スナック「Fleet」   作:金糸雀かしら

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本当は好きなんだけど、周りの評価が良くないから同調してしまう
好きだと公言できる強さが欲しい
きっかけが欲しい。
もう一度会えたら、僕は突き進むと誓う。
どんな汚名を受けようとも。

ドアを開ければ未知の世界、海の関係者であれば機会が訪れるかも知れません。スナック フリート本日も営業中です。


第十話 「城を愛する男」

珍しく店内は騒がしかった。

麗しき令嬢たちが雑談に花を咲かせる。

 

音頭を取るのは大きな帽子に大きな黒い花を乗せた薄着の女性

「では、第◯回 陸・純血型の集い始めまーす」

それぞれがグラスを持ち高く上げ、飲み食いが始まった。

 

「ソレニシテモ港湾、アナタ随分流チョウに話すようになったワネ」小さなツノが2本額から生えた気怠げな子が音頭をとった令嬢に話しかける

「アア、中枢は知らないんだっケ?港湾彼氏できタんだぜ?」黒いアンダーリムの眼鏡をかけた子が答えた。

「ソレハ本当か?集積。ワタシも初耳ダゾ…ん?ヒョットしてアノ男か?ハハッ、港湾もツイニ観念シタのか。コレは愉快」全身ゴシックな感じの子が何やら納得というか呆れとも取れる表情で語る

港湾「何言ってるのよ!離島!そんな事ある訳ないじゃない、大体私たちと人間がどうこうなるなんてあり得ないじゃない…」出だしの勢いとは違って少し尻すぼみになっていく…

 

「ネーチャンこないだ朝マデカエッテコナカッた。ブーン、ヤルナ!ズイウン!」自分の顔ぐらいの大きさの模型?の飛行機を2つ持ちながら遊ぶ小さな子がソファーベットから会話に燃料を投下した。

 

「「ホッポ!その話しクワシク!!」」

 

時は少し遡る。訓練校の図書室で見た目麗しい青年が本を閉じ、満足げなため息を吐く

男「やはり姫路城は素晴らしい…この光の当たり具合によっては屋根まで白く見え、まるで万年雪が積もっているかのような幻想的な姿。迷彩色などにはせず、敢えて存在感を知らせる白、その大きさは攻め込むものを躊躇させ守るものには安堵を与える。一国一城の主とは良く言ったものです、この素晴らしい存在の主?ああ、何と険しく、何と目指し甲斐のある事でしょう…」

 

「勉強しにきたんじゃねーのかよ…」耳に艦橋のようなモノを当てて教科書を小声で読みその音を拾ってノートに書き写すという不思議な勉強の仕方をしている小さな妖精を伴った男が向かいの席から茶々を入れる

ある日を堺にメキメキと実力を伸ばし、最下位からハンモックナンバー2まで上り詰めた友人、英雄(ひでお)。ナンバー1は不本意ながら私だ。

 

男「勉強なんて私には必要ないですし、そんなモノに時間を使って城に触れ合う時間が減るなんてあってはならないのですよ。さて、リフレッシュできたし模型作りの再開をせねば。」私は席を立ち部屋へ戻った。

 

私たちは今実地研修という事でそこそこ遠洋の威力哨戒に来ている。

とはいえ今回は平穏そのものでただのクルージングだった、無駄な時間が過ぎていき飽き飽きしていた頃、先行の艦隊からの連絡で艦内が一気に慌ただしくなる、ナンバー5までの面子はブリッジに呼ばれ対応の様を見ている。

 

男「なぁ、英雄。提督周辺の声拾えるか?」目の前を見据えたまま口の中で少しだけ囁く、コイツにはこれで充分伝わる。英雄は私の左手にモールス信号のように指でトントントンと打ち込んで伝えてた。

 

リクジョウガタコウワンセイキヲカクニン、ニンシキサレタタメタイオウスル。リョウカイ、コレヨリカノウナカギリセッキンスル。リクジョウソウビヘノカンソウジュンジオコナウコト。

 

提督「研修生よ、予期せぬ敵に遭遇した。これより艦隊の支援に向かう。流れを良く目に焼き付けておけ。青葉からの映像はまだか?」提督が言ったと同時に全面の大型ディスプレイに敵の姿が映し出された。

 

ウツクシイ…私の記憶はここで途切れている

 

現在研修校の医務室のベットの上らしい。アレから4日たったそうだ。まだ頭が混乱していて上手く思い出せないが、これから聞き取りがあるとのこと。ふむ、答えようがないな。

 

聞き取りにより自分の行動が把握できた、上官たちは呆れていたが彼らからすると護国の意識に燃えた私が小型船で上陸し、結果的に港湾棲姫が撤退。とりあえず無茶は辞めろ。ということで落ち着き謹慎7日間で済んだ。そして、私は細部を思い出していた。

 

何と形容したら良いのだろうか…自分の語彙力の無さが情けない。

その雪と見間違うような白い肌は洗練された城の壁のようで

長く鋭い爪は城内の美しい通路を表し、大きく揺れる長い髪は煌びやかなお堀のようで、その血の乾いたような赤黒い一本角は歴戦のモノノフを思い起こさせ、2つの魅力溢れる大きな乳房は敵の行動を制御する大きな山の様だった。美しい。

小舟は岸まであと少しのところで沈み、泳いで岸に辿り着き彼女の元へ推して参った。私の3倍はゆうに超えるその姿はまさに「城」だった。

 

彼女は私に気づくや否や左手で埃をどける様に払い、その美しい爪に私は弾き飛ばされた。力で気を失いかけたのは師匠の拳以来だ。さすがは深海凄艦、震える膝を殴って再び彼女に寄る

何なんだコイツ見たいな目で見られたが、それはこれから逢瀬を重ねて心を許して貰えば問題ない。私は鍛え上げた自分の武術の全てを駆使して、彼女の艤装に乗り揺らされても落ちる事なく進み、彼女の左肩に乗った。

 

「結婚してください」IQ160と診断された私の頭脳がフル回転して至った至高の一手、驚きの余り悲鳴の様なものを聞いた気もするがおそらくアレが「嬉しい悲鳴」というものなのであろう。

彼女は突然艤装を解き、私と同じくらいのサイズになった。そこには女神がいたんだ。女神はその紅く潤う淫靡な瞳に涙を浮かべ、渾身の力で私を殴った。やはり師匠と同等かそれ以上かも知れない。私は気を失ってしまったのだ、そして今日の目覚めに繋がる。ハハ、照れ屋さんめ。

 

私は遂に運命の人と巡り会い、気がつけば鼻歌を歌いながら歩いていた。途中、英雄に会い「まだ本調子でないのなら、休め」と言われたがかつてないほど絶好調の私に何を言っているのか分からなかったが、賢いとはいえ所詮はナンバー2だな。と思い「頑張れよ」と声をかけて肩を叩いた。

鳩が豆鉄砲をくらう時の顔とはああいう顔なのだろうな。

 

謹慎も4日目になると飽きる、今までであればネットや図書室で城を眺め自室で模型を進めたりと飽きるはずはないのだが、やはり彼女のことが頭から離れない、何も手につかなくなってしまった。

こんな体たらくでは彼女に嫌われてしまうと思い、学生服ではなく礼節用の軍服を羽織り、自習室へ向かうことにした。帽子の位置を鏡で正し、キャーキャー騒ぐから出来れば女どもに見つかりたくないなと思いながらドアの外に出た。ドアのあった方から古めかしいベルの音が鳴り響いた…

 

「スナック フリートへようコソ、え?ニンゲン?」女神再び

前回と違い白く大きな帽子。そこには大きな黒が主体の青いコサージュがついている、ワンピースドレスというものか分からないが、乳房だけを覆い腰から下半身にかけて布が描く曲線は極上のものであることを強調していた。

 

IQ160と評された私の頭脳は最高の回転を見せ「最適解」を導いた。

 

私は彼女の前に跪き、爪がなくなった手を取り「どうか、私の妻になってください」と言い手の甲に口付けをした。私の無駄に高かったIQはこの時のためにあったのだ、完璧だ。

悲鳴のようなものが聞こえ、私の体は衝撃と共に舞い備え付けのソファーベットに着地した。相変わらず素晴らしい膂力、これは武か?飛びそうな意識を何とか縛りつけ、立ちあがろうとした時に声をかけられた

 

「ニンゲン、スゴイ。ネーチャンの攻撃くらっテ飛びチラナイどころか、立とうとシテル。オマエ、烈風モッテル?オイテケ?」声の方を見ると白く可愛らしい少女が話しかけてきたみたいだ。

ねーちゃん?はは、これは妹さまか。まさか私の先読みをしていきなり家族紹介とは照れ屋さんの割にはしたたかですね。まぁ、そんなところも大好きですが。

 

「烈風オイテケ」再び声をかけられる。レップーとは何だろうか?艦載機の烈風のことだろうか?いや、そんな単純な話ではないはずだ。再び私の頭脳が盛大に回転し始める。レップー…レッツ プレイの略である、この少女は未来の兄を見て遊んで欲しいのだ…まさか自分の容姿は幼女まで虜にするとは…だが、これはトラップだ。彼女に試されているのだろう、数年後には間違いなく彼女と同じ様な姿になるこの子に対して私が凛とした対応を取れるかどうか試しているのだ、遠回しな嫉妬心を感じ嬉しく思いテンションが上がりかけたが安心して欲しい。私はあなた一筋だ。そう考えると心臓の辺りから今まで感じたことのない力が溢れ出してきた。

ふふ、分かりましたよ。さすがの私の頭脳を持ってしてもこんな初歩的なミスをしてしまいましたか…私は軍服を手で払いながら立ち上がり、帽子を正し再び彼女の前に立つ。

 

「私としたことが自己紹介をしていませんでした。港湾棲姫さん、私は◯◯という名前です。提督候補生として訓練校に通っており、来年卒業となります。後でヒトと深海どちらに家を構えるか相談いたしましょう、あと今後の親交を深めるために先ずは連絡先をお伺いいたします。」

パーフェクトな自己紹介、ちゃっかり同棲も匂わせる強かさ。我ながら自分が怖い。が…

 

港湾「モウナンナノヨイッタイ!」という照れ隠しの叫びと共に、港湾棲姫の右ハイキックの動きを掴んでいたが、スリットから見えた美しい太ももに釘付けとなり、私はまた宙を舞うこととなった。




勢いで書いた後悔はしていない、一話完結を謳いながら次回は続きます。
すまぬ
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