【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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アップデート!誰のことだろう!


104話 アップデート

ぼんやりとだが覚えている。小さな庭の一軒家。

老夫婦と、父と、お母さん。ハナちゃんにモンちゃん…

 

「…?思い出せない…思い出せないのに…!!」

 

フツフツと、グツグツと、ただ、怒りだけが煮えたぎる。

「お前たちの、自分が正しいと信じてやまないその顔が…嫌いだ!!!!」

激昂する死柄木。ベンの説得むなしく、戦闘態勢をとる。

 

【分裂】×【増殖】×【金剛】×【膂力増強】

 

彼の細腕は分裂を繰り返し、さらに体の側面から生え続ける。幾百本にもなるその腕を、【金剛】により一まとめに。一塊となった腕は、鋼鉄よりも硬い豪腕となる。

 

「お前らも!この世界も!」

 

血走る目を見て、ベンは急いでヒューモンガソーに変身する。

 

QWANN

 

死柄木は、ベンが変身したことにも気づいていない。それは、冷静さを失っているから、だけではない。

今の自分が負けるわけない。そう思い込んでいるから。

 

GAUNNN!!

 

と打ち合う拳。

 

死柄木の身体能力は脳無以上。個性もエイリアンの領域まで到達している。

 

対するは銀河でも指折りの膂力を有する、ヒューモンガソー。

 

まさに、頂点の力比べだったが、拮抗の末、勝利の女神は死柄木に微笑む。

限界を超えた複数個性使いに、ベンは仰け反らされる。

 

「ぜんぶ…ぶっ壊す!」

 

ベンが吹き飛んだ分空いた間合いを、即座に詰める死柄木。またも拳を握る。

 

しかし、そのパンチは先とは異なる。

 

さきほどまでの超重量に加え、【崩壊】を乗せる。

 

「この戦いは…どっちかが、消えるまで終わらないんだよ!!」

 

ガチン!と、掌が触れ、【崩壊】が発動する。触れた物全てを崩れ壊す、災いが如き個性。

 

「…あ?」

 

しかし、手ごたえが無い。いや、あるのだが、一向に目の前の恐竜は壊れない。

 

見ると、彼の体には紅色のバリアが薄く、なおかつ何十層も張られていた。バリンバリンと次々に破壊されては、無限に復活するバリア。

 

そのため、後数センチでベンに届くのだが、その一寸が届かない。

 

崩壊と再生を繰り返す薄紅色の膜はベンを守る。その出どころは、後ろに構えている赤みがかった髪の女(グウェン)だ。

 

彼女に気を取られた死柄木。その隙を逃さず。ベンは死柄木を上から押さえつける。彼の体はグウェンが保護しているため、心おきなく肉弾戦に移行できたのだ。

 

力比べは拮抗する。が、複数個性発動に神経を使う死柄木に、この拮抗状態は喜ばしいものではない。

 

「っぐ…」

 

自身の怒りを飲み込むほどの、敵の圧力。さしもの死柄木も不利を悟り、跳躍でこの場を離れんとする。

 

が、

 

GRUUUPP!

 

踏みしめるはずの大地はなぜかドロドロにぬかるんでいた。

 

今度は、少し離れたところから、カンフー胴着の女がなにか叫んでいた。

 

「スワンプ=ドロー=マッドネス!」

少し離れて、拳藤が地面に触れていた。彼女の手から、オレンジ色のオーラが地面に注がれ、辺り一帯を沼地に変えていた。

 

「…なんだよ。クソ個性が…!!」

 

悪態をつく死柄木を、そのまま地面に溺れさせようと、ベンは押し込む。

 

「ぬぉぉぉぉ!!!!」

 

踏ん張ろうにも、足場がない。触れているのに【崩壊】は意味をなさない。

ベンを起点としたコンビネーションに、彼は昂る。

 

「…うざいんだよ…!!チマチマちまちま!!」

 

叫びながら、怒りをぶつけるように、拳を地面に振るう。超人的パワーを持つ彼の拳は、触れずとも泥沼を全て吹き飛ばす。さらに、その反動で彼の体は再び上空へと回避。

 

「っはぁッ、はぁっ…!!?」

 

下にいる蟻たちを眺めようとしたとき、

 

GUOONN!!

 

鉄塊が眼前に迫ってくる。体を仰け反らせ、寸でのところで回避。

ヒューモンガソーの投擲なのだろう。彼のパワーを考えると、大きなダメージを負っていたかもしれない。

 

眼下ではヒューモンガソーが舌打ちしている。その様子を見て、少しだけ落ち着きを取り戻す死柄木。

 

「ははは。おまえじゃ、ここまで届かないだろ?じゃあ…喰らえ!!」

 

BWAANN!

 

死柄木の腕が膨張する。

【空気を押し出す】【火炎】【加圧】。さらに増強系の個性を発動。それだけではない。多数の個性に加え、オールマイト並みの腕力を乗せる。

 

大地を削る暴炎を、ただ1人をめがけて放

 

DONN!!

 

「…っが」

 

とうとしたとき、首元に強い衝撃が。

 

この空中で、急に、なぜ?

 

困惑する死柄木が振り返れば、ケビンが両こぶしを握り、振り終えた後だった。

 

「てめぇが…どうやって…」

 

「あのバカが投げてくれたからなぁ!さぁ、一緒に堕ちようぜ!!」

 

ガシッ

 

さきほど死柄木が鉄塊だと思っていたのは、ベンが投げたケビンだったのだ。全身に鉄を纏ったケビンは、ベンの弾となり、死柄木に一撃を決めた。

 

常人ならば頸椎損傷の打撃だったが、死柄木の持つ【超再生】の前には、一瞬の隙を作る程度のものだ。

 

しかし、その一瞬でケビンは敵に組み付き、離さない。空中で固められた死柄木は、姿勢制御もままならず、そのまま不安定な体勢で地面へと

 

DGAAAAAA!!!!

 

激突。

 

「ぐっ…!?」

 

【硬質化】【金属化】で体を重く、硬くしたため、大したダメージにはなっていない。だが、その個性の弊害で、動きは先ほどより緩慢に。

 

その隙を見計らったように、

 

FFODDD!!

 

拳藤とグウェンが魔術で拘束する。

 

「「グラヴィティ・アウト・カラミティ!!」」

指定範囲の重力をコントロールする高等魔法。エネルギー効率が悪く、あまり長く使えない術だが、その甲斐あってか死柄木の拘束に成功する。

 

死柄木は急いで【金属化】の個性を解除しようとする。

 

だが、動きを止め、クレーターにうずくまる死柄木に加えられるのは、

 

「うぉぉぉ!!!」

 

 

PANCHI!! PANCHI!!PANCHI!!

PANCHI!!PANCHI!!PANCHI!!

宇宙でも指折りの巨大種族、ヒューモンガソーの連続パンチ。

 

上限値まで巨大化したヒューモンガソー。そんな彼の攻撃は、一発一発が必殺。

さらに、手骨がメリケンサック代わりとなる彼のパンチは、さすがの死柄木でも堪えていた。

 

潰れ、千切れ、壊れる体。

拳が振るわれるごとに再生する死柄木。

 

だが、

 

(…【超再生】が間に合ってない!?こんな、ただのパンチで…!)

 

超再生に集中しなければすぐに崩れ落ちてしまいそうな体。ゆえに、個性を放出して逃げることも難しい。【崩壊】させようにも、自分の体周りに薄紅色のバリアが何十層に広げられており、敵に届かせることは不可能。

 

重力の磁場が解け、やっとのことで抜け出せた死柄木。

だが、彼の体は全身にヒビが入り、まるで継ぎはぎ人形。

その異常な損傷は、ベン達の攻撃に加え、体が完成していないことを示す。

 

だが、そのことを知らない死柄木は血を吐きながら憤る。

 

「俺が…俺が…なんでだ、なんでだぁぁぁっぁぁ!!!」

効率よくオムニトリックスを使用し、適切な変身を選択するベン。

 

死柄木の最も恐ろしい崩壊を、【マナ顕現】で防ぐグウェン。

 

後方にいるときは魔法術、敵が近づいたときには【大拳】で応戦する拳藤。

 

グウェンに守られつつも、勇ましく特攻するケビン。

 

拳藤とグウェンは互いの魔術を知り尽くしている。頭脳明晰な彼女らは、どの場面でどんな魔法を使うかが、完全に一致していた。

 

ケビンとベンは、互いに戦闘を重ねた経験から、不本意ながら攻撃と回避のタイミングをお互いに図ることができた。

 

そして、全員がベンのことを良く知っている。

必然的に彼らは、ベンを中心として、最高最適に機能するチームとなっていた。

 

対するは、孤独に戦う死柄木。彼にも協力者はいた。あの手術を受けたのも、ドクターやアルビードが、そしてなにより先生がいたからだ。

 

だが、もう彼の近くには誰もいない。

 

4対1という構図。

地獄の苦しみを越えて得た力。

それをもってしても劣勢な自分。

 

全てにいら立ち、憤怒する死柄木。

 

(おれは…俺は…全部ぶっこわさなきゃいけないのに…!!なんで!!)

 

幾多もの、幾種類もの攻撃を受け、体はもうボロボロ。

【超再生】が追い付かず、体の亀裂は今にも彼を分裂させんとす。

いや、【超再生】の効きが悪いわけではない。体に何度もマナが侵入してきているのだ。

 

敵の内部に侵入し、その機能を劣化させるグウェンの奥の手。自身の体すら理解していない死柄木は、これを対処する術を持たない。

 

心まで壊れそうな死柄木に対し、ベンは変身を解いて、そっと近寄る。

甘い彼が不意打ちを食らわないように、ケビンはさり気なく横に立つ。

 

「…なぁ、シガラキ。お前も、その…変われると思うよ?ほら、ケビンだって、ちょっとだけマシにはなったし」

 

「誰がだ。俺は始めから終わりまで悪どい敵だっての」

 

手を差し伸べるベン。この構図に、隣のケビンはなんとなく既視感を覚える。

 

(どっかで、なんかこんなこと…)

 

死柄木には、もう彼らの声は聞こえていない。ただ、体が壊れないように踏ん張るので精いっぱいだ。

 

「こんな…ところで、終われるか…」

 

そして、最後の声を振り絞った時、

 

彼の中の人が囁く。

 

(どうした弔。すぐそこにあるだろう?もう50%が)

 

おさらいすると、死柄木は予定よりも半年早く起きた。つまり、彼の体はまだ50%しか完成していない。

 

そう、もう半分の【後天エイリアンDNA手術】は、定着率0%なのだ。

 

そのことに誰も気づいていなかった。

 

死柄木さえも。

だが、彼の中の人は気づいていた。

 

「誰…だ…なんだ…いや、この声は…)

 

(貸してごらん?)

 

ああ、やさしい、優しい声だ…

 

過去を持たない(死柄木)は、確固たる意志を持たない青年(志村転孤)は、原点(オリジン)を知らない死柄木は、その身を預けてしまう。

さきほどまで震えていた死柄木が、突然動きを止める。

それを正面から見ていたのはベン。

 

「ちょ、死んで…」

 

彼が一瞬、案じたそのタイミングで

 

死柄木、いや、だれかわからない者が、手を伸ばす。

 

ベンの伸ばした左腕へ。

 

ケビンは思い出す。

この構図は、福岡で、自分が初めてベンと敵対した時と同じだと。

 

「ベン!!いますぐ退っ」

 

死柄木の手がウォッチに触れる。

 

「レビン君。この個性は、とても優秀だ。これからも重宝しそうだよ」

 

誰かが、ケビンを称賛する。と同時に、

オムニトリックスからは緑色のプラズマが発生する。

 

殻木の研究により、敵連合は個性のコピーが可能となっていた。その数には制限があり、2倍やワープなど、希少個性がその対象だった。

 

そしてもちろん、元敵連合であり、希少であるケビンの個性も、その対象だった。

 

個性【AFO】では、エイリアンの力を奪うことはできない。

 

だが、

 

「【吸収】。とてもいい個性じゃないか」

 

AFOは笑った。

 

 

 

 

 

 

 




・正真正銘、ラスボスです!
・このAFO(個性の先祖返り×オムニトリックス吸収)の名前、何にしよう…いいアイデアがあればぜひ感想で!!

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章

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