【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
宇宙。無限の可能性に満ちている、光と闇の世界。人類の祖先である霊長類が誕生して一億年たっても、今なお宇宙がなんたるかはわかっていない。どんなに発展しようと、どんなに個性で知能を得ても、宇宙のすべてを知ることができない。
だが、それは人類に限った話。人類ではなく、地球生物でもなく、太陽系生物ですらない者ならはどうだろう。彼らは既に、宇宙が何たるかを知っているのかもしれない。
そして、宇宙を知り尽くしたものが、ベンの目の前に立っていた。
「グレイマター?!え、なんでボクの目の前にいるの?!」
ベンは混乱する。目の前にいるのは自分の変身エイリアンの一人。多少姿は異なるが、足元にいるその二人は紛れもなく同種だった。2人のうち、細身で身長の高いほうが憤慨する。
「お前!何という口の利き方だ!貴様のような劣等種族が我々に口を利けると思うなよ!」
そんな彼を制すように、老体と思わしき方が指を指し、外を示す。
「…アルビード…」
「…さっきのロボの侵入経路を調べてくる…」
そう言って口がきつい方はスタスタと部屋を出ていく。残った方はまじまじとベンを見つめている。空気を読んでかマックスが紹介を始める。
「やあアズマス。この子は孫のベン。こっちはグウェンだ」
「…」
紹介を受けても何もしゃべらない、アズマス。そんな態度に業を煮やしたベン
「なに?あんたボクのことじっと見て。確かに一瞬で宇宙まで来れる個性はすごいかもしれないけど、ボクの方がもっとすごいからな?」
その言葉を受けようやくアズマスは口を開く。
「個性…?ああ、異能のことか。今はそういう呼び方をしとるんじゃったな。個性なんぞという出来損ないの能力といっしょにするんじゃない。先のワープはこの“ナルボイドプロジェクター”を応用しただけじゃ」
そう言うと、自分の体ほどもある、巨大な懐中電灯のような銃を出す。その銃を見てマックスは声を上げる。
「おお、ついに出来たのか!」
「ああ…ワープ機能はまだ不完全だがな。実験的にお前たちに使ったんじゃ」
何気ないアズマスの発言。モルモット扱いされたグウェンは恐る恐る聞いてみる。
「そ、それって失敗してたら…」
「ただ異世界に迷い込むだけじゃ。マックスなら生き延びれるだろう」
勘定にベンとグウェンが入っていない。倫理観が人間の常人のそれとは異なる。いや、そもそも人間なのだろうか。宇宙にいて、仲間も同じような異形。となると…
グウェンは自ら仮説を立てていく。が、すぐにその正解は本人から出てくる。
「…わしらはガルヴァン星人。お前ら地球人とは別の宇宙からやってきた」
「う、宇宙人!?ってことは…本物のエイリアン!!??」
ベンは目を丸くして大声を出す。それも当然。今までベンが“エイリアン”と呼んでいたのはあくまでも、自分が変身する異形のこと。個性の延長線上のものであり、宇宙人のことを指していたわけではない。
ガルヴァン星人。小さな体と超頭脳が特徴のグレイ型エイリアン。その知能は宇宙でももっとも高いと言われている。一部の種族を除き。
目の前に本物のエイリアンが現れた。宇宙船に乗っており、内部の機械からも本当だということが伺える。固まっている2人を置いてマックスは、アズマスに修理を願う。
「アズマス。オムニトリックスを見てやってくれ。どうやら壊れとるらしいんだ」
「…」
無言でベンの腕に飛び乗る。小さな体には、ベンの細い腕でも足場になる。道具もなしに、手首にあるウォッチをいじり始める。手首でちょこまかとされ、くすぐったいベン。思わず笑ってしまう。
「く、くすぐったいなぁ!それに、お前、治せるの?確かにグレイマターは頭いいけどさ」
無礼な物言いのベン。その口の利き方は高校生とは思えないが、容姿は10歳前後のため違和感はない。とはいえアルビードがいれば注意を受けただろうが…
ベンの失礼な質問にアズマスは作業しながら答える。
「何を言っとるんじゃ。これは儂が作ったんじゃぞ」
「ええ!!?」
ベンが驚き腕を挙げ、アズマスは振り払われてしまう。シュタッと着地した後、オムニトリックスの現状を語る。
「ふむ…システムθが作動している状態か。それに…不完全DNAを吸収しているな。まあ時期になくなるだろう…」
「あ、そう?じゃあ早く治してよ!そのシステムなんたらってやつ、使いにくくてしょうがないよ」
ベンの言葉を腰に手を当てて聞くアズマス。横に閉じる瞼をパチパチとさせた後、ベンに言い放つ。
「…やはり、駄目だな」
「え」
「オムニトリックスを返してもらおう」
ただ無感情に言い放つアズマス。彼にとっては予定していたことなのかもしれない。製作者が拾い主にが返せという。それは当然と言えば当然だ。
だがベンにとっては予想外の一言。自分のアイデンティティともいえるそれを返せと言うのだ。当然。ベンは反抗する。
「はあ!?ふざけんな!なんで返さなきゃいけないんだよ!」
「お前じゃ使いこなせない、まだ未熟じゃ。オムニトリックスが無ければ何もできない、非力なお前にこれを使う資格はない」
「やだね!これはボクのものだ。そもそもボクに送ったのはそっちだろ!?」
「違う。お前に送ったんじゃない。見つけられてしまったんじゃ。本来送る相手が見つける前にな」
アズマスはマックスに目をやる。
ベンは思い出す。オムニトリックスが空から落ちてくるとき、急に起動が変わった。もし、そのまま真っ直ぐ落ちていれば、マックスの元についていただろう。振り上げた拳は徐々に下げられ、声のトーンも同様に下がる。
「…じゃあ、ボクが間違って手に入れたってこと…?」
「当然じゃ。オムニトリックスは宇宙最強の武器じゃ。なぜそんなものをお前のような子供に送る必要がある」
ベンは返事をしない。ただ自分の装着しているオムニトリックスを見ている。言葉を返さないベンに対し、アズマスは宇宙のいきさつを話す。
宇宙は誕生以来、種族間戦争が絶えなかったらしい。それこそ星々が互いに滅ぼしあうほどに。アズマスは宇宙の全種族の繁栄を願っているらしく、そのことを憂いていた。
どんなに道理を説いても文明を発達させても戦争はなくならない。何かいい方法はないかと思っていた時、地球でマックスと、そしてもう一人の男に出会ったらしい
「その者は自分が国の柱となれば平和になる、と話していた。そこで儂は思いついた。儂の信用にたる人物を宇宙の柱とすれば、全種族が争いを止めるのではないかと。そうして24年かけ造りあげたのが、端末型多種族変身時計 オムニトリックスじゃ」
なぜアズマスは、多様なエイリアンに変身できる武器にしたのか。それは、柱となる者があらゆる種族になることが出来れば、種族間の意思疎通が図れるからだ。元々宇宙全体の友好関係のため、エイリアンのDNAを集めていたアズマスは、そのDNAを装着者が自由に引き出せる武器を作った。その武器こそが、オムニトリックスなのだ。
「調べたところ、オムニトリックスはお前のDNAと深く融合しとる。外すには専用の機械と時間が必要じゃ。じゃから、ナルボイドプロジェクターを使い、わざわざここに呼んだのじゃ」
「…嫌だ…これは、ボクが見つけたんだ」
「オムニトリックスは子どもの遊び道具じゃないんだ。ましてや100年前にあの事件が起きた地球などで使われてはな」
アズマスの言葉は間違っていない。しかし、無個性で、ヒーローに成りたくても周囲から否定されてきた。どんなことだって下から数えたほうが早かった。しかしその境遇をウォッチは変えてくれたのだ。普通の人間じゃできない人助けだって出来た。なのに…
「…!!!」
その場から逃げるように、ベンは走って部屋から出る。
「ベン!!」
ずっと話を聞いていたグウェンも彼を追いかける。
部屋に残ったマックスは何とも言えない表情でアズマスに提案する。
「アズマス…儂じゃなく、あの子に持たせたままでいいと思うんだが…」
「ダメだ。中継を見ていたが、あやつはオムニトリックスを遊び道具や自己顕示欲を満たすだけに使っている。そんな精神では宇宙を平和にすることなどできん。お前か、あるいは…とにかく未熟者にはオムニトリックスは任せられん」
・
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部屋を出てベンを追いかけていたグウェン。宇宙船は広かったが構造はシンプルであり、すぐにベンを見つけられた。
膝を抱え俯いているベンの隣に座る。
「…しょうがないよ。おじいちゃん、すごいヒーローなんだもん」
「…」
「…けどあんただって使いこなせてたし…別にあんたが持ってていいと思うけどね」
いつものような軽口ではなく、励言を口にするグウェン。ずっと無個性で、そのことを悩んでいた従弟が、ようやく力を得たのだ。口には出さないが、それ自体はよかったと思っていた。しかし、残酷な真実を知ったベンには彼女の言葉は届かない。
俯いたまま、ベンがぽつりといった。
「ボクじゃなかったんだ…」
「え?」
「ボクは選ばれたと思ってた…無個性だったボクに神様がくれた“ギフト”だって…でもちがった。本当はじーちゃんのもので、ボクはヒーローじゃなかったんだ」
「…何言ってんのよ!あんた九州でも皆のこと守ったじゃん!」
初めてのケビンとの闘いの時、ベンは列車の暴走を止めた。あれは、無個性だったころのベンにはできないことだ。このことはアズマスは知らないんだよ、とグウェンはベンを元気づける。が、
「ああ…けどこれが無かったらただの無個性だよ」
めったにない弱気なベン。失敗することは合っても弱音を吐くことはあまりない。そんな彼がここまで困憊するほど、オムニトリックスを取り上げられることは悲痛なことであった。
2人とも黙ってしまう。未だにウォッチは赤いまま。それはまるで、オムニトリックスをベンは使う資格がないことを自ら言っているようだった。
…n
「…今何か揺れなかった?」
「え
ZZGGAANNN!!!
「きゃあぁ!!」
「うわぁぁぁ!!」
座っていた2人が一瞬ふわりと浮き上がる。強い衝撃と轟音の後には、先ほどの侵入の時は比べ物にならないほどの警報が鳴る。周囲は赤くなるどころか暗く停電を起こす。すぐに非常電源が作動するがどう考えても異常事態。
「ちょっ!!??なんなのこれ!!」
「さっきとおなじだ!誰か侵入してきたんだ…じーちゃんたちの方から音がした!!」
祖父たちが気になり、急いで部屋へと走る。いくらスーパーヒーローだったとはいえ、今は60歳を超えている。その能力は全盛期の頃より衰えてしまっている。もし侵入者が先ほどのカニロボットほどの力を持っていれば危険だ。そう判断して足を速める。
ドアが破壊されている。研究場所を保護するための扉だ。頑丈でないはずがない。しかし扉は皮をむかれたかのようにベロンと裂かれている。
最悪の状況を考えながら急いで入ると、そこには、臨戦態勢のマックスとそれを離れたところで見ているアズマス。そして、夢でみた、おぞましいヴィジュアルのエイリアンが佇んでいた。顔からは触手が生え、体躯はベンの3倍。筋肉はオールマイトをも超えるほど。そのエイリアンは、ベンを見て低い声で笑う。
「ふふふ、前の金髪男の代わりに、今度は孫でも連れてきたのか?テニスン」
「どうやってここに来た!ヴィルガクス!!」
・地球で個性が発見されたのは…100年ほど前…ということにしてます…
・ベンが子供っぽいし、グウェンが優しい。けど、わりとこんな感じだと思う。ベンは絶対にオムニトリックスを渡さないし(家族との引き換え以外)、グウェンはベンがガチへこみしてたら励ましてくれる、かな?
・ラスト、やっと登場!誰が手引きしたのかな?
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章