リハビリをかねて指が動くのに任せて書きました。今回は会話形式を外れ地の文が多く長くなりました。
お時間がある時に見ていただけるとうれしいです。
その目の前の扉はどこに繋がっていますか?
「扉を開ける」当たり前の日常の当たり前の動作の中にこそ面白さがあるのです、「スナック フリート」まもなく開店です。
ここは海の中かしら?あたしと同じ水着を着た子たちと一緒に泳いでいる
右には青紫色の髪の子がそのはち切れんばかりの胸部装甲を両手で揉みしだきながらアヘ顔で泳いでいる
左には明るい白っぽいピンク色の髪の毛の子がアホ毛を指で整えながらくるくる回転しながら泳いでいる
そして目の前には赤に近いピンク色?チェリー色?の髪の毛をした子が進行方向に背を向けタブレットの様なものを難しい顔をして指で操作しながら足をバタつかせて泳いでいる。ふとその髪の毛と同じ色した瞳と目が合った瞬間彼女の右手が伸びわたしを突き飛ばす、そして
上から黒い塊が降ってきた
うーん!またあの夢かぁ〜。枕元に置いてあったメガネをかけ、体を起こし布団の上で両手を高く上大きく伸びをする。
伊號型のみんなの顔は知ってるけど、あの3人と一緒の任務なんてなかったんだけどなー。こうも頻繁に見るとなると予知夢ってやつかしら?
いつも通りの朝、私は指定水着の上にこの警備府指定のワンピースを重ねる。
他のところでは水着のままだったり、セーラー服だったり所変わればだ。
入口に他所からの応援艦娘を向かいに行き執務室まであと数メートルのところに来た時に、執務室の中から我らの筆頭艦娘の大きな声が聞こえる。
「他所から応援を呼んだってどういうことなのよ!私じゃ不安ってことかしら?しかも姉の方ならまだしも、妹の方?重巡1人の追加火力なんて私にとっては何の足しにもならないの分かってるわよね!」
扉の前につくと男性の反論するような声が聞こえるが、内容は分からない。
うん、普通はこうだよね…筆頭さまの声が特別なのよ。
隣では連れて来た艦娘が大きく深呼吸しながら、2つのリングにチェーンを通したネックレスをさする。
私の視線に気がついたのか、こちらを見て無言で頷く。私も頷きを返し扉をノックする。
こういう場面の意思疎通能力って不思議よね。
「提督、◯◯鎮守府所属の艦娘を連れて参りました」
入れ。の返答の後に連れて来た艦娘に入室を促す。彼女は真っ直ぐ前を向いたまま進み、とても品のあると言うか何か…綺麗な敬礼した。
「◯◯鎮守府所属、高尾型四番艦 鳥海です。本日より数ヶ月の間よろしくお願いします。」
「ふーん…へぇ〜なるほどね。」筆頭さまがじっとり品定めするような目線と呟きで横に立っていた。
いつ鳥海さんの横に来たのだろう…て言うか怖っ。
品定めをしていた艦娘は、私たちの真正面の執務机で座ったままこちらを見る提督の元まで歩きランウェイでターンを決めるモデル同様の動作でこちらを向き、右手を腰に当て左脚すっと横に伸ばすと少し俯き顎をクイッと私たちに向かって弾く。
瞬間。彼女のプラチナブランドの髪が逆光を浴びてキラキラと光りながら舞い、落ちる場所が決まっているかのような規則正しい流れで彼女の髪型を整えた。
「リシュリューよ。多くは語らないわ、見て盗みなさい。」
もうなんか…すき。好きすぎる。
我らが筆頭艦娘さま、艦娘が各々持つ聖典シリーズの第一号のモデルとまことしやかに噂されるオリジンシリーズの1人
確かにある日を堺に美しさは天元突破し、前回の大規模作戦では同じオリジンの武蔵さんと共に「殴りあって」海域を解放したと語られ強さも限界突破という女神オブ女神。すき♡
女神が斜め後ろを振り向き、提督に語りかける
「まぁ、相変わらず艦娘を見る目は確かね。先ほどの発言は取り消させていただくわ。ところで、2人はどうやってしりあったのかしら?」
正面の提督の肩が僅かに跳ね、目の前の鳥海さんから淑女にあるまじき「ひゅっ…」という擬音のような息漏れを発したのを確認した私は
「それでは、私はこの後は非番なのでお先に失礼させていただきます」
彼らの顔を見ないようにお辞儀をしてそのまま後ろに数歩歩いて扉を閉めた。ふうー、危なかった…と一息もらしたと同時に
カラン、カラン…。どこか古めかしい高くも低くもないベルの音が鳴り響いた。
ーとある男の部屋ー
「ぐあああああぁ!そこで大破かよ!はっちゃああああああん!」パソコンの前でイスの背もたれに体を預け天を仰ぐ男がいた。
髪の毛はモジャモジャで目まで覆い被さっているが、綺麗な茶髪というかほんのりピンクがかかっているようにも見えモジャモジャなのにどことなく清潔感がある
「うっさいわ!何時だと思ってんの!あたし明日仕事早いんだから静かにしてよ!」部屋のドアが勢いよく開くと同時に声の衝撃波が飛ぶ
衝撃波でバランスを崩して男は天井をみつめたままゆっくりと椅子ごと床に倒れた。
「母ちゃんの声の方がヤバイって、でもとりあえず悪かったよ。」男は起き上がりながら謝罪の言葉を口にする、180センチはゆうに超える巨体で衝撃波の発信源を見下ろす。
「まったくもう、朝ごはんは冷蔵庫に入れておくからちゃんと食べなさいよ。あと必ず1時間は散歩すること、あの子たちもそんなつきっきりで動かされたら疲労がたまっていい動きできなくなわよ!散歩もちゃんとやってよね!おやすみ」
プンプンという擬音がピッタリの男と同じ髪の色をした髪の毛と同じ目の色の小柄な女の子?は部屋を出て行った。
「散歩ねぇ…まぁ、学校行けとか働けとか言われないのはありがたいけど…」指でポリポリと頭をかきながら男は呟き、立ったついでにトイレでも行くかと部屋の外に出る。
外に出た瞬間に自分の身体がビクッと跳ね上がる。え?え?何?え?
どこかのお店のバックヤードだろうか?お酒食材清掃道具色々いろいろいろいろ…振り向きざまに扉を発見し、素早く向かってドアノブに手をかけるもびくともしない。マジか…
男が途方に暮れるまもなくピンポンパーン と後ろからチャイムのようなものが鳴る
来た方向に振り向くとバックヤードと次の部屋の入口近くにある大型ディスプレイの黒い画面に白抜きの文字が現れた。
こうなっては仕方ない、出る手掛かりの欠片でも見つかればもうけもの。とにかく情報が欲しい一心でディスプレイに近づき画面を見る
「本日のお客様は一名です。このディスプレイが置かれている棚の扉の中に制服が入っています、制服を着用の上で接客にあたってください。以下に労働条件を記しますのでそちらもご覧ください。それでは良い時間をお過ごしください。」
労働条件
この画面ヲ見た時から四時間後まで
お客様は一時間後に来店いたします
来店されるまでにカウンター内にある材料で料理を作ってください
お出しするお酒も用意してあります、貴方自身の飲み物はお客様からいただいてください
報酬は自室に戻った際に、パソコンの画面でご確認ください
お客様の満足度によって報酬の質が上下します
それでは只今より業務開始とナります
「とりあえず、働き切れば解放されると見ていいんだな。まぁ、もうこれに縋るしかないんだけどな。」と男が呟くと同時に画面が真っ黒になる
高ニの春休みから不登校で今22の引きこもり歴4年の俺が接客とは何と難易度の高いミッションよ…
とりあえずやるしか選択肢がないので着替えてカウンター内の調理場で準備を進めていたら、どこか懐かしい高くも低くもない鈴がカランカラン…と鳴る
母ちゃんぐらいの背丈のワンピースを着た女の子が、なぜかこちらに背を向け入り口の扉を見つめていた…え?後退りで入って来たのか?
ふぅーっと大きく息を吐き、頭の中で決意を固めてコンビニの店員に向かってDMMカードの金額指定の決済カードしか残ってなかった時以来の発声を試みる
「い、いらいらっしゃいまセ〜⤴︎」噛むわ最後裏声だわエリートニートのみが成し遂げる最高の挨拶ができた。
女の子が振り向いた瞬間、自分の心臓が止まった。確かに止まった。
音も匂いも何も感じない、幻覚を見たと実感した。確かに実感した。
金髪、碧眼、赤いアンダーリムの眼鏡。間違いない、そこには俺の嫁艦がいたんだ。
「グーテンモルゲン…あ、違った。ごめんなさいね。おはようございます、「はち」と呼んでくださいね」
「うわぁ〜、ここが噂の…ついに来れたんだ。」感慨深そうに独り言を呟きながらカウンター越しに俺の目の前に座る
心臓が鼓動を再開し足りなくなった酸素を得るために息を吸い込んだら「ひゅっ…」と擬音のようなものを発してしまった。
プフッ!ごめんなさい!ついさっき同じことをした人を見てきたばかりで何かツボに…と肩を震わせながら両手で口を抑えている。
掴みはオーケーらしい、ていうか可愛い。好き。
手元のまな板の奥のカンペを見ながら料理とお酒をお盆に乗せてカウンターには乗せず上半身をカウンターに被せながら彼女の目の前に配膳する。
「スナック フリートへようこそ。こちらが本日のお料理の手作り水餃子と紹興酒、古越龍山という銘柄です。常温をお勧めしております。」
「ありがとうございます、優しいのね!わたし背が低いから立ち上がらずにすんで助かるわ」高身長に産んでくれた母ちゃん、父ちゃん、ありがとう。
はち「朝からがっつりお料理とお酒なんて、何か悪いことしてるみたい。ふふっ、店員さんもどうぞ。グラスをもう一つくださいな」
はっちゃんにグラスを渡すとカラフェを傾け2つのグラスに注ぎ、一つを俺に渡してくれた。指が、触れた…好き
はち「それでは、初フリートに乾杯!」ティンティン 俺はグラスを合わせて発せられた心地よい甲高さの音を耳に残して、手に持ったグラスを見つめ
「ここがバルハラか…」と呟いていた。
プフッ!
はち「お兄さん、なんか天龍みたいwww」
俺は慌ててグラスを飲み干し、その水餃子は俺の手作りなんです。母ちゃんにも褒められた逸品です!とかその紹興酒は瓶詰めではなくて甕出しのもので甕出しにしては安いんですけどめちゃ飲みやすくて中華料理最強のお供で、俺不登校になる前は中華料理屋でバイトしててセンスあるから土日は丸一日入れってこき使われたけど腕は確かに上がって、いやそんな話ししてる場合違うていうか、はっちゃん実物はマジ可愛くて、あれ?何の話しだっけ…ヲタク特有の超絶早口で一気に走り切りました。
はち「え?学生さん?未成年ではないよね…」
俺「未成年ではないです、不登校からのニートコンボで今22です」
はち「色々あったんだね、目を隠してるのもそのせい?」
俺「ああー、そんな感じです。この髪の毛と同じ色で、気味が悪い方向では捉えられなくて逆に色々絡まれて…。あ、暗い話をすみません。どうぞ召し上がってください」
はち「ふふっ、私が聞いたんだから気にしないで。ではお言葉に甘えていただきます。」
ひゃ〜美味しい!お酒が進むぅー!顔を綻ばせながら食べて呑み、良い感じに進んでくると俺にもおかわりをくれた挙句、は、は、箸で餃子をあーんして食べさせてくれてこれはもう愛だろ我が生涯に一片の悔いなし!のポーズで盛り上がり会話も弾む。
どれくらい経っただろうか?
はち「というわけでさー、あたしたちは救国の英雄と表現するヤツもいれば魔性のラブドールとか陰で言われるのよ…。そりゃね、ナマでしても病気の心配ナイ、ナガダシしても妊娠しない、見た目わずっと変わらない。男にとってはやりたい放題の最高のオモチャで女からは男が戻って来なくなった、子もウメない欠陥品、ヤリたきゃ深海の砲でも股に突っ込んでろとか散々な言われようですよ…あー何のために戦ってるんだろ」
ううーっ、とメガネを置き両手で顔を塞ぎ呼吸を整えるはち
俺は言葉が放り出せなかった。こんな時コミュニュケーション強者なら肩でも抱きに行って気の利いた言葉を添えるのだろう。
でも…自分と重ねてしまった、重なってしまった。俺の顔を巡って女の子たちが勝手に争いを始め、男たちからは嫌味を言われ仲間外れにされ。時には俺の彼女を口説いただろ!と言いがかりをつけられて殴られた。
やっとできたと思った優しい彼女は春休みの部室で他の男に突かれながらアレは連れて歩く用よ♡あん、ダメ、これがイイの。と叫び仰け反った姿を扉の隙間から見て、俺は吐いて倒れた。
気がついたら自室の布団の上で、俺が何をした!何をした!と口だけで呟き横で黙って見つめる母ちゃんに不登校にすることを告げた。
母ちゃんはただ、うん。と頷き頭を撫でてくれた。そんなことを考えながら彼女の方を向けずに手元のまな板を見つめていると、肩に小さな重みが加わった。
はち「こんな時コミュニュケーション強者なら何て声をかけるんだろう…」
マナーなんてクソ喰らえ!と言わんばかりにカウンターテーブルに両膝を乗せ、カウンターに片手をつき余った片手で肩に重みを乗せた主が目の前にいた。
俺「…、俺、声に出てました?」
はち「うん、バッチリ。その女の子が争うお顔を
はっちゃんに見せたまえ。」
俺「え、いや…それはその何て言うか」
はち「はぁー。ゲームのわたしをお嫁さんにしてるって言ったのに、ああ、そっか今のわたしは本物じゃないもんね…。ごめん」
俺「違う!違いますって!はっちゃんは本物だって!今見せますって!」はっちゃんからわたしをお嫁さん発言もらったよ!これもう両想いじゃん!すき!好き!あぁ、いつものテンションに戻った、さすがマイハニー!
顔をはっちゃんに向け右手で額に手のひらを差し込むと、螢の光りのBGMが流れ、同時に店内の照明がオレンジとも白とも言える何だか不思議な落ち着いた色に変わった。
目の前のはちは驚いた、彼が手のひらを額に当てた瞬間に音楽と共に照明が変わり
彼の明るい茶色に紅がかかった髪色が赤に近いピンク色?チェリー色?に変わっていく。
知っている、わたしはこの髪の毛の色を知っている。
前髪が捲られ、髪の毛と同じ色の瞳がわたしの目を居抜く。顔の作りは日本人にしては堀が深く男らしい本当にイケメンってやつだけど重要なのはそこじゃない。
動揺を必死に抑えながら声を絞り出す。
はち「まあまあ!これはこれは女の子が取り合うのも分かるなー」カウンターを支える片手に力を込めて、さらに体を彼に近づけヨシヨシと頭を撫でる。頑張れわたし!ここからだ!もっと振り絞れ!
はち「そうだ!わたしは自己紹介したけど、君の名前をまだ聞いてないぞ!」動揺を悟られないようにヨシヨシを続けて彼の目線が少し下に落ちる。モジャモジャだけど、この色は、この い ろ は
彼「伊郷 零です。伊賀の伊に故郷のさと。数字のゼロの漢字で、いごう れい と読みます。母ちゃんは自分と同じように数字で書くとどこかの住所と間違えるから零の文字を使ったと言ってました笑」
数字と聞いてなぜか涙が溢れ出そうになる、撫でていた手をおろし握力で空間を引っ張れそうなぐらい力を込めて涙を瞳に再収納する。
ここから先は聞いてはいけない
ここから先を聞かなきゃいけない
そんな葛藤をお構いなしに彼の口から音が続いた
零「母ちゃんの名前は平仮名でいろはって言うんですよ、漢字で書くと一(い)ち 六(ろ)く 八(は)ち。ははっwwwマジで住所ですよね?伊郷一六八ですm…」彼が言葉を言い切る前にわたしはカウンターを飛び越え、彼の首に両手を回し抱きついていた。
待て待て待て待て待て待て待てまてまてまてまて…わたし!何をしている?
ちょちょちょ、はっちょん!はっちょんて誰?
い、イムヤの顔は知ってるけど一緒になったことはないわ!
確かこういう時は素数を数えるんだった!クソ!素数って何だっけ?落ち着け俺
こ、ここからどうしたらいいの?確かこういう時はやっつけたイ級の数を数えるんだっけ!もう!覚えてる訳ないじゃない!落ち着けわたし
2人でフリーズしていると店内の照明がもう一段階暗くなり、それが功を操し互いに正気に戻る
はち「ごめんね、零くん。酔いすぎててテンション上がりすぎちゃったみたい」
零「あ、こちらこそ。ありがとう?かな?ハハッ、何言ってんだ俺。片付けやっておきますんでこちらへどうぞ」
落ち着きはしたものの互いにうまく言葉が継げず、出口までエスコートする店員とエスコートされる客のモーションキャプチャーを披露する
零「本日のご利用ありがとうございました。最高に楽しい思い出ができました。また会いたいけど、話を聞かせてもらった限りでは自分の意思でここに来ることはできないんですよね?」
はち「わたしも本当に楽しかった!わたしもまた会いたい!確かに自分の意思で来れる場所じゃないけど、また必ず来れる気がするの。ううん、来る。絶対会いに来る!だからそれまでは…」
俺は途中で突然言葉を止めたはっちゃんを何かと思い顔が見えるように上半身だけで屈んで覗き込んだ瞬間…
チュッ♡という音と共に唇に柔らかな感触が…?ん?抱きつかれた時に香った甘い匂いが鼻をくすぐる。次の瞬間、はっちゃんは勢いよく扉を開け、扉を閉めながら顔だけ見えるように隙間を維持した。
はち「…、次に会う時まではあなたのお嫁さんのわたしにお任せするわ!あなたのお嫁さんのわたしはチューしてくれないから、きっとここのわたしに会いたくてたまらなくなるでしょう!これは予言です!当たったかどうか次会った時に聞かせてもらうからね!またね、零くん!」オタクの高速詠唱より少し遅めの早口で述べ切った彼女は笑顔をのまま扉を閉じた。
とりあえず、俺は思考という動作ができなくなってしまったので、片付けを始めた。テーブルの上に赤いアンダーリムのメガネがあったが思考することができなくなっていたのでメガネはテーブル上の紙ナプキンを取り出し、包んでポッケに入れた。接客が終わりバックヤードに入るとまたディスプレイが音を立てて起動し、白抜きの文字が浮かんだ。
本日の業務は終了です、お疲れ様でした。
大変申し訳ないのですが、伊8様からお会計をいただいておられなかったため、当店のルールに従い次回無償出勤して頂くことで本日のお代の建て替えとさせていただきます。
次回の出勤日時は◯月△日15時からとなります、制服はこのまま持ち帰ってもらい自宅にて洗濯をして次回出勤に備えてください。
おかえりはバックヤード対面の裏口ドアからお願いします。
俺は文字を目で追い、指示通りバックヤードの扉を開け外に出て扉を閉めた。
うん、いつもの俺の部屋だ。あ、艦これやらなきゃ。
パソコン机の椅子に腰掛け、マウスを軽く左右に震わせると待機状態が解除され最後に映った画面が出る。
見慣れた夜戦継続か撤退の選択肢、思考回路が停止していたので右腕が習慣で勝手に動き夜戦継続をクリックするのを特に不審に思わず画面が切り替わった瞬間に俺は我に返った。
「大破進撃だ!何やってんだ俺!待って!お願いだから待って!!ダメなんだって、はっちゃんが、はっちゃんが沈んじゃう!ダメだって!」俺はボロボロ泣きながらディスプレイを両手で掴み、今まで生きてきた中で一番の大声で泣き叫んだ。だが無情にも画面は切り替わり、どっと深く椅子の背もたれに身体を投げ出しておそらく瞳孔が開いているであろうと自覚している自分の目で画面を見続けた
「さぁ、魚雷を装填して…まだよ」さっきまで機械を通さずに聞いていた大好きな声が聞こえる…好きだ、好きなんだよ。はっちゃん
俺は逃げちゃダメだ、見ることしかできないが絶対見届ける
画面が暗転しカットインの演出が始まる
旗艦は隼鷹さんだったはず!どうして、どうして…
画面には知ってるけど知らない艦娘がいた。スクール水着が少しだけ透けたワンピースを羽織り、トレードマークのメガネがない金髪碧眼の女の子が挿絵ではなくアニメーション同様の動きで画面左半分で華麗に回転しながらスカートの中から魚雷を取り出し画面右側に向かって放った。
大破から小破まで何かしらのマークが縦一列六隻が爆破エフェクトに包まれ、全てに撃沈マークがついた。
「パソコンの画面をご確認ください」
「お客様の満足度によって報酬の質が上下します」
母港画面に戻ると動かない静止絵だけどカットインと同じ格好のはっちゃんがそこにいた。
近くの学校の鐘がなり、母港の画面の時刻は13時丁度を示している。
なんか…時間がずれ…俺はそのままゆっくり目を閉じた。
わたしはドアに背を預け火照った顔に両手を添えながら目の前を見る
うん、わたしの部屋だ。
あぁ、ちょっと大胆過ぎたよね。お酒コワイナア、あんなコトしちゃうなんて…ってあれ?メガネない?ていうかお金も払ってない!!
うわあああああー!
嬉しいやら恥ずかしいやら情けないやら後悔やら
心のこのカオスをイメージで部屋のすみにモヤとしてまとめた
そして半分ヤケクソで布団上で回転する
回転で軽く捲り上がったスカートの中に両手を突っ込み、魚雷を取り出すモーションをなぞり部屋のすみに追いやったモヤにぶつけた。
モヤは光の粒となり天に向かって消えていったような気がした。
見事に落ち着きを取り戻したわたしは布団にそのまま倒れ込み幸せな気分を噛み締めながら意識をゆっくりと手放した。
どこかで鐘が鳴る音を聞いたような気がした。