【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
アズマスによるオムニトリックスのシステム変更。変身したのは今までベンが見たこともないエイリアン。
体の至る所に黄色の甲羅がついている。手足は短く首もない。ベンが変身してきたエイリアンの中でもひときわ目立つその異形。システム変更されたウォッチが導き出したエイリアンは、何が特技かわからないエイリアンだった。
最悪の敵、ヴィルガクスとの闘いで起死回生の一手だと思った変身はベンの予想したものとは違った。一手どころか、そのエイリアンの重心に慣れずこけてばかりである。
「アイタタタ…こいつは一体何ができるんだ?」
疑問をアズマスに問うも、彼はとうの昔に離脱している。戦闘タイプでないガルヴァン星人なので仕方ないのだが…
まあ考えていてもしょうがない。今なお拳藤、グウェンがヴィルガクスと戦闘中なのだ。早く助けに行かなければ。ベンはニューエイリアンの力を信じ、敵であるヴィルガクスの元へ。
抜けた声で迫力なく雄たけびを上げながら、ドスドスと敵に近づく。
「おおおおお」
「ふん!!」
が、あっさりと動きを見切られ、己の拳よりも先に、敵の拳がベンを弾き飛ばす。ヒーローであるベンが、家々に二つ三つと風穴を開けて吹き飛ぶ。土塀まで貫通していったためそのダメージは計り知れない。
痛々しい音を立て後方へと倒れたベンを、バトルフィストこと拳藤が介抱しに行く。仰向けに寝そべり、空を見上げているベンをペシペシと叩いて意識確認をする。
「ベン!!大丈夫!?意識は!?」
「う~~ん…思ったよりは痛くないけど…とりあえず超パワーは持ってないみたいだ…なら炎とか氷を口から出すとか…!!」
寝そべったまま、そのおちょぼ口から放出を試みる。しかし出てきたのは柔らかな風のみ。どうやらこのエイリアンは轟のような力もないらしい…ただ醜態をさらしたベン。
それどころか、どうやらこのエイリアンは一人で立ち上がれないらしい。拳藤の介護を受けやっとのことで立ち上がるが、その心持は芳しくない。
「アズマスのやつ…なんでこいつに変身させたんだ…?何の力もないし…これじゃ銃だって打てない…弱くなったんじゃないか?」
初めてのエイリアンに慣れず、ぶー垂れるベン。普段ならグウェンが叱るもしくはアイデアを出してくれる。だが彼女は今ヴィルガクスと交戦中である。吹っ飛ばされたベンの元に敵が接近しないよう何とか足止めをしてくれている。
そんな彼女に代わって喝を入れてくれるのが、日本でベンの姉代わりの拳藤である。俯き文句を言うベンの背中をバチンと叩く。
「シャキっとする!!あんたには力があるってこと知ってるから!!初めての変身だか何だか知らないけど今までもなんとかしてきたでしょ?あんたならできる!!!」
姉御の心強い言葉。無条件に信じてくれる、というのは現代社会においてあまりあることではない。同級生でありながらここまでの庇護欲をぶつけてくれる拳藤にベンは感謝すべきなのかもしれない。
だが彼女の言葉の半分もベンは聞いてなかった。否、聞けなかった。その理由は単純明快。今のベンは体幹が無に等しいのだ。そんな状態で背中を叩かれれば前に転ぶ。だけで済めばよかったのだが、
「うわぁわぁぁっぁ!!!」
頭から地面にぶつかりそうになったベンは手を添える。その手は自然と体に丸め込まれ、体全体がボールのような形になる。背中、肩、肘、にあるイエローアーマーは球状となったベンを守る甲皮となり、彼は叩かれた勢いを加速し転がっていく。
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もうじき太陽がてっぺんに上る。そんな時間から外で暴れるのは巨悪ヴィルガクス。さきほどベンが吹っ飛ばされ、拳藤が介抱に行ったせいで一人で敵を対処するグウェン。天才と呼ばれる最年少サイドキックでも、宇宙最恐の敵には1,2分しか持たない。最後のあがきと距離を縮め懐に潜り込む。が、
「所詮下等な人間。私に歯向かうなど100年早いわ」
片足を握られ宙ぶらりんになる。屈辱的な体勢になるも、その心まで屈指はしない。
「レディーにこんな格好させるなってママに習わなかった?!」
「ふふふ、あいにく人間はその対象に当たらないのでなっ!!」
そのままグウェンを地面にたたきつけようとする。このまま地面にぶつかれば必死。マナで衝撃を緩めようと考えるが、気休めにもならない。思わず目をつぶってしまうが…
予想した衝撃はグウェンを襲わなかった。
「ぁぁああああ!!」
BWAMMM!!
転がってきた黄色の物体が、ヴィルガクスを文字通り弾き飛ばしたのだ。その衝撃でグウェンを離し、彼女は腰を地面に打つ程度で済む。
先ほどのベンと反対方向に飛ばされたヴィルガクス。今度は家を壊さずそのまま中央通りの噴水にぶち当たる。
ブロックでできた噴水は半壊し、シトシトと水は彼に降りかかる。
体当たりに成功したベンは球体から通常体に戻る。目を見開いたグウェンにか、それとも独り言か、喜びの声を上げる。
「ああ…これがこいつの力か…!!よおっし!!!」
くるりんっと再び球状になる。その場にいるのは巨大黄色ダンゴムシ。その場で回転し始めたかと思えば、ヴィルガクスの元へ転がっていく。
しかしそこは悪の帝王。
「ぬぅぅぅん!!」
転がってくるベンを片手で止めようとする。赤く染まった狂爪はその摩擦で火花を散らす。噴水は壊れ、さらにベンチも破壊しながらも交代する。が、じりじりとベンは押し返しされていく。回転が弱まってきたところを見計らってヴィルガクスは蹴り飛ばす
球状のまま吹っ飛ばされたベンは壁にぶつかる。セメントで固められた壁にはひびが入るも、ベンには0ダメージ。だが、時間差で壁が崩れて周囲には煙が舞う。ヴィルガクスからは視認されない状態となったこの時、グウェンと拳藤が駆け寄る。
「あんたねぇ!もうちょっと考えなさいよ!同じ攻撃があのレベルに通用するわけないでしょ!」
「グウェン、言いすぎよ!今のは攻めたベンを褒めるべき!」
「あのねぇ…この子は何の考えなしに行ったの!!ったく…とにかく…今のベンでもあいつに致命傷は与えられない…考えがある。とにかく気を引いてて。あとはあたしと」
「わしがなんとかしよう…」
脇腹を抑えながら会話に参加したのはマックス。ベン達が到着するまでに受けた傷を我慢しここに立つ。
気を引く、というやや抽象的、というかかなりぶん投げた提案。格上と戦う時にはその気を引くことも命懸けだ。拳藤は反対しようとするが、ベンは逡巡せず承諾する。
「いーよ。どーせガリ勉が考えたことだ。ボクにはわからないしわかりたくない。最後は任せてそれまでボクとイツカで気を引いておけばいいんでしょ?」
「あんたの単細胞が初めてありがたいと思ったわ」
「はっ。なんならボクがとどめを刺してやろうか?」
互いに悪口を含みながらも信頼している2人。そんな彼らの関係を少し羨ましくおもう拳藤。だが、ベンへの信頼については負けてはいない。
「…おっけい!ベン、準備は出来てる!?」
「なに準備って?それよりこいつ、キャノンボルトって名前にしようと思うんだけど、どう?」
悠長なベンに呆れる拳藤。甲羅に覆われているにも拘わらずベンを叩く。個性を使っていないので痛いのは拳藤なのだが、どこか嬉しそうだ。それはベンとのこのやり取りからくるものなのだろう。
先ほどのベンの攻撃、そしてキャノンボルトを触って感じたことをもとに、作戦を立てる…
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ようやく煙が晴れ、ヴィルガクスがベンを追ってくる。当然だ。彼の目的はオムニトリックス。今は変身しているが、その変身を解くことすらも彼には可能なのだ。そのためにはある程度行動不能にしなければ。
だがヴィルガクスが突っ込んでくることを予測していたベン。手足をしまい球状になり、攻撃態勢に入る。
一本道が家にはさまれているこの状況。車1台半通る程度の幅の一本道では、ベンの攻撃は予測されてしまう。さきほどの真っ直ぐな攻撃は避けるどころか簡単に止められてしまうだろう。しかしこのエイリアンは転がることが能力。どうすれば…
そう悩んだベンだったが、拳藤が解をだしてくれた。その解、キャノンボルトの真の強みは。
「さあ、くらえ!ドッジボールの始まりだ」
BWANN!!BWAMM!!BWAMM!!
BWANM!!BWANN!!
キャノンボルトの甲羅は弾性に優れ、どのような場所でも跳ねることができ、ベンにダメージが来ない。つまり、壁と壁をベンは跳ねまわり、縦横無尽の軌道攻撃を仕掛けることができる。
そう、キャノンボルトの本領は【転がる】ではなく【跳ねる】ことにあった。キャノンボルトを素手で叩いた拳藤だから至った境地。
さすがのヴィルガクスも、この重さ、早さの攻撃を受けるのは初めてだ。ゴスゴスと何度も体に衝撃が入る。捕まえようにもその動きは不規則で厄介極まりない。
ちょこまか、とはまた違った動き。右からきたかと思えば左から。角度のついた攻撃かと思えば地面からのホイール攻撃。
「ぐぅ!!」
さすものヴィルガクスもひるむ。此処がチャンス。
最後の一撃。ベンが重いっきり助走をつけ、直線体当たりを試みる。一本道を王道と言わんばかりにヴィルガクスを轢きに行く。
だがその軌道は先ほどまでの攻撃と異なり、読みやすい。ヴィルガクスは受けることも考えるが、先ほどからのダメージを大きい。全快状態ならいざ知らず、なんどもベンの攻撃を受けた体では、キャノンボルトの体当たりは受けきれない。回避を選択する。マタドールさながら難なく躱すヴィルガクス。
結果としてヴィルガクスの横数センチを通過していくベン。
「そうくると、思ったよ!!」
避けられたキャノンボルトが向かう先には拳藤。青いコスチュームを見に纏い、果たすのはヒーローの責務。
巨拳化をし、両手を合わせおもいっきり振りぬく。その拳は、向かってくるベンの方へ。
「「いっけぇっぇぇ!!!」」
BBWHHAMMM!!
ゴルフか、はたまたバッティングか。腰の回転を生かしフルスイングした拳藤の拳は、球状のキャノンボルトをはじき返す。
元々のパワー、スピードに拳藤の力が上乗せされたベン。その向かう先は回避したばかりのヴィルガクス。
ドゴンッ!!と鈍い音がする。その後には鎧が砕ける高い音。
黒紅に染まる鎧はビキビキと割れていき、ベンの体当たりを生身で受けることとなる。
ただでさえ硬く、重く、スピードの乗った攻撃ができるキャノンボルト。それに拳藤のパワーが乗っかっているのだ。耐えられるはずもない。真正面からの攻撃にいなすこともできない。
「がっは‥‥!!??」
またもや家をぶち抜きふっとぶ。崩落していく屋根瓦がヴィルガクスにさらなる追い打ちをかける。
生き埋めになることを避けるため、力をふりしぼり立ち上がる。が、すぐに膝をつき、手を着く。ただ痛みを和らぐように意識する。はぁはぁ、と息を切らすもさすがは宇宙最強。すぐに体は回復していく。
ただ、その内心は焦っている。修復しているとはいえ、ここまで自分をボロボロにできる敵。時間が経てば応援がうじゃうじゃと来ることも何年も前から知っている。
この星の生物とオムニトリックスの厄介さを再認識したヴィルガクスは、次の手に出ようとする。このようなときの為に、これがあるのだ。
(これ以上は面倒だ。だが、私に歯向かうものはぜったいに許さ…っ!!??)
道具を隠しているポケットをまさぐる。ない、協力者であるアルビードからもぎとったナルボイドプロジェクターが!!あれさえあれば、この場にいる者すべてを容易に葬ることができるのに!?
「探し物はこれ?」
上空から声がする。ガバっと見上げると、浮遊した状態で銃を構えるグウェンが。その銃口はヴィルガクスの目に向いている。
そこで怒りが爆発する。
「…どいつもこいつも…!!それも、オムニトリックスも、私のものだぁぁっぁ!!」
怒気で周囲の鳥が逃げ去る。足に最後の杭を打ち込み、筋肉を膨張させる。そして蒸気を上げ怒りを放つように跳躍し、グウェンに近づく。年端も行かぬ小娘がなめた真似をと。その銃を奪い取って嬲り殺してくれるわと。
BQUUN!!
グウェンから撃たれた光線を首を動かしなんなく避ける。もしナルボイドプロジェクターのレーザーに当たってしまえば異空間に飛ばされてしまう。空中での動きは制限されるが、もう避けた。次弾には時間がかかる、これで
(私の勝ちだ!!)
だが、グウェンが持っているはよく見ると小さい。
(サイズが違う!!?)
グウェンの持っているのはただの光線銃。ベンが人間体であるときに使うものである。
下から声がする。忌々しい、にっくきテニスンの声が。
「残念だったな、ヴィルガクス」
BASHUNN!!
下で構えているのはマックスが持つのはナルボイドプロジェクター。グウェンがヴィルガクスから盗んだものをマックスに預けていたのだ。空中にいるヴィルガクスに照準を合わせ、痛む手で引き金を引く。銃口から放たれるのは異世界への入り口。ヴィルガクスに黄色の光線が当たる。当たった部位から、黄色の光が彼を覆っていく。
「テニスンーーーー!!!」
ブツンッとヴィルガクスの姿が消える。最後の断末魔を残して彼は異空間へと放り込まれていった。この瞬間、テニスンイツカとヴィルガクスの戦いは終わった。
「とりあえずだがな」
物陰からひょこっと出てきたのは、5つの宇宙でもっとも賢い科学者だった。
・とりあえず、とりあえずヴィルガクス退治成功!!やっぱり奴を倒すにはナルボイドプロジェクターですよね(笑)ただ、やつはびっくりするぐらいベンの前に何度も現れるので今後も注意です!
・次回はこの章のまとめをやって、その次から期末試験編ですね。無印の追加エイリアンをメインにするつもりです。誰にするかはまだ決めてないっす
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章