【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
日本全土に広がっていた暗雲。
皆の心に蓋をする春雨だったが、帝国ホテル前だけが、快晴模様となっていた。
久しぶりに顔を出した太陽に照らされ、ベン=テニスンは振り返る。そこには全身を負傷した爆豪と轟。
時間を稼いでくれた彼らにお礼を言わなければ。その想いから駆け寄ろうとすると、ホテルに影が見える。
よく見ると、ぞろぞろとホテルから出てくる避難民だった。亀のような様相だったり、鋭利な牙が顎から目元まで伸びている者も。
ほとんど全員が、異形だった。
その中の一人が、恐る恐るベンに尋ねる。
「き、君は…」
「ん?ああ、ボクの名前は…まいっか。ベン=テニスン!最強のヒーローだよ!」
「ベン=テニスン?!ってことは…エイリアン…!」
彼の名前を聞くと、平伏し手を合わせる人々。
「うわわわ‥な、なにしてんの?」
「あなたはエイリアンなんですよね。あなたが我々のルーツを教授して下さったおかげで目が覚めたのです…」
その言葉でベンは思い出す。アルビードがベンに化けていた時、エイリアンが存在することを宣言した。そして、異星概観信仰派と呼ばれる、エイリアンの存在を信じ、自由に力を行使する集団が形成された。
(うわっちゃぁ…しかもエイリアンに関していえば間違ってないし…けど)
「あのさ、あれを言ったのはボクじゃないよ。単なる偽物の言葉。エイリアンなんていないよ」
「そのような言葉で誤魔化さずとも…忌々しいことに、この国はあなたを捕らえようとしています。しかし、我々はあなた様を歓迎いたします、テニスン様」
まるで純粋無垢な少年のように、ベンを見つめる男。若干の気味悪さを覚えるベンだったが、受け入れられていること自体は嬉しい。
それこそ、今後自分がトレーディングカードになったりするのではないか。
少しだけ浮かれた時、避難民のなかにいる、10歳ほどの少年が水を差すように
「なにがテニスン様だよ、馬鹿らしい」
その言葉で、全員の視線が少年に集まる。
「何を言ってるんだ君は!」
「我々の在り方を教えてくれた御方だぞ!」
母親と思わしき獣人が少年の口を押え、平謝り。
「すみません!すみません!この子はまだこの状況をわかっていないんです!!」
「やめろよ母さん!だっておかしいじゃん!こいつのおかげで目が覚めたって言ってるけど、逆だよ!家が壊れたのも、お母さんが馬鹿にされたのも…全部こいつが悪いんじゃん!!」
「テニスン様に対して‥!!」
鬼の形相になったリーダー格。今にも手を出しそうな彼をベンは止める。
「ちょちょちょ!ずっとこんな状況だったんだし、気が立つのも仕方ないって!とにかく、ここから離れて。できれば雄英とかシェルターがある場所に」
「は、はい…」
救世主の言葉だからか、彼の言う通り、すごすごと避難を始める。
ベンの頭の中では、
【全部お前のせいだ】
この言葉がループしていた。
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「…カッチャン、トドロキ!ありがと!変身までの時間稼ぎ!」
倒れている2人の元に向かい、礼を言うベン。
あまり己のプライドに頓着の無い轟は、差し出された手を掴む。
「ああ…その喋り方と…顔。やっぱりテニスンなんだな…」
「そう言ってるだろ?」
「…見たことねぇ変身だった。前より断然強ぇ。」
「でしょ!?めちゃくちゃパワー使っちゃうからあんまり使わないんだけど、すごいだろ!どんな敵でも一発さ!でも…まあ?2人のおかげでもあるかな?」
陽気にはしゃぐベン。実はこの戦い以前から、さきほどの分裂変身を訓練していたのだが、どれも失敗していたのだ。
というのも、性格の異なるベン達が連携を合わせることが難しいのだ。自分のはずなのに、考えることがまるで違う為か、狙ったエイリアンに変身するのでさえうまくいかなかった。
中にはベン自身に反旗を翻す者も。
今回は結果オーライだったが、内心ドギマギしていたベンであった。
そんな彼から差し出された手をふり払う、不機嫌な爆豪。
「けっ!所詮俺の爆破の真似事だ!近いうちにぜってぇ追い抜いてやるわ!」
そのセリフから、青年をベンと認めているようだ。
「えー。カッチャンには無理でしょ!」
「ああん!?」
「こんな事態なのに何してるんだ。それにしてもテニスン。お前、この半年間何をしてたんだ?」
「それも今話すことじゃねぇだろが!」
「えっと」
「答えるんじゃねぇ!!」
ベンは爆豪を無視して、神野事変以降の動向を語る。
「敵連合のアジトをじーちゃんたちと脱出したはいいけど、ボク、指名手配犯になってたでしょ?今はこの変身バッジがあるから誤魔化せるけど、その時はなかったし」
そう言って胸元の「10」と書かれたワッペンを指す。どうやらこの装置で体を装っているらしい。
「だから、これができるまでの2か月間はアメリカでヒーローやってたんだ!」
「はぁ?密入国したんか?それに、てめぇは免許なしだろうが」
「あー…その辺は…まあいいじゃん!」
「よかねぇわ!」
ベンの予想に反し、爆豪はモラルある人間らしい。
「それに、アメリカではすっごい人と友達になったんだ!まあ、あっちはエイリアンの方しか知らないけど…」
「で、装置が完成して今の僕の体になった後は世界中を回ってたんだ。あ、世界っていうのは、違う次元のことだよ?いろんな世界で仲間を探してたってわけ」
「じ、次元トラベルだぁ?」
突飛な話に理解が追いつけない爆豪と轟。個性の範疇を超えた者達の旅なので仕方ないのかもしれない。
「まあ、あれもこれもぜーんぶ、アルビードを倒す為だったってわけ。あ!そういえばアルビードは!」
さきほど討ち破ったアルビード。U.ヒューモンガソーから変身が解除されたのは見たが、まだ捕獲していない。
急いで3人で駆け寄ると、そこには目を瞑ったアルビードがいた。
「しかし…こいつとテニスン、そっくりだな。」
その姿は青年のベンと同じ顔、同じ体格をしている。頭髪や服装が反転しているため、完全に一致はしないが、それでも似てる。
「ほんとだよ。半年前は子どものボクの姿まんまだったし、最悪さ。なんでも、これとウォッチが同期してて、ボクが使用者設定になってるから、こいつもこの体になったらしいんだ」
アルビードの手首のアルティマトリックスを指さし、ベンは愚痴る。
「…そういや、お前のそれと似てるな…テニスン。お前一体、なんなんだ?エイリアンじゃないにしろ、この時計にしろ、普通じゃない」
轟の質問にギクリと反応するベン。彼が答えるか悩んでいると、爆豪が横入りする。
「んなことどうでもいいわ。それより…」
その時、アルビードの左手が動く。
彼らが反応する早く、ポケットの装置を起動させ、ボタンを押す。
BEEEEEE!!
予想外の警告音だったが、すぐさま臨戦態勢に入る爆豪ら。
「!?なんだぁ!」
だが、アルビードは変身しない。ふらふらと立ち上がろうとするが、上手くバランスを保てない。意識も曖昧のようだ。
まるで捨て台詞を吐き捨てるように、
「…もう、この国は滅亡するのみ…全て、お前のせいだ」
彼の言葉で頭によぎるのは依然助けた狐型の女性。そして、先ほどの少年。
言葉がよどむ。
「どう…いう…ことだ」
ベンの質問に答えることなく、アルビードは倒れる。脈があることを確かめながら、轟は呟く。
「負け惜しみか?」
「いいや。さっきクソみてぇなボタンを押しやがった。なにか、あるにちがいねぇ」
彼らの反応に同意し、すぐさま行動に移すベン。
「確かに。すぐさまこの世界が崩壊しないと見るに、次元破壊爆弾とかでもなさそう。ボク、見てくる」
「見てくるって‥どこを」
「全部!」
QBANN!!
「ジェットレイ!!」
赤く、人間大の蝙蝠が爆豪らの前に現れる。
エイリアンは甲高い声で、彼らに伝える。
「アルビードの確保はお願いね!じゃ!」
見えないスピードでその場を離脱するジェットレイ。
彼の狙いは、超スピードによる、日本縦断だった。
世界の崩壊が、近づいていた。
完全に明るい展開は前回やったので、今回は少し暗め?
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章