お久しぶりなので初投稿です。
ノイズ。
それは、先史文明の人々が創り上げた災厄。
人を察知し、人を追い詰め、人を灰と変える。
人だけを殺す、極めて効率的な自律兵器。
彼らはバビロニアの宝物庫で作られ、地上に呼び出される。
私と未来が日本に帰ってきた日にも……。
◆
「キャーッ!」
「響、後ろッ!」
「了解!」
女の子の悲鳴が響く。
未来の声を頼りに、剣に変わった脚で回し蹴り。
近付いていたノイズを切り裂く。
「お姉ちゃんすごーい!」
背中におぶった女の子が歓声をあげる。
「それほどでも、あるかなーっと!」
その声に答えながら、飛んてきたノイズを避ける。
そして踏みつけて刺し穿つ。
「響、大丈夫?」
前側に抱えた未来が、心配そうに聞いてくる。
「私は大丈夫!……避難所まで、あと少しだから。もう少し辛抱してね!」
話はほんの少し遡る。
フィンランドからロシア、北方領土、北海道を経由して日本に帰ってきた私と未来。
ロシアから車を盗む盗難集団『継続ファミリー』、依頼されればなんでもやる傭兵集団『鉄華団』、北海道アイヌの『アシリパさんと杉本さん』。
色んな人の力を借りて、なんとか帰ってきた訳である。
「それで、響。どこに行くの?」
「んー、東京のリディアン音楽院ってとこ。アイドルも通ってるって噂だよ。ちょっと見てみようよ」
そんな事で、新幹線で東京まで移動。
費用削減の為に、ラブホテルを拠点に数日ほど東京観光しつつ私は時を待っていた。
えっちな事はしてないよ!
ラブホって宿泊費が安いからね。
閑話休題。
そして、その時は来た。
色の抜けたヒトガタが現れて、人々を灰に変えていくその時を。
「……ノイズ!」
街に現れたノイズは、人々を灰に変えていく。
私は未来の手を繋ぎ、走り出す。
「響!」
未来が叫ぶ。
「女の子の悲鳴が聞こえた!」
「どこから!?」
「あっち!」
未来につれられて行くと、そこには女の子が一人。
ノイズににじり寄られていた。
「Teiresia Amenohabakiri Tron」
(羽無けれども、羽撃く如く)
私は聖詠を唄う。
私の心臓に埋まったアメノハバキリが、励起されエネルギーを放つ。
そのエネルギーが、インナーと装甲という形として顕現する。
青を基調とした、翼さんのシンフォギアのような装甲。
だけど、その脚は。
武骨な大きさの、物騒な刃として形成された。
膝から下を完全に覆う銀の装甲、しかしながら流麗な刃でもある。
私の、アメノハバキリの融合症例としての、身を滅ぼす呪いの力だ。
だがこれは、ノイズを殺す祝福でもある。
「未来ッ!」
私が未来の名を呼ぶと、未来は私に手を伸ばす。
その手を取り、抱き抱える。
今の私は、足の装甲の為に身長が2メートルを有に超えてるのだ。
だから、未来の手を引いて走る訳にもいかない。
故に、お姫様抱っこである。
けっこー鍛えてるのよ、私。
とにもかくにも。
私は滑るように、移動する。
未来はその姿を、フィギュアスケーターみたいだと、かつて言ってくれた事もあったっけ。
そんな風に滑って高速で移動し、女の子の方に向かう。
その間に立つノイズは蹴りで斬り伏せる。
「キミ、乗って!」
ノイズを粗方倒し切ると、私は女の子の前でしゃがみ込む。
足が長いからしゃがむのが大変だよ。
「ありがとうおねえちゃん!」
女の子は私の背中に抱き着く。
前に抱えた未来が女の子に笑いかける。
「もう大丈夫だよ」
「うん!」
さて。
そして話は冒頭に戻りまして。
私たちはシェルターを探して町中を東奔西走しております。
だってさ。
ノイズがすっげぇ追いかけてくるんだもん。
これ絶対フィーネが操ってるよ。
ノイズの数スゴい増えてるもん。
容赦ないよフィーネ。
「響……」
「おねえちゃん、私たち大丈夫だよね?」
二人が不安な顔。
「うん、もちろん。二人は私が守るからね!」
こういう時。
こちらは笑顔で返して、相手の不安を和らげないとね。
それにしても。
2課は一体なにやってるのやら。
登録されてないシンフォギア装者が無数のノイズに追いかけ回されてるというのに。
おーそーいー!
奏さん早く来てー!
「響ッ、前!」
「あらぁ」
前方にノイズの大群。
後方からも追いかけてくるノイズの大群。
前門のノイズ、後門のノイズ。
私一人なら、多少無理すれば倒しきれると思うけれども。
今の私は女の子二人抱えた身重の身でございまして。
よし、プラン変更!
「二人ともしっかり掴まっててね!」
私は、ビルの壁に足を伸ばして。
そのまま、鯉が滝を登るように、足を滑らせてビルの壁を垂直上昇する。
ふくらはぎ部分のブースターを一気に吹かして登りきると、ビルの屋上に着地。
そのまま別のビルの屋上から屋上へと飛び移って移動。
よし、これで少しは時間を稼げるね。
「響ッ!」
未来の声。
前方に飛行型ノイズ。
「どっせい!」
私は跳び蹴りの要領で飛行型ノイズ貫通殺。
だが。
飛行型ノイズはそいつ一体ではなかった。
猛禽類が獲物を狙うように、私たちの上空を旋回して飛行していた。
私たちに隙が出来るの待っているのだ。
「おねーちゃん!」
女の子が背中で叫ぶ。
ノイズが、屋上まで登ってきたのだ。
その数はどんどんと増えて、少しずつ、私たちを追い詰めていく。
背中はビルの端、鉄の柵。
そこから半円状にノイズの包囲網。
「未来、この子を見てて」
私は未来と女の子を降ろす。
「響……」
「だいじょーぶ! ちょっと、本気出すから」
さて。
私のアメノハバキリ、シンフォギアとしての形状は剣となった足甲といった感じである。
私の胸に刺さった、シンフォギアとしてのアメノハバキリはそういう形状になった。
だが。
聖遺物として、私の身体を蝕み冒すアメノハバキリは、また別の形をしているのだ。
私は、体勢を低くして腕を伸ばす。
両腕が、
力が溢れ出る。
それは、一気に開放されて。
私の掌から、血を撒き散らしながら鉄の塊が飛び出る。
それは、薄く、鋭い日本刀である。
これが、私の身体を蝕むアメノハバキリ、その一部。
うん、あれだな。
チェンソーマンに出てきたヤクザの孫みたいだな今の私。
肉体的にはウルヴァリンなんだけどね。
「響!」
「おねえちゃん!」
私が血を撒き散らしたのを見て同様したのか、二人が叫ぶ。
未来は、何度も見てるはずなんだけれどね。
それでも、心配なんだろうね。
最低だね私。戦う度に未来の心を傷付けて。
それでも。
「大丈夫! 二人は私が守るから!!」
私は未来を離さないって決めたんだから。
「シャッ!」
掛け声と共に、私は一気にノイズの群れに斬り込む。
シンフォギアの瞬発力と、融合症例のパワーを利用した居合斬り。
ノイズを纏めて真っ二つにする。
だが、それを好機と見たのか。
飛行型ノイズが、未来と女の子に殺到する。
「遅いよッ!」
私は、未来と女の子に向けて飛び込み、そのまま二人を覆うように飛ぶ斬撃を放つ。
両手の剣と、両脚の剣。
4本の剣から放たれた斬撃は、飛行型ノイズを残さず切り刻む。
私は、抱き合う二人の屋根となるように、両手足の剣を地面に刺す。
うん、ライオンキングの舞台のキリンみたいだ。
「響……」
「大丈夫。それに」
「それに?」
「助けが来た」
私は空を見る。
釣られて、未来と女の子も。
空、すっかり日も暮れて夜になった星空に。
一筋の、橙の流星。
その流星は、こちらに向かって堕ちてくる。
そして。
ノイズの群れのど真ん中に炸裂した。
「きゃああああ!!」
未来と女の子が抱き合い叫ぶ。
私は二人の盾となるように立ち塞がる。
破砕されたビルが煙となる。
だが、私は煙の向こうにいる人がわかる。
こんな芸当が出来るのは。
こんなに殺気を向けてくるのは。
彼女しか居ないから。
コツ、コツと。
ヒールの音を響かせる。
「派手な登場ですね、天羽奏さん」
煙の中から現れたのは、天羽奏。
2年前、生き残ったツヴァイウィングの片翼。
ガングニールの適合者。
彼女は、私に槍の穂先を向けている。
「気安く呼ぶな。なんでお前が、翼のアメノハバキリを使ってるんだッ!」
そう、怒りを向ける奏さん。
そうだよね、翼さんのアメノハバキリをぽっと出の私が使ってたらそうなるよね。
翼さんは奏さんの相棒だったんだから。
「2年前、あのライブ会場に居たからですよ奏さん」
私はシンフォギア装束を解除した。
伸びた足甲の分、空中に浮いてた私は地面に着地する。
体勢を整えて、両手の剣を引っ込めた。
「お前、なんで……ッ!?」
私が武装解除したのを見て、信じられない物を見る顔をする奏さん。
いや、私、奏さんと戦う気ないし。
それとも、2年前のライブ会場に居たって方に動転したのか。
「案内してくださいよ、奏さん。あなた達のアジトに。話をさせてください、あなた達のボスと」
私は両手を挙げて、そう言い放ったのだった。
◆
さて。
私と未来は2課の黒服さんが運転する黒い車に乗せられて、リディアン音楽院に連れてこられました。
で、エレベーターに乗せられて下に下に下がってます。
女の子?
車に乗せられる前にお別れしたよ。
お母さんとも出会えたし。
良かった良かった。
「……」
「……」
「……」
そしてエレベーター内の空気、氷点下だよ(白目)
何も良くないよ。
奏さんはイマイチ信用出来ない私を睨むし。
未来は私に敵意を向けた奏さんを睨むし。
黒服さんは懐に手を入れたまま私から目を離さないし。
その懐には、一体何が入ってるのかな(震え声)
黒光りしてる鉄の塊かな(恐怖)
そんな空気最悪のエレベーター、その外側にはだいぶ空間的なゆとりがある。
エレベーターが同時に10個20個運用出来るくらいに。
その外側。
その壁はとってもカラフル色とりどり。
赤青黄色に色分けされ、しかも古代の壁画みたいな柄が入ってる。
まあ、これカ・ディンギルなんだけどね!
荷電粒子砲の砲塔の中なのよね、これ……。
科学技術と異端技術のちゃんぽんビーム砲である。
「奏さん」
沈黙に耐えられず、私は話し掛けた。
「2年前、私の事を助けてくれてありがとうございました」
「……ッ」
私は、ずっと伝えたかった事を言うことにした。
うん、まあ。
この後生きてられるかわからないからね。
だから、せめて言うべきことは言いたかった。
「……なんで、今言うんだよ」
「今が最初で最後の機会かもと思ったから」
「響ッ!?」
奏さんを睨んでた未来が振り向く。
うん、失言だったわ。
「それどういう事ッ!?」
「最悪実験動物かなーって」
「じっけ……ッ! じゃあなんで大人しくしてるのッ!?」
「落ち着いて未来、最悪の最悪だから。そうはならないよ。……多分」
「響ッ!!」
激昂する未来を、落ち着かせてのは奏さんだった。
「安心しろよ。ダンナは、そんな男じゃない」
「……ッ、貴女の事は信用出来ません」
「未来」
奏さんにキツく物を言う未来をたしなめる。
「私の為に怒ってくれるのは嬉しいけれど……」
「いいよ、別に」
奏さんがそう言って、私の言葉を止める。
「いいよ」
奏さんは遠くを見て言った。
それは、諦観だろうか。
翼さんが死んで、色んなことがどうでも良くなったのかな……。
「着きました」
と、黒服さん。
エレベーターが停まる。
扉が開く。
「この先です」
黒服さんに先導される。
最後尾に奏さん。
私が怪しい動きしたら即座に殺しにかかるんだろう。
そうして案内された先に一つの扉。
黒服さんが、そこを開けると────
パァンパァン、と銃声。いやさパーティークラッカーの音。
『熱烈歓迎! 立花響さま 小日向未来さま』
『ようこそ2課へ!!』
の吊り看板。
よくぞこの短期間で準備したものだなぁ……。
「……ふぇ?」
と、未来は現実を認識出来ていない。
「ハァ。ったく、緊張感がない……」
奏さんは呆れている。
黒服さんは話を聞いていたのか、顔色一つ変えない。
「ようこそッ! 人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へッ!」
と、シルクハットを被った赤いシャツの偉丈夫。
うん、間違いなくあの人だ。
「俺はここの責任者を務める、司令の風鳴弦十郎だ」
憲法に抵触しかねない強さのOTONA、弦十郎さんである。
「ドーモ、はじめまして。立花響です」
「え。え? えっと、小日向未来、です?」
私は手錠をされた中、両手を合わせてオジキ。
未来もそんな私を見て、挨拶をする。
アイサツは実際大事、古事記にも書かれている。
「あら、ご丁寧に。私は櫻井了子。あの櫻井理論の提唱者なのよ」
髪をアップにした赤縁のメガネをかけた女性、了子さんが声をかけてくれる。
「ほぉ、あの櫻井理論の! お会いできて光栄です!」
「知ってるの、響?」
「知らない!」
豪語する私を見て、ケラケラ笑う了子さん。
「ノリが良いわね〜」
「それだけが取り柄なので」
「あら、それだけじゃないでしょ」
私の胸元を人差し指で撫でる了子さん。
「貴女のここに埋め込まれているアメノハバキリとか、ね」
「了子くん、その辺で」
私の胸元を撫でる了子さんの腕をやんわりと掴む弦十郎さん。
「あら、ごめんなさいね。怖かった?」
「いえ、大丈夫です。それにしても、私達の名前から私の心臓のことまで、よくこの短期間でここまで調べましたね」
「我々二課の前身は、大戦時に設立された特務機関なのでね。調査など、お手の物なのさッ」
本当の所は、私達が日本に帰ってきた時から調査してたって所かな。
誰かに尾行されてた気配はしてたし。
害意はなかったから、無視してたけれど。
「それで、俺に話があるという話だが」
「はいッ」
弦十郎さんが問う。
私は満面の笑みで答えた。
「私を、この二課で雇ってくれませんか?」
「ほう?」
「あら」
私の要求に、弦十郎さんと了子さんは聞く態勢になる。
未来は不安そうな顔だが、それを言葉にはしない。
二年前から、交渉事は私に任せてきてくれたからね。
「私はアメノハバキリのシンフォギアを纏えます。ノイズに対して有効に戦えます」
「確かにそうね」
一理ある、と了子さん。
「それに、強いですし?」
「……」
私はちら、と奏さんを見てそう言った。
奏さんは鼻を鳴らして目をそらした。
「確かに、君の強さは見せてもらった。だが、何故二課に?」
弦十郎さんはそう問う。
私の強さなら、わざわざ二課に就職しなくても良いだろうということかな。
確かに、帰国するまでにいくつかの国のエージェントからスカウトを受けたり誘拐されかけたり襲撃されたり。
それでも、私が二課に来たのはフィーネを止めるため。
未来の生きている世界を、守るためだ。
「いい加減、未来と日本に帰りたいなって」
「逃亡生活は限界かしら?」
了子さんは冗談めかしてそう聞く。
しかしその目は、私を見透かすかのように細められる。
「子ども二人が住所不定無職、その上不法入出国犯だと世間の目が厳しくて」
私はヨヨヨと、泣きながら目元を袖で拭う演技。
手錠邪魔だな!
「でしょうねぇ。つまり、響ちゃんが二課に入る代わりに二人の犯罪歴抹消、それが条件かしら?」
「了子さんは話が早いですねぇ」
最悪、未来の犯罪歴だけ消せればいいけれどね。
私のせいで未来の経歴に傷がついたんだもの。
なら、私が責任持って傷を消さないと。
「響くん」
弦十郎さんが私の名前を呼ぶ。
そして。
「こちらからもひとつ条件がある」
「条件?」
「二人にはリディアン音楽院に通ってもらう」
「……はい?」
Pardon?
アイエエ、リディアン入学ナンデ?
「本当はこちらから頼もうと思っていたんだ。二課に入って欲しいと」
「なら、なんでリディアンに?」
「今の時代、最終学歴が中学校卒業だと就職が厳しいぞ?」
痛い所を突くなぁ。
確かに私が二課に入るだけじゃ、未来の将来が心配だし。
……専業主婦になってほしいなぁとか考えてないよ?
ほんとだよ?
「二人はまだ子どもだ。世界を見て大人になった気でいるだろうが、学ぶべきことはまだまだあるぞ! 社会に出るのは、それからでも遅くはないさ」
弦十郎さんは、両手で私と未来の頭を撫でる。
大きくて温かい、優しい手だ。
……敵わないなぁ、そう思う。
「未来、一緒に高校行く?」
「うん、響と一緒ならどこでも!」
そういうことになった。
◆
かくして私こと立花響は二課に入ることになり、未来と一緒にリディアン音楽院に入学することとなった。
今のところは順風満帆。
あとは、フィーネをどう止めるかだ。
エンキとシェム・ハの顛末を教えるべきか。
殺すのは駄目、多分次は調ちゃんを塗り替えるだろうから。
こう考えるとフィーネってほんと厄介だね。
考えることはまだまだ多いなぁ。
◆
この時は思いもよらなかった。
敵はフィーネじゃないって事に……。
刀を手から生やした響ちゃんのファンアート待ってます。