【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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この話は長くなってしまったため2話に分けています。直ぐにアップするのでお待ちを!


70話 期末試験終了(1)

試験終了の5分前、1人の教師と1人の生徒が屋根の上を走り現場に急行していた。1人は緑色の光を放ち、もう一人は布を使い器用に移動している。

 

「つまり…ブラドの様子がおかしく、試験が機能していないってことだな?」

 

「はい。あと、波動先輩、ベン君は明らかに何者かと戦闘していました」

 

不安そうな顔つきで相澤に状況を説明する緑谷。先の試験の影響で体は全快ではないが、ベン達が心配なためフルカウルで相澤についていく。

 

彼の話を聞き、眉を顰める相澤。話を聞き終えたが、あまり要領を得ない。情報がまだ足りていないのだ。

 

(…“ブラドが熱くなった”ってことで済めばいいが…もし敵が侵入してきていたら…しかし、テニスンの周りではいつも問題が起こるな。今回は…まあいい。とにかく無事でいてくれ…)

 

どんな個性でも無効化する相澤は、正体不明の敵に対しては最適なヒーロー。隣には身体強化中の緑谷を携え、急いで向かう。

「…なんだこの状況は」

 

「ッ!!!」

 

それなりに悲惨な状況を覚悟していた2人。それでも、目の前に広がる光景には動揺を隠せなかった。体育館Ωという名の雄英ショッピングモール。地方によくある巨大なモールを模していた体育館。

 

構造も、波動ねじれがフルパワーで戦っても壊れない仕様になっていた。にも拘らず、目の前には瓦礫が積み重なり、建物の外観をなしていなかった。

 

全長500メートル、高さ15メートルのモールは見る影もない。茶色や灰色の瓦礫の中にはカラフルな看板も混ざっている。モール内にあった飲食店などであろう。砂ぼこりが絶え間なく待っており、それらを覆ってきている。

 

(テニスンか?いやしかし、波動のパワーをも変える変身はなかったはず。あの赤い4本腕のやつにもここまでの破壊を無理だ。そもそもこのレベルの破壊はそれこそオールマイトさんしか…)

 

普段の相澤から考えると、珍しい顔つき。個性を使うわけでもないのに目を見開いている。目が乾きを訴えるが目薬を差す余裕もないようだ。

 

なにかとんでもないことが起こったのだと悟った時、緑谷が声を上げる。

 

「あッ!!」

 

彼の指さす方向を相澤も確認する。砂ぼこりの向こう側で、人影がゆらいでいる。急いで駆け寄ると、人影は見知った顔へと変わる。

 

3人は横並び、波動・ブラド・ベンの順に並んでいる。とはいっても、気を失ったブラドを2人で支えて歩いている様子。右の波動は肩を持ち、身長の低いベンは、ブラドの垂れた左腕を持っているだけだったが…

 

相澤と緑谷に気づいたベンは、少し驚いた様子。

 

「イズク?それに先生も!どうしてここに?」

 

「…まあ後で説明をきこう。緑谷、ブラド抱えてくれ。テニスンは大丈夫か?平気ならそのまま波動と本部まで戻ってくれ」

 

「別に大丈夫だけど、先生はどーすんの?」

 

「俺は残ってここらを調査する。敵の襲撃の可能性もある」

 

「いや、それは大丈夫だよ」

 

「なに?」

 

「僕が倒したからね!!」

 

相澤は、敵の襲撃があったかもしれない事実を問題視していたが、目の前のベンは違う。倒したんだから大丈夫、の精神だ。

 

普段なら注意し、すぐに詳細を尋ねるところだが、事態が事態である。まずは生徒の安全を確保する。

 

「…後で詳しく聞かせてもらう。とにかく、早く戻れ。お前も休息が必要だろう」

 

珍しくわかりやすい気遣いを見せる相澤。その言葉にベン達は違和感を覚えながらも、言われた通りに本部へと向かう。

 

彼らの撤退を確認した後、相澤は1人でモール跡地を探索する。

 

床材が散らばり鉄柱も全て無残に砕けている。ぐるりとあたりを一蹴するも特に怪しい点はない。

 

(ん?)

 

なにやら向こうで舞っているようだ。近づくと、足元には小さな炭が落ちていた。いや、炭かどうかはわからないが、黒いそれはさらさらと粒子化し空気に溶けている。回収しようとするも、拾い上げることは叶わず、その黒炭は消えていった。

 

(なんだったんだ…)

 

疑問に思うも、すぐに思考は状況推測に移る。

 

(ブラドは完全に気を失っていた。精神力ならば自分よりも強い彼が簡単に気絶するとは思えない。一体何が…)

 

考えが頭をぐるぐると駆け回るが、今はそれに頭を使う場面ではない。とにかく、敵、特に敵連合が今回の騒動に関係しているのかを調べるべきだ。

 

冷静に、合理的に彼は動く。

 

リカバリーガールの手当てを終え帰宅しようとしたところ、ベンは緑谷に声を掛けられる。そして、普段通り、駅まで同じ道をたどる。

 

周囲は既に薄暗くなり、夜が近いことを示していた。雄英は山の中に学校を構えており、最寄り駅で人通りは少ない。つまり、内緒の話をするにうってつけの通学路だ。

 

テクテクと歩くベンの表情を窺うように喋り出す。

 

「ベン君…期末試験をモニターで見てたんだけどさ…」

 

「なに?ボクの戦いっぷりに感動しちゃった?」

 

いつものように茶化すベンを無視し緑谷は自身の考えをぶつける。

 

「もしかして、ゴーストフリークに別人格が出来て、それがウォッチから出てきた?」

 

「へ…?」

 

頭の後ろで組んでいた両手を解き、目を丸くするベン。

 

オムニトリックスは実在するエイリアンDNAを元にしていること。そしてゴーストフリークにはDNAレベルで自我が芽生えていたこと。この2つの知識が無ければ今回の騒動について、正解にたどり着くのは不可能だろう。

 

緑谷が知っていたのはベンがオムニトリックスで変身しているという事実のみ。

 

それでも…緑谷はその頭でほぼ正解に近づいた。この分析力はさすがと言わざるを得ない。

 

ベンも思わずその理由を聞く。緑谷は手を口に当ててブツブツと答えだした。

 

「まず、ブラド先生の様子がおかしくなった。あの時、僕は心操君の洗脳を思い出したんだ。ブラド先生の動きは普段に比べて精彩を欠いてたし、何より“先生”としての動きじゃなかったからね」

 

“先生としての動き”にいまいちピント来ていないベンだが、とりあえず頷く。その様子を確認したように話を続ける緑谷。

 

「ワイルドバインになったベン君と波動先輩の協力でブラド先生は倒せた。だけど、すぐにベン君たちは何者かと戦いだした。僕たちから何も見えなかったのに。まるで、見えない相手と戦ってるみたいだった。そこで思い出したのは体育祭なんだ」

 

体育祭では、緑谷とベンは死闘を繰り広げた。故障したオムニトリックスにより、ベンは一時的に多くのエイリアンに素早く変身し、緑谷はその対応に四苦八苦した。

 

「ベン君がゴーストフリークになった時、僕の体を乗っ取ったでしょ?」

 

「え?そうだっけ?」

 

やはり、というふうな顔の緑谷。その時の記憶がないようなベンの態度に一人で納得する。

 

「あのときベン君は僕の拳を地面に叩きつけさせたんだ。ベン君にしては凶暴だと思ったんだ。まるで、ベン君じゃないみたいだった」

 

そこで、ベンもはっとする。もしや、ゴーストフリークが目覚めたのは、今日ではなく、体育祭で、オムニトリックスが故障した時では無いかと。

 

緑谷は止まらなくなったのか、ベンの様子を気にもとめず話し続ける。

 

「体育祭での、ゴーストフリークの人格の異常さ。そして今回の試験でのブラド先生の似たような症状。ベン君たちが戦っていた透明な相手。これらを総合すると、ゴーストフリークが人格を宿してウォッチから出てきたんじゃないかと思って…」

 

声は大きくはないが、その目には自信がある緑谷。そんな彼に対しベンは舌を巻く。ほとんど自力でウォッチの秘密に迫った緑谷。

 

しばし悩む。言ってしまっていいのだろうか。祖父にはなるだけ秘密にしておくべく打といわれた。自分の頭ではなぜ秘密するのかはいまいちわからない。が、これまで祖父の教えには従ってきた。だが…

 

彼にこのまま黙っておくことは難しいだろう。何より、

 

「イズクは友達、だからね」

 

実は…といつもと違い神妙は顔つきで、彼はオムニトリックスの秘密が明かす。

 

ベンの口から説かれたのは宇宙の話。彼は海外職場体験で見聞きした全てを緑谷に打ち明けるとともに、ゴーストフリークの反乱を説明した。

 

数分の間ベンは息継ぎも忘れるほど語った。そして、区切りがついたところでペットボトルの蓋を開けグビグビとお茶を飲む。

 

プハァと口を離し口を手で拭っているとき、緑谷の独り言だけが2人の間で聞こえる。

 

「この世界には宇宙人、いやエイリアンがいて、僕らの“個性”はエイリアンのDNAが原因?そしてオムニトリックスはそのエイリアンのDNAを参考にして作られた変身時計型兵器…確かに個性の出自はこの100年で全くわかっていない…いや、中国慶慶市の光る赤子が初めてとは言われているけど原因は不明。ベン君の説明なら全部に納得できる…のか‥?」

 

自身の中で言葉を咀嚼し、飲み込んでいく緑谷。手を口に当てブツブツと音を出すその姿はいささか不気味である。

 

「…大丈夫?頭おかしくなってない?」

 

「ッは!!う、うん。なんとなく理解は出来た、と思うけど…その…僕に話してよかったの?」

 

「いいよ?元々イズクはオムニトリックスのことも知ってるし」

 

軽い判断のように見えて、ベンなりに考えた結論。そう捉えた緑谷はこれ以上言及しなかった。あるいは、自分にもOFAという秘密があることも関係していたかもしれない。

 

少し間無言で帰路を辿る2人だったが、不意に緑谷が尋ねる。

 

「このことを知っているのは僕だけ?」

 

「いや、じいちゃんとグウェンは知ってる。ほら、あの従妹だよ」

 

オレンジ色の髪と聡明な顔つきを思い出す緑谷。GWに一度会っただけだが、珍しい顔つきであったためよく覚えている。

 

「あとは…」

 

残る秘密の共有者を教えようとしたとき、ベンは肩を叩かれる。ペシっという小気味いい音を鳴らした相手は、

 

「誰っ?て…お前か…」

 

「お前とは挨拶ね。せっかく心配して追いかけてやったのに」

 

グウェンと同じ髪色であり、快活な態度をとる少女。緑谷よりも身長は高いが、ベンと話すときは少し屈む。そんな気遣いができる彼女の名は

 

「なに?なんか用なの?イツカ」

 

雄英高校ヒーロー科一年B組、拳藤一佳である。

 

彼女がベンと関わり始めたのは体育祭の時だ。少しの同情心から声をかけた拳藤だったが、次第にベンの子どもらしさとそれに反したマインドに惹かれ今では好意を持っている。といっても、恋愛感情ではなく、母親、姉の持つ慈しみの情のようだが。

 

そして、彼女もまたオムニトリックスの秘密を知っているものである。成り行きではあるが、この地球で数えるほどしかいない、エイリアンの存在を認識している者でもある。

 

「その言い方は何よ。試験で何かあったって聞いて心配してたんだよ?」

 

ベンと違い、濃い緑色の瞳には口を尖らせたベンが映っている。まっすぐ見つめられ少し気まずくなるベン。プイっと首をひねり

 

「へんっ。別にお前に心配される筋合いはないね!そもそもイツカは僕の何なんだよ!」

 

「あんたねぇ…!」

 

「ちょちょ…!!や、止めようよ2人とも!ベン君言いすぎだよ。拳藤さんはベン君を心配してくれてたんだし…」

 

諫める緑谷だったが、それでもベンの態度は変わらない。従弟のグウェンと似て、お小言が多いところが気に食わない。

 

自分のことを想ってくれているのはわかる。しかし、誠実にその思いを受け止められるほど彼は大人びていない。

 

ベンの態度はそのまま。拳藤が緑谷に謝る。

「ああ、ごめんな緑谷。あ、そうだ。あんたは何があったか知ってるの?」

 

「え…!それは…」

 

チラリとベンを確認する。彼はため息をつきながらも、どうせ喋るまではグチグチ言われるだろうと半ばあきらめ、コクリと頷いた。

 

そして彼に代弁し緑谷は話す。この試験の一部始終を。

 

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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