ダンジョンで暮らすのは間違ってるらしいケド……。 作:ハイキューw
殆ど強制連行されたルシファーは、オッタルたちと共にファミリアの主神フレイヤのまつバベルへと向かう。
オッタルは、視界の中にいるルシファー見て確保に成功した事を意識する。
これまでは、何度も何度も失敗したこの捕獲作戦? が、とうとう成功した事に対し、オッタルも表情には出さないが実はかなりの達成感と満足感を味わっていた。だが、それ以上に思う所はある。
「ひょっとして、俺がついてくることが意外だって思ってたりしてる?」
横で歩くルシファーは、オッタルにそう聞いた。
自分が思っていたことをそのまま当てられた形に少々驚いたが、表情には出さない。
因みにルシファーは、オッタルは表情こそは確かに変わらないが、身に纏う雰囲気が変わったのは何となく読める所があるので、聞いてみたのだ。
オッタルは視線を変えずに返答する。
「ああ。お前の事は知っているからな。……あの場でも逃げようと思えば逃げれた筈だと思っている。いや、逃げるとは言わん。正面から堂々と……とも言わせてもらう」
「逃げるのも正面から堂々とってのも今回はつもりは無かったよ。だって、周りにめっちゃ迷惑かけてるんだし。
ルシファーは、軽く首を回し、両手を後頭部へと添える。
このオラリオ最強の冒険者と呼び声高い
最初は、ただただ腹が立っていた。怒りを覚えていた。自分達が崇拝し、心酔し、心より忠誠を誓っているファミリアの主神 フレイヤに特別視されている、寵愛を自分達より受けている事にも憤慨する上に、その自分達の絶対神であるフレイヤに不遜で、不敬な態度をとる男に、血管が破裂しそうな勢いで怒りを覚えた。
オッタルがある程度制止していなければ、街中だろうが何処だろうが、作戦だろうが何だろうが、見つけ次第 即攻撃。闇討ちを仕掛けても不思議じゃない程、ファミリア内で不満が沸き起こっていたのだ。
寵愛を受ける相手が、ファミリア以外にもいる。もう1人いる、と言う事実も、それに拍車をかけていたかもしれない。
……だが、実際今日初めて会って―――対面して、目の前の黒い男を恐れてしまっている自分達が居た。
魔法の力(恐らくだが)で拘束された。あの一瞬で全方位の攻撃を止められた。底知れない闇を、圧力をあのたった一瞬で感じられた。
「色々と原因がオレにもあるし、あんたらにも悪かったって思ってるさ。神様は敬うモノだよなって。逃げるのも ちょっとなって」
「……そこは構わない。フレイヤ様がお前を許している以上、我々がどうこう言う問題ではない。……無論、あのお方がお前を許さぬ、と我々に命ずるのであれば、全身全霊で貴様をやらせてもらう」
――やらせてもらう。
そうオッタルが言った途端、凄まじい威圧感が、覇気が周囲に沸き起こる。まるで竜巻でも起こったのか? と思える程だ。大地が揺れ、建物にヒビが入り、窓は何枚も割れる。
もしも――この場に一般人やまだ駆け出しの冒険者がいたとすれば、多大なる被害を被っていただろう、と思える程。
そんな、ファミリア最強の圧にもどこ吹く風。
「そん時は、ここじゃない別のトコで頼むな。この街は好きなんで。あんまし迷惑かけたくない」
「…………ふん」
「―――ああ……。本当に貴方とお話出来るとは思っても無かったわ」
バベルの最上階。
このオラリオを一望できる最も天に近い場所。
何でも、ファミリア以外でこの場所に来られた者は誰一人として居ないとの事。
その事実だけで、今日以上の嫉妬や怒りをぶつけられそうな気もするが……それは後々対策を考えようか、とルシファーは思う。
「よくやってくれたわ。オッタル。……少し外してもらえるかしら?」
「……構わないのですか? フレイヤ様」
「ええ。私は大丈夫。……ふふ、心配してくれてるのかしら? 彼が私に何かする……と?」
「………………」
妖艶に笑ってみせるフレイヤ。
まさに美の神。美そのものを実体化した姿がこの女神だと言っても過言ではないだろう……と思う。
少なくとも、ここオラリオの街では一番の美しさである、とルシファーも思っていた。
だが、だからと言って色々と言わせっぱなしなのも御免被る。
「失敬な。神様に、それもこんな美人な方に、そんな変な事するわけないでしょうが」
「あら? その美人と二人っきりになれると解ったら……、
「あまり、みなさんを刺激するような事は発言は止めてもらえると助かります。オッタルしかいないとは言え、聞かれたら色々と大変面倒なので」
「ふふふふ。大変、面倒なだけと言うのも凄いわ。やっぱり、貴方は面白い」
オッタルが、ありえなくもない、意に反してでもこの場にはいるべきでは? 等と考え始めているのが手に取るように分かったので、そこはルシファーが一応口を出す。
フレイヤはフレイヤで楽しんでいるのが見え見えだった。
確かに凄まじい美女に誘惑でもされちゃった日には、男として 男をぶつけてみるのが男の性! と言えなくもないが、そもそも、そういうつもりでここへ来た訳でもないから。
「……では。何かあればお呼び下さい」
「ええ。わかったわ」
オッタルは、2人のやり取りを見て、フレイヤが楽しそうにしているのを見て、一先ずは安心だと判断した様だ。出ていく命令に従った。
そして、ついに2人きりの対面を果たすフレイヤ。
「……貴方とこうやってお話するのは初めてね。前々から目はつけていたのだけれど……、随分と時間がかかっちゃったわ」
「時折、視線を感じてましたからね。あ、神様に観られてる、って」
「気付いてるのに、逃げちゃうなんて。貴方も結構いじわるなのね」
「流石にプライバシーってのはありますから。こっちからは見えない相手にずっと見られてるっていうのは、正直嫌だったので」
他愛もない会話を続けていく2人。
何処となく不自然だと言う事はフレイヤは判っていた。無理をしている事にも当然ながら。
ある程度の我を通すだけの力を持ちながら、この場に足を運んだ理由も気になるが、それ以上に聞いてみたい事があった。
「じゃあ、本題に入るわね。……いいかしら?」
「ええ。勿論」
両手を組み、じっ……とルシファーの目を見るフレイヤ。微笑みの絶えない彼の素顔の奥を見る様に、射貫く様に質問をする。
「―――あなたは、何者なのかしら?」
ルシファーの正体。
フレイヤが現在一番気になる所がそこだった。
目の前の彼の存在を知ったのは、ほんの少し前。
妙な胸騒ぎが感じたのは4か月ほど前。
そして、その違和感の正体が、目の前の男が見えたのが、1,2か月前だ。
ベル・クラネルと言う澄んだ魂の持ち主に夢中になりかけた時、実に対照的と言っていい黒の魂を見た。
ベルを自身に相応しい英雄となる様に成長を陰ながら促し、魅入っている間にも、ちらりちらりとその存在が、自分の心の中に住み着いていて離れないのだ。
「ん―――………」
「ひょっとして、秘密、かしら?」
「いや、言っても信じてもらえないかな、と思いまして」
「……! 信じる、と言えば教えてくれると言うことかしら」
「そうですね。構いませんよ」
予想していた答えではない事に少なからずフレイヤは驚いた。
正体については 恐らく話さないだろうと思っていた。秘密にするだろう、と。
だが、この言い方であれば……信じると言えば教えてくれる。勿論、嘘を言う可能性もあるだろうが、真偽に関してはフレイヤは見通す事が出来るので大丈夫だ。
「信じるわ。……本当に面白そう。こんなにワクワクするのは随分久しぶりね」
「期待に添えるかどうかは解りませんがね……」
「いいえ。確信しているわ。貴方はこれまでにない魂の色の持ち主。………とても素敵だもの」
「そうですか。わかりました」
ルシファーはニコッ、と笑うと足と手を組み、膝の部分に組んだ手を乗せていった。
【私は人と竜と神の子――――です】