スナック Fleetは今宵も営業中です。
今夜のお客様は未来の英雄かも知れません
はぁ〜。青年は深いため息を吐きながら自室のドアを開ける。今日も疲れただけだったなぁ…カランカラン
「いらっしゃいませ、ようこそスナック フリートへ。今夜の担当の戦艦扶桑と申します。」
え?え?え?何?ここどこ?青年は状況が掴めずキョロキョロと店内を見渡す
「す、すすす、すみません!間違えました!」カランカラン!大慌てで入口の扉を開き飛び出して行ったが…
「なんで?今、僕確かに出たよね?」再び同じ場所に立つ
扶桑「ふふふ、貴方はお店に招かれたのですよ。キツネにつままれたとでも思って下さいな。カウンターでいいかしら?」紫色の着物を着た美しい女性に案内され席に着く青年
青年「は。初めまして、扶桑さん!僕は提督養成学校2年の青年です!」座ったと思いきや勢いよく立ち敬礼しながら自己紹介。忙しいやつです。
扶桑「初めまして、青年さん。扶桑型戦艦一番艦 扶桑です。何飲まれます?」首を少し横お辞儀しながらニッコリと微笑む
青年「で、ではビールを頂きます!」汗をかいたビールジョッキと枝豆が出される。
扶桑「私も頂いていいかしら?」
青年「どどどどうぞ!扶桑さん!」いちいち立ち上がり敬礼をする
扶桑「青年さんはお客様です。どっしり構えていて下さい、頂きますね。」自分でサーバーから注ぎ、ジョッキを青年に向ける
扶桑「キリン ラガーです。ちょっと重たい感じがしますが、ビールらしいビールで大好きなんですよ。」青年もジョッキを持ち扶桑のジョッキを鳴らす
青年「ぷはぁ〜っ!なんかこう、すごい染みますね」少し砕けてきた。
扶桑「戦争前は色々な技術を使った上品なビールが主流でしたが、その中でも無くならずひっそりと売れ続けた大雑把なビールですが、美味しいからこそ無くならなかったんだと思います。」手元で次のおつまみを作る
青年「はい、美味しいというかとにかくズッシリきますね。扶桑さんはどちらの所属なのでしょうか?学校の扶桑さんと全然雰囲気が違いますね」もう顔が赤くなり始めている
扶桑「昔は元帥のところに所属していましたが、今はお暇を頂き国内を散歩しております。大規模作戦時には出ますが、基本根無し草ですね。」
青年「元帥のところにいて、現在自由?…。おわおわわおわあわあわあわ」再び立ち上がり敬礼をする
青年「扶桑オリジン様でいらっしゃましたか!ご無礼を働き申し訳ございません!」ヒョロボディーだが背筋がピシッと伸びた見本のような敬礼
扶桑「うふふ、オリジンってついていますが他の扶桑と変わらないですよ。さ、おかけ下さい。私は店員、貴方はお客様です。」席につく青年
青年「最後に扶桑オリジンさんに会えるなんて、これだけでも学校入った価値はあったかな…」勢いよくジョッキを空にする
扶桑「最後とはどういうことでしょう?こちら薄めのウーロンハイとお刺身です。」スッと小皿と空のジョッキを交換する
青年「妖精とコミュニケーションが取れるということで強制的に学校に入れられたんです。そのこと自体には不満はありません。ですが、僕には学校のレベルについていけず落ちこぼれなんですよ。」刺身を見つめる
扶桑「はい、あーん♡」カウンター越しに刺身を箸で摘み、青年の口へ持っていく。突然のことに思わず言われた通りに口を開ける青年
扶桑「私たち艦娘は顕現した時から様々な知識と、自身の武装の使い方も知って現れます。もちろん、その後に学ぶことも多いですが人間ほど様々なことはやりません…趣味として色々やる子もいますけど。学生さんの苦労はまた大変なのでしょうね」
青年「提督になれるのはハンモックナンバーの5人で、それ以外の生徒は兵装科に行ったり整備だったり軍に就かず民間へ戻ったりします。戦略も体力作りも機械弄りも全て行われます、ナンバーに入れなくても職に就けるように…。ナンバーに入れる人達は本当に優秀です、それに引き換え僕は何をやってもドンケツで最近ではみそっかす扱いで技術も知識もまともに身に付けられず皆の足を引っ張るくらいなら、辞めて分相応の暮らしをしようかと…」
扶桑「ビールおかわり頂きますね。」ビールを飲む姿ですら何だか美しい所作で青年はボーッと見つめる
扶桑「あらやだ、恥ずかしいです…。こんなおばさんのこと見つめてても良いことありませんよ?」ふきんで口を拭う
青年「おばさんだなんてとんでもない!僕が今まで生きてきて見たどの人よりも、艦娘の教官達よりも扶桑さんは美しいです!」酒のせいか照れなのか分からない真っ赤な顔をして叫ぶ青年
扶桑「うふふ、ありがとう。貴方は自分を卑下なさるけど、鞄の中の妖精さんはそうは思って無いみたいよ?」青年は鞄を開けると15cmくらいの妖精が1匹飛び出してくる。
青年「こいつ!また付いてきやがって!」口調では怒るが特に何をするわけでも無い。妖精はポカポカと青年の頭を叩く、何かを言っているがこのサイズの妖精は人間の理解できる言葉を発することができない最下級の雑用妖精
青年「うるさいな、僕だって提督になりたいよ!こんな素敵な扶桑さんみたらちょっと辞めたくなくなっちゃったよ!でもしょーがないじゃん!」え?え?
青年「真剣味がたりない?わかってるよ、必死でやっても結果が何一つ出ないんだからやさぐれもするって。お前もウチヘ帰れよ」やっぱり会話してる…?
扶桑「青年さん?その小さな妖精さんの言葉が分かるの?」
青年「え?普通に聞こえますけど?そういう人間が学校に集められてるんですよね?」首を傾げる青年と、両手を空に向けやれやれポーズの妖精
妖精は扶桑の肩に乗り耳元で何やらささやく、扶桑はうんうんと頷いている
数分後。妖精は青年の頭の上に乗り扶桑は頬に手を当て考え事をしている
扶桑「お互いにあと一杯ずつ飲んだら休憩に出かけましょう♡」合わせた手のひらを頬の横に持ってきて微笑む扶桑。ズシン!バックヤードで重量のある何かが置かれた音がする。
きゅ、きや、き、かゆ…休憩ってもしかしてあのマンガでたまに見る男女でしちゃったりする何かしちゃったりなんか…バシッ!と妖精に箸でおでこを叩かれ我に帰る
青年「わ、わかりました」と言い新しく注がれたウーロンハイを一気飲みする
扶桑も一気にジョッキを空にして、入口から出て表の看板を「休憩中」にする
そのままトテトテと可愛く走りバックヤードに消えて奥から青年を呼ぶ
青年(み、店の裏で何しちゃったりなんか…いや、まさかそんな大胆なことする人なんていないはず。)どこかの提督と海外艦が揃ってクシャミをした。
バックヤードへ入ると工場の入口のような大きな開き扉があり、扉の先には夜の砂浜があった。そのまま外へ出ると扉が閉まり、扉がなくなってしまった。
青年「本当に不思議なお店だなぁ…」夜の海に見惚れながら呟くと後ろから声をかけられる
扶桑「扶桑型戦艦一番艦 扶桑、抜錨いたします。提督、艤装にお乗り下さい。」振り返るとそこには白装束に赤いミニスカ、頭には白い鉢巻を巻いてとてつもなく巨大な艤装を背負う扶桑がいた。
青年「扶桑さん?え?え?乗る?ってなんで?」あたふたしていると扶桑にお尻の下を腕で掬われ35.6三連装砲の上に乗せられた。
扶桑「戦艦扶桑、出撃いたします!」砂浜をかけそのまま着水して沖へと進んで行った。
青年「うわ、うわあ、わわわ!」振り落とされない様に艤装にしがみつく、すごい迫力だ。月明かりのみのこの静かさが逆に怖い。
ちょっと進んだ所で止まったかと思うと急に後退する、元いた場所から深海魚雷がスポン!と高く舞い上がった…潜水艦だ!
扶桑「はぐれの潜水艦の様ですね…」扶桑は落ち着いて発言するが青年は…
青年「夜の潜水艦だなんて運がない!扶桑さん、後退しよう!」艤装の上で慌てふためく
扶桑「一度射程内に囚われた場合、私の速力では逃げ切れません。提督、ご指示を!」扶桑の足の艤装に次の魚雷が擦り爆発する、回避中に掠ったのでダメージはほぼゼロだが振動が青年に伝わる
青年「ぼ、僕には無理だよ!ドンケツの僕に何ができるっていうのさ!」
扶桑「提督が戦わなければ私共々ここで沈んでしまいます、貴方にならできます!力はあるのです、キッカケがなかっただけなのです!きゃっ」再び魚雷が擦り爆発する
青年「力なんてないよ、僕はともかくオリジンの扶桑さんを沈めるわけには…いてっ!」妖精が右目に右ストレートを打つ。そして何やら叫んでいる
青年「なんだよお前まで!え?わかったよ、それぐらいなら僕にもできる。扶桑さん、瑞雲を飛ばしてくれ!うちらの頭上を旋回させるだけで良い。指示したら爆雷を一個投下してください。」言うや否や扶桑の頭飾りを取り、耳に当てながら海に飛び込み扶桑の足の艤装に片手でしがみつき「お願いします!」
瑞雲は爆雷を一個投下、海面に落ちしばらくしてから海中で爆発を起こす。青年は投下と同時に頭飾りを耳に当てたまま顔を沈める
青年「見つけました!9時方向距離80深度100!爆雷投下!」顔を海面に上げたと同時に扶桑に向け叫ぶ!そして、ミニスカートの中を見てしまい元気になった。
扶桑「了解いたしました!投擲開始!」5個位の爆雷が投下され1分後くらいに海面が爆発で少し揺れる。青年は再び海中に顔をいれ「敵機沈黙、撃破と見て良いです。」扶桑は青年をお姫様抱っこする、引き上げられる際にまたスカートの中を見てしまい自然に腰が引けるが
扶桑「あら、ちゃんと体を預けてください。ずり落ちちゃいますよ?提督」と言い姿勢を正されバレない様片手で股間付近を覆う…。
砂浜に戻るとまた大きな扉があり、開いて中に入ると店のバックヤードだった。
青年「もう歩けますから!ありがとうございます!」自分の足でバックヤードに立つが膝がカクカク震えている…怖かった。自分がチリになるのも怖かったが、何より扶桑が沈んでしまうのが一番怖かった。
扶桑「お疲れ様でした、貴方は誰にも負けないすごい聴覚を持っています。これからは耳を使いましょう!機械の音、人の動作、筆記と運動は頑張らなくてはなりませんが、その目で見てその耳でまとめましょう。提督になった貴方を楽しみにしていますよ?」その豊満な胸に青年の顔を埋める
青年「怖かった…初めて命の危機にあったのが怖かった。でも扶桑さんが傷つくのがもっと怖かった!僕の耳で貴方の危機を救えるのなら、僕は提督になる。」扶桑の細い腰に手を回す。とても良い匂いがした。
扶桑「ふふふ、待ってますね。今夜のお代は私が持ちます、提督になって私を迎えに来てください。その時に利子をつけて貴方自身で払ってもらいます♡」青年の顔を胸から離し、頬にキスをする。
扶桑「私達オリジンの提督になるには相当頑張らないといけませんよ?でも貴方ならきっとできます、行かず後家にしないでくださいね」
青年「分かりました、必ず迎えに行きます。今日のお代はツケでお願いします!」と言い扶桑の頬にキスを返す!妖精が右に左に飛び回る
扶桑「あら…短い時間で立派になっちゃって…」キスされた頬を手で押さえながら頬を染める
青年はずぶ濡れのまま扉を開けて去っていった。
扶桑「さ、お片付けとお会計しなくちゃね♡」上機嫌でホールに戻る。
一年後主席で学校を卒業する青年。その数年後には扶桑と共に最後の戦いの立役者の1人となるが、それはまた別の客がここで語る
スナック フリート、ここは海の者たちをつなぐ憩いの場
本日もどこかで営業しております。
三話はどこかで出そうと思っていた書き溜め分だっので、こちらが今日の分になります。
誤字脱字、間違った知識指摘お待ちしております。とても助かるので。