【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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そこそこ最悪なタイトルですね(笑)


105話 元凶

酷く閉ざされた世界だ。

 

世界は闇に包まれ、耳に入るのはザラザラとした砂あらし。存在するのは、自分が立っている、今にも割れそうな地面のみ

 

「ここは…」

 

「やあ、久しぶりだね。」

 

戸惑うベンに挨拶したのは能面の男。初めて拝む顔だったが、そのスーツ姿と陰湿な声にはかすかに覚えがあった。

 

「…敵連合の!!」

 

「半年ぶりかな?いやぁ…まさかこんなところで会うなんてね」

 

「ここはどこなんだよ!ボクの体だって元に戻ってるし!」

 

彼の姿は青年期のものではなく、10歳の頃に戻っていた。これは、この世界が現実世界とは乖離していることを示す。

 

荒れ果てた戦場から無の世界に移動したベンとAFO。

AFOは質問に答えるように手を広げる。

 

「ここは、いわば個性の中さ」

 

「個性の中…?」

 

「そう。個性に干渉する僕の【個性(AFO)】を弔が取り込んだ結果、僕という人格が再構成されたのさ。君は、臓器に意思が宿るという話を知っているかい?」

 

臓器移植を受けたもの、特に脳移植などでは、被術者の性格が手術前後で変化することがある。これは、移植された脳にドナーの意志が反映されているのではないかと言われている。

 

そして、他人の個性を奪い、他者に個性を与える【AFO】という個性。その性質故に、個性そのものに彼の意志が宿ったのだと推測される。

 

「本来、この世界に来れる人間は限られているんだ。だけど、その装置は【個性】の由来であるエイリアンに深く関係している。だからこそ君は、ここに来れたんだろうねぇ」

 

「いや、ボクを触ったのはお前じゃなくて…あれ、シガラキは…?」

 

「まあいいじゃないか。それより、ベン=テニスン君。君は本当にすごいね」

 

話題を切り替えたかと思えば急な称賛。

思わず声を漏らすベン。

 

「へ?」

 

「君に触れたことで、ある程度君の過去が伝わってきたよ。君は実に勇敢だ。」

 

ゆっくりと、偉大なる戦士を褒めるAFO。

 

「…へへ」

 

「勇敢で、正義感に溢れ、そして、」

 

ニコリと笑って、AFOは言葉を放る。

 

「実に無能だ」

 

「…なに?」

 

「君はオムニトリックスという、強大な力を使って正義を全うしている。そのことはドクターやアルビード君から聞いていたんだよ」

 

能面の顔にくっついている口は、次々とその想いを綴る。

 

「どれだけ才能を以てして、君は選ばれたんだろう。どんな優秀な人間が平和を導こうとしているのだろう。僕は気になって夜も眠れなかったさ。だって僕の夢の最大の障壁になるかもしれないのだから。だけど、君の半生を見て、あっけにとられたよ。」

 

彼は、ベンを指さし、

 

「まさか、君がここにいるのは、ただの偶然だなんてね」

 

ベンが思い出すのはあの日。祖父のマックスに届けられようとしたウォッチ。ほんの少し、軌道がずれたことでウォッチを手にしたのは自分だった。

 

彼の言う通り、今ベンがここに立っているのは、ただの偶然。ほんの少し、グウェンよりも先に見つけたから。それだけに過ぎない。

 

だが、

 

「だからなんだよ!ボクはとっくにアズマスに認められてる!ボクはヒーローとして一人前…」

 

「本当にそう思うかい?」

 

ベンの言葉を遮るとともに、指を鳴らす。すると、空間が歪み、そこには数枚の画像が浮かぶ。

 

それは、病院と、壊れ果てた建造物と、怪物化した緑谷だった。

 

「オールマイトは床に臥せ、社会は崩壊し、親友はエイリアンに成り果てた。」

 

(確かに…イズクは体を…)

「だけどそれはボクが治し…」

 

歪み始めたベンの顔を確認すると、AFOはDNAリアンを映し出す。

 

「それだけじゃない。君がいたから、守るべき大勢の人間は、DNAリアンに変貌させられた。」

 

「ち、ちが」

 

「いいや、違わない。もし君じゃなくて、例えば緑谷出久がそれを手に入れていたならば、今頃敵連合は大人しく牢獄にいただろうねぇ。それに、アルビード君の侵略もないはずだ。誰も、傷つかない。万事解決、平穏安泰な世の中になっていただろうねぇ」

 

その時、帝国ホテルで救けた少年の言葉を思い出す。

【全部、お前のせいだ】という、鉛の様な重い言葉を。

 

3か月前、異形の女性を助けた。自分はヒーローとして当然のことをしたはずだ。だが、あの女性があんな目にあったのは、もしかしたら自分のせいかもしれない。

 

もし自分がいなかったら。そんな世界線は知らない。多くの宇宙を見てきたが、そんな世界は無かった。

 

だからこそ考えてしまう。

 

【もし自分がいなかったら。】

 

彼の言葉に耳を貸すな。本能がそう叫ぶが、彼の体は動かない。なぜならば、彼の言葉は多少なりとも、心の中に芽吹いていたものだったから。

 

ベンの動揺を引き出したAFOは、喉をクックと鳴らした後、声色をさらに優しく変える。

 

「とはいえ、僕は君に感謝しているんだぜ?」

 

これまでの侮蔑的態度とは打って変わって、感謝を表明するAFO。

最後の言葉を残して、彼は闇の中に消えていく。

 

「…え?」

 

「君のおかげで、僕は…」

「ベン!大丈夫!?ベン!」

 

「…ッ」

 

瞼を開くと、そこには拳藤がいた。傍らにはケビンやグウェンもいる。

 

「急に変身解いて気を失ったから…心配したよ」

 

「ウップ…大丈夫。ハァッ、それより、ハッ、シガラキは?」

 

ベンの容体が明らかにおかしい。衰弱したように、息は切れ、目元に隈までできている。この一瞬で何が起きたのか。

 

心配する拳藤をよそに、グウェンがベンの質問に答える。

 

「あそこ…あんたと一緒で…急に静かに…ッ!?」

 

ZUGOOOOOOO!!

 

彼女が言い切る前に、地鳴りが起こる。

大気は震え、砂ぼこりが舞い始める。

 

それは、何かの厄災を暗示していた。

 

一連の震源は、俯いた、白髪の男。

 

「さっきの続きさ」

 

死柄木の体の中から、マグマが煮えたぎる音がする。

グツグツ、ドロドロと。

それは彼の体が急速に変化していることを表す。

 

「僕は本当に君に感謝しているんだぜ?」

 

BOGO!

 

右腕が膨れ上がり、みるみる硬化していく。青く蝶のような羽が生え、腕は脇腹から無数の腕が追加される。

 

尾骨の部分にはプラグが、両足にはそれぞれ小さな車輪や炎が。

 

左腕部は関節が無くなり触手のように撓る。わき腹から生えた腕には赤い体毛と磁力を発する蟹手。背中の羽からは常に怪音波と冷気を垂れ流す。

 

 

唯一、変化しなかったのは白き頭髪のみ。

死柄木の顔のはずなのに、彼の面影は消え、悪の帝王がそこに君臨していた。

 

「僕を魔王にしてくれて、ありがとう。」

 

歪なAFOを目にし、真っ先に驚いたのはグウェンと拳藤。

「あいつ…オムニトリックスを吸収したの!?」

「そんなのまるで…」

 

驚く彼らに対し、ケビンは渋い顔で答える。

 

「俺じゃねぇかよ…」

 

10タイプのエイリアンと融合していたケビン。あのときの、力を、忘れたわけではない。無尽蔵に溢れる活力と憎悪。

 

その脅威は理解している。

 

尻込みしている彼らの中で、唯一ベンが立ち上がる。

 

「ハァッ、ハァッ…って…ことは…所詮ボク1人の力ってことだろ?」

 

鈍る体を無理やり動かして、ベンは変身する。

 

QWANN!!

 

万能さを考え、スワンプファイヤーへ。種子爆弾を投擲しつつ、炎で牽制。

 

状況に適した攻撃を放った彼は、

 

DOWUUUUNN!!

 

「ッぁぁぁぁぁああ!!?」

触れる間もなく、なにかで吹き飛ばされる。

 

手首をコキリと鳴らしながら、AFOは先のケビンの発言に対し不満を漏らす。

 

「うーん…すこし違うかなぁ。レビン君は、この力を10分の1しか発揮できなかったろう?それはなぜか。ひとえに、体が個性に追いついていなかったからさ。」

 

全てのモノを「吸収」できる個性。エイリアンに近いその力に、人間であるケビンは振り回されていた。

 

「ただ、僕は違う。」

 

オールマイト並みの身体能力と数多の個性を操る技量。これら2つが噛み合うことで、多種多様なエイリアンの力を余すことなく使いこなせる。

 

「個性遡及手術と後天DNAとの融合。これで、100%さ」

 

AFOの所有していた幾多もの個性はエイリアン並に強化されている。

そして、オムニトリックスから吸収したエイリアンたちの力も、彼は引き出せる。

 

膂力も、捕捉力も、知力も、火力も、適応力も、

全てが完全上位の存在。

 

【フルマスターピース】となったAFO・Omnireversionはニタリと笑う。

 

「まずは…【崩壊】に邪魔な、君だね」

 

瞬きの合間に、彼はグウェンの前へ移動していた。

 

《ダイヤモンドヘッド》

      ×

【回転】【振動】【衝撃集中】【膂力増強】

 

多数の個性と後天性のDNAをあわせ、グウェンを屠る。

 

ZUSYHAA!

 

が、

 

「ッぐふっ…」

 

腕を交差して受け止めたのはケビン。隣にいたグウェンを守らんと、その身を盾に。なんとか、グウェンに攻撃が行くことを阻止したのだ。

 

軽い腕慣らしとはいえ、自分の一撃を止めたことに驚くAFO。

 

「ほぉ…咄嗟に僕の体を吸収して耐えたか…それでも…」

 

ダイヤモンドヘッドの性質を映し、咄嗟に硬化したケビン。これにより死は回避できた。が、敵の攻撃は両腕を貫通し、腹を抉っていた。

 

ドロドロと血を流すケビンを、まるでごみでも捨てるかのように放り投げる。

 

「もう戦えないね」

 

「ケビン!…よくも!!」

 

ベンとケビンの負傷。その事実に彼女は冷静に激昂し、思考を巡らせ、

 

(ベンが戻るまで、少しでも時間を!)

 

現時点の個性限界点を解放する。

 

「はぁぁぁぁぁあ!!」

 

オレンジ色の髪はピンク色に発光し、体内からは無限にマナが溢れる。それだけではない。自然物から、そして目の前のAFOからもマナを吸収し、可能な限り己を強化する。

 

さらに、高難易度の魔術。

 

「グラヴィティ・アウト・カラミティ!!!!」

 

重力魔法と極超過マナの同時行使。

 

高い集中力を要する代わり、擬似的に極硬の檻を作り出す。薄紅色の拘束具で敵を縛り、重力の何倍もの過負荷をかける。

 

何人たりとも指一本動かすことも叶わない。何人たりともこの檻は壊せない。

 

が、

 

「はは、面白いぁ。個性じゃない、超常なんて。」

 

《フォーアームズ》

    ×

【崩壊】【巨大化】

 

敵は既に人間ではない。

 

巨大化した4腕、それぞれが檻を崩壊させる。その破壊に満ちた腕がグウェンに伸びたとき、

 

「クリエイト=スパイク=パワード!」

 

【大拳】に、魔法で腕力、硬化、棘を付与する拳藤。グウェン同様、個性と魔術の同時行使で敵をノックアウトしようと試みる。

 

ただ、彼女の力では、

 

「勝てない相手とも戦わなきゃならないなんて、本当にヒーローは不憫だ」

ただ立っているだけのAFOに、ダメージ一つ通らない。

 

逆に彼が撫でるように肩に触れるだけで、彼女は肩から肘までが砕ける。

 

「あ”ッ!?」

 

右腕で肩を押さえる拳藤。膝をつき、死を覚悟する。

 

そんな彼女の首元を掴み、AFOは持ち上げる。まるで、今から殺すぞ、とでも言いたげな体勢。

 

そのアピールはベンに届く。

 

DWOONN!

 

遠くからジャンプしてきたのはヒューモンガソー。

 

「やめろ!!」

 

彼が戻ってくるのを待っていたかのように、AFOは語り掛ける。

 

「従妹も、友達も、君を想ってくれる人も、皆君のせいで死んでしまう。どうだい?今の心境は。」

 

「ぐ…」

 

拳藤を人質に取られて、身動きが取れない。そうでなくとも、力比べで勝てるかどうかもわからない。それほど強大な力を敵は有している。

 

(ウェイビッグに…いや、そもそもあの手をどうにかしないとバラバラにされる…なら…)

 

打開策は…

一つだけ。

 

だが、

(時間が…かかる。そもそも本当にこれでいいのか?ボクが考えた方法で合ってるのか?)

 

さきほどの会話が今になって彼を追い詰める。

決断することへの恐怖。

子どもながらも、鋼のメンタルを持つベンには久しくなかった弱気。

 

それは、自分のせいで誰かが傷ついたという事実からくるものだった。

 

少年の一途な正義の心に、毒を盛るかのように付け入る魔王。

 

「ところで、提案があるんだ。君のその、悪夢の元凶である装置を僕にくれないかい?」

 

拳藤は捕まりながらも、抵抗する。肩の激痛を押し殺し、必死にベンを止める。

 

「…ベン!駄目!ベンッ!!!ガッ!?!」

 

「オムニトリックスを…」

 

「そうだ。全ては()()が原因なんだ。」

 

優しく、諭すようにベンに語り掛けるAFO。それはまるで教師のようだった。

 

「本当はね、君は悪くないんだよ。ただ、()()()それを手にしたせいで、こんな惨劇を引き起こしてしまっただけなんだ。大丈夫。」

 

「君は悪くない」

 

畳みかけるAFO。

 

いつもベンを励ましていた拳藤。言葉をかけようにも、喉を押さえられ呼吸すら困難。

いつもならベンに火を付けてくれるグウェンも、瓦礫の下で気絶している。

 

「もし、君が渡してくれれば、今までのことを全て水に流そうじゃないか」

 

おおらかに休戦を申し出るAFO。

 

ベンは理解している。たとえ、ウォッチを預けたとしても、彼は自分を殺すだろう。それほど、敵の悪意は確たるものだ。

 

だが、

 

それでも、

 

拳藤が、皆が救かる確率は、1%上がるかもしれない。

 

それに

 

「ボクのせいで…」

 

よぎった諦観が、【全て自分のせいだ】という罪悪感が、体を埋め尽くす。

 

そして、

 

カシャン、

 

という音とともに、オムニトリックスが彼の腕から外れる。

ベンは初めて、自分の意思でウォッチを切り離した。

 

「…本当に、皆に手を出さないんだな?」

 

「本当さ。僕は、隠し事はするが嘘はつかないんだぜ?」

 

ニタニタと笑いながら、嘘ぶくAFO。

 

嘯く彼を、睨み、俯き、歯を食いしばりながら、

 

FWOON

 

ベンはウォッチを放り投げる。

 

宙を舞う宝物。

 

それを見るなり、AFOは拳藤を宙へ放り投げる。

 

その目にはもう、拳藤も、ベンも、なにも映っていない。ただ、クルリと宙を回転するウォッチのみが眼中にある。

 

(これさえあれば、もう地球を支配するのだって容易だ!OFAだって目じゃない。それに、それだけじゃない。最高のゲーム(最悪の地獄)だって思うがままだ!!)

 

彼に似合わず、夢を膨らませ、注意を怠ったそのとき、

 

時計は、空中から流れてきた緑の閃光が手にする。

 

そして、その閃光は、AFOを蹴りつける。

 

SMAAAAASSH!!!

 

理外のパワーに何百メートルも地面を抉りながら後退するAFO。

 

彼が立っていた場所には、一人の少年が立っていた。

 

明るい笑顔で、皆を救う、最高の親友が。

 

もう大丈夫

なぜって?

 

「僕が来た!!」

 

 




・AFOが「例えば緑谷出久なら…」と緑谷を褒めていますが、これはベンのメンタルをより揺さぶるためであって、心の中では2人とも同じくらい軽蔑しています。
・ヒーローを救けるのはヒーローなんですね

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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