【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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ついに決着!!長いです!長かったです!


109話 ピースサイン

真っ黒な躰には、キラキラと光る星々。赤く、あるいは白く光るそれらは、ほんの少しだけ揺らめいている。

 

彼を構成しているのは宇宙。地球の概念ではそう表現するしかない存在。

 

人型でありながら、鬼のような2本の角を持つ、エイリアン。

 

ウェイビッグに並ぶ、いや、それ以上の最強種。宇宙を作り上げた無敵の存在。

それが、エイリアンX。

 

その規格外の能力により、AFOによる崩壊は、“無かった”こととされた。

 

「すっげ…ほんとにできるんだ…」

 

自分で驚いているエイリアンX。いや、ベン。

 

彼自身もこれほどだとは予想してなかったようだ。

 

【リングを通った箇所の時間を巻き戻す】。

 

その願いが一縷も逃さず完遂されたのだ。驚くのも無理はない。

 

そして、彼同様驚いているのは、能力をかき消されたAFO。

 

「馬鹿な…」

 

老獪な彼は、その事象に驚きながらも冷静に分析する。

 

(確かに【崩壊】は発動した。なのに、彼の手から放たれた輪っかによって、まるで崩壊そのものが無かったかのように地面が整えられている。死穢八斎會若頭(オーバーホール)のように、物質構築に関係する個性か?)

 

もちろん、彼の体に眠る数多の個性の中にも、類似するものはある。

 

【金属操縦】【無機物創造】…

(いや…)

 

チラリと地面を見る。

 

(ただ壊れた地面を接合しただけではない。輪っかが通った個所だけ、コンクリート舗装までされている。そう、まるで()()()()()()()()()()()かのように。)

 

100年に渡る彼の人生は、エイリアンXの特殊性を直観で気づかせた。

 

これまで多くの(ヒーロー)と戦ってきた彼も、さすがに今のベンには躊躇する。

 

足を止めた敵に対し、エイリアンⅩは手を翳す。

 

「こんどは…これ!」

 

QRUINN!!

という音とともに、手元に白いリングが発現。

 

半径30㎝ほど、小さな輪っか。

 

ふわりと空中へ放ると、それはベンの頭上に固定される。

すると、

 

GYUWANNN!!

 

空を飲み込むほどの黒い渦が出現。それらは人間の手を形作り、幾万本の悪魔の手に変形していく。

 

豪雨のように降り注ぐ魔手は、うねりながら猛スピードでAFOを狙う。

 

「っ!!?」

 

(【スティンクフライ】【ジェットレイ】

         ×

【エアウォーク】【器官生成;翼】【膂力増強】…)

 

自身の中で、空中機動に長けた個性、エイリアンを選択。

音速をも超える空中機動で、魔手から逃れようとする。

 

直角、反転、あるいはホバリング。まるで生まれた頃からそうであったかのように、彼は空中を自在に飛び回る。それこそ、数十秒で地球を一周できるほどの速度で。

 

が、それを上回るスピードで、魔手は追跡。

AFOの無茶無理無謀の移動軌跡を、寸分も違わずなぞり、

 

そして、ついには、文字通りの()()は、

 

GASHIINN!!

 

「っぐっ!?」

 

AFOの捕縛に成功する。

 

彼がどれだけ力を籠めようとも抜け出せない。体をひねることも、指一本動かすことも叶わない。

 

空中で捕縛された彼に対し、ベンは地面から攻撃を試みる。

 

QRUINN!!

 

再びリングを生成。

今度は等身大の大きさ。

 

それなりに大きなリングを作り上げると、AFOめがけて打ち出す。

 

その瞬間、触手の力が弱まる。

 

AFOは【崩壊】で壊し千切ると、寸でのところでリングを躱す。

 

すると、

 

HOOLLLL!!

 

聞いたこともないような悍ましい轟音。その音が止んだ時には、彼の一歩右の空間は()()()()()

 

まるで空間が圧縮したようにねじ曲がったと思えば、自身がさきほどまで縛られていた場所は、ただ黒い空間に置き換わっていた。

 

空中にポッカリと空いた空間には何もない。どこまで深いか、そもそも存在するかが分からない穴だけが見て取れる。

 

「っち…」

(防御に徹している場合ではない…か)

 

出来れば保有していることをばらしたくなかった個性

【ワープホール】。

 

躰の一部を黒い靄へと切り替えると、その靄はベンの背後に現れる。

 

その靄を通して、彼の腕がエイリアンXの背中に触れる。

 

(どんなに強固だろうと、どんなに戦闘力に長けていようと、)

「【崩壊】してしまえば終わりだ!!」

 

全てを無に帰す崩壊の手が触れる。

 

が、当のベンには、何も変化は起きない。

ただ、黒ずんだ手が彼の背中に触れただけ。

 

「何!?」

 

驚くAFOを差し置き、ベンは靄から彼を引きずり出す。

かと思えば、グルグルと振り回し、思いっきりぶん投げる。

 

「おりゃっっ!!」

 

BOONN!!

 

地面をバウンドし、はじけ飛ぶ敵。

ベンは容赦なく追撃を試みる。

 

が、AFOもただではやられない。

 

【ベクトル変更】で投げられた方向を修正し、グウェンや拳藤たちが倒れている元へ着地。

 

がっしりと、先ほどのように拳藤を盾にする。

 

「そのまま打てば彼女らは死んでしまうよ?」

ニタリと下卑た笑みを浮かべる。たったこれだけでヒーローは足を止め、拳を下ろす。

 

守るものが多いから負ける。彼の中で、ヒーローはそんな存在だった。

 

「はんっ!」

 

だがベンは軽く笑い飛ばす。

拳藤が人質に取られたことを把握したベンは、生み出したリングを放つのではなく、自身の拳に通す

 

QRUINN!!

 

そして、人質を意に介さず、拳を振るう。

 

DOOOONN!!

 

「なっ!?」

 

彼の拳圧で、風が生まれる。地面を抉り、空気を切り裂き、拳大の風は暴風へ。

竜巻は、一直線にAFOへと向かう。もちろん、その直線状には拳藤がいる。

 

BROOWWWW!!

 

「なにっ!!?」

 

にも拘らず、その攻撃はAFOのみを討つ。

すぐに超再生で回復を図る。まるで、オールマイトの全力を受けたかのようなパンチ。いや、今現在の自身の力を考えると、その何倍もの威力だったはず。

 

ダメージ自体は大したことはない。現にもう回復した。傷も負っていない。

 

 

が、驚きは隠せない。自分にしか当たらなかったのだ。災害級の攻撃が、人質(拳藤ら)をすり抜け、自分だけに。

 

さしもの彼も動揺しながら、空を見上げる。

 

そこには、未だ黒い空間がぽっかりと空いていた。

(さっきの攻撃は‥指定箇所を無にするものか。そして、今までの攻撃を総合すると、

…)

 

「…まさに人智を越した力だ…」

 

…欲しい。

 

そう小さくつぶやいた。

 

進化したAFOと戦闘し、互角以上に拳を振るっていた緑谷。そんな彼はもう手足も動かない。ただ、地面に倒れているだけ。

 

だが、唯一動くその目で戦いを見ていた。エイリアンXがAFOを圧倒する様を。

 

(と、とんでもない力だ…多分だけど…【AFOを捕まえる触手】【対象座標を無にする】【対象以外を傷つけない攻撃】…どれも個性や他のエイリアンの規格を超えている。

 

複数の能力を持っているように見えるけどそうじゃない…【好きな能力を具現化させる】【想像を実現させる】そんな能力な気がする。彼さえいれば勝てる…)

 

想像実現。あり得ない力。この能力を持っているならば、負ける方が難しい。誰でもそう思うだろう。

 

だが、誰よりも個性や能力を分析し、強大な力を持たされた彼は、異なる結論を出す。

 

(でも、待てよ?もしそんな能力なら、【AFOを倒す】ことを実現させればいいはず…わざわざ戦う必要はない。それに…)

 

ノートは持っていない。だが、彼の脳内には、全てが記憶されている。色んなヒーロー。クラスメイトの個性。そして、

 

エイリアンヒーローも。

 

考えた末、

 

(うん、そうだ。今僕がやるべきことは…)

 

BQANN!!

 

(分析して、予測することだ!)

 

彼の目は少しだけギョロリと大きくなる。

 

もう人質は意味をなさないと理解し、拳藤たちから離れるAFO。

そんな彼に、ベンは語り掛ける。

 

「AFO…もう降参したらどうだ?ボクに勝てっこないでしょ」

 

「そうかい?僕はそう思わないけどね。」

 

「見ただろ?ボクの力を。お前がどんな個性を持っていたって、今のボクは文字通り無敵なんだ。諦めて降参しちゃえよ」

 

「面白いことをいうねぇ。君は僕に傷一つ付けていないのに」

 

自身の体を見せつけるように、AFOは語る。

鋭い指摘に、ギクリと顔を歪ませるベン。

 

「例えば、さっきの黒い触手。おおかた、【AFOを捕まえる手】といったものだろう?その名のとおり、僕を捕まえた。本当に面白い個性だ。創造を実現する力。震えるよ」

 

すでに自分の能力は割れている。だが、割れたところで、どうしようもないはず。

 

「あれぇ?おかしいよなぁ。【僕を捕まえること】を実現できるなら、始めから【僕を殺す黒手】にすればいいはずだ。なのに、君は一向にその類の能力を使わない。」

 

まるで、答え合わせをするように、ウキウキと語るAFO。

 

「多少ダメージはおっても、傷に至るほどの攻撃は皆無。これらから推測するに…」

 

何本もある腕の一本を、ベンに突きつける。

 

「君のその能力は、僕を傷つけることができないんじゃないかい?」

 

ほんの少しだけ、背筋に悪寒が走る。

 

AFOの答えは、ほぼほぼ正解だった。圧倒的強者を前にしてもこの冷静さ。

 

恐ろしく周到で、冷静で、明晰な頭脳を持った彼だからこそ出せた答え。

 

本来、エイリアンⅩの能力は、過不足なく【想像を実現させる力】。

極端に言えば、今この瞬間、宇宙を消すことも、造ることも可能だ。

 

だが、今のベンは違う。ベリカスとセレナの合意を逸脱することはできない。

 

とくに、セレナの【すべてを許す】という制約が強く、AFOを拘束することまではできても、彼の能力で直接殺したり、外傷を負わせることが難しいのだ。

 

また、初めての変身ということで、彼は()()()を通ったものにしか能力を反映できない。

 

自身の能力値を見抜かれたベンは、鼻をこすりながら勇む。

 

「へん。関係ないね!」

 

エイリアンⅩの能力でAFOを倒すことができずとも、例えば肉弾戦だったり、攻撃の余波でならダメージを与えることができる

 

それをベンが狙っているかはともかく。

 

そんな彼に対し、呆れたように笑うと、AFOは問う。

 

「ふぅん…まあいいよ。それより、これが君の最後の戦いになるわけだが、教えてほしいことがあるんだ」

 

「はぁ?」

突然の質問に、ベンは首を傾げる。

 

「君は、なぜ、ヒーローに成るんだい?」

 

まるで、教師が生徒に聞くかのような態度。

だが、次の言葉はベンの根幹を覆さんとするものだった。

 

「君は、ただその時計を手に入れたから、ヒーローになったんだろ?なにもできない子どもが、強大な力でヒーローごっこをする。ありふれた話だ」

 

「何が言いたいんだよ」

 

「簡単なことさ。君は、敵側に来る人間だよ、ということさ。君の半生を見た時、幾らか私欲のためにその時計を使っていたね。君の祖父や、オールマイトとは大違いだ」

 

たった一回揺さぶっただけで、先ほどは変身できないほどのダメージだった。だからこそ、今ここで、AFOはベンを潰しにかかる。

 

俯き、返事をしないベン。

 

「…」

 

「そんな君がヒーローになる?あははぁ。笑わせないでくれよ。君は、ただ偶然力を手にして、偶然そっち側に近かった人間なのさ!」

 

スーパー敵の演説を無言で訊いていたベン。

 

敵の言葉が途絶えた時、スッと首を挙げる。

 

そこに見える彼の表情は、非常に軽い、まるで相手を馬鹿にしたような笑顔だった。

 

「いいや?ボクはヒーローになってたよ。例えこれ(オムニトリックス)が無くてもね」

 

胸にある、オムニトリックスマークに触れる。

 

緑谷の話を聞いて思い出した。

 

滉太に話していた自分の心情。ヒーロー観。忘れてはいけない、祖父の言葉。

 

「スーパーパワーを持ってるからヒーローなんじゃない。」

 

オムニトリックスを失った世界線(グウェン10)の自分にもあった。

彼は、いじけずに、ただ必死にグウェンとじーちゃんとともに、世界を救っていた。

 

そうだ。これはただの時計なんだ。重要なことは、

 

「誰かを救けるからヒーローなんだよ!」

 

もう忘れない、己の原点。誰かを救けたいという想い。

 

そのために、いじめっこにも立ち向かった。困ってる人を助けた。

 

そう、憧れのじーちゃんのように。

 

「ボクは、じーちゃんみたいに、困ってる人を救けるヒーローになるんだ。小さいころから、っそしてこれからも、それだけは変わんないね!」

 

強く、もうブレないであろうベンの顔つき。

体だけではなく、その精神までもが大人になったベン。

 

揺さぶりが効かないと分かるや否や、AFOは戦闘態勢へと移る。

 

「そうか。じゃあ僕は」

 

「世界に仇なす、魔王になるとしよう。君も、OFAも、全てがそのためだけに存在する!!」

 

空中浮遊からの、ジェット噴射。瞬きの間に世界を壊せるスピードで彼は駆ける。

 

そのコンマmm秒でAFOは出来得る限りの攻撃を噴射。

 

視界を覆うような超多種極限攻撃。

 

BOMM!

WHOON!

BROOOWW!!

 

その全てが、ベンの体に触れて、消えていく。

 

「ボクには効かないよ!!」

 

「ああそうだろう!」

(【崩壊】は効かない。炎や水、精神干渉、次元変化。どれも、彼に変化を起こすことは叶わないだろう。そんな不条理な身体組成だ。)

 

「でも、」

 

弾幕攻撃で視界が悪くなったベン。

その隙にAFOが彼の胸に手を置く。

 

ペタリ

「これならどうだろう」

 

 

その瞬間、AFOの右手が、じわじわと黒く染まっていく。まるで、エイリアンXのように。

 

「!!??」

 

「君は、外部からの干渉を受けない体なんだろう!?だけど、この【吸収】は、君の体の性質を僕に反映させるだけだ。

!だから、」

 

QWANNNNNNN!!

 

「君は、僕の糧となるんだよ!!」

 

「ッさせるか!!」

 

懐に潜り込んだAFOを引きはがそうと、薙ぎ払う。

一振りで街をいかようにもできる彼の腕は、

 

AFOを透過する。

 

(【ゴーストフリーク】。【ビッグチル】!)

宇宙でも稀有な、幽体となれるエイリアン。

 

「本当に便利な力だ!!」

 

ビッグチルの透過は、敵が触れると凍る。もちろん、エイリアンⅩには干渉できないため、彼が凍ることは無い。

 

が、

 

彼もまた、AFOに触れることができない。

 

触れるには、リングにより、自身を【幽体に触れられる体】に変化させなければならない。

 

その、わずかな時間をAFOは与えない。

 

「君はまだ未熟なんだろう!?所詮は高校生だ!!」

 

「救うことも、壊すことも知らない、ただの無知な子どもさ」

 

ここだと判断したのか、AFOは複製腕を増殖させ、それらで彼をコピーし始める。

包み込むような触手は、全てがエイリアンXと同色となっていく。

 

「伝わってくるよ!この力のすばらしさが!君のやっていたことは本来の力とは程遠い!!見せてやる、本当の‥」

 

GASHHIIINN!!!

 

「力を…ん?」

 

そのとき彼が動きを止めたのは、何かが体を拘束しているから。

 

(別に、拘束がきついわけではない。すぐ引きちぎればいい。

 

だが、おかしい。

 

なぜなら、今僕は透過中だ。

 

触れることなど誰にも、)

 

疑問を解決するため視線を落とすと、そこには自身を縛る黒鞭が見えた。

その出発点は、空中に浮遊する緑谷。

 

「っっっっなぜ貴様が!!」

 

焦るAFOとは対照的にただただ冷静に跳びあがる緑谷。

 

(ベン君は、AFOを殺傷する以外の方法で倒そうとしている。エイリアンⅩならそれが可能なんだ!だけどやつの能力を考慮した時、そのタメに間に合わない可能性が出てくる。

 

そして、奴の性格上、必ずベン君の力を吸収しようとするはず!それは先代様達の記憶から間違いない!

 

なら、奴がベン君に近づく方法は、ゴーストフリークの透過だ!)

 

「そして、ゴーストフリークの幽体には、ゴーストフリークの幽体のみが触れられる!!」

 

そう。緑谷がさきほど発現させたのは、グレイマター。その知力と知識。加えて彼の分析力でAFOとベンの行動を全て先読み。

 

そして、グレイマターの知識から得た、ゴーストフリークの性質。

 

ベンの一撃を確実に当てるために、彼は動く。

 

(動かない手足は黒鞭と浮遊で何とかできる!そして、敵を拘束した一瞬で、)

 

彼の左腕は白黒模様に変化している。

 

アップグレードにより、ユニトリックスそのものをその場で改良したのだ。短時間だけ、複数のエイリアンの力を行使する仕様へと。

 

これは、全身を変身させるオムニトリックスにはできない手法。

 

親友との思い出のエイリアンたち。それら全ての力を拳に込める。

 

BAQWANN!!

 

グレイマターの知力

ワイルドマットの感知

フォーアームズの膂力

ダイヤモンドヘッドの硬化

リップジョーズの鋭刃

アップグレードの改良

スティンクフライの飛翔

ゴーストフリークの幽体化

XLR8の加速

ヒートブラストの熱爆破

 

10タイプのエイリアンの力が、一瞬だけ、彼の拳に灯る。

 

 

AFOは吸収のためベンにへばりついていた。それに加え、黒鞭による捕縛。

彼は攻撃を避ける必要が無かったのだ。だからこそ、吸収に全神経を注げた。

 

しかし今、当たるはずのない攻撃を当てる者が、眼前に迫る。

 

黒鞭を縮ませた反動で、AFOの真上に来た緑谷。

 

彼が放つのは、全身全霊の、未来のための一撃。

 

その拳に、神野でのオールマイトの影が見える。

血を吐き散らしながら、皆の期待に応える、憎きヒーローの影が。

 

「この…オールマイトの…亡霊がぁぁぁ!!」

 

しかしそのセリフは間違っている。今の緑谷は、この瞬間だけ、オールマイトを超していた。

 

師匠の力と、親友の力。最も信頼できる者達に託されたその拳を、振りぬく。

 

OMNIVERSE SMAAASSH!!!!(オムニバス スマッシュ)!!!!!

 

DGOOOOOOOOOONN!!!

 

超高出力、超多数能力を乗せた拳を顔面に叩きつけられたAFO。

 

ベンにまとわりつく複製椀は全て引きはがされ、地面へと墜落。

 

パンチそのものは、自身のエイリアンDNAで相殺することで致命傷には至らなかった。

 

が、その処理が、その数秒が命取り。

ゴーストフリークの幽体化が一瞬解ける。

 

上空には3本のリングを、重ねたベン。

 

「ほんっと!!イズクは最高の親友だよ!!!」

過去と、未来と、今。

 

全てのオムニトリックスが彼に共鳴する。

 

黒、白、緑のリング。最も大きな黒色のリングに、それぞれ白と緑色のリングが重なっていく。

 

エイリアンXによる想像実現能力を、3重に合わせた技。

 

その名も、

 

10(テン)TEN(テン)!!(テン)!!!」

 

FRASSHHHHHH!!!!

 

太陽のような熱と、月夜のような冷たさを持つ、ただ美しい白光が、AFOを包む。

屋根のない小部屋のような世界。周囲には黒嵐が吹き荒れ、不安定な世界。

そこに立つのは、

「今度は、イズクも来たね」

 

「こ、ここは確か…OFAのせか」

 

「いいや、ここは僕の世界だ!!」

 

ベンと、緑谷と、異形のAFOだった。今度は、全員が外での世界と同じ姿。

悍ましい姿のAFOに、ベンは尋ねる。

 

「なぁ、AFO。お前は一体、何がしたかったんだ?」

 

緑谷の質問と似て非なるもの。”なぜそんなひどいことができる”という趣旨ではなく、純粋な疑問だ。

子どものような質問に、苛立ちながらAFOは答える。

 

「またその質問か。ヒーローはすぐに自分を基準に考える。君らと同じだ。ただ、憧れたんだ。魔王にね」

 

落ち込むようなAFOに、緑谷は憤る。

 

「ふざけるな…どれだけの人が犠牲になったんだと思ってる!!」

 

「仕方ないさ。僕だって心苦しいんだぜ。だけど、僕の夢のために、彼らには散ってもらった」

 

「その中には、死柄木だっている」

 

「ああ。弔か。彼は、僕の器になってもらうためだけに作ったんだ。」

 

「…ッ!!」

 

憤る緑谷を、ベンは腕で制止する。それを見て嬉しそうに、AFOは吐き出す。

 

「君らがヒーローに憧れたように、僕は魔王に憧れた。残虐非道で、世界を転がすことができる、最高の魔王にね。だのに、オールマイトは、それを阻んだ。自分の理解出来ない価値観を悪と断罪する。君らこそ紛れもない敵じゃないのかい?」

 

愉快に笑うAFOに、ベンは冷静に答える。

「むやみやたらに他人を傷つける。だからお前は敵なんだよ。」

 

「そうかい…じゃあ仕方がないね。だがそれでどうする?確かに緑谷出久の攻撃はきいたよ。まだ頬が痺れてる。」

 

痛がるように頬を摩る。

 

「だが、それだけだ。二度はない。そしてテニスン君。君は僕に傷一つ付けられない。力が足りず、あるいは使いこなせない君たちじゃ、もう僕には勝てない!!」

 

体の異形化を進行させようと力むAFOを、哀れに思うベン。

 

「あっそ…」

 

「…あ?」

 

ベンの言葉と同時に、彼の異形の右腕が灰になる。

その化け物の殻から出てきたのは、死柄木の右腕だった。

 

異空間とはいえあり得ぬ事態。ここまできてようやく気づく。ベンが最後に放った白い光の効果に。

「ま、まて!まさか!!」

 

「確かにボクはお前を傷つけることはできない。セレナとの約束だから。だけど、2人はこれで納得してくれた」

 

その瞬間、その空間に2つの仮面が現れる。突然の介入者に焦るAFO。

 

「誰だ貴様らは!」

 

「我が名はベリカス。エイリアンXの自我だ」

「私はセレナ。エイリアンXの自我よ。だけど、ベン。」

 

「本当にお前は残虐だ。」

「本当にあなたは寛容だわ。」

2人は声をそろえる。

 

「「【AFOから個性を奪う】とはね!」」

 

その憤怒の顔は、悪の魔王のように、低く笑う。

 

「個性やエイリアンの力で未来永劫世界を支配しようとしたものから、個性のみを奪う。そして、その個性に根付いたその意識まで抹消するとは!」

 

その逆に、セレナは慈愛の女神のように微笑む。

 

「人間なんて、元々【個性】を持たない存在。幾多もの命を奪ったAFOを、普通の人間に戻してあげるだけなんて!」

再び、2つの自我は声をあげる。

 

「なんて酷いんだベンは!」

「なんて優しいのかしらベンは!」

 

たったそれだけを言って仮面たちは消えていった。

 

たったそれだけを言うために彼らはこの世界に介入してきた。その力に、緑谷は少し恐怖した。

 

同様にベンも彼らを好ましくは思っていないが、力を貸してもらった身。軽く手を振る。

 

そして、頭の後ろに手をもってきて、軽く。

 

「ってことで、君の夢は終わりだよ、AFO。」

 

「ふざけるな、ふざけるな!!僕は、僕の力は僕のものだ!誰にも奪われることのない!」

 

彼の左半身が灰となり、ただの人間の体が見える。

 

「その体まで奪っておいて、よくいうよ。タルタロスには本体までいる癖に!!しっかりそこで反省しろ!!」

 

ベンの言葉を契機に、彼の全身は灰になっていく。

 

「僕の、僕の夢がぁぁぁっぁぁぁぁ!!」

 

山のような灰だけがそこに残る。かと思えば、

白髪の、蕁麻疹の出た青年が埋もれていた。

 

それが誰か確認した緑谷は、

 

「…終わったんだね」

緑谷は小さくつぶやく。ようやく、その宿命を果たせたのだ。【AFOを討つ】というOFAの宿命。

 

9代に渡る宿願が、今、叶えられた。安堵と感謝の気持ちをベンに伝えようとする。

 

が、ベンの顔は浮かない。

 

「いやー…それがさ…ボクが戻れるかわかんないんだよね」

 

「え?」

 

意味が分からない。戻れるとは、現実世界のことだろう。この世界は今にも崩壊寸前。すぐに戻れるはずなのに…

?顔の緑谷に、バツが悪そうに説明するベン。

 

「さっきのお面のやつらにさ、【お前は自分達(エイリアンⅩ)の世界に残れ】って言われてさ。なんとか逃げたいんだけど、できるかわっかんないんだよね…」

 

珍しく弱気なベン。それだけ彼らの力が脅威なのだろう。その力は緑谷も目の当たりにしたから知っている。

 

だが、それでも、

 

「せっかく倒したのに!ベン君の無実だって…!!」

 

「ま、とりあえず、じゃあね」

 

手をふらりと振ると、ベンは闇に消えていく。

 

「ベンく…!!!!」

 

「ん…!!?」

 

意識が覚醒する。視界にはきれいな青空。

 

あの意識の世界から戻ってきたのだ。

体が痛い。起き上がることすらできない。

 

「ベン君!!!!」

 

しかしそれでも呼びかける。激痛など忘れ、ただ、親友の名を。

 

彼の眼前にはエイリアンXが仁王立ちしていた。

彼は直立したまま一歩動かない。

 

もしかしたら、あれが最後の…

 

最悪を想起した時、

 

QWANN!!

 

いつもの音と、光が発される。

 

変身が解かれたかと思うと、

少年の姿が見える。

 

彼は、バタリと、あおむけに倒れる。

 

未だ返事がない。

 

「べ…!」

 

駆け寄ろうとしたとき、

 

仰向けに倒れた彼は、

 

首をこちらに向け、

 

ニカッと笑いながら、

 

ピースサインを掲げていた。

 

 




・色々とわかりづらい展開、描写があったかもしれないので、そこは感想欄で!
・次回、最終話!!

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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