【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
生き物ではない。最初に飯田が目の前のものへの感想はそれだった。確かにその通りなのかもしれない。手足はあるが関節はなく。目、鼻、口すらない。顔と思わしき部分にあるのはただの円。黄緑色で縁取られた円はぼんやりと光っている。
「そ、その姿はなんなんだいテニスン君」
思わず質問する飯田。しかしそこに緑谷がかぶせる
「何やってんのベン君!!フォーアームズじゃないよ!!」
「確かにフォーアームズに設定したのに…」
ここにきて初めてのオムニトリックスの誤作動。さらには名前すらつけていないエイリアンへの誤変身。
「声は…その円から出てるん?なんかマイクを通したみたいな声やね。ちょっとかわいい!」
さすがは現役女子高生。目の前の意味不明生物?に対してもかわいい、の一言で済ます。奇怪な姿のベンに対して、躊躇なく疑問をぶつける麗日。
「そのエイリアンはどんな能力なん?」
「…ない」
「え?」
「わかんないだよ…ボクとイズクで特訓してた時もこいつだけは能力はわかんなかった。強いていえば体が少し伸びるくらい…」
すっかり意気消沈したベン。対して焦る緑谷。
「と、とにかくそいつで何とかやりきらなきゃ!!いまからでも能力を探すか…?でもオールマイトとの特訓で耐久性くらいしか特に秀でていなかった。それが特性?いや今までのエイリアンとの差が激しすぎる。ならあのときでは発揮できなかった理由がある…」
友達を助けようと頭をフル回転する。そんな緑谷をみて決心するベン。
「サンキュー、イズク。僕も何とかするさ…!!」
その後数分だが4人で特性を探す。しかし見つからない。
「テニスン、準備しろ。つぎだぞ」
瀬呂の順番が終わろうとし、ベンに準備を促す相澤。
「やばいやばいやばい!!!結局なんなんだよこいつ!!」
「仕方ないよ!!けどこのエイリアンは手が大きい。もしかしたら超記録が出せるかも!!」
珍しく非論理的なこと言う緑谷。それほどまでに追い詰められているのだろう。友のためにここまでなれることは彼の美点である。
同様に焦りまくるベン。あまりに不安になり、きょろきょろしだす始末。そんな彼の目に飛び込んできたのは八百万。いや正確に言えば彼女の創造したソフトボール射出機であった。
彼女の個性は創造。自らの理解の範疇にあるものならすべてを作り出せる。作ろうと思えば核レベルのものまで作ることが可能な彼女だが、このソフトボール投げ、という至極原始的な競技には原始的な造りの機械で対応しようとしていた。
その機械をみた瞬間ベンの、否、それの本能がはたらく。
相澤は瀬呂の投球を見ている。それを確認し八百万のもとへ。
「なあ、それ、貸してもらえない?」
「え、かまいませんけど…私が出したものだとばれたらあなたが除籍処分になる可能性がありますわ」
あくまでこちらの心配をする八百万。前世は心優しき貴族だったのかもしれない。
その答えにニヤリ、とするベン。
「大丈夫、これ、は使わないから」
言い終えると腕を伸ばし機械に触れる。瞬間、溶ける。
・
・
・
・
・
「次、テニスン…テニスン、どこ行った」
「はい、はーい」
声がした方向を見て言葉を失う相澤。そこにはガシャコン、ガシャコン、と無機質な音を立てて歩いてくるなにかがいた。それは原始的なボール射出機、に足が生えたものだった。
八百万オリジナルものとは違い、先ほどまでベンが変身していたエイリアンの色彩となってる。真っ黒の体表を通る緑色の線。先ほどよりもより機械らしくなっている。
「テ、テニスンか?」
「そーだよ?さっさと始めちゃっていい?」
「…ああ」
訝し気にベンを見つめる目も許可をする。道具の使用は認められてないが道具になることは禁止されていない。ベンの理屈はこれだった。
重機か、はたまた虫か。そのどちらともいえる今のベン。サークル内に入り、ボールをもらう。
そんなベンを見て考察を始める緑谷。
(機械との同化が個性か?確かに強力だ。町にいる車と合体するだけでも意思を持った車ができる)
ほとんど正解を導く。しかし変身したベンは違う。正解を彼の本能が導いてくれる。
(合体した今なら…わかる!こいつの力が!!)
甲高い音を立て、ベンが、いやその機械は変わっていく。先ほどまで手持ちサイズだったそれは、重々しい音を立てて内部から組み替えられる。少しの間、静寂の中を闊歩した音が消えると、大人でも持ちきれないほど黒緑色の銃が完成する。Ziziziz、と何かをチャージした後、その銃は叫ぶ。
「いっけぇぇぇ!!!!」
ドウン!!!いかつい音が鳴ったのが先か、ボールが飛んで行ったのが先か。ほかの者にはわからなかった。視認すらできない速さでボールが射出されたからだ。
八百万がポツンと言った。
「レ、レールガン…」
「記録…5000メートル以上、そこから先はボールが消失した」
相澤が記録を伝え、それを聞き喜ぶベン。
「やったぁ!!」
心の底から喜んでいるのだがそれは伝わらない。なんせ手も口もなく、何ならレールガンに擬態する虫の様相だからである。
カサカサカサカサとあれを彷彿とさせる動きで八百万の元へ。
「ありがとう。たすかったよ」
「ひぃっ!!い、いえとんでもないですわ」
すごく、気持ち悪がられていた。
「ベン君すごいや!!」
駆けて喜んでくれるは緑谷。
「先に無限の記録を出したオチャコには敵わなかったけど…まあなんとかなったよ。それに発見できた。こいつの能力は」
「機械機能改良、だね」
「…さすがイズク。よくわかったな」
「そうでもなきゃあの威力は説明できないからね。名前は決めたの?そいつだけ決めてなったでしょ?」
「ああ、機械を改良して戦う、こいつの名は、アップグレードだ!!」
そうしてベンのエイリアン全てに名が与えられた。
・
・
・
・
・
その後持久走、長座体前屈を終えた一同は記録発表に身構える。
「大丈夫かな…」
「大丈夫だよ!ベン君はXLR8とアップグレードで超記録を出してるんだから」
「でも他がダメダメだったんだぞ?正直こわいよ」
「どうしたの、珍しく弱気じゃないか」
ベンが弱気になっている理由。それは、クラスメイトの個性であった。
ベンはオムニトリックスを得たことで自分は特別である、と思っていた。選ばれしヒーロー、ヒーローになるのが運命だと。しかしそれは違った。この社会では個性は合って当然。自分はそれを手に入れただけ。その証拠に皆超記録をいくつも出すものもいれば、全てでかなりの記録を出すものもいた。
「ボクは先の二つ以外ダメだった。ボクはスタートラインに立っただけなんだ」
「そんなこと‥」
言葉を詰まらせる。緑谷も同じことを考えていたからだ。皆が持っているものをこの前やっともらった。それを自覚しているからこそ努力ができた。そんな緑谷だからこそベンにいう。
「それに気づいたなら大丈夫だよ!!僕らは一緒に頑張るんだろ?」
その言葉に顔を上げるベン。
「ああ、こっからがボ」
「では結果発表に入る」
ベンの決意はむなしくも相沢に遮られる。
「じゃ、トータル成績を一斉に開示する」」
モニターに順位が映る。ベンの順位は…
身構えた瞬間。予想外の言葉が
「ちなみに除籍はウソな。」
「!?」
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
ハッと乾いた笑いで子のように言う相澤。当然生徒の反応は
「はーーーーー!!!!???」
これである。中にはそれを予想していたものもいるが、大半の者は驚きと安堵でへたり込んでいた。
とくに、除籍対象だったものは腰が抜けていた。
「あ、危なかった」
腰を抜かしたのはベン。その順位は最下位であった。
「だ、大丈夫?」
手を差し伸べる麗日。
「オチャコ…ありがとう…とりあえず命拾いしたよ」
「よかったね」
「じゃあこれで1-A歓迎会を終了する。解散」
「いやどんな歓迎会だよ!!」
・
・
・
・
・
レクリエ―ションが終わり1人職員室へ向かう相澤。そこに現れるは
「相澤君の嘘つき!!」
「オールマイトさん…」
オールマイトが話す内容はこうだった。相澤は去年一クラスを実際に除籍している。君は最下位だったテニスン少年に可能性を感じたから取り消したのだと。
「…違いますよ。あいつは…異質すぎる。個性が個性の範疇を越している。さらにあの精神性。なにかあれば敵に落ちてもおかしくない無邪気さ。学校で見ている方が世のためだと思ったんです。あいつの個性は…あなたみたいなものだ。その使用者が偶然正義の心を持っているから我々は助かっている」
「う、うん?つ、つまり、どういうこと?」
「…あなたはすばらしいヒーローだってことです」
「ちょ、素晴らしいだなんて…ってもういない!?」
オールマイトを振りぬき一人思案する。
(そう、アイツの個性は…まるで、個性じゃないみたいだ)
ふおんかな
ふおんじゃないよ
ふおんだよ
入学編終了!!
ちなみに体力テスト編の誤変身はもう1パターンありました。そっちにしようかと思ったんですが今回の話より無理やりなので没に(笑)
最もおもしろかった章
-
(A)雄英受験、入学
-
(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
-
(C)GW
-
(D)USJ(ケビン戦)
-
(E)体育祭(ウォッチの故障)
-
(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
-
(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
-
(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
-
(I)神野編(エイリアンフォース)
-
(J)終章