【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
一時間前までは、簡素で、静かな町だった。DNAリアンが都に出ても、この田舎町には関係のない話だった。
京都市から遠く離れた、大きすぎず、小さすぎない地方街。
だが、今となっては、日本で唯一、建造物の無い場所。
家屋は崩れ、数少ない高層ビルは瓦礫となり果てている。
岩盤が露出し、人が住んでいた痕跡は全て無くなっている。
ヒーローさえも、ほとんどが死亡するか地に伏している。
この惨状はたった一人の敵によって引き起こされた。
【個性の先祖返り】と【後天DNAの移植】に成功したAFO・Omnireversion。
フォーアームズのように四肢が生え、飛行生物のような羽は常に振動している。常にその体は変容を繰り返し、一定の姿を保たない。
空も、海も、陸も、全てに対応したその体。
心と体の双方がまさしく化け物、いや、エイリアンとなった彼は、まさに魔王と言えるだろう。
そんなラスボスに対抗するのは、
たった2人の少年。
「AFO…お前は、何としてでも…ここで終わらせる‥!!」
「へー…こいつはそういう名前なのか‥おい!AFO!さっきはよくもいってくれたな!!そのヘンテコな顔面をさらに不細工にしてやる!!」
さきほどの陰鬱さは嘘のようにベンは猛る。
悪を滅ぼさんとする彼らに、AFOは喉を鳴らし笑う。
「はっは。
ニタニタと、死柄木の顔で挑発する。
相変わらず、人を逆なでする喋り。だが、彼のセリフの中に、すこしだけひっかかる部分があった。
「わん…なんて??」
初めて聞く単語。彼の不可解な表情をAFOは見逃さない。
彼は好機と見たのか、ベンを煽る。
少しでも、心が揺れるように。場を盛り上げるために。
「おやぁ?知らなかったのかい?緑谷出久の個性のことさ。こんなことを知らせないなんて、本当に親友かい?」
AFOの告発に、緑谷は顔を歪ませる。
これまで公表してこなかった事実。今それを敵は暴露した。
誤魔化すことも可能だろう。しかし、緑谷は告白する。
「僕は…オールマイトから力を、個性を授かったんだ。」
個性の移譲。
オムニトリックスと同等の、有り得ない話だ。
「僕は、君と同じ無個性だったんだ…」
AFOから派生し、義勇の心で力を紡がれたのが、OFA。
彼の脳裏に過るのは、オールマイトとの約束。
OFAを知るものは、彼の戦いに巻き込まれることを示す。だから今まで教えなかった。
しかし、親友なのに秘密にしていたことは事実。
正直者で、愚直な心を持つ緑谷の、ほんのわずかな罪。
その隙を容赦なく突いたAFO。
中学3年生からの付き合いであるベンに、ずっと隠し続けた秘密。
「っくっくく…本当に背中を任せられるのかい?2年に渡り己を欺いた人間なんかに!」
AFOは愉快そうに待つ。ベンの反応を。
緑谷の説明を受け、
「あ…あ…あー!!」
ベンの中で点と点がつながる。
身体強化個性。
初めて会った時、海浜公園での言葉
無個性である自分への寛容的な態度。
それら全てを理解したベンは、
「そーなのかよ!!えー!!いいなぁ!!!」
この期に及んで羨ましがる。
「平和の象徴から個性をもらうって…めっちゃチートじゃん!!いや、でも…ボクも似たようなもんだし、負けてないけどね!」
1人でうんうんと頷く。
そんな彼に、緑谷は少しあっけにとられる。しかし、こうも思う。
(そういえば、君はこういう人だった…)
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ひとしきり呟いた後、ベンは懐を探りながら、
「…うん…じゃあ、やっぱりイズクで大丈夫だ!」
胸の多次元ポケットから取り出すのは、ドッジボールくらいのカプセル。
それは、ベンがウォッチと出会ったときと同一の物。
「これ、アズマスが【地球で一番強い者に】って言ってたんだけどさ。これってオールマイトに向けてってことでしょ。だからイズクに渡してもらおうと思ってたんだけど」
「…オールマイトの個性を継いだイズクなら…大丈夫っしょ!!」
確信した彼は、ヒョイと投げる。
カプセルは開き、中からは小さな時計が宙に舞う。
すると、緑谷の手首に吸い込まれるように、装着される。
CAPTURE!!
「うわぁぁ!?」
「あはは!ボクも初めてはそうなったよ!!…ってイズク?」
一瞬、目から光を失う緑谷。だが、すぐ元に戻る。
「‥いや、うん…」
「大丈夫?それはユニトリックスって名前だって。使い方はボクも知らな‥」
「大丈夫。教えてもらった」
「?あ、そう‥じゃ、大丈夫だ!」
緑谷の言葉がどういうことかはわからない。
だが、親友が大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。
ベンは家族と同じくらい、彼に信用を置いている。それは、初めてできた友達だからかもしれない。
そんな親友を信頼し、ベンは託す。
「イズク…今からボクはあるエイリアンに変身する。…んだけど、もしかしたら戦えないかも知れない」
ゴクリと生唾を飲む緑谷。緊張が走る。2人で戦っても勝てるか判らない相手。そんな敵に、自分だけでどこまで通用するのか。
しかし、同時に嬉しくもある。こんな自分を頼ってくれて。
互いに無個性で生まれ、小さなころから非力故にいじめられていた。
そして、半ば偶然強大な力を得て、巨悪と戦った彼ら。
見えない絆で結ばれた彼らは、互いを、最高の親友だと認めていた。
勇ましく、緑谷は。
「だから、僕がいる」
「ああ、頼んだよ!!」
ベンは、最後の変身に臨む。
ダイヤルをセットする。
キュインキュインという音とともに、3Dホログラムが投影される。
目当てのエイリアンが来たとき、右手を大きく掲げ、オムニトリックスを叩く。
QWANN!!
姿を現したのは、ただ、黒く、それでいて煌びやかな人型エイリアン。
・
・
・
緑谷の隣に現れたのは、身長2m前後の人形。
(初めて見るエイリアンだ…だけど、やっぱり)
「少しも動かない、いや、動けないのかな?」
緑谷と同時に、AFOは悟る。
変身したベンはピクリとも動かない。
彼がこの瞬間まで緑谷を攻撃しなかった理由。
それは、
最高の力でぶつかり合いたいから。
なんて理由じゃない。
「OFAを持つ君には、
サプライズプレゼント。その言葉で緑谷は思い出す。
「オールマイトは、自身の師の孫と戦ったけど、君は実の母親と戦った。あはは、師匠超えじゃあないか!」
マグマのように、煮えたぎる憎悪。それらを抑え込み、冷静に、AFOを見据える。
「なんで、なんで、そんなことができるんだ…!」
「上質なワインと同じさ。踏みにじれば踏みにじるほど、純粋な憎悪と悔恨がブレンドされていく。それをこの目で見るのが、なによりの快楽でね。あはは。君に分かるかな?」
分からない。分かりたくもない。理解してはいけない。あらゆる嫌悪感が自身の中に渦巻く。
そして、なんとか言語化できた想いを吐き出す。
「お前のせいで…皆の日常は壊れた。誰も、笑えなくなった。」
緑谷の頭髪が碧色に輝き、逆立つ。
「オールマイトや先代が教えてくれた」
全身の筋肉は引き締まり、プラズマが走る。
【OFAフルカウル100%】
一刻前までは、エイリアン化のおかげで反動は無かった。その余韻で、短時間なら反動はない…はず。
「お前は、自分の為に、人を欺き、壊し、奪い、弄ぶ…」
衝撃で破れかけたスーツを纏い、全身から青い光を放つ彼は、
手首の時計を
「皆の想いを踏みにじるお前を、僕は絶対に許さない!!」
叩く。
BQAANN!!
・
・
・
オムニトリックスの光よりも薄い青緑。
それに包まれる彼の身体。
ベンならば、この後光から出てくるときにはエイリアンの姿であろう。
しかし、光の中から出てきたのは、OFA100%の緑谷。
つまり、変化はなかった。
「皆の想い?そんなものは取るに足らない、雑味さ。なぜなら、」
(こけおどし…いや、僕の予測が及ばない者が多くいる。まずは2、3振り…)
エイリアンの力と、強化された個性をふんだんに使用する。
【ヒューモンガソー】の巨大化
×
【伸縮】で腕を伸ばし、【筋骨発条化】でパワーを底上げ。そして【追尾】で敵を追う。
敵への接触に特化したパンチが、緑谷へと向かう。
「全ては、僕のためにあるからさ!!」
迫りくる拳に対して、緑谷は一歩も引かない。
スゥっと息を吸い、腰を落とし、構える。
そして、腕を引き、パンチを繰り出す。
「だぁぁ!!!!」
DGAAAAANNN!!
巨大な拳と、ただの人間の拳。対極ともいえる力がぶつかり合う。
互いの拳が触れあった瞬間、AFOは個性を発動する。
(終わりだ…【崩壊】!)
緑谷のグローブにヒビが入る。
そう、AFOの目的は、始めからこれ。真っ向勝負と見せかけて、崩壊による一発KOだ。
強化された【崩壊】は、触れ合うもの全てを破壊する。つまり、グローブに触れようとも、崩壊したグローブが緑谷に触れることで、
BKIBKI!!
押し合っていた拳は、崩壊を開始する。その時点で、彼の勝利は確定する。
「さあ、もう壊れ朽ちるだけだよ」
「…!!」
「分析に長けた君にしては、安易だったようだねぇ…ん?」
なにかおかしい。
確かな違和感を覚えるAFO。
彼の手は崩壊し始めている。それは間違いない。
なのに、
なぜ、崩れ落ちないのか。
なぜ灰になり朽ちないのか。
なぜ、自分の拳が押され始めているのか。
せめぎ合う、AFOの拳と緑谷の拳。不可解な現状を見極めるため、AFOは彼の拳を凝視する。
ひ弱な彼の拳には亀裂が入っている。今にも崩れそうな勢いで。
そして、その勢いと同様のスピードで、ヒビは修復されていた。
(…超再生…!?しかも…)
ここで初めて、緑谷の拳の感触に異変を感じる。
(異様に硬い‥?)
緑谷は思い出す、あの一瞬の出来事を…
・
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・
「ほう、お前がトシノリの弟子か」
砂色の空と、浮いた岩々。急な景色に驚く緑谷の前に現れたのは、
「グレイマター!?」
「それはベン=テニスンが名付けた名じゃ!儂はアズマス。オムニトリックスと、それの開発者じゃ!」
彼が指さすのは、緑谷の手首の
「え、ここ、は…」
緑谷の疑問に答えず、アズマスは続ける。
「トシノリが来ると思っとったんじゃが、まあいい。お前にも適正はあるみたいじゃしの。まずは開発趣旨からじゃ…あのバカが盗んだアルティマトリックス…」
語りだしたアズマスに、緑谷は現状を伝えようと話を遮る。
「す、すみません!友達が戦ってて、すぐに…」
「急ぐんじゃぁない、愚か者め。この空間は儂が作った空間。こちらと向こうの時間は流れ方が異なる。安心しろ。」
この老人は簡単に空間を作り出したという。グレイマターの頭脳ならば、その領域まで達することができるのかと驚く。
動揺した緑谷を気にせず、アズマスは続ける。
「アルティマトリックスは、エイリアンの力を200%引き出す。しかし、あれは変身にエネルギーを割かねばならず、また、未熟者が使えば人格が狂ってしまう」
アルビードの性格を思い出す。今となっては、彼の素なのか、アルティマトリックスに侵されたものなのか判別がつかない。
「この宇宙の危機が迫るとマックスから聞いて、儂はU・マトリックスを超える装置の開発を試みた。あれよりも出力を増幅させ、さらに安定的な装置をな。」
後ろに腕を組んだまま、小さな宇宙人は語る。
「普通の者ならばお手上げだ。だが儂は思いついた。それらすべてを解決する方法を。」
背中を向けたアズマスに、緑谷は尋ねる。
「その方法って…」
彼は振り向くと、指を緑谷に向けた。
「使用者を限定すればいいんじゃよ。
オムニトリックスは誰が使っても一定の性能を発揮する。そのように作ったからの。
では逆にじゃ、使用者を先に決めて、その者に合わせれば、余計な性能にリソースを食わずに済む。だから…」
・
・
・
(人間体のまま、エイリアンの力を引き出す…これで、人格が元のエイリアンに乗っ取られることは無い。)
(そして、使用時間を数十秒にすることで、使えるパワーを何十倍にも凝縮)
(アズマス博士のユニトリックスは、シンプルな素体である人間、かつ人間以上の身体能力を有する者が使う時に、その真価を発揮する!)
ユニトリックスは、いわば、OFA継承者に向けて作られたオムニトリックス。
緑谷がセットしたのはダイヤモンドヘッド。
今の彼は、人間体のまま、ダイヤモンドヘッドの力を引き出せる。
例えば、圧倒的な硬化。
例えば、崩壊された部分からの再生。
これが、アズマス博士と、緑谷のたどり着いた答え。
「
ダイヤモンドヘッドの硬化に、OFAのパワーが上乗せされたパンチ。
AFOが複数の個性を発揮するのと同様に、今の緑谷は凝縮された2つの力をぶつけた。
その結果、
PAAAAANN!!
AFOの片腕がはじけ飛ぶ。
もちろん、距離を置いていた為、本体にはノーダメージ。そして【超再生】によりその腕もすぐに元通りに。
だが、
動揺は隠しきれない。
「…まさか、この力に張り合えるなんてね…本当に、どこまでいっても、僕の夢を阻む…」
忌々しく語るAFOに、
緑谷は左腕を突き出し、
「…そのための、力だ」
・
・
・
周囲には星々が煌めく。足場もなく、ただフワフワと。
そして、左には雄大な憤怒の仮面、右には巨大な慈愛の仮面が。
「何しに来た、ベン!」
「よろしくね、ベン?」
「まぁた…わけわかんない所に来たよ…」
・ユニトリックスの性能は独自設定です。名前はエイリアンフォースに出てきたっぽいんですけど、よく覚えてないんですよね…
・緑谷のウォッチ使用はやりたかった展開の一つです!
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章