【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
AFOに放られた拳藤は重力に従い落下していく。受け身をとることすらままならない彼女を、
CATCH!!
ベンは両腕で支える。
ズシンと腕にもたれる彼女は酷く弱っている。当然だ。体を張ってベンを守ろうとしたのだ。あの化け物と対峙して、なお彼女は引かなかった。
その代償として右半身の自由を失った彼女。ギリギリ意識は保っているようだが、呼吸は浅く、目は半開きだ。
彼女を心配するベン。そんな彼に声をかけたのは、
「大丈夫!?ベン君!」
一刻前ベンが救った緑谷出久だった。フェイスマスクを被っているが、その声は間違いなく彼だ。
ボロボロのコスチュームを纏った緑谷は、AFOを彼方へと蹴り飛ばした。
一刻前まではDNAの暴走を起こしていたのに。麗日達が雄英に届けたはずなのに。
疑問顔のベンに、彼は手を開き閉じしながら答える。
「リカバリーガールに治してもらったんだ!まだ少し違和感はあるけど、大丈夫!」
マスクをつけていても、その顔つきは、先ほどまでとは打って変わって爽やかだと分かる。
まるで、憑き物が取れたかのように。精悍な顔つきだ。
左手を差し出し、
「あいつがAFOなのは
オムニトリックスを渡そうとする緑谷。そんな彼を前にしても、ベンは動かない。
拳藤を抱えたまま、俯いている
いつもの明朗快活なベンとの差に、違和感を覚える。
「ベン…君?」
緑谷が顔を覗きこむと、そこには見たこともない表情。まるで、何か絶望したかのような、そんな顔だった。
「ボクが…ボクが…いなければ、こんなことにはならなかったかもしれない…」
AFOから吹き込まれた原因論。
この惨事は全て、ベン=テニスンがオムニトリックスを手に入れたから起こった。
アルビードとの戦闘から、ほんの少しだけ考えていた。そして、避難民の言葉で芽吹き、AFOの言葉で咲いた悪夢の華。
”もし、自分がいなければ、オールマイトも、イズクも、こんな目に合ってなかったかもしれない。
皆平和に暮らしていたかもしれない。
ボクが倒さなくても、平和の象徴達が倒してくれていたかもしれない。”
(ボクは…みんなを救けるために、この力を手にしたと思ってた‥だけど、)
「ボクが余計なことをしたから…皆が悲しむ羽目になったんだ…」
ヒーローだから救けるのではない。困っている人を救けるから、その者はヒーローなのだ。
祖父の教え。彼の根底にあるヒーロー観。
今の彼にとって、自分は、ベン=テニスンは、その定義に当てはまらない。
「ボクは…ヒーローじゃなかったんだ」
自分のせいで自分以外が傷つけられる。
分かりにくいが、緑谷同様の自己犠牲精神を持つベンにとって、それは最も堪えることだった。
ベンの頬を涙が伝う。
「ベン君…」
地面は水玉模様に色を変える。
ポタリと流れた涙が染みると、すぐに次の水滴が零れ落ちる。
オムニトリックスを受け取ろうとしないベン。まるで、生きる意味を失ったかのように、ベンはただ、絶望を垂れ流す。
俯き続けるベンの前で、緑谷は膝をつく。
そして、語り掛ける。
「ベン君…ベン君はヒーローだよ」
「いや、ボクは…」
「だって…僕らを救けてくれたじゃないか」
「え?」
予想外の言葉に顔を上げるベン。
緑谷を助けた覚えはない。それこそ、一刻前が初めてだと思っている。
虚を突かれたベンに対し、緑谷は想いを綴る。
それは、懐かしさすら感じる、雄英での日々だった。
「USJの時は、身を呈して脳無と戦ってくれた。」
雄英を襲った怪人脳無。対オールマイトの性能を誇る化け物に、緑谷は成す術が無かった。しかし、ベンが脳無のDNAを吸収し、暴走しながらも撃破に成功した。
「ゴーストフリークの反乱も、誰にも気づかれずに抑え込んだ」
突如オムニトリックスから抜け出したゴーストフリーク。人の体に入りこみ、幽体化も可能な彼が世に解き放たれれば、被害は想定できないものだ。そんなエイリアンを、試験会場から逃がさずに、ねじれとともに倒した。
「さっきはボクのお母さんを助けてくれた」
「それに、」
「僕を救ってくれた」
そう言って、マスクを外す緑谷。ヒビが入っていたはずの彼の顔は、元の、そばかすの目立つ少年の顔に戻っていた。
これまでのベンの軌跡。
AFOとの会話では、この地獄の元凶に思えた彼の行動は、緑谷との話では不思議と間違っていなかったと感じられる。
「滉太君のこと、覚えてる?」
「…林間合宿の…」
「そう。彼も雄英に避難しててね。ベン君がいないって悲しんでたけど、こう言ってたよ」
【オールマイトを刺したのはベン兄ちゃんじゃない!ベン兄ちゃんがそんなことするわけない!!】って。」
フォーアームズマスキュラーと戦闘し、気を失ってまで守った滉太。
彼は、自分をこうも信頼してくれている。
光りが灯り始めたベンの瞳。その目をみて、緑谷は頷く。
「そして、こうも言ってた。【僕も、ベン兄ちゃんみたいな、かっこいいヒーローになりたいんだ!】って。
今、この世界はヒーローが非難されてる。それでも、彼はこう言った。ベン君は、彼を心から救ったんだよ!」
両親をマスキュラーに殺害され、ヒーローへの嫌悪感を隠さなかった滉太。
そんな彼が、ヒーローになりたいと言ってくれている。
「だから…うん」
言葉をためて、緑谷は伝える。
かつて己が鼓舞された言葉を。
「ベン君は、ヒーローに成れる」
ベンの涙は止まらない。ひたすら地面を濡らし続ける。
しかし、その涙はさきほどとは違う。
心のどこかで刺さっていた棘や楔がほどけていくのを感じる。
その涙を頬に受け、彼女が目を覚ます。
「ベン…ゲホッゲホッ!」
優しく声をかけたのは拳藤。彼女の顔には、ベンの涙が何粒も、何粒も伝っていた。
「イツカ…!」
「あたしは…正直あんたに…」
「喋っちゃ…」
彼女の損傷を考えると、一言発するだけで身を切り裂くような痛みだろう。それを慮り、ベンは制止する。
が、それでも彼女は続ける。
「あんたに…ヒーローに成ってほしくない。傷ついて…ほしくない」
(だって、ヒーローは、誰かのために自分を犠牲にするものだから。)
「だからこそ、ッグ…あたしは…強くなろうと思えた。あんたを守るために。あんたはあたしの大切な人だから。」
理屈ではない。初めて会ったときから感じていた。
この子は私が守ると。この子が笑えるように、自分が強くなって、救けようと。
「イツカ…」
初めて拳藤の想いを知り、胸が苦しくなる。自分が、弱いせいで、彼女はここまで戦ったのだ。もしかしたら、自分がヒーローに成ると言わなければ、彼女は倒れていなかったかもしれない。
再び顔を曇らせるベン。そんな彼の頬に拳藤は触れる。
「だから…本当は…嫌、だけどさ‥」
ここで、ベンが立ち上がらないと、彼自身が彼を貶めてしまう。
ここで、ベンが戦わなければ、ベンが不幸になるだろう。
ここで、ベンが笑顔になるための言葉は。
ここで、ベンが立ち上がるための言葉は。
今のベンの姿は拳藤より年上。しかし、彼女にとって大事なのは外面ではない。
「お姉ちゃんらしくないけど…ハハッ」
ニカッ!!
痛み、痺れ、熱い。体中が激痛を律義に伝える。だが、それでも彼女は笑った。
ベンの中にいる、小さなヒーローに呼びかけるために。
今までの自分を否定し、ベンを肯定するその言葉で。
「…皆を、また、皆を守って…ヒーロー!」
その言葉を最後に、拳藤の首が擡げる。彼女の涙と、頬に落ちたベンの涙が交じり合う。
「イツカッッッ!!?」
呼吸はしている。が、重体には間違いない。彼女の頬は涙と血で濡れている。
「…」
ベンの口が小さく動いたかと思うと、そっと彼女を岩陰に寄りかからせる。
そして、グシグシと涙を拭き、
ガシッ!!
「…ほんっと…こども扱いすんなっての!!」
緑谷の持つオムニトリックスを荒々しく奪い取る。
もう迷いはない。
ただ、立ち上がり、目の前の敵を穿つのみ。全ては、皆の為に。自分を信じる彼女のために。
決心したベンの前方から、笑い声が聞こえる。
「ハハハッ。まるで、いつか見た喜劇のようだね。」
数百メートル先から浮いて移動してきたのはAFO。心なしか、さきほどよりも肥大化しているように思える。
時間が経つごとに、彼は強くなっている。それは、吸収したエイリアンDNAが馴染んできた証拠。
正真正銘のラスボス。これ以上の敵はいないだろう。
受けたことの無い精神攻撃まで彼は用意していた。
これは、目一杯の仕返しが必要だ。
「イズク…!」
「ベン君…!」
オムニトリックス装着者とAFO継承者。
彼らは同時に叫ぶ。
自分達は何者かを宣言する言葉。
悪に屈さない言葉。
己を奮い立たせ、動き出すための言葉。
「「さあ、ヒーロータイムだ!!」」
いざ、英雄の鬨。
僕と僕になれと叫ぶ
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章