【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
pi pi pi QBBAANN!!
久しぶりの「QBAN」と赤光。バウンドボールのような風体のキャノンボルトから、生意気小僧のベンに戻る。その顔は実にすがすがしい。
「はっ!!あのイカ野郎!!テニスン一家に喧嘩を売るなら艦隊でも連れて来いってんだ!!」
ベンは空に向かって拳を掲げる。アメリカらしい雄大な空には雲一つない。否、今のベンには見えていない。それは、祖父が倒せなかった宿敵を倒せたから、という理由なのか、それともただ勝てたからなのか…
ヴィルガクスは異空間【ナルボイド】に送られた。誰もその空間の場所を知らず、また独自の生態系を作る世界。たとえヴィルガクスだろうとその世界を単独で抜け出すことは不可能であろう。
比喩ではなく、彼らは地球を救った。ヴィルガクスという巨悪を排除したことはそれほどの偉業。その功績はベン、グウェン、マックス、そして
「ベン。儂たちの力だけではないだろう?」
マックスがベンの肩に手を置く。その目線の先にはバトルフィスト。緑谷の次にベンと関係が深いクラスメイト。
「わかってるよ…イツカ、ありがとう。お前のおかげで…何とか倒せたよ」
いつになく素直なベン。普段の不遜な態度ではなく、なにか反省したかのように手を差し出す。その態度に驚くも、拳藤はニコッと頷く。先の戦いで痛む手を隠しながらも。
「お礼なんているわけないでしょ?あたしたちの仲なんだから!!」
晴れやかな笑顔。その笑顔を見て、マックスはあばらの痛みを忘れ感動する。緑谷とはまた違った友情。はみ出し者であったベンに、また一人友達が出来たことに嬉しく思う。
そんな和やかな雰囲気の中、空気を割るように現れたのは、小さな小さな宇宙人。
オムニトリックスの開発者、アズマスはスタスタと歩いて彼らの下へ寄る。予想される要件はひとつ。そのことをベンはわかっているからこそ、抵抗する。
「ほ、ほらさっきもヴィルガクス倒せたじゃん…だから返さないでもいいってのは…」
それでも進んでくるアズマス。ベンは一歩後ずさるが、覚悟を決めたように腕を差し出す。
約束は守る。しょうがない。ベンはウォッチより家族を選んだ。この戦いが終わればオムニトリックスを返す。その条件で修理してもらったのだ。
アズマスは、差し出された腕にひょいっと乗ると、ウォッチをいじり始める。
その様子を拳藤は不思議そうに見る。ただのアイテムの補修。なのになぜこれほどまでに神妙な空気なのか。まるで自分よりも大事なものをなくすような雰囲気。
アメリカの田舎町で、ただ無機質な音だけが響く。ガチャガチャ、カシャンカシャンとウォッチが回される。
ベンは思い出す。オムニトリックスに出会えてたくさんの経験をした。おそらく、無個性のままではできなかった経験だ。火を噴いたり幽霊になったり。だが、それらの経験でベンは逆に思えた。オムニトリックスが無くたってヒーローに成れると。
ウォッチが故障していても何と乗り切れることもあった。人間体の時でも戦える。大事なのは、道具ではなく自分だと気づけた。
まるで走馬灯のを見るかのような時間。そのわずかな時間も、アズマスの一声で終わる。
「よし、できたぞ」
「え…?」
手首の感覚は変わらない。思わず手首を目元まで近づける
ある…確かにある…
ベンの腕にはまだオムニトリックスがはめられていた。
ベンに振り落とされたアズマスは何事もなかったように話し始める。
「まだ使いこなせないエイリアンがいただろう?そいつをチューニングしておいた。なに?なんのことだって?そうじゃな…変身中に知らない映像が頭に流れ込んできたことはないか?」
ベンはリーバックのことを思い出す。使用時間が長引いたときに、確かに知らない記憶が再生される感覚に襲われる。まるで自分が違う誰かになるような感覚。アズマスはベンにオムニトリックスの説明をしていく。
「オムニトリックスはDNAサンプルを元に、そのエイリアンを再現する。だが、その再現度が高すぎれば使用者の自我がサンプル主と同質化してしまうんじゃ。だから基本的には6,7割の力しか発揮できんようにしとる」
そこでグウェンは驚愕する。今までのベンのエイリアンは一体一体がプロヒーローレベルの力だった。それがオリジナルの半分程度の力だなんて。もし…オリジナルが地球を襲ってくれば…なぜそこまで力の差があるのか…いや、そもそもあたしたちの力は…
そこまで考えたところでアズマスが答える。まるでグウェンの思考を読んだかのように。
「そもそも、お前たちの“個性”というのはエイリアンDNAがきっかけじゃ」
「アズマス…そこまで喋るのか?」
「かまわん…そこの娘のことを気にしとるんじゃろうが、もう遅い。ここまできたら全てを知った方が早い」
マックスは躊躇する。だがすぐに思いなおす。ベンと拳藤の関係性は先の戦いで見た。それにもうヴィルガクスのことも知ってしまった。彼女には知る権利があると考え、事細かに今までのことを話す。
拳藤はそこで初めて知る。ベンが無個性であること。先の敵は異形型などではなく、エイリアン(宇宙人)であること。そしてオムニトリックスのこと。
マックスが拳藤に説明を終えたところを見計らって、アズマスが続ける。ここからの話は、個性社会の原点だと前置きをして。
「100年ほど前、セレスティアルサピエンという種族の赤子が誘拐された。其の種族の力は“想像したことを実現させる力”。強力な力じゃ」
ベンは面食らう。今までエイリアンもすごかったが、【想像実現】が能力のエイリアンなど規格外だ。もし変身出来たらさぞかし無敵だろう。そう考えすぐにウォッチをいじり始める。
アズマスは続けた。誘拐犯はその赤子の力を利用しようとし失敗したらしい。存在すらも、その宇宙からは消し去られた。
「だが、ここからが問題だ。赤子故に、自らの力に耐えきれなかったセレスティアルサ…名前が長いのう…ふむ、そうだな…其の種族をエイリアンXとしよう…エイリアンXの赤子は、己の身をも崩壊させてしまった。残念なことにその骸は宇宙のチリと化したんじゃ。じゃがその塵と化した場所が、あそこじゃ」
そう言って真上を指さす。そう、赤子が崩壊したのは地球のすぐそば。赤子の骸は地球へと降り注いだのだ。隕石としてではなく、誰にも気づかれないまま…
「ただのエイリアンだったらば問題はなかった。じゃが!!全てを可能にする種族のDNAとこの星の人間のDNAが結合してしまった」
考えを巡らせるグウェンと拳藤。秀才2人は己の頭を駆使して正解にたどり着く。
「「そのDNAっていうのが」」
「そう、お前たち“個性”の源じゃ」
驚愕の事実。未だ個性については謎が多い。確かなのは、中国慶慶市の発光する赤子。事の始まりはそこであるとされていた。しかし、今、全ての始まりは明らかとなった。
アズマス曰はく、エイリアンXの体は“宇宙”で構成されているらしい。そのDNAが人間と合わさった結果、宇宙中のエイリアンの力が人間に宿ることとなった
「異形型、と呼ばれるもの達はエイリアンの姿が色濃く出とる。そしてお前たちは繁殖を経て、さらに力が複雑化していきおる。ヴィルガクスが地球に来たのも、元はと言えば人間たちで兵器を作るためだ」
発動系は、エイリアンの力の一部を引き出す形。ゆえにその姿は人間の規格らしい。
人類が長い間正解に辿りつけばかった真実は、どうやら宇宙では常識以下のことらしい。事実、これからもエイリアンによる侵略は増えるのだろうとアズマスは予測している。
此処までの話は難しい話でない。ただの100年前の真実。悪の台頭、自警団、ヒーローの台頭。それらの歴史に比べればシンプルな事実。
なまじ勉強ができる拳藤とグウェンはうまく状況を飲み込めない。理解はしているが、納得はしていないのだ。拳藤に至っては宇宙についても未だ半信半疑である。
だが、こういった場合、単細胞のベンは何も気にしない。今、彼にとって大事なのは
「結局…ボクがもってていいの?」
オムニトリックスの処遇。おそるおそるウォッチを見せる。しばし逡巡した後、アズマスはこう答える。
「…マックスが思った以上に衰えていたからな。しょうがない。それに…」
オムニトリックスは宇宙最強の武器。その開発者であるアズマスはこう考える。
オムニトリックス保持者に必要な能力は“救けられる力”。1人で全てをこなそうとする人間はふさわしくない。完全無敵、仲間も持たない者は実はもろい。そうではなく、人と協力し敵を倒すことができるものこそふさわしい。
(この小僧は…自分のことしか考えてないと思ったが…)
急に沈黙したアズマスを、ベンが急かす。
「それに何?」
「まあいい。くれぐれも、奪われることだけは無いように」
そう言って、落ちているナルボイドプロジェクターを拾う。弟子が自分のを模倣して作ったもの。“さすが”というのもしゃくだが、99%再現されている。アズマスは舌打ちをしながらプロジェクターを起動する。
帰還することを見届けようとするマックスだったが、思い出したかのように尋ねる。
「一人で戻って大丈夫か?裏切り者がいるんじゃ…」
「問題ない。誰が裏切ったのかはわかっておるし、やつはもうにげとるじゃろう」
(あれをもって…)
研究成果を盗まれることは腹立たしいが、今回はオムニトリックスが奪われなかったことに感謝するとしよう。
プロジェクターに投影された歪んだ空間先には宇宙船がある。
4人の地球人は、1人のガルヴァン人を見送る。特に会話は必要ないと判断したのだろう。アズマスは一歩を踏み出す。
「ありがとう、アズマス」
少年の声が聞こえた。おそらくこの少年は、これから世界を、宇宙を救うだろう。5つ宇宙で最も賢いものはそう予測する・
アズマスは見向きもせずに戻っていく。彼が転移サークルを通ると、次元のゆがみは消え、町にはベン達のみが残った。その町は、考えられないくらいボロボロである…
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ここは太陽系α帯。ある宇宙船ポッドが、地球に向けて移動していた。1人用のその船には一匹のガルヴァン星人が載っている。名は、アルビード。アズマスの船からベン達の戦いを覗いていた。が、ヴィルガクスが負けると同時に、アズマスの船を脱出したのだ。
「ちっ、ヴィルガクスのやつ…簡単にナルボイドに飛ばされて…協力した僕の身になれっていうんだ…」
利害の一致で手を組んだものの、思ったほど役に立たなかったヴィルガクス。だが、アルビードは最大の目標は達成していた。
「まあいい。目当てのものは奪えたからな…」
アルビードは両手に抱えた赤いガントレットを見てつぶやく。
アズマスが説明していた。オムニトリックスはオリジナルの6、7割の力しか発揮できないと。ならば、其の100%を、いや120%を引き出せたのなら…それはオムニトリックスをも超える武器となるだろう。その武器が、今、彼の腕にはめ込まれた。
カシャンッ
その装置の名は…【アルティマトリックス】
・個性の要約は”エイリアンXという何でもありのエイリアンのDNAが人間と結合した結果、人間が異能に目覚めるようになった”ということです。原作では個性の原因ははっきりしてないので独自設定です
・次回、職場体験編終了。これからのベンは、一段階進化したオムニトリックスで頑張ります!
・アルヴィィィドォォ!!
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章