【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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最終局面!


107話 ユニトリックス

一時間前までは、簡素で、静かな町だった。DNAリアンが都に出ても、この田舎町には関係のない話だった。

 

京都市から遠く離れた、大きすぎず、小さすぎない地方街。

 

だが、今となっては、日本で唯一、建造物の無い場所。

 

家屋は崩れ、数少ない高層ビルは瓦礫となり果てている。

岩盤が露出し、人が住んでいた痕跡は全て無くなっている。

ヒーローさえも、ほとんどが死亡するか地に伏している。

 

この惨状はたった一人の敵によって引き起こされた。

【個性の先祖返り】と【後天DNAの移植】に成功したAFO・Omnireversion。

 

フォーアームズのように四肢が生え、飛行生物のような羽は常に振動している。常にその体は変容を繰り返し、一定の姿を保たない。

空も、海も、陸も、全てに対応したその体。

 

心と体の双方がまさしく化け物、いや、エイリアンとなった彼は、まさに魔王と言えるだろう。

 

そんなラスボスに対抗するのは、

たった2人の少年。

 

「AFO…お前は、何としてでも…ここで終わらせる‥!!」

「へー…こいつはそういう名前なのか‥おい!AFO!さっきはよくもいってくれたな!!そのヘンテコな顔面をさらに不細工にしてやる!!」

 

さきほどの陰鬱さは嘘のようにベンは猛る。

 

悪を滅ぼさんとする彼らに、AFOは喉を鳴らし笑う。

 

「はっは。最強の武器(オムニトリックス)と、全てを無に帰す力の結晶(OFA)。僕に対抗するための切り札は…こんな冴えない高校生たちに託されているんだねぇ」

 

ニタニタと、死柄木の顔で挑発する。

相変わらず、人を逆なでする喋り。だが、彼のセリフの中に、すこしだけひっかかる部分があった。

 

「わん…なんて??」

 

初めて聞く単語。彼の不可解な表情をAFOは見逃さない。

 

彼は好機と見たのか、ベンを煽る。

 

少しでも、心が揺れるように。場を盛り上げるために。

 

「おやぁ?知らなかったのかい?緑谷出久の個性のことさ。こんなことを知らせないなんて、本当に親友かい?」

 

AFOの告発に、緑谷は顔を歪ませる。

 

これまで公表してこなかった事実。今それを敵は暴露した。

 

誤魔化すことも可能だろう。しかし、緑谷は告白する。

 

「僕は…オールマイトから力を、個性を授かったんだ。」

 

個性の移譲。

オムニトリックスと同等の、有り得ない話だ。

 

「僕は、君と同じ無個性だったんだ…」

 

AFOから派生し、義勇の心で力を紡がれたのが、OFA。

 

彼の脳裏に過るのは、オールマイトとの約束。

OFAを知るものは、彼の戦いに巻き込まれることを示す。だから今まで教えなかった。

 

しかし、親友なのに秘密にしていたことは事実。

 

正直者で、愚直な心を持つ緑谷の、ほんのわずかな罪。

 

その隙を容赦なく突いたAFO。

 

中学3年生からの付き合いであるベンに、ずっと隠し続けた秘密。

 

「っくっくく…本当に背中を任せられるのかい?2年に渡り己を欺いた人間なんかに!」

 

AFOは愉快そうに待つ。ベンの反応を。

 

緑谷の説明を受け、

 

「あ…あ…あー!!」

 

ベンの中で点と点がつながる。

 

身体強化個性。

初めて会った時、海浜公園での言葉

無個性である自分への寛容的な態度。

 

それら全てを理解したベンは、

 

「そーなのかよ!!えー!!いいなぁ!!!」

 

この期に及んで羨ましがる。

 

「平和の象徴から個性をもらうって…めっちゃチートじゃん!!いや、でも…ボクも似たようなもんだし、負けてないけどね!」

 

1人でうんうんと頷く。

 

そんな彼に、緑谷は少しあっけにとられる。しかし、こうも思う。

 

(そういえば、君はこういう人だった…)

 

ひとしきり呟いた後、ベンは懐を探りながら、

 

「…うん…じゃあ、やっぱりイズクで大丈夫だ!」

 

胸の多次元ポケットから取り出すのは、ドッジボールくらいのカプセル。

 

それは、ベンがウォッチと出会ったときと同一の物。

 

「これ、アズマスが【地球で一番強い者に】って言ってたんだけどさ。これってオールマイトに向けてってことでしょ。だからイズクに渡してもらおうと思ってたんだけど」

 

「…オールマイトの個性を継いだイズクなら…大丈夫っしょ!!」

確信した彼は、ヒョイと投げる。

 

カプセルは開き、中からは小さな時計が宙に舞う。

 

すると、緑谷の手首に吸い込まれるように、装着される。

 

CAPTURE!!

 

「うわぁぁ!?」

 

「あはは!ボクも初めてはそうなったよ!!…ってイズク?」

 

一瞬、目から光を失う緑谷。だが、すぐ元に戻る。

 

「‥いや、うん…」

 

「大丈夫?それはユニトリックスって名前だって。使い方はボクも知らな‥」

 

「大丈夫。教えてもらった」

 

「?あ、そう‥じゃ、大丈夫だ!」

 

緑谷の言葉がどういうことかはわからない。

だが、親友が大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。

 

ベンは家族と同じくらい、彼に信用を置いている。それは、初めてできた友達だからかもしれない。

 

そんな親友を信頼し、ベンは託す。

 

「イズク…今からボクはあるエイリアンに変身する。…んだけど、もしかしたら戦えないかも知れない」

 

ゴクリと生唾を飲む緑谷。緊張が走る。2人で戦っても勝てるか判らない相手。そんな敵に、自分だけでどこまで通用するのか。

 

しかし、同時に嬉しくもある。こんな自分を頼ってくれて。

 

互いに無個性で生まれ、小さなころから非力故にいじめられていた。

そして、半ば偶然強大な力を得て、巨悪と戦った彼ら。

 

見えない絆で結ばれた彼らは、互いを、最高の親友だと認めていた。

 

勇ましく、緑谷は。

 

「だから、僕がいる」

 

「ああ、頼んだよ!!」

 

ベンは、最後の変身に臨む。

ダイヤルをセットする。

キュインキュインという音とともに、3Dホログラムが投影される。

目当てのエイリアンが来たとき、右手を大きく掲げ、オムニトリックスを叩く。

 

QWANN!!

 

姿を現したのは、ただ、黒く、それでいて煌びやかな人型エイリアン。

緑谷の隣に現れたのは、身長2m前後の人形。

(初めて見るエイリアンだ…だけど、やっぱり)

 

「少しも動かない、いや、動けないのかな?」

緑谷と同時に、AFOは悟る。

変身したベンはピクリとも動かない。

 

彼がこの瞬間まで緑谷を攻撃しなかった理由。

それは、

 

 

最高の力でぶつかり合いたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて理由じゃない。

 

「OFAを持つ君には、(オールマイト)と同じくむごたらしく死んでほしいんだよ…ああ、そういえば、僕のサプライズプレゼント、喜んでもらえたかい?」

 

サプライズプレゼント。その言葉で緑谷は思い出す。

 

「オールマイトは、自身の師の孫と戦ったけど、君は実の母親と戦った。あはは、師匠超えじゃあないか!」

 

マグマのように、煮えたぎる憎悪。それらを抑え込み、冷静に、AFOを見据える。

 

「なんで、なんで、そんなことができるんだ…!」

 

「上質なワインと同じさ。踏みにじれば踏みにじるほど、純粋な憎悪と悔恨がブレンドされていく。それをこの目で見るのが、なによりの快楽でね。あはは。君に分かるかな?」

 

分からない。分かりたくもない。理解してはいけない。あらゆる嫌悪感が自身の中に渦巻く。

そして、なんとか言語化できた想いを吐き出す。

 

「お前のせいで…皆の日常は壊れた。誰も、笑えなくなった。」

 

緑谷の頭髪が碧色に輝き、逆立つ。

 

「オールマイトや先代が教えてくれた」

 

全身の筋肉は引き締まり、プラズマが走る。

 

【OFAフルカウル100%】

 

一刻前までは、エイリアン化のおかげで反動は無かった。その余韻で、短時間なら反動はない…はず。

 

「お前は、自分の為に、人を欺き、壊し、奪い、弄ぶ…」

 

衝撃で破れかけたスーツを纏い、全身から青い光を放つ彼は、

 

手首の時計を

 

「皆の想いを踏みにじるお前を、僕は絶対に許さない!!」

 

叩く。

 

BQAANN!!

 

オムニトリックスの光よりも薄い青緑。

それに包まれる彼の身体。

 

ベンならば、この後光から出てくるときにはエイリアンの姿であろう。

 

しかし、光の中から出てきたのは、OFA100%の緑谷。

 

つまり、変化はなかった。

 

「皆の想い?そんなものは取るに足らない、雑味さ。なぜなら、」

(こけおどし…いや、僕の予測が及ばない者が多くいる。まずは2、3振り…)

 

エイリアンの力と、強化された個性をふんだんに使用する。

 

【ヒューモンガソー】の巨大化

        ×

【伸縮】で腕を伸ばし、【筋骨発条化】でパワーを底上げ。そして【追尾】で敵を追う。

 

敵への接触に特化したパンチが、緑谷へと向かう。

 

「全ては、僕のためにあるからさ!!」

 

迫りくる拳に対して、緑谷は一歩も引かない。

 

スゥっと息を吸い、腰を落とし、構える。

そして、腕を引き、パンチを繰り出す。

 

「だぁぁ!!!!」

 

DGAAAAANNN!!

 

巨大な拳と、ただの人間の拳。対極ともいえる力がぶつかり合う。

 

互いの拳が触れあった瞬間、AFOは個性を発動する。

 

(終わりだ…【崩壊】!)

 

緑谷のグローブにヒビが入る。

 

そう、AFOの目的は、始めからこれ。真っ向勝負と見せかけて、崩壊による一発KOだ。

 

強化された【崩壊】は、触れ合うもの全てを破壊する。つまり、グローブに触れようとも、崩壊したグローブが緑谷に触れることで、

 

BKIBKI!!

 

押し合っていた拳は、崩壊を開始する。その時点で、彼の勝利は確定する。

 

「さあ、もう壊れ朽ちるだけだよ」

 

「…!!」

 

「分析に長けた君にしては、安易だったようだねぇ…ん?」

 

なにかおかしい。

 

確かな違和感を覚えるAFO。

 

彼の手は崩壊し始めている。それは間違いない。

 

なのに、

 

なぜ、崩れ落ちないのか。

 

なぜ灰になり朽ちないのか。

 

なぜ、自分の拳が押され始めているのか。

 

せめぎ合う、AFOの拳と緑谷の拳。不可解な現状を見極めるため、AFOは彼の拳を凝視する。

 

ひ弱な彼の拳には亀裂が入っている。今にも崩れそうな勢いで。

 

そして、その勢いと同様のスピードで、ヒビは修復されていた。

 

(…超再生…!?しかも…)

 

ここで初めて、緑谷の拳の感触に異変を感じる。

(異様に硬い‥?)

 

緑谷は思い出す、あの一瞬の出来事を…

 

「ほう、お前がトシノリの弟子か」

 

砂色の空と、浮いた岩々。急な景色に驚く緑谷の前に現れたのは、

 

「グレイマター!?」

 

「それはベン=テニスンが名付けた名じゃ!儂はアズマス。オムニトリックスと、それの開発者じゃ!」

 

彼が指さすのは、緑谷の手首の装置(ユニトリックス)

 

「え、ここ、は…」

 

緑谷の疑問に答えず、アズマスは続ける。

 

「トシノリが来ると思っとったんじゃが、まあいい。お前にも適正はあるみたいじゃしの。まずは開発趣旨からじゃ…あのバカが盗んだアルティマトリックス…」

 

語りだしたアズマスに、緑谷は現状を伝えようと話を遮る。

 

「す、すみません!友達が戦ってて、すぐに…」

 

「急ぐんじゃぁない、愚か者め。この空間は儂が作った空間。こちらと向こうの時間は流れ方が異なる。安心しろ。」

 

この老人は簡単に空間を作り出したという。グレイマターの頭脳ならば、その領域まで達することができるのかと驚く。

 

動揺した緑谷を気にせず、アズマスは続ける。

 

「アルティマトリックスは、エイリアンの力を200%引き出す。しかし、あれは変身にエネルギーを割かねばならず、また、未熟者が使えば人格が狂ってしまう」

 

アルビードの性格を思い出す。今となっては、彼の素なのか、アルティマトリックスに侵されたものなのか判別がつかない。

 

「この宇宙の危機が迫るとマックスから聞いて、儂はU・マトリックスを超える装置の開発を試みた。あれよりも出力を増幅させ、さらに安定的な装置をな。」

 

後ろに腕を組んだまま、小さな宇宙人は語る。

 

「普通の者ならばお手上げだ。だが儂は思いついた。それらすべてを解決する方法を。」

 

背中を向けたアズマスに、緑谷は尋ねる。

 

「その方法って…」

 

彼は振り向くと、指を緑谷に向けた。

 

「使用者を限定すればいいんじゃよ。

 

オムニトリックスは誰が使っても一定の性能を発揮する。そのように作ったからの。

 

では逆にじゃ、使用者を先に決めて、その者に合わせれば、余計な性能にリソースを食わずに済む。だから…」

 

(人間体のまま、エイリアンの力を引き出す…これで、人格が元のエイリアンに乗っ取られることは無い。)

(そして、使用時間を数十秒にすることで、使えるパワーを何十倍にも凝縮)

(アズマス博士のユニトリックスは、シンプルな素体である人間、かつ人間以上の身体能力を有する者が使う時に、その真価を発揮する!)

 

ユニトリックスは、いわば、OFA継承者に向けて作られたオムニトリックス。

 

緑谷がセットしたのはダイヤモンドヘッド。

今の彼は、人間体のまま、ダイヤモンドヘッドの力を引き出せる。

 

例えば、圧倒的な硬化。

例えば、崩壊された部分からの再生。

 

これが、アズマス博士と、緑谷のたどり着いた答え。

 

DIAMOND SMASHH!!(ダイヤモンド・スマッシュ)

 

ダイヤモンドヘッドの硬化に、OFAのパワーが上乗せされたパンチ。

 

AFOが複数の個性を発揮するのと同様に、今の緑谷は凝縮された2つの力をぶつけた。

 

その結果、

 

PAAAAANN!!

 

AFOの片腕がはじけ飛ぶ。

 

もちろん、距離を置いていた為、本体にはノーダメージ。そして【超再生】によりその腕もすぐに元通りに。

 

だが、

 

動揺は隠しきれない。

 

「…まさか、この力に張り合えるなんてね…本当に、どこまでいっても、僕の夢を阻む…」

 

忌々しく語るAFOに、

 

緑谷は左腕を突き出し、

 

「…そのための、力だ」

周囲には星々が煌めく。足場もなく、ただフワフワと。

 

そして、左には雄大な憤怒の仮面、右には巨大な慈愛の仮面が。

 

「何しに来た、ベン!」

 

「よろしくね、ベン?」

 

「まぁた…わけわかんない所に来たよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 




・ユニトリックスの性能は独自設定です。名前はエイリアンフォースに出てきたっぽいんですけど、よく覚えてないんですよね…
・緑谷のウォッチ使用はやりたかった展開の一つです!

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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