勢いで二回戦が始まった。勿論、オレはされるがままだった」

「姉さん……咲耶の童貞は私が欲しかったのに……!」

「「え?」」

 

 篠ノ之箒。姉と同じ穴のムジナであることが幼馴染二人にバレる。

 

「身体能力じゃ絶対に勝てないから、体を押さえつけられて何も出来なかった。最後の方にはオレ自身もノリノリで腰を振ってたけど」

「「……………」」

 

 全く気が付かぬうちに、お互いの姉達によって大切な幼馴染が大人の階段を全速力で走り抜けていた。

 15歳なのに妙に達観した思考なのも、今となっては不思議と頷けた。

 

「さ…咲耶の御両親は何も言わなかったのか?」

「全然? 寧ろ喜んでた。『千冬ちゃんと束ちゃんが嫁に来る~!』って」

「ウチの姉さんも相当に変わり者だが、咲耶の御両親も相当だな……」

「それには実の子供であるオレも同感。なんせ、子供を放置して年がら年中に渡って世界中の国々に旅行してるし。うちの中は両親の土産物で完全に埋まってる」

 

 空を見上げて家の惨状を思い出す咲耶。

 帰ったらまた増えてるだろうなと確信し、休みの日に家に戻り掃除をすることを決意した。

 

「だからこそ、一夏の家によく泊まらせて貰ってるんだけどな」

「そういえば、私が引っ越していく前はよくウチにも泊まりに来ていたな」

「しれっとオレの布団に束さんが潜り込んでたりしてたけどな」

「その頃からなのか……」

 

 下手をしたら、姉が幼い頃の咲耶に手を出していたかもしれないと思うと、申し訳なさよりも先に嫉妬心が浮き出てくる。

 

(今後は私も、もっと大胆に攻めてみるか……)

 

 この時、咲耶に更なるフラグが立った。

 既に童貞ではないので躊躇いは無いかもしれないが。

 

「話はそれたけど、要はそういうこと。どんな形であれ、責任は取らなくちゃいけないだろ?」

「いや、それ寧ろ責任を取るのは千冬姉たちの方なんじゃ……」

 

 実に正論だが、そんな言葉が姉に通用するとは思っていない。

 力技で論破されるのがオチだ。

 

「なぁ…ずっと疑問に思ってたんだけど、もしかして咲耶って千冬姉がIS学園で教師をしてることを知ってたか?」

「うん…って、お前は知らされてなかったのか?」

「全然。今日、初めて知った」

「マジか……。てっきり、お前にはもう話してると思ってたから何も言わなかったけど……」

「はぁ……俺ってそんなに信用ないのかな……」

「いや。それは違うだろ」

 

 ここで咲耶が一夏の懸念をキッパリと否定。

 真剣な顔をして彼の顔を見つけた。

 

「寧ろ、一夏に無駄な心配を掛けさせない為に黙ってたんだと思う。ISの業界って思ってる以上に闇も深いみたいだし。そんな場所にずっといた千冬さんだからこそ、出来るだけ巻き込みたくなかったんじゃないかな」

「そういや…千冬姉って俺にIS関係のテレビとか雑誌を全く見せようとしなかったな……」

 

 今になって気が付かせられる姉の想い。

 それを教えてくれたのが幼馴染というのが、なんとも複雑だが。

 

「咲耶は俺よりも千冬姉の事をよく知ってるんだな」

「んな事ないでしょ。ただ、お互いに知ってる部分が違うってだけの話でしょうよ」

「そうかもな……」

 

 ここで三人は揃って俯き、場には沈黙が流れる。

 パクパクムシャムシャと咀嚼をする音だけが聞こえるが、少しして沈黙に耐えられなくなった咲耶が大声を出しながら立ち上がった。

 

「あぁ~…もう限界!! シリアスモードやめやめ!! こんなのオレのキャラじゃないから!!」

「やっと顎を元に戻せる……」

 

 しゃくれを止めた一夏は、自分の顎をさすりながら一息ついた。

 

「そんな訳で、もしかしたらオレは二人の義理の兄になる可能性がある! 一夏、今後はオレの事を『お義姉ちゃん♡』って呼んでもいいぞ」

「絶対に断る!! つーか、千冬姉にやるぐらいなら俺がお前を嫁にするわ!!」

「おっと、ここでまさかの告白ですか~? 残念だが、オレは世界の咲耶ちゃんだからな。特定の誰かの嫁にはなれないんだ。残念だったな」

「世界のって……」

 

 今までずっと柄にもない雰囲気を出し続けていたせいか、その分の反動が大きいようで、完全に暴走状態になっていた。

 

「咲耶。ずっと疑問に思っていたんだが、表向きだけとはいえ女として過ごす以上、一人称が『オレ』なのはどうなんだ?」

「いや、普通にオレっ娘っているよ?」

「お前の場合は違うだろ。見た目は完璧なのだから、もっと女性らしくするためには一人称も『私』にした方が良いんじゃないか?」

「確かに。箒の言う事も一理あるわ。よし、試しにやってみよう」

 

 軽く両拳を握りしめ、それを顎の下まで持っていく。

 そこから目をウルウルさせながらの上目遣い。

 

「一夏くん……私…君の事が……」

「ゴ…ゴクリ……」

 

 いきなりの不意打ちに心臓が激しく鼓動する一夏。

 自分に向かってくる咲耶の姿は、完全に美少女そのものになっていた。

 この姿を見て、この声を聞いて彼が男だと気が付く者が果たして何人いるだろうか。

 

「なんちゃって! どうだった? どうだった?」

「完璧だ! 申し分ないぞ! あと、出来れば私にも今のをしてくれ!」

「一向に構わん!」

 

 箒に向かって、さっきと同じセリフ、同じポーズする咲耶を見ながら、一夏は胸を押さえて息を荒くしていた。

 

(い…今のはマジでヤバかった……! もしも、この場に箒がいなかったら肩を掴んでからキスまでしてたぞ……)

 

 自分の姉と一線を越えたと聞かされても、一夏はそれに対して全く嫉妬の類は浮かばなかった。

 それどころか、姉の事をライバルのように思ってしまった。

 

(戸籍の上で女になってるって事は…もしかしてマジで咲耶と俺って結婚できるのかな……)

 

 一夏、越えてはいけない一線の前に立ってしまう。

 そこを越えるか、それとも踏み留まるかは彼次第…ではあるが、そんな彼に神は最大の試練を与える。

 具体的に言えば、この日の放課後に。

 

 

 

 




なんか長くなってしまった……。

どうも、マジでキャラが勝手に動く現象が多発します。

これは小説を書く人間としていい傾向…なんでしょうか?
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