【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
・今話は少々は長いですが、お許しを…
太陽の光が強く感じてくる7月、雄英ヒーロー科では前期の総まとめとして期末試験が行われていた。
弱点を突かれながらも克服した者。はたまた策略に飲まれた者。環境に適応できなかった者。それぞれが目の前の困難に身も心も削っていたが、全ては“憧れを現実にする”ために壁に立ち向かう。が、唯一、ベン=テニスンの状況はそれとは大きく異なっていた。
オムニトリックスから脱出したゴーストフリークとの命の取り合い。パートナーである波動ねじれも気を失い、彼を守るものはこの場にはいない。頑丈なモール型体育館の中で、幽霊とのデスゲームが始まっていた。
紫色の化け物が触手を揺らしながら呪うような声で語りかける。
「ベェェン…変身が解けたお前はただの子供だ…抵抗せずにこちらに降りてこい…」
2階の手すりから顔を覗かせていたベン。先ほどまでは植物系エイリアン“ワイルドバイン”で敵を圧倒していた。が、変身が解除された今はただの無個性少年である。
内部が半倒壊しているショッピングモールで、幽霊と人間の勝負が繰り広げられる。
「っく!!」
ダッ!
目の端で倒れているねじれを後目に、場を離れる。ここで挑発に乗ってしまえば、ねじれが稼いだ時間が無駄になる。とにかく変身できるようになるまで身を隠さねば。
小さな体を生かして、脱兎のごとく岩盤や階段を潜り、隠れ場所を探す。息を切らしながら走るベンを1階から眺めていたゴーストフリーク。逃げる鼠を猫を泳がすようにニタニタしている。大きな一つ目を細くして
「どこへ逃げようと無駄だァ…!」
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「っはぁっはぁっはぁ…」
ベンが隠れた場所は映画館。雄英がショッピングモールを模して作ったこの施設には、アパレル、フードコートの外にも、映画館やゲームセンターが備わっている。
映画館は薄暗闇であり死角も多い。この場所を選んだベンの判断は間違っていないといえよう。
さらに、此処までの道は先ほどの戦いにより、子どもでないと通れないほど荒れていた。
「ここならそう簡単には…」
だがしかし、それは通常の人間である場合の話だ。霊体化できる敵には、障害物という概念のない。
「ベン!!ここにいるのはわかってるぞぉ…早く出てこい!!」
正面のスクリーンから声が聞こえるが早いか、鼠色の単眼幽霊が透けて飛び出してくる。微弱なオムニトリックスの反応を追って、ここまで直進してきたのだ。心なしか先刻よりも体が大きく見える。母星の環境に近い暗闇であるからだろうか。
ベンの息遣いに耳を澄ますゴーストフリーク。ぬるりぬるりと映画館を浮遊する。ベンは口に小さな手を当て必死に息を押し殺す。その手からはじっとりとした嫌な汗が出てきている。
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ゴーストフリークとベンのかくれんぼが始まった時、観覧していた緑谷達もさすがに異変を感じ始める。それもそのはず。教師であるブラドキングが急に倒れ、ビッグスリーの波動は自傷し気絶、ベンはそれを見て逃亡した。この状況は明らかにおかしい。
(いや、待て…ベン君は明らかに何かを見て逃げたように見えた。それに、ブラドキングだって明らかに生徒への対応を超えていたし…まるで何かに乗っ取られたような…)
「あッ!!??」
ブツブツと独り言を唱えた後、ハッと声をだす緑谷。隣にいた爆豪やリカバリーガールはその声に目を開く。
「んだクソカスゥ!急に叫びやがって!!」
「どうしたんだい緑谷」
「ゴース…いえ、なんでもありません…」
「はっきり言えやくそナードォ!!」
爆豪の怒号が彼の耳を貫くが、緑谷はガン無視。それにより爆豪はより怒り狂う。
(あのブラド先生から発せられてた狂気…思い出した…体育祭で、僕がベン君に操られたときだ。ゴーストフリークに変身して、僕の体に入って拳を地面にたたきつけていた…ベン君らしくないと思ったけど…)
「…まさか、ゴーストフリークが…でもベン君は普通に人間体だし…」
そう。緑谷はオムニトリックスの秘密を知らない。いくら分析力に長けた彼でも、無敵の変身道具が本物のエイリアンDNAを元にしていることにはたどり着けない。ましてや、ゴーストフリークのDNAがオムニトリックスの中でまだ生きており、それが表出したとは。
緑谷が一人で考えていると、リカバリーガールが方針を決める。
「基本的にこの試験は担当教師に一切を任せてるんだけど…さすがに様子がおかしいね。ブラドも倒れて、波動も気絶している。…そうさね…イレイザーを送ろうか。テニスンの担任だし、現状を把握してきてもらおう」
「リ、リカバリーガール!僕もついていっていいですか!?」
「あんたは休んどきな」
緑谷もオールマイトとの戦闘で満身創痍の状態である。安静にしているべきなのだ。諫める彼女に対して、緑谷は頑として譲らない。親友であるベンの身に異変が起きているかもしれない。じっとしていることは出来なかった。
「…どうしても、いきたいんです…」
「…はぁ。運動場Ωからイレイザーが帰ってきてるだろう、説明して一緒に行っといで」
「はい!!」
(何か、とても嫌な予感がする…)
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収容人数は500人の雄英映画館。ベンがこのどこかにいることは確かなのだが、探すには手間取る広さである。ゴーストフリークは幽霊化を駆使して辺りを散策するも、まだ見つからない。
だが彼にはどこか余裕があった。パフォーマンスを行うかのように、スクリーンの目の前に戻り、諸手を上げる。まるで舞台挨拶をするかのような身振りだ。
「ベェン!!いつまで隠れているつもりだぁ!時間を稼いだって無駄だ!今お前を捕らえずとも俺にはいくらでもチャンスはある!ならばここで決着をつけたほうがお前にとって有利なんじゃないかぁ?」
館内に響くどす黒い声。脳内に鳴り響くその言葉に対し、冷静に頭を回転させるベン。
(確かにゴーストフリークがこの建物から逃げたら、僕ができることは無くなる…いや、ちがう…こいつは夜にしか動けない!この建物を壊して太陽の光さえ浴びせられれば僕の勝ちだ!!)
学校の成績は良くないが、頭の回転は速いベン。そして、彼の方針が定まるとともに、ウォッチが緑色に光る。キュワンと光る手首の時計はやはり頼りになる。ウォッチのほのかな光は、自身ありげなベンの顔を照らす。
機能が回復したことを確認したベン。映画館の中央席あたりで、ひらりと座席の上に立つ。逃げようと思えば逃げれる。だが、どうしても聞きたいことがあった。
器用に背もたれに立ったベンは、こちらに気づいたゴーストフリークに最後の問いかけをする。
「おいゴーストフリーク!!どうして僕を狙うんだ!」
「さっきも言っただろう…お前と同化することで俺は完全体となり、この地球を支配するのだぁ!」
「地球人の支配?」
「…お前もアズマスから聞いているだろう?地球は元々下等な生物しかいなかった。だが、100年前にエイリアンの形質を持った人間が生まれ、今では何千種類ものエイリアンの力がお前たちには備わっている。ああ、もちろん例外もいるがな?」
ニタリと笑う彼に、ベンは眉をピクリとさせる。自分が無個性であることを馬鹿にされたからだ。言い変えそうにも、無個性を理由にいじけていた時期がある為、反論は出来ない。
やけに饒舌なゴーストフリークは、ベンの反応を確かめたあと言葉を続ける。
「あらゆるエイリアンの力を持った地球人。それらを支配し兵隊とすれば、この宇宙をも支配することができる。俺が、俺こそが宇宙の支配者にふさわしいんだ!!」
どうやら敵の目的は地球、そして宇宙全体の支配らしい。そんなバカげたことはさせない。だが、彼の言葉を聞いていると、再び疑問が浮かび上がる。そもそも、なぜ支配をしたいのか、だ。
もちろんそれが本能だと言われればそれまでだが、ベンが彼に変身した時、始めの頃はそのような支配願望は湧かなかった。であるならばこの支配欲はジスケアーという個体そのものの願望である。
ウォッチの変身先を設定しながら訪ねる。
「お前は、なんで支配者になりたいんだ?別にウォッチから逃げられたんだからそのまま逃げればいいのに」
その言葉を聞いて、初めて愉悦以外の感情がゴーストフリークから見てとれる。さかさまの口を閉じ、ギリギリと歯ぎしり鳴らす。わなわなと爪を震わせ、その閉じた紫色の口かは再びゆっくりと開く。
「…俺の星では争いが絶えなかった。幾百年も内戦が続いていて、俺たちの種族は平和なんて言葉も知らなかった…そんなとき、俺の元に一人のガルバン星人が現れた。そう、アズマスだ」
アズマスとはオムニトリックスの開発者である。ガルバン星人という知能の優れた種族で、全宇宙の平和を願っていた。彼曰はく、オムニトリックスの創作理由もその悲願のためらしい。
「やつは言った。DNA提供と引き換えに、争いを辞めさせ、俺をトップにする知恵を授けると…その言葉を俺は信じた」
悲壮な顔で紡がれる物語に、ベンは続きを予測した。まさか、アズマスが裏切ったのか?そんな奴には見えなかったが…
「アズマスは何も教えてくれなかったのか?」
「いいや、俺は知恵を借り、わが星の王となった。諍いはあるが、殺し合うことの無い平和な国になったぁ…」
予想外の言葉に思わずに変な声を出す。
「へぁ!?な、ならどうしてこんなことを?今のままでいいじゃんか!」
俯いたまま喋るゴーストフリーク。
「‥レテタ…」
「え?」
「俺は、俺はずっと閉じ込められた!!」
強く訴える。細く醜い腕をこれでもかと振るい、己の不遇を訴える。
「俺は、オレなのに、オムニトリックスに閉じ込められた!同じ個体だからもう一人のオレの記憶は伝わってくる!なぜ奴だけが国の王に成って、俺は暗く狭いウォッチの中に閉じ込められていたんだ!!」
そう、今のゴーストフリークは採取されたDNAから生まれたもの。記憶も姿も何もかも一緒。ただ、採取され、ウォッチの中に入った後、彼に自我が芽生えた。今この時間帯にはジスケアーという個体が2体いるということだ。一体は母星に。一体はベンの目の前に。
「俺だけが閉じ込められるのはおかしいだろぉ?あいつは国を支配している。何とかしてその地位を奪い取らなければ…それには力がいる。その力が…お前ら地球人だ」
オムニトリックスが、というよりはエクトノライト族の強すぎる自我が生んだ悲劇。確かに見方によっては、かわいそうなのかもしれない。予期せぬ自我の発露により、少なくとも20年は暗く狭い世界に閉じ込められたのだか。人によっては彼を同情するかもしれない。
だが、ベンはまだ10歳そこらの子どもだ。先生や先輩を既に傷つけられたベンにとって、そんな事情は心打つものではない。長い話をくだらないと一蹴する。
「バッカじゃないの!?そんなことで地球を支配したいだって!?僕を乗っ取りたいだって!?考え方がアメリカのイカレ敵と一緒だよ!!」
海外職場体験中に出会った様々な敵。
マッドサイエンティストや虫を操る青年、仮面をつけた西洋風の騎士団。誰もかれも、自分のことだけを考えて、挙句世界を支配しようと考えていた。ベンとは相容れぬ敵だった。ゴーストフリークに彼らの影を見たベンは、もう飽きたよと言わんばかりに嫌悪した。
一寸の同情も得られなかったゴーストフリーク。しかし彼は落胆すること無く手を広げる。その顔からは先ほどの悲観さは見受けられない。
「ああ、大丈夫だベン。すぐにわかるさ…なにもなく、狭く薄暗い空間に閉じ込められる気分がなぁぁ!!」
GWANN!!
話は終わった。彼は行動でそれを示す。空中浮遊の状態から、最高スピードでベンを目指す。スクリーンの眼前から中央席のベンまで、その霊体をしゅるしゅると動かし迫る。
その距離あと数メートル。
しかしベンは焦らない。先ほどまでかいていた汗は不思議なほど引いていた。なんてことない。目の前のエイリアンは地球の敵と同じだ。いつもと同じ、自分のどおりで好き勝手町をめちゃくちゃにする
既にウォッチをセットしていたベンは、ヒーローではなく、ベンとして決意する。この敵を倒すと。いつもの通り、右の掌でおもいっきりボタンを叩く。
「お前みたいなナヨナヨお化けは、こいつで目を覚まさせてやる!!」
ベンの意思に呼応するかの如く、ウォッチは音を響かせる。
QBAANN!!
館内を緑色の閃光が埋め尽くす。元々光が苦手なゴーストフリークは思わず手で顔を覆う。
光りに包まれたベンの体は、ペンキをかけられたように黒く変色していく。と同時に10歳の体はぐんぐんと縦にのみ伸びる。2メートルほどの体長。アンバランスな細身だ、次に頭部が変形し始める。カミキリムシのような触覚が突き出たかと思うと、背中にまで垂れる。尻尾、頭、両手それぞれにはコンセントのような2つの穴開き、”流動”を意識した姿となる。
光りが晴れ、ベンがいた場所には全く違う姿の生物がいた。その生物は自身の姿を確認し一言。
「ヒュー!!!!やっぱりオレ、イケてるぅ!!」
・今回のゴーストフリークの話はなんて言うか…想像で書いています。もし自分がゴーストフリークだったら、後から生まれた自我だったらきついなぁと。ベンには関係なかったですけど(笑)
・作品の感想、評価はどのようなものでも作者の力になるのでぜひ!!
※もし余裕のある方がいらっしゃったら、YouTubeの「ベン10オムニバース1話」の始めの10分だけ見て頂いてほしいです!エイリアンの描写、能力説明はもちろん致しますが、やっぱりアニメをちょっと見たほうがイメージできるかと思います!
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章