【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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ベンは交渉役というか、説得役は向いてないな、うん。


46話 そんなヒーローに

「オイオイ嘘だろ?!まだ5分もたってないのに…うわっ!!」

 

自分の手を見て変身解除を悟るベン。轟は“今だ”といわんばかりに氷を這わせる。しかし、体を動かすことすらままならない状態での氷結は、ベンに避けられる。

 

氷をよけ、転がるもすぐに立て直すベン。対して攻撃を仕掛けた轟は

 

「…はぁ…はぁ…」

 

悪態をつくことすらできない。息は白く体は凍る。そんな状態でもなおベンを狙う。人間体であり道具のないベンなら、今の自分でも止められると判断したのだろう。だが

 

「おっと…!ほっ!!なんだ!避けられるじゃん!ボクって天才!?」

 

なんなく氷を躱すベン。彼の身体能力が戦闘訓練のころから伸びたのか。正解はNO。

 

階段を上ってきた緑谷は的確に分析する。

「…轟君の氷が遅くなってるんだ…」

 

「デク君!!もういいの!?」

 

観客席に行き、麗日の隣に腰を据える緑谷。爆豪戦での治癒を終え戻ってきたのだ。治癒が終わったといってもすぐさま治る怪我ではなかったらしく、右拳はグルグル巻きで固定されている。

 

「もう今日は腕は使っちゃいけないって…でもそれより試合だよ!ベン君はいつ変身解除したの?」

 

「さっき!でもおかしいんよ。変身したのも変な姿だったし、解除も早かった」

 

また新しいエイリアンにでも変身したのだろうか。だとすれば危険な可能性もある。とにかく、今はベンと轟を観察し次に備えなければ。そう考え試合に集中するが…

 

「なんで轟君、氷があんまりでらんのやろ?」

 

「多分、使用制限があるんだ。一気に出せる限界の体積量がね。それを超えたら自分でも冷気に耐えられなくなる。でも…」

(それは炎を出せば解決する。それをしないのは…)

 

思い出すのは試合前の轟との会話。()は戦闘において使わない。家族間でのトラブル故に深くは立ち入れない問題ではある。それでも

 

「こんな形で負けるのかよ、轟君…」

 

必死に振り絞った氷結も身軽なベンには躱される。とうとう限界を迎え、もう風前の灯火。氷どころか冷気すら出るか怪しい。

 

その状態を見たベンは“しめた”と、落ちていた氷の破片を投げつける。いくら氷を出せるからと言って、氷による物理攻撃が無効化するわけではない。鋭くとがった氷柱は轟の顔に迫り来る。

 

「くっ!」

身をよじりギリギリ避けるも、そのまま倒れてしまう。再び轟がベンを見上げる構図になる。

 

「おいおい、トドロキ。もうおねんねの時間か?まだ太陽はそこにあるぜ?」

 

轟の限界を目の当たりにし調子に乗るベン。太陽を指さし馬鹿にする。自分が優勢となるとすぐに調子に乗るのが彼の悪いところ。

 

ほんの少しだけ回復した轟は、少量の氷でベンの足を拘束する。少なくとも、これで攻撃はされない。

 

「おい、ずるいぞ!こんなのありかよ!!」

 

んー!!んー!!と唸るも足は動かない。どころかひっくり返ってしまうベン。

互いにその場から動くことが叶わなくなり、膠着状態となる。先に口撃を仕掛けたのは元気いっぱいのベン。

 

「なぁトドロキ?お前エンデヴァーの子どもなんだよな?ならボクのこと焼いたりできるんじゃない?ほら、撃って来いよ!!」

 

安っぽい挑発。その真意は轟の炎で足元の氷を溶かすことなのだか逆効果。轟は冷たく言葉を返す。

 

「…戦闘において左は使わねぇ…」

 

「はぁ?なんでさ?」

純粋な疑問。なぜ己の力を目いっぱい使わないのか。無垢な少年の問いに、また少年は返す。

 

理想の個性をもって生まれさせられたせいで、母と別ってしまったことを。全ては父の歪んだ思想のせいでおかしくなった。だからこそ、父の個性なしで頂点に立ち、父を完全否定すると。

 

緑谷はこの話を聞いたときに、少し震えた。なんて境遇だろうと。そして彼の信念を理解しつつ否定した。同じ15歳なのにその境遇は全くの逆。納得はしないまでも理解はした。

 

対するベンは、

 

「お前何言ってんの?ボクに負けそうなのにさ」

 

軽く笑い飛ばした。

 

「…あ?」

 

「ばっかじゃないの?詰まんないことにこだわってさ。グウェンでもそこまで気にしないての」

 

相手の境遇に、信念に寄り添うこと無く一蹴。肩を竦め、ヤレヤレといった動作までとる。その態度は轟の心を沸騰させる。

 

「…!!歪んだ思想で家族がめちゃくちゃにされたんだ!俺が持ってるのはそいつの個性なんだぞ!お前にわかるか?!この気持ちが!」

 

怒る轟。そんな彼にベンは目を明後日の方向に向けて答える。まるで興味なさげだ。自分で聞いたのに…

 

「さあ?ボクにはぜんっぜん理解できないね」

 

「お前のその個性だって血だろうが…!」

 

個性は親から授かるもの。それはこの世界の基本知識だ。確かに突然変異という稀有な例はある。だが世代を経たことで個性は複雑化し、逆にその突然変異すら少なくなっている。

 

もし親から個性を引き継いでいなければ、それは化け物か無個性くらいのものだ。

 

そのような一般常識を頭に控え轟は申したのだ。“お前だって遺伝で、親から個性をもらっている。その個性が望まない物だったらどう思う?”そう、伝えたかったのだろう。だがしかし、無個性のベンにはその言葉は意味をなさない物だった。

 

「知るかよ。ボクのこの力はボクの物だ。誰が何と言おうとな!!」

 

腕を掲げウォッチを轟の方に向ける。その行為自体は轟は理解できない。だがしかし、彼の言葉にある一つの記憶を思い出す。

「もうヤダ…僕はお父さんみたいになりたくない…お母さんを傷つけたくない…」

 

父親との訓練で嫌気がさしていた。

 

「…」

ピッ

まだ母さんが元気だったころだ。訓練は嫌だったけど、そのテレビを母さんと見てるときは確かに幸せだった。

 

テレビにはオールマイトが映っている。

【個性、というのは確かに親から子へ受け継がれています。しかし、本当に大事なのはそのつながりではなく…自分の血肉、自分である!と認識すること。そういう意味もあって私はこういうのさ。“私が来た”ってね!!】

 

オールマイトが言い終える。誰に向かってのメッセージだったのかはわからない。ただ、その笑顔に母は照らされていた。彼の言葉を受けてか、それともずっと思っていたことなのか、母は言った。

「焦凍??…いいのよお前は。血に囚われることなんかない。なりたい自分に、なっていいのよ?」

 

いつの間にか忘れてしまっていた。なりたい自分。

(俺は、俺は…!)

 

左の目は火傷に覆われている。ヒーロースーツでは左を丸ごと隠し、この傷は見えないようにしている。今、その痕からは、火傷を隠すように焔が舞い始める。高ぶる心が抑えられない。だがまだ、父の呪いが頭から離れない。

 

【お前は奴を越える最高傑作なのだ】

 

そんな轟に気づかないベン。轟の動きが止まっているため言葉を続ける。

 

「ボクはこの力で、じーちゃんみたいな、いや、じーちゃんを超えるスーパーヒーローに成るんだ!!」

 

「俺だって…ヒーローに!!!!」

 

WWHAAMMM!!!

 

「まあもう成ってるかのしれ…うわっ!!な、なに!?」

 

突然の熱。体を包む熱さに驚き前を向く。そこには笑っているかのような…泣いているかのような轟がいた。どうやら、涙が蒸発してしまったらしい。熱の発生源は轟の左半身。

 

似合わない笑い顔を作りながら轟はつぶやく。

 

「思い出したよ…テニスン。俺がなりたかったのは…」

(親父じゃない。母さんだけの力しか使わないヒーローでもない。ただ、)

「誰かを救けるヒーローだ」

 

決意した。自分は彼のようなヒーローになると。気づいた。この力は自分の力なのだと。

 

ベンからすれば自分が喋っている間に急に笑い出した轟。そんな彼にただ驚く。だが、そのままでは居られない。

「意味わかんないよ…!なんで急にやる気出してんだよ!!ああもう…早く動いてくれよ!!」

 

轟が動けるとなると話が変わってくる。人間体のままで轟に挑むのは自殺行為だ。焦りながらポチポチとウォッチを押すも未だに赤いまま。

 

対する轟の体からは霜が消え、全快。そもそもべンは轟にダメージを一切与えていなかったため、形成は一気に逆転。

 

「もう終わりだ…テニスン」

 

左手を突き出しベンの方に構える。左の掌はオレンジ色に変色していく。ベンは人間体のままである為火力はもちろん落とす。だが、食らえば間違いなく場外には吹っ飛ぶほどの威力。

 

「…ありがとな」

 

QWAANN

小さくつぶやき放つ。エンデヴァーを彷彿とさせる赤く燃ゆる炎。揺らぎながらベンに向かい、食らおうとする。

 

BBOOOWW!!

 

氷で足をつかまれていたベンはまともにくらってしまう。拘束していた氷は溶け、白煙がモクモクと彼を包む。

 

あの炎ならば場外は必須。その確認を取る為目を凝らす審判。煙が晴れて来て見えたのは吹っ飛んだベン、ではなくダイヤモンドの壁だった。

 

「出て来やがったか」

キラキラと光る壁。それは自分の能力と性質が似通っている。

飛び出た壁を見て炎を防がれたことを悟る轟。だがもう驚かない。ケビン戦でも見たことがあるその壁。おそらくあの歩くシャンデリアだろう。ならば攻撃速度は己の方が速い。制限なしの自分ならば互角以上に戦える。

 

そう判断した次の瞬間、壁の後ろから放射軌道で炎弾が攻めてくる。

BOWW

 

何発もの炎をすぐさま氷でガードする。なんとか守り切るがすぐに氷は溶けてしまう。

 

轟はそこで気づく。先程の四本腕の虫は、ベンのエイリアン2種類を掛け合わせたものでないかと。そして、いま見た二つ能力も知っている。

 

炎×ダイヤモンド

 

全員が注目する中、壁の向こうから出てきたのは、歩く、()()シャンデリア。

 

「さあ、第二ラウンドと行こうぜ!!」




・冷静に考えると轟の個性レベルで弱点なしってやばいな…
・ベンを無個性なのか、実は…!!なのか、悩んでいる…
・ベンはデリカシー0だから、こんな物言いになっちゃうんだなぁ…

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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