ほんの、本当に些細なキッカケが必要なだけでした。
常連だけど初来店のお客様が見えられたようです
まもなく開店いたします。
「二つ名」を持つ艦娘が存在する
主に多大な戦果を上げることで、感謝と尊敬の意を込めて評される。
オリジン艦娘はほぼ皆持っている
「不動」の扶桑
「猛将」リシュリュー
「古兵(ふるつわもの)」神風
量産型艦娘でも持っている子は結構いる
「弐ノ太刀イラズ」の天龍
「轟腕」香取さん
「無慈悲」鳥海
世襲型は存在自体が珍しいので皆持っている
「知」の三代目ウォースパイト
「閃光」八代目翔鶴
そして私、「不屈」三十七代目春風…
××年4月3日 20代目
節目の20代目だから、ここらで今まで積み重ねたものが覚醒ッ!みたいの期待したけどそもそも積み重ねられない私達には関係なかった 生存45日目ー!
ーー年6月15日 28代目
今日、3代前の子が書いていたスナックに私も行く事ができた!
春風換算だと累計何回目のなるのでしゃうか笑?
内容は、んーただのおしゃべり〜 今日も生きたぞ!
ーー年7月21日 28代目
今日、わたくしはついに大人の女性の仲間入りを果たした!
春風換算だと…ま、自分で確かめてね笑
欲を言えば恋がしたかったかな…15代目みたいな燃えるやつ。
でも、私達は短命だからしたいと思ったことはすぐしないとね
今日も生きたぞ!
ーー年8月18日 29代目
本日建造されました。29代目の私です。よろしくお願いいたします。
ーー年8月26日 29代目
今日、いんたーねっとというモノで悲しいものを見ました。胸が痛いです。「蝉ノ命」春風 って何ですか…何が楽しいのですか?
私は分厚い本のような日記帳を閉じ、本棚に戻す。「春風専用」の12畳の1人部屋、手前半分だけで充分生活できる。奥の半分は日記帳専用の本棚です。
世襲型は先代から何かを継承すると言われています。実際にわたくし以外の世襲型はその通りで皆さま例外なく強いです。7代目から10代目は執拗に調べられ、実験され、それぞれ2.3回の出撃で沈みました。当時の彼女たちの日記はただの実験レポートでした。
結局、発見できたのは「佐世保でしか建造できない」これだけです。記憶も能力も何一つ継承できない世襲型、旧型なので建造コストが非常に安く代々控えめで従順な性格をしていることが多いので、沈んだら建造しとくか。その程度の認識しかされてないのがわたくしです。
一時期建造すら忘れられていて、たまたま巡回で来た神風さんが気づき余りの怒りに鎮守府の施設の一部が崩壊したと書いてありました。
前の世代のわたくしの時から、鎮守府の雰囲気がすごく明るくなり戦果も鰻登りになりました。わたくしも2度出撃を無事に終えた所です。香取さんを始め皆さまにとてもよくしていただいています。ですので逆に何の役にも立てないことが心苦しく、きちんと笑顔を作れているか心配な今日この頃です。
明石さんの所で出撃後の艤装メンテ完了報告書にサインをして、今日は何をしようかなぁと伸びをしながら歩いていると背の高い作業服の男性とすれ違いざまに会釈する。10代前くらいのわたくしの時から「破瓜またはその後の相手」をしてくれている方らしい。
わたくしはまだお願いしたことはないのですが、歴代の日記に登場しているので間違いはないみたいです。彼の部屋には彼だけに宛てた私たちの日記があるそうです。
そういうことに興味はありますが、わたくしは勇気が…先程読んだ28代のわたくしのように行動できればいいのですが。
ー△年1月23日 37代目
今日わたくしも遂に「すなっく ふりーと」デビューを果たしました!ぱちぱち!しかも、給仕してくださったのはあの神風さんです。
わたくしの初代に並ぶ6回目の出撃完了を祝っていただきました。戦闘だけでなく色々なお話を聞かせていただきました。明日さっそく…
ー△年1月24日 37代目
昨日、神風さんからアドバイスをいただき先程注文してしまいました…だいぶえっちな気がしますが、丁度次の出撃から帰還する日に届くみたいです。着用してお願いに行った方が良いのでしょうか?日を改めて?考えただけでドキドキします。歴代最高記録のご褒美という名目でいきましょう!みなさん初めては痛いし血が出ると書いておられるので着るのは2回目の方が良いのでしょうか?はっ、2回目のことを今から考えるなんてはしたないです。
私は日記を閉じ本棚に戻す。本棚の空いているスペースに未開封のプレゼントボックスがある、先程の日記を書いた私が注文して開けられることがなかったもの。
戦争が終わるまでに何冊の日記が出来上がるのだろうか?いくつの使われる事がないモノが増えていくのだろうか?怖くて部屋に篭っていた11代目は空襲を受けて死んだ、おそらく日記が原因と考えた18代目は何も書かずに数回生き残ったが結局沈んだ。何をしても沈む、何もしなくても死ぬ。
記憶の継承があったら、継承した瞬間に壊れていただろう。
ー△年4月4日 38代目
4回目の出撃を終えたばかりだけど、4.4.4.と不吉な数字が並んだ今日の日を生き残って少しテンションが上がっている!明日は歴代の私が貯めたお金をパーッと散財してやろう!ここは勢いに任せてあの整備兵を誘ってみよう、先代、下着借ります!
と書き終えた所でチャイムがなる、来客とは珍しい。万が一もないけど今日の日記を見られるのが恥ずかしかっただけだと思うのだが、私は日記を着物の袖の中にしまいドアを開ける。
香取「春風さん、お疲れのところ申し訳ないのですが少しお時間頂けますか?」香取さんだった。私はこの人が大好きだった、私に着いてきなさい!という感じの神風さんももちろん大好きだけど、香取さんの「お姉さんの中のお姉さん」という感じが私の中の妹心をくすぐる。
そんなことを考えていると、見つめていたらしく小首を傾げる香取さん。ひゃー、可愛い♡
香取さんに着いていき、執務室で提督と香取さんと軽く応答を繰り返し自分の部屋に向かう。話し自体は大した内容じゃなかった。元気にやれてるか?今日の出撃で辛いところはなかったか?などなど香取さんと2人で質問してきた。どれも私を心配する内容でちょっとくすぐったかった。嬉しい。
鼻歌交じりで部屋のドアを開け、何か飲もうかな?と考えながら靴を脱ぐためドア内にすぐあるはずの壁に手をつこうしてら何もなくてバランスを大きく崩す。カランカランカラン…
どこか古めかしく落ち着いたベルの音が響いた。
男「いらっしゃいませ、スナック フリートへようこそ」声の方に崩れた体勢のまま顔をあげると「例の整備兵」がカウンター内でグラスを磨いていた。
春風「お任せでお願いします、整備兵さんも適当に召し上がってください。」マナーは先代たちの日記に書いてあった。彼の前に腰掛け、店内を見渡す、落ち着いた雰囲気が良いですね。
整備兵「ありがとうございます、こちら杏露酒のロックとよだれ鶏です。」カウンターを大きく迂回して春風の横からお酒と料理を差し込む
春風「こうしてゆっくりとお話するのは初めてですね、38代目の春風です。よろしくお願いします」
整備兵「はい、今は整備兵とだけ名乗らせてください」少しはにかんだ感じで返答し、カウンター内へ戻る
春風「私たちの日記で色々と存じております。後で伺おうと思ったのですが「お願い」をしたくて…その…」モジモジという擬音がピッタリといった感じで膝の上に手を乗せ体をゆする
整備兵は「はい」とだけ言い、少し困ったような笑顔をした。
春風「あ!無理にとは言わないです!ごめんなさい、ごめんなさい…」その場で立ち上がり、キツツキのように頭を何度も下に振る
整備兵「誤解なさらないでください!とても光栄なんですよ!ただ私なんかで良いのかといつも申し訳なく思って!!」カウンター越しに春風の両肩を掴み、着席を促す。
春風「取り乱してしまい申し訳ございません。これは私たちのワガママです、受け入れてくれてありがとうございます。いただきます!」よし!といった表現がピッタリの、両手で軽くガッツポーズをして食事を楽しみ始めた。
ある程度、話もお酒も進んだ頃
春風「ふふふ、今日はこのままお持ち帰りを希望します♡」
整備兵「えええっ、あ、あ、はい!」
春風「わたしはいきのこるぞー!おー!」と腕を高く振り上げた時、いつもより重たい袖がテーブルの上のお酒をひっくり返す!
春風「ひゃああー!ごめんなさい!」整備兵もカウンターから迂回して拭き上げを手伝う。
春風「あら?そうだ、日記を入れっぱなしだった…」袖から日記を取り出すが、手が覚束なくて今度は日記帳を落とす。日記帳は落下中に開き、開いた面が料理の残りに被さる
春風「うわあああ!なんでぇー!」整備兵は素早く日記帳を取りあげ、開いた面を塗れ布巾で吸い取ろうとした時違和感を感じる
春風も横から覗き込み、同じ違和感を感じて整備兵の顔を見上げる
整備兵「汚れ、弾いてますよね…これ。」と言い、水玉としてまとまっている汚れを布巾さっとふきあげると、汚れはキレイに消え通常の紙の質感が現れた。整備兵は何か思い当たったらしくカウンター内から何かを持ち出してきた。
整備兵「春ちゃん、壊れちゃったら弁償する。でも、きっとそうはならない。これかもしれない、これが答えかもしれない。」整備兵の春ちゃん呼びと真剣な眼差しに驚き、春風はコクコクと無言で頷く。
整備兵「頼む、これであってくれ!」整備兵は包丁を思い切り日記に突き立てる…刺さらない。よし!の掛け声と共にチャッカマンで紙面を炙る…何も起きない。整備兵はただ天を仰ぐ…見つけた。と呟いて。
ー△年4月5日 38代目
昨日、2人でスナックから出たら整備兵さんのお部屋でした汗お情け無事にいただきました♡色々と話して、どうやら春風の継承は日記帳だと思うと。通りで買った覚えがないわけだ笑袖の内側にポケットを作り、日記が落ちないようにしました。次回の出撃で持って行きます!頑張るぞ!
魚雷回避(小)を継承しました。
連撃を継承しました。
ー△年4月5日 38代目
見ての通りです!整備兵さんすごい!今日、魚雷が来る!っと思ったら頭の中に何代か前のあたしの日記が浮かびました。魚雷をたまたま避けれたという内容の。少し相殺が遅くて小破になりましたが、さっと日記を覗いたら継承の文字が!ここが頑張りどきと思って、両腕の主砲を放ったらまた日記が浮かんで…やったよ、やったよみんな!私戦えるよ!
トグサさんへの想い(大)がトグサさんへの愛(小)に進化しました。
ー◯年2月3日 39代目
と、いうことです…ハイ///ちょっとイチャイチャしすぎて、寝坊してしまい。トグサさん日記も持ち出して出撃してしまいました。こっちの日記もそうなんですね…あは♡次で10回目の出撃です。先代の記録タイです!
今までのあたし、見てる?みんなの想い、伝わってるよ!
ー×年7月16日 40代目
明日はいよいよ、最終決戦です。私たちは弐ノ太刀の天龍さんと神風オリジンさんと旗風さん、朝風さん、松風さんと共に行動します。
あの人に必ず帰ると約束しました。みんな、最後の戦いだよ!みんなのおかげでここまで来れた。また日記で会おう!絶対!
全てを継承しました。
奉仕の心得(大)が「床上手」に進化しました。
ー×年7月20日 不屈の春風
ひゃあああああああ///
そのうち蛇口からガムシロ垂れ流しのモノを書いてみたい