イチャイチャさせたい二人の話。
(モルド:葉視点)
小さい頃の話をしよう。
僕らは昔から一緒だった。
年も同じで家も隣同士、親同士の仲も良好で、当然のように一緒に行動していた。
最初がいつかなんて覚えていないけど、母さん曰く新生児室ですら隣にいたらしいから、生まれてからほとんど一緒だったと言っても過言ではないと思う。生まれた時間も数分程度の差しかなかったと聞いて驚いた。
その数分差のせいで、小さい頃から夏蓮は僕にお姉ちゃん風を吹かす。
日にちを跨いで数分の差で誤差じゃないかと、いつか反論したこともあったが、
「……たとえ数分、されど数分。短距離走なら周回遅れ。だから私がお姉さん」
夏蓮のお姉さん風は揺らがなかった。
思えば、小さい頃は臆病な僕の手を引いて良く走り回っていた気がする。
よくいたずらして一緒に怒られたりしたこともあったっけ。
何をするにも二人で行動してた僕たちは、多分それが当たり前だと思っていたんだ。
そんな僕たちも小学生になり、他の子供たちとも遊ぶようになる。
新しい出会いと別れを繰り返しながら、それでも僕たちの二人の世界は続いていた。
だけど、僕たちは二人であると同時に、男女でもあったんだ。
子供の頃は幼い時は男女関係なく遊んでいたのに、いつの間にか男女で別れて遊ぶのが当たり前になっていた。
集団の中で異分子は注目されるし、排除の対象になることだってある。
――だから僕たち二人がクラスメイト達の揶揄われる対象になったのも、仕方なかったのかもしれない。
「おい葉!なんでいつも女といっしょにいるんだよ!」
「兄ちゃんが言ってたぞ!男と女がいっしょにいるのは夫婦だって!」
「小学生が夫婦になっていいのかー!?いけないんだー!せんせいにいってやろー!」
夏蓮と僕のいつもの下校中に、いつもとは違うトラブルが起きた。
クラスメイトの彼らの襲撃に良く分からないながらも、責められていることだけは分かった。
突然のことに訳も分からず身体が竦みかけたが、手を繋いでいた夏蓮が間に割って入るように動いたことで、
引っ張られるように硬直が解けた。
「……あなた達、だれ?」
夏蓮、クラスメイトだよとは言えなかった。
彼らも覚えられてなかったとは思ってなかったのだろう。
口をパクパクさせて次の言葉が出てこないみたいだ。
「葉と私は幼馴染。昔から一緒。別に夫婦ではない」
「だっ、だってお前らいつも一緒じゃねーか!」
「そ、そうだ!大人にならないとダメなんだぞ!」
「……だから夫婦じゃないと言ってる」
あ、夏蓮がイライラしてるのが分かった。握られた僕の手に少し力が入っている。
夏蓮が物理解決しないように、僕も夏蓮の手を引き留めるように力を込めた。
あと数回会話したら、手っ取り早く黙らせに行くかもしれない。
だが、そんな心配をしていた僕の予想とは裏腹に事態は動いた。
「そ、そうだ!おまえら付き合ってるなら、ちゅーしろよ!」
「――っ!?」
苦し紛れだったのか、良く分からない発言だったが、夏蓮がビクッと動きを止めた。
「一緒にいるなら好きなんだろ!ほら、ちゅーしてみろよ!」
「ちゅーだ!」「ちゅー」
「…………い」
夏蓮の威圧感に押され気味だった彼らは、不意打ちが決まった隙を逃がすほど、
無能ではなかったらしい。
ここぞとばかりにちゅーちゅー連呼しだした。奇妙な踊り付きで。
煩いぐらいに騒ぎ立てる彼らの方を気にしてしまっていた僕は分からなかった。
まさか、あの夏蓮が恥ずかしがっているなんて。
「うるさいっ!!葉は!幼馴染!別に好きとかじゃ!ない!!!」
世界から、音が、消えた。
イチャイチャまで進まなかった……。