ダンジョンで暮らすのは間違ってるらしいケド……。   作:ハイキューw

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最近では漫画購読予定です。


第1話 黒い男、前世っぽい夢を見る。

 

 

狂乱セシ漆黒竜(デモン・ドラゴン)

 

 

 

全ての人を滅ぼし。

全ての国を滅ぼし。

全ての大地をも滅ぼす。

 

 

生きとし生けるもの全てを滅ぼす。

 

 

滅ぼし、全てを呑みこむ事にその力はより強大に より残忍に より残虐に、永遠に力が増してゆく。

 

世界を喰らいつくす時、その漆黒の牙は天に住まう神々にも届き得る事だろう。

 

 

 

 

 

――この世より 人を消し、国を消し、神を消し……ありとあらゆる存在を消し、そして この我自身も消えよう。……永遠に。

それこそが真の悠久の楽園(ユートピア)

 

 

 

今の世は、全て―――偽りなり。

 

 

 

 

地の底から響く様な、頭の中に直接届くかの様な、聞くだけで

言の葉は操る竜だが、それ以外は考えていない。考える事が出来ない。

否、考える(・・・)という意味すら解っていない。

 

全ては 定めた目的を遂行する為だけに……漆黒の竜は全てを呑みこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――もう、これしか無いのですか?

【……あぁ。本当にすまないと思っている】

 

―――あの方より我々が、この世界が頂いたモノ……恩義。それは図り知れません。あの方はいつもいつも自分を犠牲にしてきた。何故、何故なのですか? 何故我々は……。

【………1つ、訂正しておこう。……かの者は犠牲などとは露とも思っておらぬ。そなたが幾らそう思っていても、そう言の葉をぶつけたとしても。……全て御心の赴くまでに行動したまでだ、と笑い飛ばすであろう……。変わらぬ笑みでな。……それはお主も解っている筈だ】

 

―――それでも、私は納得しない。したくない。あの方が滅ぶ道を選ぶのなら、それも良い

。私はずっと、あの方についていくと心に決めた。……だから、私はあの方についていきたい。全てを滅ぼし、全てと共に……世界と共に消え去る道を選ぶと言うのなら。……我々は、……わたし、は。

【………すまぬ。それは出来ん】

 

―――何故なのですか? どうか、共に逝かせてください。あの方が居ない世界なんて、私には……。

【それが、かの者と我、その間で交わした最初で最後の盟約。………我は……、私は その約束を、最後の絆を否定する様な事を、違える事はしたくない。私もそなたらと同じだ。共に有りたい。全てを消すと言うのなら、共に………………。だが、それでもかの者を裏切りたくはない。かの者は言ったのだ。――――守ってくれ、と】

 

―――……ッッ。

 

 

 

全てが、世界の全てが漆黒へと染まっていく。

一粒の光も許さないと言わんばかりに。存在そのものが無かったかの様に、広がっていく闇。

 

それを止めるべく、聖光竜(セイント・ドラゴン)が大きく羽ばたいた。

最後の友の約束。……最愛なる者との約束を果たす為に。

 

 

 

【———私はそなたを愛していた】

 

 

 

大粒の涙が大地を濡らす。

留まることを知らぬ闇の侵略が止まった。

 

 

 

【今、この我の全てを、この魂を捧げる。……願わくば――――――】

 

 

 

漆黒に相反する力。

その眩い光。

大地に全てを覆いつくすかの様な光が徐々に、闇を飲み込んでいく。

 

 

 

 

【少しでも、僅かでも、……残されているのであれば、彼の真の魂の救済を。―――我が魂の欠片たちをかの者に】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一筋の光が差し込んだような感覚があった。

その光は大地へと当たり、そして 漆黒の世界を光で満たしていく。

 

全ての漆黒が光りで染まったその瞬間、まるで電流でも流れたか……、いや、そんな生易しいモノではない。頭を思いっきりぶん殴られたかの様な衝撃だ。

 

無理矢理に意識を覚醒させられた。

 

 

「ぁッッ!!!」

 

 

覚醒したと同時に、半身を勢いよく起こす。

そして、頭を抱えた。

 

これは、いつも見てきた夢の筈……だった。

だが、今回のコレ(・・)は少し違う。

 

 

夢。

 

夢を夢である事を認識したと同時に、いつもならば目が覚める。それに加えて、内容はもっともっと断片的で 繋がりなど無かった。

ただただ切り取られたワンシーンを延々と見せられるだけのおかしな夢だった筈だが、今日―――全てが繋がった。

 

 

「……あれ(・・)が、オレ……なのか? いや、前の(・・)オレ……?」

 

 

 

己の両手を見る。

5本の指……両方合わせると10本の指がある。

次第に胸、腹、腰部、四肢……と身体をじっ、と眺めていく。

 

この姿は 間違いなく人のモノだ。

あの夢の中で、世界を破壊し、暴れていた黒い竜とは全く違う。

 

類似点があるとするなら、服でも道具でも、主に色は黒を好むこの性格と、そして 同じく他を寄せない混じりけのない真っ黒な髪。

 

次に、頭がまだぼんやりとしているので、気付けに両頬を思いっきり2度3度と挟む様に叩く。

 

痛みがじぃん……と頬に伝わってくる。

間違いなく今は夢ではなく、現実であることを認識したその時だ。

 

 

「お目覚めですか? 主様」

「っ!!」

 

 

突如、背後から抱きしめられ、思わずびくんっ! と身体を大きく揺らせた。まるで、電流でも流されたかの様な気分だった。

 

「おや? どうかなされましたか?」

「あ、いや……」

 

彼を包み込んだ者は、ふと首を傾げる。

 

違和感満載だった。

普段の彼は、寝起きが悪い……なんてことはない。寧ろ、抱き着く前に気付かれてしまい、躱されてしまう事だって多々あるから。と言うか、躱されてしまう事が殆どだ。不意をついても、奇襲をかけても、後ろから抱き着くなんて真似、成功した事が無い。

 

全く成功した試しがない。記憶にない。

 

 

「(したことない。そう、したこと無かった。……ここまで来られるのに、どれ程時間がかかったか……! できた!! 私はできたんだっっ!)」

 

 

そう、それが今! 成功したのだ! この抱擁を!! 願いを!! 恋焦がれていたこの身体に!!

 

 

「ああ、あるじさま、あるじさまっ! この時を待ち望んでおりました……!」

 

 

認識したのと同時に、ぐりぐり、と頭を擦り付け、そして首元をすんすんと嗅ぐ。

主の匂いが鼻腔を通り……軈て脳髄にまで届く。

あまりにも甘美。この快感に酔いしれる事が出来るのは、今この場では自分のみ。

 

初めての油断だったのか、或いは本当に寝ぼけていたのかは判らないが、自分の願いが届いたのだ、と自信を持って その香りをいつまでも堪能していたその時だ。

 

 

「あーーーーー!!!」

 

 

もう1つ、声が響いてきた。

 

「ネルずるいっっ! ルシといちゃいちゃするなんてずるいーー! ディもするっ! いちゃいちゃするーー! まけないーー!」

 

見た目小柄な少女。

 

燃えるような赤い髪、肩口程まで伸びている赤髪を靡かせながら、飛び跳ねるながら接近してきて、そのままタックル。

 

 

 

そして、続いて―――。

 

 

 

「ただい――――……って、はぁ。何してんの? あんたら」

 

 

ふわりと宙に泳ぐ。まるで揺蕩っている様に宙を泳ぐ女性が現れた。

鮮やかなエメラルドの輝きを持つ髪、こちらは胸部付近にまで伸ばされている緑髪を宝石の様に輝かせながら、宙を泳ぎ 呆れた様子を見せる。

 

 

「だーめーー!! 私が頑張ったんだから、私がついにたどり着けたんだから! だから、これは私の特権だよ!」

「それこそだめなのっ! ネルずるいっ! ルシひとりじめなんてずるぅぃ! ディもするー! するもんっ!!」

「わっ、ちょっ! デイン! あっ、フロラおかえり! もうちょっとこの子どうにかしてーーっ」

「………はぁ、一先ずルシファーを離してやんな。苦しそうだ」

「……………」

 

前後を2人がかりで挟まれている。

丁度顔付近にだから、傍から見ると息が出来てない様に思える。

 

世の男性にとっては天国に上りかねない光景。

 

2人とも……否、3人とも美女、美少女の分類に入るであろう非常に整った顔だちをしているから。

 

 

 

とりあえず、彼―――ルシファーは、少々ボケていた頭を更に覚醒させると、まず顔に張り付いて離れないデインと最初に後ろから抱き着いてきた少女、ネイルを引きはがすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ったく、人が感傷に浸ってたって言うのに、こんな朝っぱらから、騒々しい事を……」

「えへへへ」

「あはっ」

 

 

とりあえず、2人を前に座らせて説教タイム。

説教しているつもりなのだが、当の受ける側である2人は、共にニコニコと笑っていて効果は全くなしだ。……まぁ、これもいつも通りと言えばいつも通りなのだが。

 

貰えるものは全て嬉しい。例え怒られたとしても嬉しい。……正直、ゾッとする事も最初はあったが、最早慣れっこである。

 

「ルシファーが感傷に浸るとか。そんな言葉知ってた事に驚きさ。昨晩、随分 ()で飲んで食べて騒いで、加えて此処(・・)で走って暴れて楽しんで……。そういう感情はもっと大人しめなヤツが使うんじゃないのかい?」

「随分辛辣な意見をどーもサンキューねフロラ。喰って飲んで奢ってしてたら金少なくなってきたんだよ。だからちょっと稼ぎに、色々と―――って、それよりも! ………あー、いや 何でだろうなぁ。魔法(・・)使いっぱなしで寝ちまったからかな? 変な夢……見たの」

 

変な夢(・・・)

フロラは、これも いつも通りの事。確かにあの2人が乳繰り合いの手前まで行けたのには少なからず驚いたが、そうなってもおかしくないくらい、はっちゃけていたのを知っているから、別段そこまで驚きは無かったのだが……、変な夢。その単語に、少なからず眉を動かした。

 

「夢……だって? いや、別に夢くらい見たっておかしいっちゃ思わないが……、それは記憶でも戻ったっていうのかい?」

「いんや。ちょっと違う。……まぁ、話半分で聞いてくれ。オレ自身半信半疑」

「え? なになに??」

「聞く―!」

 

 

ルシファーは、掻い摘んでではあるが、全て説明した。

 

これまで見てきた夢の事、そして昨夜の夢で全てが繋がったと言う事。

驚く事に、世界を滅ぼしそうになって消えてしまったと言う事。

 

勿論、アレ(・・)が自分である……とはルシファー自身も信じられない。

言うなら、他人の記憶をのぞき見した、と言う感覚が一番正しい。

 

ただ、状況を考えたら―――あの夢が前の自分である、と言う可能性が高いのだ。

 

 

 

 

ルシファーには 記憶が全く無いのだ。

 

 

気付けばこの姿でこの地におり、そして気付けば、お供の3人娘がくっついている。

馴れ初め話や出会い話、などなど全く記憶にない。

 

ただ、自分名前と彼女たちの名前、そして自分を主と慕ってくれている。

何も記憶が無いのなら、それも直ぐに受け入れる事など出来そうにない事ではあるが……、最初から自分自身も彼女たちを信頼していたし、親愛の感情もあった。

 

まるで、知らないのに 最初から決まっていたかの様に、解っていたかの様に。―――魂に刻まれているかの様に。

 

 

 

1人だったら、もっと慌てたり下手したら発狂していたかもしれないが、彼女たちが支えとなり、此処で生きる、暮らす術を共に考えて模索、行動もしてくれたのだ。

 

……主に、ルシファーの気の向くままに、半ば強引わがままな意見が多いのだが、ネイルとデインは 主であるルシファーが望むなら、と喜び、そのストッパーや教育的な役回りを、フロラが行ってくれて、良い具合にバランスが取れているのが現状である。

 

 

 

 

「とまぁ、こんな感じ?」

「「……………」」

 

 

ちょこんっ、とルシファーの前で、真剣な顔つきで座っていたネイルとデインの2人。

じぃ……とルシファーの顔を覗いていて、数秒後。

 

抑えきれなくなったのか、目に涙を浮かべ、大笑いを始めた。

 

 

「あはははははは! なにそれー! ルシおもしろーい!!」

「あるじ様が暴走して世界壊す!? それに竜種になって!? そんな訳ないですよー! あるじ様の心も身体も真っ白なんですから! 黒い竜なんて連想できませーーん!」

「ネルそれ違うー! ルシの色は黒なのは間違ってないよっ!」

「あっ、それもそーですね!」

 

 

突拍子もない事を言っているのも自覚している。まさに荒唐無稽。

だが、此処まで腹を抱えて泣く程笑われると、流石に恥ずかしい。

 

なので、ごつんっ! と拳骨をいつまでも笑いこけて止まらない2人へとプレゼント。

 

 

「たっ!」

「いたいっ!」

「笑いすぎだボケ! 話半分に、っつってもイラッとするわ! あー、歓楽街でもまた行ってこようかなぁ~」

 

 

彼女たちの意趣返しに一番効果的なのが、ワード【歓楽街】である。

色んな事を笑って好んで~ としているネイルとデインだが、歓楽街だけは駄目だった。

 

「やーー! そんなとこ行っちゃやーー!」

「ダメですダメ!! あるじ様の御子は私に!」

 

笑いこけていた筈なのに、ピタっ! と止まって デフォルメな泣き顔で縋り付いてきた。

 

それをひょいっ、と躱して起き上がると、背伸びを1つ。

 

「とまぁ、夢ん話はこれにて終了。今日も一日楽しむぜ!」

「……はいよ」

「わーんっ! ルシだめーー!」

「あるじ様~~!」

 

フロラ以外はオウオウ泣いている。

ルシファーは、フロラだけは何の反応も見せなかったので、少々気になっていた。

 

「お前は笑わないのか?」

「……笑った方が良かったかい?」

「いんや。でも、何にも言わないってのも気になってな」

「……そうさね」

 

フロラは、少しだけ考えて…… そして笑顔を作った。

 

「まっ、夢の話が 仮に本当にあった話、前世だったとしても、私達は勿論、ルシファーにとっても終わった事なんだろう? テルカ・リュースなんて名の国は聞いたこと無いし、ざっと世界地図は見たけど、載ってないのは間違いない。考えても証明しようも無いんだから、あんたが言う事に従うよ。今日も一日楽しく、ってね」

「……だな」

 

ルシファーは、フロラの返答に満足すると 笑みを浮かべて手を振った。

 

「上に出るのかい?」

「ああ。かあさんに また朝飯もらいに行く、って昨日約束してたの思い出してな。夢に夢中で忘れかけてた」

「おやおや。随分胃袋掴まれてるじゃないのさ。……妬けちゃうわね」

「あん? 優劣なんざつけれねーよ。こっちで食うのも当然上手いし、上でワイワイガヤガヤしてるトコで食うのだって上手い。たまには、お前らも上で羽伸ばしても良いんだぜ?」

 

にっ、と笑うとネルとデインが わっ! と立ち上がる。

 

「「行く!!」」

 

そういって、両手を掴んでくる……が。

 

「はいはい。あんたたちは、こっちの仕事が残ってるから それ終わってからね」

「あう~~」

「いきたい~~」

「酒を普通に飲めるようになってから行きなさいな。連れ帰るのだって楽じゃないんだからさ」

 

フロラが2人を ひょいっ、と襟首を掴み上げた。まさに借りてきた猫の様に大人しくなる。

 

「デイン。あの子ら(・・・・)が暴れてるから、ある程度大人しくさせときな。そんでもって、ネイルは、機能構築。仕掛け(・・・)が頓珍漢な事になってたろ? しっかり調整しときな」

「はぁい……」

「わかりましたぁ……」

 

項垂れる。でも、仕様が無い事なので納得した。

それを見届けると、ルシファーは100万ドルの笑顔、爽やかな笑顔と共に上へと向かう。

 

 

「んじゃ! よろしくぅっ!」

 

 

 

見えなくなったルシファー。

暫くの間、少女たちの慟哭がこの場に響くのだった。

 

 

 

 

 

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