【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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なんというか、もう終わるんだなと書いてて思いました…


106話 足跡

AFOに放られた拳藤は重力に従い落下していく。受け身をとることすらままならない彼女を、

 

CATCH!!

 

ベンは両腕で支える。

 

ズシンと腕にもたれる彼女は酷く弱っている。当然だ。体を張ってベンを守ろうとしたのだ。あの化け物と対峙して、なお彼女は引かなかった。

 

その代償として右半身の自由を失った彼女。ギリギリ意識は保っているようだが、呼吸は浅く、目は半開きだ。

 

彼女を心配するベン。そんな彼に声をかけたのは、

 

「大丈夫!?ベン君!」

 

一刻前ベンが救った緑谷出久だった。フェイスマスクを被っているが、その声は間違いなく彼だ。

 

ボロボロのコスチュームを纏った緑谷は、AFOを彼方へと蹴り飛ばした。

 

一刻前まではDNAの暴走を起こしていたのに。麗日達が雄英に届けたはずなのに。

 

疑問顔のベンに、彼は手を開き閉じしながら答える。

 

「リカバリーガールに治してもらったんだ!まだ少し違和感はあるけど、大丈夫!」

 

マスクをつけていても、その顔つきは、先ほどまでとは打って変わって爽やかだと分かる。

まるで、憑き物が取れたかのように。精悍な顔つきだ。

 

左手を差し出し、

 

「あいつがAFOなのは()()()。さあベン君、ここから反撃だ!」

 

オムニトリックスを渡そうとする緑谷。そんな彼を前にしても、ベンは動かない。

拳藤を抱えたまま、俯いている

 

いつもの明朗快活なベンとの差に、違和感を覚える。

 

「ベン…君?」

 

緑谷が顔を覗きこむと、そこには見たこともない表情。まるで、何か絶望したかのような、そんな顔だった。

 

「ボクが…ボクが…いなければ、こんなことにはならなかったかもしれない…」

 

AFOから吹き込まれた原因論。

 

この惨事は全て、ベン=テニスンがオムニトリックスを手に入れたから起こった。

 

アルビードとの戦闘から、ほんの少しだけ考えていた。そして、避難民の言葉で芽吹き、AFOの言葉で咲いた悪夢の華。

 

 

”もし、自分がいなければ、オールマイトも、イズクも、こんな目に合ってなかったかもしれない。

 

皆平和に暮らしていたかもしれない。

 

ボクが倒さなくても、平和の象徴達が倒してくれていたかもしれない。”

 

 

(ボクは…みんなを救けるために、この力を手にしたと思ってた‥だけど、)

「ボクが余計なことをしたから…皆が悲しむ羽目になったんだ…」

 

ヒーローだから救けるのではない。困っている人を救けるから、その者はヒーローなのだ。

 

祖父の教え。彼の根底にあるヒーロー観。

 

今の彼にとって、自分は、ベン=テニスンは、その定義に当てはまらない。

 

「ボクは…ヒーローじゃなかったんだ」

 

自分のせいで自分以外が傷つけられる。

 

分かりにくいが、緑谷同様の自己犠牲精神を持つベンにとって、それは最も堪えることだった。

 

ベンの頬を涙が伝う。

 

「ベン君…」

 

地面は水玉模様に色を変える。

ポタリと流れた涙が染みると、すぐに次の水滴が零れ落ちる。

 

オムニトリックスを受け取ろうとしないベン。まるで、生きる意味を失ったかのように、ベンはただ、絶望を垂れ流す。

 

俯き続けるベンの前で、緑谷は膝をつく。

そして、語り掛ける。

 

「ベン君…ベン君はヒーローだよ」

 

「いや、ボクは…」

 

「だって…僕らを救けてくれたじゃないか」

 

「え?」

 

予想外の言葉に顔を上げるベン。

緑谷を助けた覚えはない。それこそ、一刻前が初めてだと思っている。

 

虚を突かれたベンに対し、緑谷は想いを綴る。

 

それは、懐かしさすら感じる、雄英での日々だった。

 

「USJの時は、身を呈して脳無と戦ってくれた。」

 

雄英を襲った怪人脳無。対オールマイトの性能を誇る化け物に、緑谷は成す術が無かった。しかし、ベンが脳無のDNAを吸収し、暴走しながらも撃破に成功した。

 

「ゴーストフリークの反乱も、誰にも気づかれずに抑え込んだ」

 

突如オムニトリックスから抜け出したゴーストフリーク。人の体に入りこみ、幽体化も可能な彼が世に解き放たれれば、被害は想定できないものだ。そんなエイリアンを、試験会場から逃がさずに、ねじれとともに倒した。

 

「さっきはボクのお母さんを助けてくれた」

「それに、」

「僕を救ってくれた」

 

そう言って、マスクを外す緑谷。ヒビが入っていたはずの彼の顔は、元の、そばかすの目立つ少年の顔に戻っていた。

 

これまでのベンの軌跡。

AFOとの会話では、この地獄の元凶に思えた彼の行動は、緑谷との話では不思議と間違っていなかったと感じられる。

 

「滉太君のこと、覚えてる?」

 

「…林間合宿の…」

 

「そう。彼も雄英に避難しててね。ベン君がいないって悲しんでたけど、こう言ってたよ」

 

【オールマイトを刺したのはベン兄ちゃんじゃない!ベン兄ちゃんがそんなことするわけない!!】って。」

 

フォーアームズマスキュラーと戦闘し、気を失ってまで守った滉太。

 

彼は、自分をこうも信頼してくれている。

 

光りが灯り始めたベンの瞳。その目をみて、緑谷は頷く。

 

「そして、こうも言ってた。【僕も、ベン兄ちゃんみたいな、かっこいいヒーローになりたいんだ!】って。

 

今、この世界はヒーローが非難されてる。それでも、彼はこう言った。ベン君は、彼を心から救ったんだよ!」

 

両親をマスキュラーに殺害され、ヒーローへの嫌悪感を隠さなかった滉太。

そんな彼が、ヒーローになりたいと言ってくれている。

 

「だから…うん」

 

言葉をためて、緑谷は伝える。

かつて己が鼓舞された言葉を。

 

「ベン君は、ヒーローに成れる」

 

ベンの涙は止まらない。ひたすら地面を濡らし続ける。

しかし、その涙はさきほどとは違う。

 

心のどこかで刺さっていた棘や楔がほどけていくのを感じる。

 

その涙を頬に受け、彼女が目を覚ます。

 

「ベン…ゲホッゲホッ!」

 

優しく声をかけたのは拳藤。彼女の顔には、ベンの涙が何粒も、何粒も伝っていた。

 

「イツカ…!」

 

「あたしは…正直あんたに…」

 

「喋っちゃ…」

 

彼女の損傷を考えると、一言発するだけで身を切り裂くような痛みだろう。それを慮り、ベンは制止する。

が、それでも彼女は続ける。

 

「あんたに…ヒーローに成ってほしくない。傷ついて…ほしくない」

 

(だって、ヒーローは、誰かのために自分を犠牲にするものだから。)

 

「だからこそ、ッグ…あたしは…強くなろうと思えた。あんたを守るために。あんたはあたしの大切な人だから。」

 

理屈ではない。初めて会ったときから感じていた。

 

この子は私が守ると。この子が笑えるように、自分が強くなって、救けようと。

 

「イツカ…」

 

初めて拳藤の想いを知り、胸が苦しくなる。自分が、弱いせいで、彼女はここまで戦ったのだ。もしかしたら、自分がヒーローに成ると言わなければ、彼女は倒れていなかったかもしれない。

 

再び顔を曇らせるベン。そんな彼の頬に拳藤は触れる。

 

「だから…本当は…嫌、だけどさ‥」

 

ここで、ベンが立ち上がらないと、彼自身が彼を貶めてしまう。

 

ここで、ベンが戦わなければ、ベンが不幸になるだろう。

 

ここで、ベンが笑顔になるための言葉は。

 

ここで、ベンが立ち上がるための言葉は。

 

今のベンの姿は拳藤より年上。しかし、彼女にとって大事なのは外面ではない。

 

「お姉ちゃんらしくないけど…ハハッ」

 

ニカッ!!

 

痛み、痺れ、熱い。体中が激痛を律義に伝える。だが、それでも彼女は笑った。

 

ベンの中にいる、小さなヒーローに呼びかけるために。

今までの自分を否定し、ベンを肯定するその言葉で。

 

「…皆を、また、皆を守って…ヒーロー!」

 

その言葉を最後に、拳藤の首が擡げる。彼女の涙と、頬に落ちたベンの涙が交じり合う。

 

「イツカッッッ!!?」

 

呼吸はしている。が、重体には間違いない。彼女の頬は涙と血で濡れている。

 

「…」

 

ベンの口が小さく動いたかと思うと、そっと彼女を岩陰に寄りかからせる。

 

そして、グシグシと涙を拭き、

 

ガシッ!!

 

「…ほんっと…こども扱いすんなっての!!」

 

緑谷の持つオムニトリックスを荒々しく奪い取る。

 

もう迷いはない。

ただ、立ち上がり、目の前の敵を穿つのみ。全ては、皆の為に。自分を信じる彼女のために。

 

決心したベンの前方から、笑い声が聞こえる。

 

「ハハハッ。まるで、いつか見た喜劇のようだね。」

 

数百メートル先から浮いて移動してきたのはAFO。心なしか、さきほどよりも肥大化しているように思える。

 

時間が経つごとに、彼は強くなっている。それは、吸収したエイリアンDNAが馴染んできた証拠。

 

正真正銘のラスボス。これ以上の敵はいないだろう。

受けたことの無い精神攻撃まで彼は用意していた。

 

これは、目一杯の仕返しが必要だ。

 

 

「イズク…!」

「ベン君…!」

 

オムニトリックス装着者とAFO継承者。

彼らは同時に叫ぶ。

 

自分達は何者かを宣言する言葉。

悪に屈さない言葉。

己を奮い立たせ、動き出すための言葉。

 

「「さあ、ヒーロータイムだ!!」」

 

いざ、英雄の鬨。

 




僕と僕になれと叫ぶ

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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