ぷりーずへるぷみー   作:とんこつラーメン

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さて、咲耶からキスを迫られた一夏は、あれからどうなったのでしょうか?

本当にキスをしたのか? それとも……?








そうして、彼は無意識のままに新世界への扉を開く

 次の日。

 咲耶と一夏は、途中で合流した箒と一緒に食堂に入って、そのまま一緒に朝食を食べることに。

 

「ってな事があってさ~。ほんと、あの時の一夏の顔ってば面白かったな~! めっちゃ顔を赤くして、こっちにまで心臓がバクバクしてるのが伝わってくるんだもん」

「なんで普通に言っちゃうんだよっ!? お前に羞恥心は無いのかッ!?」

「え? 今更、私にそれを聞いちゃうワケ? ないわ~」

 

 御尤も。

 大衆の面前で女装を強要された咲耶に、羞恥心云々の話をしても無意味なのだ。

 そんな事を気にしている暇なんて彼には無いから。

 

「私が少し目を離した隙にそんな事になっていたとは…! 不覚!!」

「「何が?」」

 

 それは箒にしか分からない事だから、深く聞いてはいけない。

 

「それで? 本当にキスをしてしまったのか?」

「まさか。するわけないじゃん。あんなの、一夏をからかう為のフリだよ。フリ」

「そ…そうだよな……。咲耶がそう簡単に誰かに唇を許す筈ないよな……」

「それは…どうだろうな~……」

 

 中学時代に、年上の女性二人にファーストキスは愚か、初めてを捧げてしまい、図らずも二人の初めても奪う形になってしまった身としては、そう言われると流石に罪悪感が込み上げてくる。

 

「もしも、一夏と咲耶がキスをしてしまっていたら……」

「「いたら?」」

「私は一夏を殺さなければいけなくなる」

「なんでだよっ!? 俺は全く悪くないよねッ!? 寧ろ被害者だよねッ!? 幾らなんでも理不尽過ぎないかッ!?」

「心配するな。ちゃんと介錯はしてやる」

「首まで切られるのかよッ!? つーか、俺が自分で腹を切ること前提なのッ!?」

 

 とんでもないことを口走っているにも拘らず、何処までも澄んだ瞳で真っ直ぐに見てくる箒に、一夏もツッコまずにはいられない。

 そうでもしないと、本当にジャパニーズ・ハラキリをさせられかねない。

 

「一夏。一夏」

「なんだよ……んぐっ!?」

 

 興奮している一夏の肩を叩いて振り向かせると、いきなりその口に自分の持っていたスプーンを突っ込んだ。

 反射的に口をもぐもぐと動かし、口内に入れられたものを咀嚼する。

 

「う…美味い?」

「だろ?」

「というか、咲耶は何を食べてるんだ?」

 

 咲耶の前に置かれたものは、目玉焼きが乗っているトーストと、色んな野菜が入ったスープ。

 朝に食べるメニューとしては重いような気もするが、割とスタンダードな取り合わせだった。

 

「その名も『ラピュタ定食』」

「「ラピュタ定食?」」

「ほら。劇中でパズーが食ってた、目玉焼きを乗っけたトーストに、シータが空賊の船の中で作ってた、よく分んないごった煮みたいなスープ」

「アニメ飯ってやつか……ごくり」

「不思議だよな……ジブリアニメに出てくる飯ってめちゃくちゃ美味しそうに見えるって……」

「因みに、もののけ姫の序盤に出てきた『味噌粥』に、ハイジの『溶けたチーズを乗っけたパン』、ハウルの動く城で皆が食ってた『ベーコンエッグ』もあった」

「「凄く食べたい!!」」

 

 現在進行形で食事をしているのに、聞いているだけで涎が出てくる。

 アニメ飯の魅力は、それ程までに凄まじかった。

 

「俺…今度は絶対にもののけ姫の味噌粥食うわ……」

「私はハウルのベーコンエッグだ。思い出すだけで腹が減ってくる…!」

「あ~む。ん~♡ 目玉焼きとトーストの組み合わせって、シンプルだけど最強だよ~♡」

 

 満面の笑みを浮かべながら目玉焼きトーストを食べていく咲耶を見て、周りの生徒達も思わず唾を飲む。

 

「さ…流石は天下のIS学園……あらゆるニーズに対応してるなんて……」

「他には何があるのかしら……後でちゃんとチェックしとかないと!」

「味噌粥……ベーコンエッグ……目玉焼きトースト……チーズ乗せパン…!」

「食べたい……!」

 

 食べ盛りの女子達の目の前で、食レポさながらの食べ方をする咲耶。

 その威力は、食堂にいる女子たち全員をアニメ飯に覚醒させるほどだった。

 

「い…いかん。このままでは拙い。少し話を逸らそう」

「だ…だな」

 

 今の食事に集中しなくては、次にあれらを食べられない。

 一夏と箒は必死に目の前のメニューに集中することに。

 

「そ…そういえば、結局キスをしなかったのなら、そのまま何も無く終わったのか?」

「うんにゃ。あそこまでやっておいて、何事も無く終わるだなんて、私のプライドが許しません」

「どんなプライドだよ……」

 

 される方からすれば、たまったもんじゃない。

 だが、そんな事なんて全く気にしないのが咲耶だ。

 

「自分の顔を一夏にめっちゃ近づけた後……」

「近づけた後?」

「ちょ…それだけは言うなって!」

 

 これはヤバいと思った一夏が咄嗟に咲耶を静止させようとするが、食事中なので手荒な事は出来ない。

 結局、そのまま咲耶は楽しそうに話し出す。

 

「その耳に吐息をそ~っと『フ~♡』ってして、そのまま耳たぶを甘噛み、更にそこから舌先でペロペロペロ~って舐めてから、唇でパクって咥えて、最後は耳の穴を舐め捲った」

「なん…だと……!」

 

 一夏は恥ずかしさの余り、両手で顔を覆って俯き、箒はその光景を想像して鼻血を出した。

 ついでに言うと、箒の顔は何故か北斗の拳みたいな顔になっていた。

 

「凄く気持ちよさそうにしてたよね~? い・ち・か・きゅん♡」

「し…してねぇし! ンな事あるわけないだろっ!?」

「あの時、ズボンに大きなテントを作ってた人が言っても説得力は無いニャ~」

「ぐはっ!?」

 

 どれだけ理性を強く保っていても、本能には絶対に勝てない。

 一夏は、この歳で早くも、その真理に辿り着いてしまった。

 

 当然、聞き耳を立てていた周りの女子達もまた顔を真っ赤にしながら食事をする振りをしていた。

 

(飛世さん……幾らなんでも積極的過ぎぃぃぃぃぃぃぃっ!!)

(もう絶対にあの二人って付き合ってるでしょ……)

(めっちゃラブラブじゃないのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!)

(でも! 最高のネタを頂きました! ありがとう!!)

 

 この瞬間、密かに一夏の事を狙っていた他のクラスの女子達は、一気に彼の事を諦めた。

 ある意味では幸運なことかもしれないが、それは同時に、咲耶に対するブレーキが無くなる事も意味していた。

 

「わ…私も一夏と同じことをしてくれ!!」

「箒に? 別にいいよ。いつか機会があればしてあげるよ」

「約束したからな! 絶対だぞ!」

「はいはい。なんなら、そのままの勢いでキスもしてあげようか?」

「さ…咲耶ときしゅっ……!? ぷしゅ~……」

 

 箒、遂にオーバーヒート。

 興奮し過ぎて、頭から湯気を出して気絶してしまった。

 

「ありゃりゃ。ちょっちやり過ぎたか」

「お前な……調子に乗りすぎ」

「テヘペロ♡ ごめんちゃい♡」

「可愛く謝れば何でも許されると思ったら大間違いだぞ」

「ダメ……?」

 

 潤んだ瞳からの上目遣いのコンボ。

 これは咲耶の巧妙な策略だ。策略だと分かってはいる…いるのだけど……。

 

「こ…今回だけだからな……」

 

 やっぱり勝てない。

 もうお約束になったパターンだ。

 

「今度からは、誰かに言いふらすような事はするなよな……」

「あれれ? もしかして、もう一回同じことをして欲しいの?」

「……………」

 

 赤面しながらそっぽを向いた時点で、咲耶の言った事を肯定しているも同然だ。

 それを見て、咲耶は密かに『また絶対にしてやろう』と心に決めた。

 

「お前達! いつまでノロノロと食べている! 早く食べてからとっとと登校の準備をせんか! もし遅刻でもしたら、グラウンド10周させるぞ!」

 

 ここで千冬のご登場。

 ジャージ姿である事から察するに、彼女もまた食事に来たのだろう。

 

「ん? 咲耶、其処の二人はどうした?」

「若さ故の過ちってやつですよ」

「何故にそこでシャアが出てくる?」

 

 なんとなく分かるような、そうでないような。

 不思議な疑問を感じながら、自分も朝食を食べようと食券販売機に向かう千冬だった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 早くも二時間目が終わり、今は三時間目の真っ最中。

 相変わらず、一夏は教科書と睨めっこをしながらうんうんと唸っていた。

 だが、彼一人に構っている訳にもいかないので、授業自体は普通に進んでいく。

 

「そんな訳で、ISは宇宙空間での活動を主眼にして製造されているので、どの機体も例外なく操縦者の全身を非常に特殊なエネルギーバリアによって覆っています。また、同時に操縦者の生体機能を補助する機能も兼ね備えていて、IS自体が正常である時はいついかなる時も操縦者の肉体を安定した状態に保つようにしています。主に上げられる項目は、心拍数や脈拍、呼吸量に加え、発汗量や脳内エンドルフィンなどもあって……」

 

 またも不安になって、一夏はそっと後ろにいる咲耶を覗き見た。

 向こうは一夏が見ている事に気が付かず、黙々と真剣な顔で授業を受けていた。

 

(咲耶って…こんな顔も出来たんだな……)

 

 普段は、他の男友達と一緒に笑い合っている顔しか見ていない為、真面目に勉強をしている咲耶の姿は凄く新鮮に映った。

 

「先生~。それってなんか大丈夫なんですか? 体の中を弄られてるみたいで怖いんですけど」

 

 一夏が余所見をしていたら、生徒の一人が手を挙げて真耶に質問をした。

 これは、一夏にとっては最高のチャンス。

 ぶっちゃけ、教科書の内容を説明されるよりは、真耶の口から直接的に教えられた方が分かりやすい。

 

「そこまで真剣に捉える事はありませんよ。そうですね……」

 

 何か言い例えが無いか、真耶は首を捻って考える。

 数秒の後、彼女の頭に電球が光った。

 

「えっと、皆さんはブラジャーを着けますよね? あれ自体は体のサポートこそすれ、それ自体が人体に悪影響を与える事はありません。勿論、きちんと自分のサイズにあった物を着けないと型崩れしてしまいますけど……あ」

 

 ここまで説明をして、自分の致命的なミスに気が付く。

 このクラスには約二名、ブラを着けない生徒がいた事を完全に失念していた。

 

「ご…ごめんなさい。織斑君はブラなんてつけませんよね……ははは……」

「そうですね。一夏『は』、ブラを着けたりはしませんよね」

「……え? 飛世さんは……」

「いや。私は普通にブラを着けてますよ? だって、女の子ですし」

「あはは…そうですよね~…女の子ですもんね~……すみません……」

 

 またやってしまった。

 分かってはいても、咲耶の本当の性別の事を考えてしまう。

 それが、彼にとって致命的な事も知っているのに。

 

(後でちゃんと謝らないと……)

 

 守るべき教え子を自分から危機に晒そうとしている。

 生真面目な真耶には、どうしてもそれが許せなかった。

 だから、ちゃんと謝罪はする。

 その上で、今度こそは絶対にボロを出さないように心掛けようと決意する。

 

「咲耶のブラか……最高だな」

「想像しただけで濡れてしまった……」

 

 後ろで授業を聞いていた担任と、窓際の一番前の席にいるポニーテールの事は無視しよう。

 まともに関わっていたら、本当に授業が進まなくなる。

 

「そ…それから、ここが重要なんですけど、最新の研究成果では、IS…正確にはISのコアになるんですけど、それには自意識のようなモノがあるとされています。お互いに共に過ごした時間だけ、ISは自らの意志で機体を操縦者の方に合わせようとしてくれて、それが結果的にISの性能や操縦技術の向上に繋がります」

 

 誤魔化すように急いで話を戻す真耶。

 ナイスファインプレーだと、全員が心の中でサムズアップした。

 

「要するに、ISは単なる機械や道具などではなく、共に成長していくパートナーのような存在なんですね」

「つまり、私と咲耶の様な存在という訳だな!」

 

 良い感じだったのに、どうしてここでいきなり割り込んでくる担任教師。

 完全に真耶の努力が水の泡になった。

 

「まぁ…千冬さんと私ってよりは、一夏と私の関係って言った方が分かりやすいかもね」

「なんだかんだ言って、俺ってお前に助けられてばかりだしなぁ……」

「私も、一夏の作ってくれる料理には元気を貰ってるから、お互い様だよ」

「そ…そっか?」

 

 こっちの方が滅茶苦茶に理解し易い。

 これこそが、お互いに支え合うパートナーという存在か。

 実に分かりやすい例を目の前で見て、生徒達がすぐに真耶の言おうとしたことが理解出来た。

 

「確かに、飛世さんと織斑君の関係が一番いい例かしれませんね。お互いをお互いを支え合い、時には助け合うような関係…それがISと私達なんです」

 

 ここでチャイムが鳴って授業が終了する。

 なんともいい感じの締めで終わらせることが出来た。

 

「四時間目は、空中におけるISの基本制動についての授業を行いますからね~。では、日直の人、お願いします」

 

 あと少しでお昼ご飯が食べられる。

 だが、一夏と咲耶は知らなかった。

 まさか、次の時間にまたもや厄介な事が起きようとは。

 

 そして、それにより咲耶も一夏と同様に注目される事になろうとは。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は専用機についての話。

まだ咲耶の専用機は出ませんが、その片鱗だけは見れるかも?



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