【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
陽はとっぷりと落ち、月明かりだけが彼らを照らす。
皆が楽しみにしていた林間合宿。彼らの夏休みの思い出は、一瞬にして、悪夢へと変わった。
【敵襲撃!敵襲撃!直ちに合宿所へ戻れ!雄英生ヒーロー科!直ちに合宿所へ戻れ!】
緑谷とベンの脳内に響くマンダレイのテレパス。撤退の指示が出されるが、2人にはもうその選択肢が残されていない。
その原因は目の前の敵。人とは思えない、異形系の個性とも思えないその姿。まさしく、エイリアン然とした化け物は、緑谷とベンの名を口にした。
「おいおい、さっそくお前らかよ!運がいいぜ全く!!」
「ケビン!?どうしてここに!?」
ベンの驚愕で緑谷は思い出す。
USJ襲撃時、爆豪、轟、ベンら4人でなんとか互角だった敵、ケビン=レビン。あの日、エイリアンDNAが暴走したケビンは、緑谷の踵落としを食らった後、エイリアン10体が入り混じった姿へと変貌した。
「どうしたもこうしたも、お前らをぶっ殺すために決まってんだろぉが!お前たちのせいで、俺はこの醜い姿から戻れなくなっちまった!!」
「そ、そんな!」
彼の言葉は緑谷にショックを与える。自分のせいで彼の異形化が解けなくなったかもしれない。全てを救うヒーローを目指す彼に、その事実は耐えがたかった。
だが、隣のベンは違う。
「そんなの知るかよ!そもそも元からお前は醜い奴だ!ただそれが表に出ただけさ!!」
ケビンを指さし、勇ましく敵を論破するベン。その片腹、緑谷の背中を叩き鼓舞する。
ベンの言葉に青筋を浮かべるケビン。左手の炎が燃え上がる。しかし、一息つくと、ニヤリと目を細める。
「まあ…いいさ。この体はこの体で悪くねぇからな…それに…ここにいるやつら全員、皆殺しにできると思えば安い代償さ!」
4本ある腕の一本で、自身の胸をドンと叩くケビン。
その言葉で、あることに気づく緑谷。
「…滉太君!!」
敵襲撃は、さきほど緑谷達がカレーを届けてからそれほど時間が経っていない。であるならば、今現在合宿所から離れた場所に、滉太が一人でいる可能性は高い。
「ああ‥?なんだってぇ?」
聞き返すケビン。
ケビンを睨みながら、頭をフル回転させる緑谷。
おそらく、簡単に逃がしてくれる敵ではない。また、この敵を、皆が集まっている場所にやるわけにもいかない。
口に手を当てブツブツとつぶやいた後、悔しそうに緑谷はベンに提案する。
「ベン君!滉太君を助けに行って!」
「えッ…あ!けど、それじゃイズクが…」
彼の言葉でベンも滉太を思い出す。しかし、緑谷を1人残して大丈夫だろうか心配する。USJの時にはクラストップ4人でなんとか倒せた敵。成長したとはいえ、倒せるとは思えない。
ベンの問いに、緑谷は覚悟を決めたようにケビンを睨みつける。
「大…丈夫…!!」
意を決した緑谷は、ベンに有無を言わせぬ迫力があった。笑顔、いや引き攣った顔といった方が正しいだろう。だが、それでも彼は笑った。憧れの人を思い出しながら・
体からバリバリと緑色の火花を散らす緑谷。既に両こぶしを握りしめ臨戦態勢。
「…頼んだぞ、イズク!!」
そう言葉を掛け、ベンは正面の道から反れ、獣道を走りだす。
「はっ!!逃がすわけねーだろ!!」
ケビンは左腕を突き出す。彼の左腕の一本はヒートブラストの性質を発現しており、炎の球を一瞬で作り出す。かつて森を燃やし尽くしたその炎は、ベンに向けて発射。
BOOHW!
しようとするも、その左手は緑谷により蹴り上げられ、炎球は夜空へと舞い上がる。
「お前の相手は、僕だ!!」
ケビンはめんどくさそうに後頭部を摩りながら、緑谷へと目を向ける。そして、一呼吸置くと、リップジョーズの歯をむき出しにして笑う。
「お前にも借りがあったからなぁ…ミドリヤ…いいぜ。まずはお前からぶっ殺す!!」
夏休みに似つかわしい、オレンジ色の花火が上がった。
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「お、なんか花火が上がったぞ。此処の眺めはいいなぁ、坊主」
所変わって、合宿所から離れた断崖。
珍しいお面をかぶった大男は、滉太の元へにじり寄る。
身長は2メートルほど。全身の筋肉は軍人のように鍛えられているが、その言動から「規律」といったものは微塵も感じ取れない。
被っていたローブを脱ぎ去り、一歩、一歩とゆっくり滉太へと歩み寄る。滉太も当然後ずさるが、一歩の大きさの分、大男が徐々に近づく。
「あっちぃんだよ、このローブ。それによ、このお面ダセェだろ?それに比べて」
彼の右目が、滉太の帽子を射抜く。
「…お前の帽子、いいな!」
「ひっ!?」
目の前に来た男の髪は金色に染められている。その頭髪から、滉太は少しずつ思い出す。父と母が報道されていたテレビを。
【ウォーターホース…実に勇敢なヒーローでした。
ですが、彼らの尊い命は、1人の敵に奪われました】
【犯人は現在も逃走を続けており、
警察とヒーローは行方を追っています】
【身長は2m30㎝。大柄で、個性は増強型です】
【この顔を見かけたらすぐに110を】
背を向け走りだした滉太。が、男は難なく回り込む。
恐怖で足が止まる滉太に対し、腕に繊維を付けたしながらその男は腕を振り上げる。風でお面でカラリと落ち、滉太の目の前に来た顔には
【なお現在左眼には、ウォーターホースに受けた傷が残っていると思われ】
なにかで削られたような痛々しい傷と、禍々しい義眼が入っていた。
「景気づけに一発やらせろやぁ!!!」
「パパ…!ママ…!!」
DDGOOMMMM!!
崖全体が震える。強風で草木がなびく。砂ぼこりが周囲に舞う。その強烈な破壊音は森全体に響き渡った。
砂ぼこりで何も見えない滉太。ただわかるのは…
自分になにも危害が加えられていないこと。
そして、殴られる寸前、
砂ぼこりは、そいつに払われる。そいつはケホケホと咳ごみながらも、滉太へと視線をやる。
涙を浮かべた滉太に対し、4つ目の彼は、笑顔で
「大丈夫か、クソガキ」
悪態をつく。
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緑谷と別れてから、ベンはすぐさまフォーアームズに変身した。敵襲撃という見通しが立たない状況では、何にでも対応できるパワー型が良いとの判断。
そして、滉太がいる崖の下部から、ジャンプ一つでここまで来た。結果は間一髪。滉太が拳を入れられる前に、彼が敵にパンチを打ち込んだ。
敵はギリギリガードに成功するも、勢いで後退する。足で砂をつかみながら、ようやく勢いが死んだところでクロスした腕を解く。彼の顔には、ウォーターホースのつけた傷がはっきりと入っていた。
「あっ、あいつが、血狂いの、ま、マスキュラ―だ!ウォーターホースを…ぼ、僕のパパとママを‥‥殺した奴だ!!!」
言葉を詰まらせながら、フォーアームズに訴える滉太。その言葉に先に反応したのは血狂いのマスキュラ―。
「ああ…?…ああ!お前、ヒーローの息子か!覚えてるぜぇ、なんせ俺の左眼を持っていきやがったやつらだ。
ああ、そうか、ヒーローの子どもに、フォーアームズ…おいおいおいおい!!運命的じゃねぇの!?」
1人興奮し始めるマスキュラ―。そんな彼になにか違和感を覚えるも、フォーアームズは冷静に返答する。
「勝手に運命感じるのは構わねーが、今のうちに尻尾巻いて逃げることをお勧めするぜ?次のパンチはさっきの比じゃないぞ」
「はっはぁ!そりゃお互い様だぜ!フォーアームズ!!オレの個性しってるか?知らないよな!教えてやるよ!!」
昂りながら、マスキュラ―は個性を発動させる。彼の腕に、わさわさと赤い繊維が纏わり始めた。その繊維は肩、首、背中、足へと浸食を始め、ついには赤い何かに覆われたマスキュラ―がベンの目の前に立っていた。
「うぉっと…えらく不細工になったもんだな。といっても、素の状態でも俺より不細工だが」
「ははっ!!言ってくれるじゃねーか!俺の個性は筋肉増強!自由自在に筋繊維を増殖させて、速さ、強さを底上げする!!」
今までの倍ほどの大きさになったマスキュラーは、息を荒げながら説明を始める。
「この姿で遊ぶのは初めてなんだよ!!なんせ、その前に簡単におっちんじまうからな」
高らかに笑いながら、マスキュラ―は拳を作る。フォーアームズは構えるも、マスキュラーから攻撃意思を感じない。彼は、何を思ったかその拳を地面へと叩きつける。
CCRAAAACK!!
拳は地面に叩きつけられ、その力は留まること無く崖下まで突き進む。ベン達の視点からは、わかりづらいが、側面から見れば一目瞭然。
数十メートルにもなる崖には、頂上から地面まで一筋の亀裂が入っていた。
自慢げなマスキュラーはベンの反応を伺うが、大したリアクションは見られない。すこしつまらなそうに舌打ちをした後、今度は嬉々としてベンに問う。
「楽しみにしてたぜ!?お前との力比べ!!」
「…そうか、謝るなら今のうちだったんだけどな!」
「へっ!とにかく…遊ぼうぜ!!!」
個性により筋肉を張り付けたマスキュラーは、4本腕のエイリアンにとびかかった。
・展開が遅いかもしれませんが、この辺は残り少ないクライマックスですので丁寧にやるつもりです!どうかお付き合いください!
・ベンと緑谷がタッグを組むのはもう少し先です…なにげにベンって、この小説内では色々な人と共闘してる気がする(笑)
・感想、評価がありましたら是非!
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章