【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
酷く閉ざされた世界だ。
世界は闇に包まれ、耳に入るのはザラザラとした砂あらし。存在するのは、自分が立っている、今にも割れそうな地面のみ
「ここは…」
「やあ、久しぶりだね。」
戸惑うベンに挨拶したのは能面の男。初めて拝む顔だったが、そのスーツ姿と陰湿な声にはかすかに覚えがあった。
「…敵連合の!!」
「半年ぶりかな?いやぁ…まさかこんなところで会うなんてね」
「ここはどこなんだよ!ボクの体だって元に戻ってるし!」
彼の姿は青年期のものではなく、10歳の頃に戻っていた。これは、この世界が現実世界とは乖離していることを示す。
荒れ果てた戦場から無の世界に移動したベンとAFO。
AFOは質問に答えるように手を広げる。
「ここは、いわば個性の中さ」
「個性の中…?」
「そう。個性に干渉する僕の【
臓器移植を受けたもの、特に脳移植などでは、被術者の性格が手術前後で変化することがある。これは、移植された脳にドナーの意志が反映されているのではないかと言われている。
そして、他人の個性を奪い、他者に個性を与える【AFO】という個性。その性質故に、個性そのものに彼の意志が宿ったのだと推測される。
「本来、この世界に来れる人間は限られているんだ。だけど、その装置は【個性】の由来であるエイリアンに深く関係している。だからこそ君は、ここに来れたんだろうねぇ」
「いや、ボクを触ったのはお前じゃなくて…あれ、シガラキは…?」
「まあいいじゃないか。それより、ベン=テニスン君。君は本当にすごいね」
話題を切り替えたかと思えば急な称賛。
思わず声を漏らすベン。
「へ?」
「君に触れたことで、ある程度君の過去が伝わってきたよ。君は実に勇敢だ。」
ゆっくりと、偉大なる戦士を褒めるAFO。
「…へへ」
「勇敢で、正義感に溢れ、そして、」
ニコリと笑って、AFOは言葉を放る。
「実に無能だ」
「…なに?」
「君はオムニトリックスという、強大な力を使って正義を全うしている。そのことはドクターやアルビード君から聞いていたんだよ」
能面の顔にくっついている口は、次々とその想いを綴る。
「どれだけ才能を以てして、君は選ばれたんだろう。どんな優秀な人間が平和を導こうとしているのだろう。僕は気になって夜も眠れなかったさ。だって僕の夢の最大の障壁になるかもしれないのだから。だけど、君の半生を見て、あっけにとられたよ。」
彼は、ベンを指さし、
「まさか、君がここにいるのは、ただの偶然だなんてね」
ベンが思い出すのはあの日。祖父のマックスに届けられようとしたウォッチ。ほんの少し、軌道がずれたことでウォッチを手にしたのは自分だった。
彼の言う通り、今ベンがここに立っているのは、ただの偶然。ほんの少し、グウェンよりも先に見つけたから。それだけに過ぎない。
だが、
「だからなんだよ!ボクはとっくにアズマスに認められてる!ボクはヒーローとして一人前…」
「本当にそう思うかい?」
ベンの言葉を遮るとともに、指を鳴らす。すると、空間が歪み、そこには数枚の画像が浮かぶ。
それは、病院と、壊れ果てた建造物と、怪物化した緑谷だった。
「オールマイトは床に臥せ、社会は崩壊し、親友はエイリアンに成り果てた。」
(確かに…イズクは体を…)
「だけどそれはボクが治し…」
歪み始めたベンの顔を確認すると、AFOはDNAリアンを映し出す。
「それだけじゃない。君がいたから、守るべき大勢の人間は、DNAリアンに変貌させられた。」
「ち、ちが」
「いいや、違わない。もし君じゃなくて、例えば緑谷出久がそれを手に入れていたならば、今頃敵連合は大人しく牢獄にいただろうねぇ。それに、アルビード君の侵略もないはずだ。誰も、傷つかない。万事解決、平穏安泰な世の中になっていただろうねぇ」
その時、帝国ホテルで救けた少年の言葉を思い出す。
【全部、お前のせいだ】という、鉛の様な重い言葉を。
3か月前、異形の女性を助けた。自分はヒーローとして当然のことをしたはずだ。だが、あの女性があんな目にあったのは、もしかしたら自分のせいかもしれない。
もし自分がいなかったら。そんな世界線は知らない。多くの宇宙を見てきたが、そんな世界は無かった。
だからこそ考えてしまう。
【もし自分がいなかったら。】
彼の言葉に耳を貸すな。本能がそう叫ぶが、彼の体は動かない。なぜならば、彼の言葉は多少なりとも、心の中に芽吹いていたものだったから。
ベンの動揺を引き出したAFOは、喉をクックと鳴らした後、声色をさらに優しく変える。
「とはいえ、僕は君に感謝しているんだぜ?」
これまでの侮蔑的態度とは打って変わって、感謝を表明するAFO。
最後の言葉を残して、彼は闇の中に消えていく。
「…え?」
「君のおかげで、僕は…」
・
・
・
「ベン!大丈夫!?ベン!」
「…ッ」
瞼を開くと、そこには拳藤がいた。傍らにはケビンやグウェンもいる。
「急に変身解いて気を失ったから…心配したよ」
「ウップ…大丈夫。ハァッ、それより、ハッ、シガラキは?」
ベンの容体が明らかにおかしい。衰弱したように、息は切れ、目元に隈までできている。この一瞬で何が起きたのか。
心配する拳藤をよそに、グウェンがベンの質問に答える。
「あそこ…あんたと一緒で…急に静かに…ッ!?」
ZUGOOOOOOO!!
彼女が言い切る前に、地鳴りが起こる。
大気は震え、砂ぼこりが舞い始める。
それは、何かの厄災を暗示していた。
一連の震源は、俯いた、白髪の男。
「さっきの続きさ」
死柄木の体の中から、マグマが煮えたぎる音がする。
グツグツ、ドロドロと。
それは彼の体が急速に変化していることを表す。
「僕は本当に君に感謝しているんだぜ?」
BOGO!
右腕が膨れ上がり、みるみる硬化していく。青く蝶のような羽が生え、腕は脇腹から無数の腕が追加される。
尾骨の部分にはプラグが、両足にはそれぞれ小さな車輪や炎が。
左腕部は関節が無くなり触手のように撓る。わき腹から生えた腕には赤い体毛と磁力を発する蟹手。背中の羽からは常に怪音波と冷気を垂れ流す。
唯一、変化しなかったのは白き頭髪のみ。
死柄木の顔のはずなのに、彼の面影は消え、悪の帝王がそこに君臨していた。
「僕を魔王にしてくれて、ありがとう。」
・
・
・
歪なAFOを目にし、真っ先に驚いたのはグウェンと拳藤。
「あいつ…オムニトリックスを吸収したの!?」
「そんなのまるで…」
驚く彼らに対し、ケビンは渋い顔で答える。
「俺じゃねぇかよ…」
10タイプのエイリアンと融合していたケビン。あのときの、力を、忘れたわけではない。無尽蔵に溢れる活力と憎悪。
その脅威は理解している。
尻込みしている彼らの中で、唯一ベンが立ち上がる。
「ハァッ、ハァッ…って…ことは…所詮ボク1人の力ってことだろ?」
鈍る体を無理やり動かして、ベンは変身する。
QWANN!!
万能さを考え、スワンプファイヤーへ。種子爆弾を投擲しつつ、炎で牽制。
状況に適した攻撃を放った彼は、
DOWUUUUNN!!
「ッぁぁぁぁぁああ!!?」
触れる間もなく、なにかで吹き飛ばされる。
手首をコキリと鳴らしながら、AFOは先のケビンの発言に対し不満を漏らす。
「うーん…すこし違うかなぁ。レビン君は、この力を10分の1しか発揮できなかったろう?それはなぜか。ひとえに、体が個性に追いついていなかったからさ。」
全てのモノを「吸収」できる個性。エイリアンに近いその力に、人間であるケビンは振り回されていた。
「ただ、僕は違う。」
オールマイト並みの身体能力と数多の個性を操る技量。これら2つが噛み合うことで、多種多様なエイリアンの力を余すことなく使いこなせる。
「個性遡及手術と後天DNAとの融合。これで、100%さ」
AFOの所有していた幾多もの個性はエイリアン並に強化されている。
そして、オムニトリックスから吸収したエイリアンたちの力も、彼は引き出せる。
膂力も、捕捉力も、知力も、火力も、適応力も、
全てが完全上位の存在。
【フルマスターピース】となったAFO・Omnireversionはニタリと笑う。
「まずは…【崩壊】に邪魔な、君だね」
瞬きの合間に、彼はグウェンの前へ移動していた。
《ダイヤモンドヘッド》
×
【回転】【振動】【衝撃集中】【膂力増強】
多数の個性と後天性のDNAをあわせ、グウェンを屠る。
ZUSYHAA!
が、
「ッぐふっ…」
腕を交差して受け止めたのはケビン。隣にいたグウェンを守らんと、その身を盾に。なんとか、グウェンに攻撃が行くことを阻止したのだ。
軽い腕慣らしとはいえ、自分の一撃を止めたことに驚くAFO。
「ほぉ…咄嗟に僕の体を吸収して耐えたか…それでも…」
ダイヤモンドヘッドの性質を映し、咄嗟に硬化したケビン。これにより死は回避できた。が、敵の攻撃は両腕を貫通し、腹を抉っていた。
ドロドロと血を流すケビンを、まるでごみでも捨てるかのように放り投げる。
「もう戦えないね」
「ケビン!…よくも!!」
ベンとケビンの負傷。その事実に彼女は冷静に激昂し、思考を巡らせ、
(ベンが戻るまで、少しでも時間を!)
現時点の個性限界点を解放する。
「はぁぁぁぁぁあ!!」
オレンジ色の髪はピンク色に発光し、体内からは無限にマナが溢れる。それだけではない。自然物から、そして目の前のAFOからもマナを吸収し、可能な限り己を強化する。
さらに、高難易度の魔術。
「グラヴィティ・アウト・カラミティ!!!!」
重力魔法と極超過マナの同時行使。
高い集中力を要する代わり、擬似的に極硬の檻を作り出す。薄紅色の拘束具で敵を縛り、重力の何倍もの過負荷をかける。
何人たりとも指一本動かすことも叶わない。何人たりともこの檻は壊せない。
が、
「はは、面白いぁ。個性じゃない、超常なんて。」
《フォーアームズ》
×
【崩壊】【巨大化】
敵は既に人間ではない。
巨大化した4腕、それぞれが檻を崩壊させる。その破壊に満ちた腕がグウェンに伸びたとき、
「クリエイト=スパイク=パワード!」
【大拳】に、魔法で腕力、硬化、棘を付与する拳藤。グウェン同様、個性と魔術の同時行使で敵をノックアウトしようと試みる。
ただ、彼女の力では、
「勝てない相手とも戦わなきゃならないなんて、本当にヒーローは不憫だ」
ただ立っているだけのAFOに、ダメージ一つ通らない。
逆に彼が撫でるように肩に触れるだけで、彼女は肩から肘までが砕ける。
「あ”ッ!?」
右腕で肩を押さえる拳藤。膝をつき、死を覚悟する。
そんな彼女の首元を掴み、AFOは持ち上げる。まるで、今から殺すぞ、とでも言いたげな体勢。
そのアピールはベンに届く。
DWOONN!
遠くからジャンプしてきたのはヒューモンガソー。
「やめろ!!」
彼が戻ってくるのを待っていたかのように、AFOは語り掛ける。
「従妹も、友達も、君を想ってくれる人も、皆君のせいで死んでしまう。どうだい?今の心境は。」
「ぐ…」
拳藤を人質に取られて、身動きが取れない。そうでなくとも、力比べで勝てるかどうかもわからない。それほど強大な力を敵は有している。
(ウェイビッグに…いや、そもそもあの手をどうにかしないとバラバラにされる…なら…)
打開策は…
一つだけ。
だが、
(時間が…かかる。そもそも本当にこれでいいのか?ボクが考えた方法で合ってるのか?)
さきほどの会話が今になって彼を追い詰める。
決断することへの恐怖。
子どもながらも、鋼のメンタルを持つベンには久しくなかった弱気。
それは、自分のせいで誰かが傷ついたという事実からくるものだった。
少年の一途な正義の心に、毒を盛るかのように付け入る魔王。
「ところで、提案があるんだ。君のその、悪夢の元凶である装置を僕にくれないかい?」
拳藤は捕まりながらも、抵抗する。肩の激痛を押し殺し、必死にベンを止める。
「…ベン!駄目!ベンッ!!!ガッ!?!」
「オムニトリックスを…」
「そうだ。全ては
優しく、諭すようにベンに語り掛けるAFO。それはまるで教師のようだった。
「本当はね、君は悪くないんだよ。ただ、
「君は悪くない」
畳みかけるAFO。
いつもベンを励ましていた拳藤。言葉をかけようにも、喉を押さえられ呼吸すら困難。
いつもならベンに火を付けてくれるグウェンも、瓦礫の下で気絶している。
「もし、君が渡してくれれば、今までのことを全て水に流そうじゃないか」
おおらかに休戦を申し出るAFO。
ベンは理解している。たとえ、ウォッチを預けたとしても、彼は自分を殺すだろう。それほど、敵の悪意は確たるものだ。
だが、
それでも、
拳藤が、皆が救かる確率は、1%上がるかもしれない。
それに
「ボクのせいで…」
よぎった諦観が、【全て自分のせいだ】という罪悪感が、体を埋め尽くす。
そして、
カシャン、
という音とともに、オムニトリックスが彼の腕から外れる。
ベンは初めて、自分の意思でウォッチを切り離した。
「…本当に、皆に手を出さないんだな?」
「本当さ。僕は、隠し事はするが嘘はつかないんだぜ?」
ニタニタと笑いながら、嘘ぶくAFO。
嘯く彼を、睨み、俯き、歯を食いしばりながら、
FWOON
ベンはウォッチを放り投げる。
宙を舞う宝物。
それを見るなり、AFOは拳藤を宙へ放り投げる。
その目にはもう、拳藤も、ベンも、なにも映っていない。ただ、クルリと宙を回転するウォッチのみが眼中にある。
(これさえあれば、もう地球を支配するのだって容易だ!OFAだって目じゃない。それに、それだけじゃない。
彼に似合わず、夢を膨らませ、注意を怠ったそのとき、
時計は、空中から流れてきた緑の閃光が手にする。
そして、その閃光は、AFOを蹴りつける。
「SMAAAAASSH!!!」
理外のパワーに何百メートルも地面を抉りながら後退するAFO。
彼が立っていた場所には、一人の少年が立っていた。
明るい笑顔で、皆を救う、最高の親友が。
もう大丈夫
なぜって?
「僕が来た!!」
・AFOが「例えば緑谷出久なら…」と緑谷を褒めていますが、これはベンのメンタルをより揺さぶるためであって、心の中では2人とも同じくらい軽蔑しています。
・ヒーローを救けるのはヒーローなんですね
最もおもしろかった章
-
(A)雄英受験、入学
-
(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
-
(C)GW
-
(D)USJ(ケビン戦)
-
(E)体育祭(ウォッチの故障)
-
(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
-
(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
-
(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
-
(I)神野編(エイリアンフォース)
-
(J)終章