ダンジョンで暮らすのは間違ってるらしいケド……。 作:ハイキューw
「よぉーー! 朝っぱらから飲んでるか~~! やろーども!!」
【うおおおおおっ!!】
「オラオラ!! ドリル! まだ酒 残ってんじゃねぇか!! グイっ、とイっちまえグイっと!」
「うらぁぁあっっ!! 勿論だぜ! 黒ボーズ!」
「よっしゃあ、じゃあ注げ注げ注げ! 行くぜぇぇぇ!!」
朝っぱらから大宴会。
その宴の中心に、ルシファーは居た。
ルシファーを取り囲む様に大小さまざまな男たちが群がっている。異様に暑苦しい光景だ。
「【
【
「せーのっ!」
【かんぱぁぁぁぁぁぁいっっ!!】
大宴会、早朝の部。開幕である。
それは約30分前の事。
「ミアかあさーんっ! 来たぜーー! 飯食わせてくれーー! 酒飲ませてくれーー!」
地上に来たルシファーは、行きつけの店、【豊穣の女主人】と言う名の酒場へと来ていた。
ここは、【冒険者】と呼ばれる者たち向けの酒場。でも、一般人たちにも人気であり、何より飯が上手く接客してくれるメイドの皆さんも可愛らしいとルシファーにとって最高の酒場だ。
某場所で、忙殺されてる約2人の少女たちは嫌がりそうだが。
「ははっ! 来たね。ロクデナシ」
「朝一番の挨拶が、ロクデナシってひでーな、かあさん! それにちゃんと金払ってんじゃん」
「アンタが働いてるトコ見た事無い、って ウチの子みーんな言ってるからさ。働かざる者食うべからずの筈なんだけどねぇ アンタは不思議と金はあるんだよ。ほんっと、オラリオの中でもトップクラスの謎案件さ」
ルシファーにかあさん、と呼ばれてるのはここを切り盛りしている女店主。
何でも腕っぷし最強で、肝っ玉。皆からも恐れ+親しみを込められて、【ミアかあさん】と呼ばれている様なので、ルシファーも右に倣った。
勿論、接しているとそう呼びたくもなる、と言う理由もあるが。
「へへ~ん、すげーだろ? オレってば金持ち!」
「そのすげーを通り越してるっていうんだよ、こういうの。世の不条理を嘆きたい所だねぇ」
「へ? でも、オレ此処で金たっくさん落としてるし、別にwinwinで良いんじゃね? 別のトコ行った方が良い?」
「へっ、ばーか」
大袈裟に、頭を抱えていたミアかあさんだが、良い所を突かれた、と認めた瞬間、にっ! と良い笑顔になる。
酒場が繁盛するのは、夜だと相場で決まっている……が、この男 ルシファーが顔を出す様になって、形態が変わってきたのだ。
全身全霊のおもてなしタイムである。
「さぁ! 大口の客が来たよぉ!! サボってないで働きな馬鹿娘ども! じゃんじゃん金使ってもらうよぉぉ!」
【おーっ♪】
「いらっしゃーい♪」
「……いらっしゃいませ」
ルシファーが来たら大盛況。どんな団体客でもだ。個人と団体で張り合うどころか凌駕するのだから驚きモノ。
だから、此処で彼を嫌っている者は1人もいない。
確かにミアが言う通り 妙な経歴と言うか見えない部分があるのは確か。怪しい気配も満載なのだが、実害があった、等と言った被害報告みたいなのが一切出回ってない。
最初こそ、金の羽振りの良さから、嫉妬に狂ったチンピラが絡んでた事は多々あったが……、今じゃ殆ど無い。
何故なら――彼と一緒に騒ぐ方が遥かに利があるから。
「おーす!」
「はぁ~、漸く飯だ、メシー! 晩飯が朝飯になっちまった!」
「飲むぞ食うぞ飲むぞ~!」
「かぁ、疲れたーー!!」
別に狙ってきた訳ではない。
たまたま、ルシファーが来たばっかりの所で、沢山のお客が来店。
まだ、忙しい時間帯ではないのだが、たまに 時間をずらして多数の客が入ってくる事はある。
それとルシファーの組み合わせ………。店にとっても客にとっても最高の展開。
「おお! 黒ボーズじゃねぇか!」
「んおっ!? おお! 久しぶりだなぁ! ドリル! それにお前らも! 飲んでますかーー!? やってますかーー!?」
「来たばっかだっつーの! うははは! もう飲んでんのか? おめーはよ!」
一気に盛り上がりを見せる。
因みに、ルシファーは自身の名を正式に名乗っていないので、ルシファーと言う名を知る者は限られている。故に、それぞれの印象から渾名で呼んでいる。
そして、大体ルシファーが飲んでる時に言うのは決まっている。
今飲んでるジョッキを一気に飲み干すと、ばっ! と立ち上がって空ジョッキを掲げて大宣言。
「うらぁぁ 野郎ども!! 運が良かったなぁ! 朝っぱらからでも、オレと飲めるヤツ出てこーい! もれなく出てきたヤツ、全員に! ここ、ぜぇぇんぶ、奢ってやるぜぇぇ!!」
【うおおおおおおお!!!】
「うらうらうら! 飲め食え飲め食え! かあさんの店繁盛させろ~~!!」
【うおおおおおっっ!!!】
そして、冒頭の場面、大乾杯場面に戻る。
この店に来る客の9割以上は、そんな生易しい身体はしていない。
朝だろうが昼だろうが夜だろうが、大体飲める。
タダ食いタダ酒出来るんなら、喜んで付き合う。潰れるか潰れないか、どこまで行けるかは、基本的に自己申告制だから、意地になって飲まなければそこまでのリスクはない。無理矢理飲まされると言う訳でもないから。
でも、延々飲み続けて、一切落ちる気配も潰れる気配も見えないルシファーを見て……意地になってしまう者が大半なので、結局潰れると言うパターンが多い。
因みに、店に迷惑をかけるパターンでは、問答無用で物理的に追い出すのが、この店の流儀なのだが、ルシファーが迷惑料として、更に上乗せしてくれるので、アフターサービスまで請け負ってくれたりしている。
だから、最初は金持ちへの妬み、嫉妬で絡む男達が多かったのだが、ルシファーの性質を知り、楽しく飲んでる内に名物男になった。
間違いなく、この店 豊穣の女主人を繁盛させている要因の1人なのである。
「おうおう、騒がしぃなぁ! なーに盛り上がっとんや?」
酒場から聞こえてくる朝っぱらからの喧噪。
外に居ても十分響いてくるので、近場に居れば大体の者が気付く。話の内容を最初から聞いていたら、誰が居るか、誰が来ているのかわかるので、大多数が納得するが、今入ってきた者たちはどうやら、入るまで気付かなかった様だ。
「おー、納得や納得! つーか、ウチら運ぇぇやんっ! ブラッキー君が来とるでぇ、アイズたんっ!」
「……………」
入ってきた者、その名は女神ロキ。
そして、直ぐ後ろにいるのがその女神ロキ・ファミリアの中核を担う実力者アイズ・ヴァレンシュタイン。
神やファミリアについては、説明すると長くなるので 此処では一旦お預けだ。
ルシファーの行動の方が早かったから、と言う理由もある。
「おおっス! ロキねーさんに、アイズっち!」
「アンタいっつ見ても羽振りええなぁ。あやかりたいわぁ」
「んな、物欲しそうな顔しなくても良いっての! 今日の此処はぜぇぇんぶ、オレの驕り! 欲しけりゃ頼め飲め食え~~!」
「おおうっ! さっすが、ブラッキー君やっっ! ほんま、ウチのファミリアに来てほしいわぁ!」
あっという間に酒好きなロキは割り込んで盛り上がっていた。
身内はアイズしかいなく、アイズ自身も こういった間に加わるのは得意とは決して言えないので、やや離れていた。
同席とはいえ、女神ロキはファミリアの女性陣に対しセクハラを空気を吸うように行ってる彼女がアイズそっちのけで盛り上がるなんて、珍しい光景ともいえるだろう。
「ははぁ、やけ酒やね~、姐さん。バレてんまんねんで?」
「へったクソな口調 真似せんでええねん! 飲まずにいられるか! ウチのアイズたんが今までの最速記録保持者やったっちゅーのに、なんであんなドチビがおるトコの子に記録更新されんねん~~!」
ぐあああ、っと酒を一気飲み。
「それもたった1ヵ月そこそこで、やで!? 1ヵ月そこそこでレベル2とかありえんやろ!?? なぁ、ブラッキー君もそー思うやろ!?」
「せやせや! そーやそーや! 間違いあらへんで!! アイズっちが一番やっ!」
「やろやろ!?? そーやろ!! あんのドチビぃぃぃぃ!! 何さらしてくれとんねんっ!!」
口調真似を注意してたのに、それも忘れて共に飲むロキとルシファー。
アイズは何処か遠い目をしていた。
「ぐああああ! 店で一番強ぇ酒もってこんかーーい!」
「はい~ ただいま~~!」
ロキは、メチャクチャ
「実際の所、アイズっちはどう思ってんの? ベルちゃんの事」
「ん。………凄いと思う。何であんなに強くなれるのか……(目標があるから、近付きたい人が居るから、とは聞いたけど。…………)」
「だよなー。ロキねーさんは、不正云々言ってるけど、ベルちゃんに不正ってないと思うわ。 だって、そもそもぜんっぜん似合わないし」
ぐいっ、と一気に酒を飲み乾し、ジョッキをテーブルに置く。
「……解らないのは、貴方も同じだけどね。何でそんなに強いの?」
アイズは、ルシファーのことを見ていた。
追加で酒を頼んでいる所だったので、返事がやや遅れたが……。ルシファーは にっ、と笑って答える。
「オレにとって、酒ってのは活力剤、明日の為のエネルギーそのもの! たーくさん入る理由は、オレの貯蔵庫が無尽蔵だからだよ! かっはっはっはっは!」
「……いや、そっちじゃないんだけど。うん。全く酔わない所も凄いと言えば凄い。……それに身体の体積以上入ってると思うんだけど、何処に行ってるの?」
「あー、その辺はご愛敬。モチ、吐いたりはしてねーぜ、とだけ。だって勿体ない」
お待たせしました~♪ と追加の酒を受け取ると今度は半分程飲み乾す。
「……(何処のファミリアにも属してない。それどころか全部が謎。強いって事とお金を沢山持ってるって事以外。……底がまるで見えない)」
アイズにとって興味の対象は、ルシファーにもあった。……が、どちらかと言えば、最速記録更新者であるベルの方に向ける意識の方が高い。
ベルの急激な成長速度。それは、自身が成長の壁を越えられる切っ掛けが得られるのではないか? と思っていた為、色々と請け負ったり目に賭けたりとしている。
だが、ルシファーはまるで参考にならない、とアイズは本能的に感じていた。
この身に感じるのは、此処とは別次元の力。
「ん? ……はぁ」
盛り上がっていた筈なのに、何処か気怠そうな顔になった。
横顔を見ていたアイズは、不思議そうに見ていて……。
「どうしたの?」
と聞いてみた。
ルシファーは、ゆっくりと手を上に上げると、親指と中指を思いっきり弾いて、ぱちんっ! と音を1つ鳴らす。
「認識阻害。ほれ、面向かって話すのが基本だろ? 遠―いトコからジロジロ見られんのはやっぱ嫌。ストーカーかっての」
「??」
某場所————バベル。
オラリオ位置高い場所から、下界を……オラリオを見下ろす者が居た。
迷宮都市オラリオに置いて、トップクラスの探索ファミリアの主神であるフレイヤ。
容姿端麗な神々の中においても、随一の美貌を持つ【美の女神】である。
「…………………」
誰もが魅了されるその瞳。一度でもその目で見られたら 魅了されてしまう程のモノであり、それは人間だけではなくモンスターにすらも影響を及ぼすとされている。
「オッタル。……見つけたわ」
「……はっ」
傍で控えているオッタルと言う男が、直ぐにフレイヤの元へ。
「無理だと思うけれど……。また、チャレンジしてもらえるかしら? ―――彼と話をしてみたいの」
「仰せのままに」
オッタルは、一礼すると、翻して後ろの扉を開き、出ていった。
「不思議ね。……
誰もが見惚れるであろう妖艶な美しさを醸し出しながら、1人――女神フレイヤは笑い続けるのだった。